魔法少女リリカルなのはStrikerS 信念の刃   作:sufia

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今回は長いです

GWスペシャルとでも思ってください


第18話 ≪騎士との邂逅・真紅の瞳≫

 

いつもよりも少し厳し目の午前の訓練が終わり、なのはが全員を集める

 

綾人、フェイト、ヴィータがなのはの横に並んでいて、その前でフォワード達は疲労により座り込んでいた

 

「はい、今朝の訓練と模擬戦も無事終了! お疲れ様!!」

 

なのはがすっかり疲れきっているフォワード陣を労う

 

「でね? 実は何気に今日の模擬戦が、第2段階クリアの見極めテストだったんだけど・・・」

 

さらっと教えるなのはにフォワード達も唖然として視線を移す

 

「綾人先生、どうでした?」

「合格」

「「はや!!」」

 

なのはに振られて即答する綾人にすかさず突っ込むスバルとティアナ

 

「ま、こんだけみっちりやってて、問題あるようなら大変だってこった」

「「はは・・・」」

 

ヴィータの言葉にエリオとキャロも苦笑いを浮かべる

 

「私も、みんないい線いってると思うし・・・じゃ、これにて2段階終了!!」

「「「「やった~!!」」」」

 

立ち上がり喜ぶフォワード達

 

「デバイスリミッターも一段解除するから・・・後でシャーリーのところに行ってきてね?」

「明日からは2ndモードを基本形にやってくから、そのつもりでな?」

「「「「はい!」」」」

「・・・え? 明日・・・?」

 

なのはと綾人の指示に返事をしたものの、キャロは何か引っかかり2人を見る

 

「ああ、訓練再開は明日からだ」

「今日は私達も、隊舎に待機する予定だし・・・」

「みんな、入隊日からずっと訓練漬けだったしね・・・」

 

綾人の返事となのはとフェイトの会話にも今ひとつ理解できていないフォワード達

 

「ま、そんなわけで・・・」

「今日はみんな、一日お休みです! 町にでも出かけて、遊んでくるといいよ!!」

 

なのはの口から出た「休み」の単語に大喜びのフォワード達

 

「ま、たまにしかない休みだからな・・・思う存分満喫してこい」

「あれ、綾人先輩は?」

「俺か? それはこのまま待機に・・・」

「綾人君も今日はお休みだよ?」

「へ?」

 

綾人が答えている途中で、なのはが後ろから教えてくる

 

「綾人君もフォワードの一員だからね? だから『フォワードのお休み』もなるべく合わせてあるの」

「なるほど・・・ということらしい」

 

なのはの説明に頷きながらティアナにそのまま振り向きなおす

 

 

その後、綾人達はデバイスを預けて休日のプランを考えるのだった・・・

 

 

【リョウSIDE】

 

~デバイスルーム~

 

「シャーリー? 新人達のデバイス来たか~?」

『あ、ちょっと待ってリョウ君!』

「は?」

 

扉越しに声をかけながらデバイスルームに入っていくリョウ

 

だが、中からのシャーリーの慌てた声を気にしないまま入ってしまった

 

「ん?」

「あちゃ~・・・」

「う~~!!」

 

リョウが入ると、ちょうどリインが調整ポッドに入るために服を脱いでいる所だった・・・

 

「あ~・・・・・・すみません」

 

頭を掻きながら回れ右して引き返していくリョウだが

 

「『フリジッドダガー』!!」

「うおっと!?」

 

後ろから飛んでくる無数の氷の刃を避けながら部屋の外へと退避するのだった

 

「はぁ・・・はぁ・・・死ぬかと思った・・・」

「何やってんだ? リョウ」

 

壁に持たれて座り込んで息を整えている所に綾人がやってくる

 

「ちょっとな・・・お前こそどうしたよ?」

「ああ、シャーリーに相談に乗ってくれって言われてな。中にいるのか?」

「ああ、いるが・・・あ、ちょっと待・・・」

 

リョウの返事を聞く前に扉を開いて中に入っていく綾人

 

慌ててリョウも追いかけると・・・

 

「いい加減にするです!!」

 

というリインの声とともに放たれた氷によって追い出された

 

「だから待てって言ったのに・・・」

「もう少し早く頼む・・・」

 

床に倒れながらリョウを睨む綾人

 

と言っても綾人の不注意なのだから強くは言えない

 

「ご、ごめんね? 2人共」

「いや、悪いのは俺達だからな。それで、相談って?」

「あ~うん・・・こっちで」

 

デバイスルームから給湯室へと場所を移した綾人達

 

 

「エリオとキャロのデートプラン?」

「そう。キャロに相談されたフェイトさんに頼まれたの。『どこで遊んだらいいか考えて欲しい』って・・・」

「どんだけ心配なんだよ・・・」

「気持ちはわからなくもないが・・・」

 

休みもほとんど街で遊ぶという事をしないフェイト

 

自分よりもその辺りに詳しいシャーリーに頼む辺り、本気で悩んだのだろう

 

「で、一応考えてみたんだけど・・・男の人の意見も聞きたくて」

「どれ・・・」

 

シャーリーの考えたプランを一通り見ていくリョウと綾人

 

 

以下、シャーリーの考えたデートプラン

 

・まずは、レールウェイでサード・アヴェニューまで移動。市街地を散歩

 

・ウィンドウショッピングや会話等を楽しみ、食事はなるべく雰囲気が良く、会話の弾みそうな場所で

 

・その後は映画を見て、夕方は海岸線の夕焼けを眺める

 

 

それらを見た綾人とリョウは同時にため息を吐く

 

「ちょっと!? 何がいけないの!?」

「なんだこの雑誌の項目丸写しのプランは。これならその雑誌直接手渡せよ・・・」

「10歳の子供がウィンドウショッピングを楽しんだり、雰囲気のいい店なんか選べると思うか?」

「子供向けの映画って今何やってるっけ?」

「その辺は詳しくないが・・・ともかく、子供2人で行くような所じゃないな」

 

口々に問題点を上げていく男2人

 

経験は無くてもおかしいと思える部分は確かにあった

 

「じゃあ2人ならどうするの!?」

 

若干ヤケになっているシャーリーが聞き返す

 

「俺はこの辺一帯のマップでも渡して好きにやらせるかな。“2人で選んで決める”・・・それが楽しいかどうかはわからんが、次がある時にまた違う所にも行けるだろうしな」

「確かに。“ここにはこれがある”ぐらいの情報だけでいいんじゃないか? 子供だって言っても、2人とも行っていい場所とダメな場所ぐらいの区別は付くだろうしな」

「なるほど。じゃあそんな感じで・・・」

 

意見を聞きながらプランを練り直すシャーリー

 

 

「でも・・・そうだな、食事の場所ぐらいは幾つかオススメを挙げておこうか・・・」

 

そう言うと、綾人はマップのレストランや喫茶店などに丸をつけて情報を入れていく

 

「綾人らしいな~。それじゃ、俺はレジャー関連の情報をば・・・」

 

リョウも別の色のペンで情報を書き込んでいく

 

そんな感じで出来上がった新生プランは、そのままキャロの手に渡ったのだった・・・

 

 

 

~機動六課・ガレージ~

 

「あ、綾人先輩」

 

着替えてガレージでバイクの準備をしていると、私服に着替えたティアナが入ってきた

 

「おお、ティアナ。こんなところでどうした?」

「ヴァイス陸曹にバイク借りて“スバルと一緒に街に行こうかな”って。それ、先輩のバイクですか?」

「ああ、管理局に入った後で買った・・・中古だったけど、色も形も気に入ったから・・・」

「はぁ・・・」

 

どこか楽しそうな綾人の言葉にバイクを見るティアナ

 

少し型が古いバイクで、色も綾人が好む黒色だった

 

「バイクも真っ黒なんですね・・・」

「ああ、俺のパーソナルカラーと思ってくれていい」

 

何処までも黒色主義の綾人であった

 

「お? 悪いなティアナ。遅くなっちまった」

「こっちこそ、無理言っちゃって・・・」

 

2人でそんな会話をしているとヴァイスが入ってきた

 

「いや~キーが見つからなくてな・・・ほれ!」

「あ・・・はい!」

 

頭をかきながらバイクのキーを投げ、ソレをキャッチするティアナ

 

「調整はすんでっから、すぐ出せるからな」

「ありがとうございます! それじゃ先輩、お先に失礼します」

「ああ。気をつけてな」

 

礼を言い、綾人に一声掛けて発進するティアナ

 

ヴァイスの後ろで綾人も準備を終わらせていた

 

「それじゃヴァイスさん、俺も行って来ます」

「ああ。気をつけてな?」

 

メットを被り、発進していく綾人

 

 

 

~隊舎・入り口~

 

隊舎の入り口まで来ると、なのはが立っていた

 

「あれ? どうしたんですかなのはさん、こんな所で・・・」

「あ、綾人君。さっきティアナ達が出発した所だよ?」

「そうですか」

「綾人君もバイクでお出かけ?」

「ええ、ちょっとブラブラと・・・行きたい所も幾つか・・・」

 

2人でそんな会話をしていると、フェイト、エリオ、キャロの3人が出てきた

 

「ライトニング隊も一緒にお出かけ?」

「「行って来ます!」」

「はい、行ってらっしゃい!!」

 

元気に挨拶する子供に笑顔で答えるなのは

 

「あ、綾人さん、さっきはありがとうございました!」

「ん? ああプランのことか。気にすんな、シャーリーのプランそのままだったら困ってたと思うしな」

 

苦笑いしながらキャロに答える綾人

 

前のプランを知らないキャロは首を傾げるしかなかった

 

「それはそうと・・・キャロ、その服可愛いぞ?」

「ありがとうございます!」

 

褒められて顔を赤くしながら一回転するキャロ

 

「エリオ、しっかりキャロのことエスコートしろよ?」

「は、はい!!」

 

綾人の言葉に同じく顔を赤くしながらエリオが答えると、綾人も満足気に頷く

 

「さて、それじゃ俺は先に行かせてもらうかな。それじゃ!」

「「はい!!」」

「行ってらっしゃい!」

「気をつけてね?」

 

4人に見送られ、発進する綾人

 

 

~ミッド首都・クラナガン郊外~

 

「ふぅ・・・結構遠くまで来たな・・・」

 

数時間のツーリングを終え、海の見える所で停車し一息ついている綾人

 

「もう少しで昼だな・・・行くか・・・」

 

そう呟いたとき、通信が入る

 

「? こちらスターズ03」

『どうも~先輩! こちらスターズ04です』

 

通信の相手はスバルだった

 

なにかテンションが高い

 

「どうした? なんかあったのか?」

『いや~先輩はどうしてるかな~って・・・お1人ですか?』

「ああ、お1人様だ」

 

スバルが通信越しに綾人の周りを見ている

 

『あの、だったら今から合流しません?』

「合流?」

『はい! どうですか?』

「そうだな・・・」

 

スバルの誘いに少し悩む綾人

 

「せっかくのデートのお誘いだけど悪いな・・・行くところがあってな・・・」

『デ、デデデデデデート!?』

 

綾人の一言に、通信の向こうでスバルがひどく慌てている

 

『な、何言ってんですか!!?』

 

そばで聞いていたティアナも慌てていた

 

「なんだ? 違うのか?」

 

素で返す綾人にティアナも少し怒る

 

『デートなわけ無いでしょう!?』

「そうか? 男と女が出かけたらそれはデートだと聞いたんだが・・・?」

 

225隊の先輩やリョウからそんな感じに聞いている綾人

 

『とにかく! 無理なら別にいいですから! それじゃ!!』

 

顔を赤くして怒りながらティアナが通信を切る

 

「ふぅ・・・さて、それじゃあ行きますか・・・」

 

バイクに跨り、本日の目的地へと向かう綾人だった・・・

 

 

【???SIDE】

 

 

~ミッドチルダ・某所~

 

『騎士ゼスト・・・少しお時間よろしいですか?』

「なんだ? レリックに関わる話か・・・?」

 

街の雑踏の影に佇む1人のコートの男に、スカリエッティの部下『ウーノ』から通信が入る

 

「こちらで探していた物が発見し、その回収に『ルーテシアお嬢様』が向かってくださっています」

「なんだと? 『アギト』も一緒か?」

 

自分の守っている少女の名前を出され、ゼストの目の色が変わる

 

「はい。お嬢様の手助けをと・・・」

「そうか。それを伝えるだけか?」

「いいえ。お嬢様への邪魔が入らぬように、騎士ゼストには足止めをお願いしたいのです」

「足止めだと? そんな物は、お前達のおもちゃにでもやらせればよかろう」

 

ゼストの当然とも言えるこの回答に、ウーノは顔色1つ変えずに続ける

 

「そうしたいのですが、とてもガジェットの手に負える相手ではないのです。なにせ、相手はかの『剣王の息子』・・・その意味がお分かりですね?」

(『剣王』・・・“あいつ”の? 確かに、息子がいるのは知っていたが。なるほど・・・“あいつ”の息子ならば納得がいく・・・)

「引き受けていただけますか?」

「よかろう。ただし条件がある・・・・・・」

 

しばし考えたあとウーノにそう応え、雑踏の中へと向かっていくゼストだった・・・

 

 

【綾人SIDE】

 

~市街地~

 

 

目的地へ向かうのに、手土産でも用意しようとバイクを走らせていた綾人

 

「人数が結構いるからな。無難にケーキとかでいいかな・・・材料揃えて向こうで作るか・・・・・・っ!?」

 

信号待ちの間にどうするかを考えていたが、辺りの様子が変わっていき綾人の表情が変わる

 

「これは・・・“封事結界”!? バルムンク!!」

{通信妨害・・・近くに魔力反応・・・大きいです!!}

「くっ!!」

 

バイクから降り付近を見渡すと、1つの足音が近づいてくる

 

その人物はコートを羽織り、顔にはフルフェイスのマスクをつけていた

 

『お前が『剣王』の息子か』

「! あんた、誰だ・・・っ!?」

 

男は綾人の質問に答える事なく、槍型のデバイスで綾人に切りかかり、綾人はその一撃を間一髪でかわす

 

「なにを!!」

『お前に恨みは無いが・・・・・・しばらく相手をしてもらおう』

「くっ!!」

 

バリアジャケットを展開し、バルムンクを構える

 

(尋常じゃない闘気だが・・・この違和感は・・・?)

 

男からあふれる闘気に冷や汗を流す綾人

 

その間も相手の観察を続ける

 

『見せてもらおうか・・・『剣王』の息子の力を・・・』

(俺を父さんの息子だと知っている?・・・なら、父さんか俺の知り合いのハズだ・・・)

 

管理局内でも極僅かしか知られていない綾人とマークの関係

 

機動六課と225隊以外では、地上本部のごく一部にしか知られていないのだ

 

「あんた・・・何が目的だ!!」

『先程言った・・・』

 

回答と共に駆け出し、槍を振り下ろされ綾人は咄嗟に受け止める

 

「ぐ!? くぅ!!」

(なんつー重さだ!!)

「はぁ!!」

「なっ!? がぁ!!」

 

男はそのまま振り下ろして綾人を吹き飛ばす

 

綾人は近くの建物の壁に衝突した

 

「くっ!! 馬鹿力が・・・!!」

 

瓦礫の中から這い出し、構えなおす

 

『ほぉ・・・やはりこの程度では効かぬか』

「悪いけど・・・鍛えてるからな!!」

 

今度は綾人から仕掛け、刃を振り下ろすが軽々と受け止められる

 

『・・・その程度か?』

「くぅ!! がはっ!!」

 

そのまま押し返され再び壁に埋まる

 

「ぐぅ・・・」

 

壁の中から相手をにらみ続ける綾人

 

(強い・・・・・しかも、まだまだ本気なんか出してないな・・・あの感じだと・・・)

 

這い上がり呼吸を整える

 

(どうする? 通信妨害までされたんじゃ応援は呼べない・・・でも、この状況は外でも感知しているハズだ。ならそれまで時間稼ぎを・・・・・・ん?)

 

考えている途中何かに気付いた綾人

 

(“時間稼ぎ”? まさか・・・向こうの本来の目的って・・・・・・足止め?)

 

相手の行動を考えてみる綾人

 

相手は必要以上に綾人へ攻撃をしてこずに、かと言って綾人を逃がす事もない・・・

 

綾人の力量を図るというのにも関わらずである

 

 

そこから導き出されたこの答えに綾人は自分のすることを考える

 

(足止めが目的なら時間を相手に与えちゃダメだ・・・・・・なら・・・)

『む?』

「一気に・・・決める・・・」

 

ゆっくり息を吐きだし、闘気を巡らせる

 

そして、肩からある異変が起こる

 

『何!? 腕が・・・生えた?』

 

綾人の両肩から新たにバルムンクを携えた腕が生えてきたのだ

 

「『幻視・四刀流』!!」

『バカな・・・どういうことだ?』

 

男が混乱していたが、綾人は4本の腕を交差させそのまま相手へと突進していく

 

そして、腕を広げながら後ろへと通り抜ける・・・

 

「『四刀流』・・・『霞(かすみ)』!!」

『ぐぅ!?』

 

その攻撃は、男の身体の中心から四方へと切り傷を付け、仮面にもわずかにヒビを入れた

 

『まさかこれほどとは・・・・・・見事だ』

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

息を整えながら振り向く綾人

 

腕は元に戻っている

 

『流石は“あいつ”の息子だ。成長が楽しみだな・・・』

「あんた・・・やっぱり父さんの知り合いか?」

 

ずっと気になっていた事をそのまま聞き出す綾人

 

『足止めはこれでよかろう。こちらも手を尽くした・・・文句はあるまい・・・』

 

首を傾げる綾人をよそに、魔方陣を展開し転移しようとする男

 

「ま、待て!!」

『最後に名乗っておく。我が名は『ゼスト・グランガイツ』。貴様の父ならこの名を知っていよう・・・さらばだ』

 

叫ぶ綾人にそれだけ言うと、男・ゼストは姿を消す

 

結界も消滅し、辺りも元に戻った

 

『あっ!! 通信妨害解除!! 綾人君、そこにいる!?』

「アルト? どうした?」

 

結界の解除により通信が回復し、六課の通信士である『アルト・クラエッタ』からの通信が入る

 

『それが・・・』

 

アルトの説明によれば、ライトニングの2人がレリックと共に少女を保護したが、レリックがもう1つあることを確認して回収に向かった事

 

それと同時に市街地にもガジェットが出現したためになのはとフェイト、はやてが迎撃に向かっている事

 

そして、現在少女はヴァイスのヘリでシャマルに診られながら運ばれている事を伝えた

 

「なるほど・・・俺はどこに行けばいい?」

『綾人はそのままヘリの護衛をお願い。綾人の位置からならそこが一番近い』

 

フェイトからも通信が入って指示が来る

 

綾人が空を見上げると、確かにヘリがそばを飛んでいた

 

「フォワード達と合流しなくていいんですか?」

『そっちにはヴィータと108からスバルのお姉さん・・・『ギンガ・ナカジマ』陸曹が助っ人で来てくれてる・・・問題ないよ』

「そうか・・・ギンガが・・・」

 

訓練校時代、ティアナ達と共にスバルから紹介され、面識はある

 

「なら大丈夫だな。はやてさん、空中移動の許可を」

『もう出てるよ? だから頼むな?』

『こっちが片付いたら私達もヘリに向かうから、よろしくね? 綾人君』

「了解」

 

 

通信を終えて『空』でヘリへと向かう綾人だった・・・

 

 

【ヴィータSIDE】

 

陸士108隊での捜査の打ち合わせと教官としての仕事をしていたヴィータは六課の出撃を知って援護へと向かった

 

フォワード達と合流して相手の召喚士、『ルーテシア・アルピーノ』と融合デバイスの『アギト』を追い詰め拘束に成功していた

 

「子供を虐めてるみてぇで、いい気分はしねぇが・・・市街地での危険魔法使用に公務執行妨害、その他諸々で逮捕する」

 

グラーフアイゼンを肩に担ぎながら淡々と罪状を挙げ、2人に近づいていくヴィータ

 

その時だった

 

「逮捕はいいけど・・・」

「あん?」

 

ルーテシアが声を出す

 

「大事なヘリは・・・放っておいていいの・・・?」

「っ!?」

 

その声、言葉にヴィータの顔色が変わる

 

 

「あなたはまた・・・・・守れないかもね・・・」

 

その言葉の直後・・・遠く離れた場所にいる1人の少女によって、ヴァイス達のヘリへ長距離砲が放たれた・・・

 

それに気づいてヴィータやフォワード達がヘリに目を向けるが、その砲撃は反れることなく直撃した・・・

 

 

【???SIDE】

 

とあるビルの屋上に青色のボディスーツを来た2人の女の姿があった

 

「んっふっふのふ~! どうかしら? この完璧な計画」

「ちょっと黙って・・・今、直撃を確認する」

 

メガネと白衣を身に付けた『クアットロ』が自らの計画の成功に酔いしれている横で、ヘリを狙撃した『ディエチ』がその瞳のズーム機能を使ってヘリを確認していた

 

「あれ? まだ飛んでる?」

 

爆煙が徐々に晴れ、その中から未だに飛び続けるヘリを確認した

 

不思議に思いながら更にズームしていくディエチ

 

そして・・・ある物が目に入った

 

「あれは・・・・・・」

 

それは、身体中傷だらけの綾人だった

 

 

【綾人SIDE】

 

それは直撃の数秒前

 

「熱源!?」

 

ヘリに到着する直前にディエチの砲撃を知った綾人

 

だが、今のままのペースではギリギリ間に合わない速度だった

 

「バルムンク、バリアジャケットを“通常モード”に。その後全力でシールド」

{了解!}

 

バルムンクに指示を出すと、綾人のバリアジャケットは一瞬光ってすぐに収まった

 

「よし・・・『空』!!」

 

もう一度空中を踏み抜いて飛ぶ綾人

 

その速度は通常よりも上がっていて直撃の前にヘリの後ろに到着した

 

「『壁(へき)』!!」

{protection!!}

 

バルムンクを目の前に翳すと、綾人の前に群青色の壁が出来上がる

 

そして、砲撃を真正面から受け止めた

 

この防御魔法はバルムンクに組み込まれている綾人の数少ない“魔法”の1つ

 

闘気の技にも防御用はあるが、不便な点が多くほとんど攻撃にしか使わない

 

そこでリョウに提案されたのが、魔法を防御に回すという発想だった

 

あまり行使しない魔力を全力で“守り”に回しているのだ

 

綾人は相手の攻撃の出力によってこれらを使い分けている

 

「ぐっ! 負けるか・・・・・・よぉ!!」

 

綾人が叫ぶと同時、シールドと砲撃が爆発した

 

 

爆発の余波で傷を負い、そのまま地上へと落下する綾人

 

その時、身体に変化が起こる

 

 

【なのはSIDE】

 

「綾人君!」

 

急いでヘリへと急行していたなのはは、落ちていく綾人へ必死に手を伸ばしていた

 

(このままじゃ落ちる!)

 

なのはがそう思い速度を上げようとした瞬間だった

 

 

突然綾人が身体を捻り、『空』でとある方向へ移動し始めたのだ

 

その方向とは・・・

 

ディエチとクアットロのいるビルがある方向だった

 

 

【ディエチSIDE】

 

「こっちに来る!?」

「そんな!? なんて速度!?」

 

その事にディエチ達も気づいていたが、それよりも早く綾人が近づいていた

 

「急いでこの場を・・・クア姉!」

「ええ」

 

クアットロを連れて離れた瞬間

 

ビルの屋上に螺旋状の斬撃が放たれた

 

斬撃は見事に屋上の表面を抉り抜き、虚空で消えた

 

その光景にディエチとクアットロの顔が真っ青になる

 

「見つけた!!」

「っ!?」

 

2人の後ろから別の女性・・・フェイトの声が聞こえた

 

「こっちも!?」

 

慌てて距離を取るが、フェイトは持ち前の高速移動で2人を逃がさない

 

【フェイトSIDE】

 

「止まりなさい! 市街地での危険魔法使用、及び殺人未遂で現行犯逮捕します!!」

「今日は遠慮します~!!」

 

ディエチはビルを飛び移りながら、クアットロは飛行して逃げていく

 

「『IS』発動、『シルバーカーテン』」

 

クアットロが一言呟くと、ディエチ共々姿を消した

 

「な・・・! え・・・?」

 

その光景に驚くフェイトだが、後ろから何かに追い抜かれた

 

それは、尋常じゃない速度で空を掛ける綾人だった

 

「綾人!?」

 

綾人は何も無い所で止まり、振り向きざまに『閃』を放つ

 

「きゃぁ!?」

 

虚空から女の悲鳴が聞こえ、何かが着地した

 

「そんな・・・なんで?」

「こっちの姿は見えないはずなのに・・・」

 

綾人を見上げるクアットロとディエチ

 

『閃』が掠ったのかクアットロの肩の部分が切り裂かれていた

 

フェイト、そして追いついてきたなのはが綾人の姿を確認すると

 

「あれ・・・なに?」

「瞳が・・・紅い?」

 

クアットロ達を見下ろす綾人の瞳が・・・『真紅』に染まっていた

 

「・・・・・・」

 

無言でバルムンクを構え、高速で突く

 

刀身の先から闘気が放たれクアットロ達を襲う

 

「ひっ!!」

「やば・・・!!」

 

小爆発がいくつも起こり、それによって土煙も起こる

 

「あ、綾人君!!」

「それ以上はダメ!!」

 

綾人の行動を危険に思いお互いに腕を必死で止める

 

「ん・・・・・・んぅ・・・」

 

その瞬間、綾人は小さく呻いて動きを止めた

 

それを見たフェイトが下に視線を移す

 

 

「いない・・・一瞬だけどさっき別の反応があった・・・・・・アルト!」

『はい!!』

 

攻撃の当たる瞬間、バルディッシュが高速で近づいている反応に気づいていた

 

しかし、それ以上に綾人を止める事を優先していたのだ

 

 

【ディエチSIDE】

 

 

先程の場所から離れた場所に、ディエチ達と同様ボディスーツを身にまとった女性・・・『トーレ』がクアットロ達を両脇に抱えて姿を現す

 

「ふぅ・・・トーレ姉さま~・・・助かりました~」

「感謝・・・」

 

九死に一生を得た2人は溜息混じりに礼を言う

 

「ぼうっとするな、さっさと立て。監視目的だが、来ていてよかった。セインはもう、お嬢とケースの確保に成功したそうだ。合流して戻るぞ」

 

2人にそれだけ告げるとさっさと歩き出すトーレ

 

その後ろを少しふらつきながらクアットロとディエチも着いて行く

 

「あれ? トーレ姉、その肩・・・」

「ああ・・・あの男の斬撃、全てを避ける事は出来なかった・・・」

 

ディエチがトーレの肩の傷を見つけ、トーレもそう答える

 

彼女の能力『ライドインパルス』の高速移動により、あの斬撃の中を2人を連れて一気に離脱に成功したのだ

 

しかし、それでも斬撃の雨の中を無傷で通過する事はできず、立ち止まった一瞬で傷を負ったのだ

 

「話に聞いていただけだが、これほどまでの実力とはな・・・・・・我々も、まだまだ強化が必要だ」

 

肩を押さえながら決意を新たにするトーレなのだった




どうも

新章突入からいきなりの急展開

綾人君は高確率で別行動している気がするが・・・まあ、仕方ないね


リメイク前は市街地で襲われて終わっていて、リメイク分を足したら切るところがなくなってこの無駄な長さになってしまいました


計画性って大事だよね・・・・・・



さて、次回予告

六課の病室で目を覚ました綾人は、はやてに状況を報告し保護された女の子に会いに行くことに

「初めまして、天童綾人です」
「・・・・・・うん・・・」

この時の出会いは何を意味するのか・・・・・・


次回、『少女との出会い、綾人の隠れた才能』


彼の本領が発揮される・・・

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