魔法少女リリカルなのはStrikerS 信念の刃   作:sufia

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今回はオリジナル回です

前回のフラグ回避の理由を紐解いていこうと思います


第16話 ≪ティアナの思い≫

【ティアナSIDE】

 

~数年前・訓練校~

 

 

それは、綾人とティアナ達が初めて出会った頃

 

その当時、ティアナは回りとの壁を作っておりパートナーのスバルとも少し距離を置いていた頃だった・・・

 

 

訓練が終わった後、1人抜け出して自主練をしていたティアナ

 

「まだ・・・こんなことじゃ・・・あたしの夢は・・・」

「誰かと思えば・・・ランスターか」

「!?」

 

後ろからの声に驚き振り向くと、つい最近知り合った綾人だった

 

「なんの・・・用ですか・・・?」

「別に? 自主練なんて関心だなと思っただけだから気にすんな・・・」

「なら、早く戻ったらどうですか?」

「見られて困るもんでもないだろ?」

「・・・・・・」

 

そう言うと、綾人は近くの木の下に座る

 

何を言っても動きそうにない綾人に少しイラつきながら練習を再開したティアナ

 

しかし・・・

 

「反応が遅れてる・・・そんなんじゃ狙われるぞ?」

 

「ほらまた後ろががら空き」

 

「足元にも注意しろって」

 

綾人は事あるごとに口を出してきたのだ

 

そしてついに

 

「うるさい!!」

「おっと」

 

ティアナが声をあげる

 

「なんなんですか!? 人の自主練の邪魔をして楽しいんですか!?」

「俺は思った事を言ってるだけだが?」

「余計なお世話です! さっさと帰ってください!!」

 

ペースを崩さない綾人に更に苛立つ

 

必死でやっている自分へのお小言に近い言葉は、更にティアナを不快にした

 

「ならお前もそこまでにしておけ・・・そんな疲れきった状態でやったって・・・何も得られないぞ?」

「関係ないって言ってるでしょ!?」

「あ、そう・・・じゃあな」

 

綾人の言葉に耳を傾ける事なく突き放すティアナ

 

その行動に綾人も諦めたのか立ち去っていった

 

 

その自主練は翌日もさらに翌日も続いた

 

しかし、それが原因なのかいつもの訓練に力が発揮できずにスバルやリョウも戸惑いを覚えていた

 

 

そしてついに・・・

 

 

「次! 32班!!」

「「はい!!」」

 

いつもの垂直飛越の訓練の時にそれは起こった

 

「行くよ?」

「ええ・・・」

 

ティアナの足を持ちながら声をかけるスバル

 

ティアナは上を見ながら答える

 

「ええい!!」

 

加減しながらティアナを上に投げる

 

ティアナは慣れたように塀を掴んで上に座る・・・いつもならそうなるはずが

 

「え・・・?」

 

座ったと同時にバランスを崩して反対側へと倒れこむ

 

マットも何も敷いていない地面へと・・・

 

「ランスターさん!?」

「マジか!?」

 

塀の下から見ていたスバルとリョウが慌て出す

 

「っ!!」

 

綾人は一気に塀を駆け上がり落ちる寸前のティアナの腕を掴む

 

「危ねぇな・・・まったく・・・」

 

ため息と共に下にいるティアナを見る

 

顔は真っ赤に紅潮して息も荒かった

 

「これは・・・俺の失敗だな・・・」

 

器用にティアナを掴みながら塀の上に上がって引っ張り上げる

 

そして、抱えながら下へと飛び降りた

 

 

ティアナは医務室へと運ばれ、夜遅くに目を覚ました

 

「起きたかバカ・・・」

「・・・天童・・・先輩・・・?」

 

状況を確認しながら名前を言うティアナ

 

「タダの風邪だが、明日も一応休んだほうがいい・・・教官には言っておくから、明日はゆっくりと・・・」

「そんなのダメ!」

「おい・・・」

「こんなところで挫けていられない・・・あたしは・・・!」

「大人しくしてろ・・・そんな状態で訓練なんかしたらもっと悪く」

「そんなの!」

「関係ないとか言わせないぞ?」

 

ティアナの言葉を遮る

 

「お前1人が体調を偽って無茶したおかげで、俺達にもとばっちりだ・・・もうすでにお前だけの問題じゃ無くなったんだよ」

「あ・・・・・・」

 

綾人の言葉に黙り込むティアナ

 

「ま、無理やりにでも止めなかった俺にも問題は有るか・・・だから俺からの説教は特にない・・・でもな?」

 

近づきながらティアナと目線を合わせる

 

「とりあえず、お前がそこまで必死にやる事の理由ってのは・・・聞かせてもらうぞ?」

「・・・・・・」

 

 

ティアナは観念し、無茶な自主練の理由を綾人に話した

 

 

両親を早くに亡くした自分にとっての最後の家族だった兄・・・『ティーダ・ランスター』の事

 

空戦部隊に所属していた彼は任務の途中で殉職しこの世を去った事

 

その葬儀の場で上司の人間から放たれた心無い一言に、当時幼かったティアナに大きな傷を残した事

 

そしてそれを見返すために自分は兄の夢だった『執務官』を目指している事

 

 

スバルにすらまだ話していないそれらを綾人に話したティアナ

 

 

「なるほどね・・・“家族のため”・・・か・・・」

 

黙って聞いていた綾人はその一言だけを言って立ち上がる

 

「そういう理由は俺も嫌いじゃない・・・だが、それも含めて1つ質問がある」

「え・・・?」

「お前は“どんな執務官になりたいんだ”?」

 

綾人の何気ないようでいてとても重要な質問・・・

 

ティアナは兄の夢を引き継いで漠然と執務官を目指している・・・

 

しかし“その後”・・・つまり執務官になった後については何も語られていない・・・見返すのが目的と言えなくもないのだが、綾人はそれが目的とは思っていないのだ

 

「夢を引き継いだ・・・目指す『理由』はそれでいいとして・・・なら、その夢を叶えたらどうする? なれたってことを証明してそれで終わりか?」

「それは・・・」

「そうだな。そんなんじゃ意味がない・・・なら、“夢の目指し方”を少し変えてみたらどうだ?」

「夢の・・・目指し方・・・」

 

綾人の言葉を小さく呟き返す

 

「“執務官になる”ってのがお兄さんの夢だ・・・なら、そこからの“お前の夢”を考えてみたらどうだ? それだけで“自分に何が足りないのか”がはっきりわかると思うし、俺達にも協力出来る部分があるかもしれない・・・この間みたいな自主練にも付き合えるしな?」

「あ・・・」

 

そう言われて綾人を見上げるティアナ

 

「ま、それだけだ・・・とりあえず、今言えるアドバイスは・・・・・・しっかり休んで体調を戻すことだ・・・いいな?」

「・・・・・・はい・・・」

 

頭を撫でながら言われ、ティアナも素直に頷く

 

「よし。それじゃ、俺は戻るよ・・・」

 

振り返り歩きだそうとすると

 

「あの・・・先輩!」

「ん?」

 

思い出したようにティアナが呼び止める

 

「その・・・・・・すみませんでした・・・あと・・・あ、ありがとうございました・・・」

「・・・・・・気にすんな。ただのおせっかいだ」

 

照れながらも礼を言ってくるティアナに対してフッと笑って医務室を出ていく綾人

 

 

~現在・機動六課隊舎・食堂~

 

 

「“どんな執務官”・・・か・・・」

「あれ? ティアナ1人?」

 

テーブルに座って考えていると、フェイトがスバル達の姿を探しながら話しかけてくる

 

「あ・・・フェイト隊長・・・はい。スバル達はまだ書類整理です・・・・・・手伝おうとしたら綾人先輩が“これぐらい自分でやらせろ”って・・・」

「そうなんだ・・・一緒にいい?」

「あ、はい」

 

ティアナの返事を聞いてフェイトが向かいに腰掛ける

 

「そういえば、ティアナはなんで執務官になろうって思ったの?」

「え?」

 

食事の途中、フェイトが思い出したように聞いてくる

 

「えっと・・・自分でいうのも何だけど・・・執務官って補佐官の期間も含めてたくさんの試験があるよね? 『そんな大変な思いをしてまでなりたいのは何でなのかな?』って思って・・・あ、気分を悪くしたらゴメンね?」

「いえ・・・・・・その・・・私には兄がいたんです・・・・・・」

 

ティアナはフェイトへ綾人と同様に自分が執務官を目指す『理由』を話していく

 

「そう・・・だったんだ・・・」

 

ティーダについても少し知っているフェイト

 

『首都航空隊に有望な執務官候補がいる』という噂を聞いていたからだ

 

「私は、兄の意思を受け継ぎたいんです・・・・・・そのために執務官への道を目指してます・・・・・・でも・・・」

「でも?」

「この話しを綾人先輩にした時に言われたんです・・・『どういう執務官になりたいのか?』って・・・・・・その時の私はただ執務官を目指してるだけで・・・それしか頭になかったんです・・・」

「それが、綾人に言われて考えるようになったんだ?」

「はい・・・今もまだ・・・見つからなくて・・・」

 

ティアナに聞かされた綾人の言葉をフェイトも考えてみる

 

「確かに・・・私もそういうのをちゃんと考えてなかったかな・・・」

「・・・フェイト隊長はなんで執務官になったんですか?」

「そうだね・・・・・・私の場合はすでに執務官をやってた人が身近にいたのが強いかな・・・仕事を手伝っていく内にやりがいを見つけて・・・自然と目指すようになった感じかな? きっかけはとても単純なものだったかもしれないけど、今はそれでもなってよかったと思ってるよ・・・エリオやキャロとも出会えたし・・・こうやって未来の後輩の悩みも聞いてあげられるしね?」

「あ・・・」

 

ニッコリと笑ってティアナに話すフェイト

 

「おや、珍しい組み合わせ」

「あ、リョウ先輩・・・」

「今から昼食?」

「ええ。いいっスか?」

「うん。どうぞ」

 

フェイトとティアナの間に座ってトレーを置くリョウ

 

「スバル達はどうした?」

「まだ報告書書いてると思います・・・綾人先輩の監修で」

「なるほど・・・」

 

状況が簡単に想像できてしまうリョウ

 

「そうだティアナ、後でスバル連れてデバイスルームに来い。月一のメンテするから」

「あ、はい。綾人先輩にも伝えておきます」

「いや、それは大丈夫だ・・・」

「え? でも・・・」

「大丈夫なんだよ」

 

それだけ言うと食事を始めるリョウ

 

「そういえば、リョウが3人のデバイスのメンテやってるんだよね」

「はい。訓練校の時からずっと」

「いつでも全力で戦えるための用意はしてやりたいですしね・・・特にクロスミラージュとマッハキャリバーは俺が最初に作ったデバイスでもありますし」

「そうなの? てっきり綾人のバルムンクがそうなのかと・・・」

 

これはティアナも同様に思っていた

 

「いえ、バルムンクは綾人が親父さんからもらったんです。それで、俺が直接頼み込んでメンテナンスをさせてもらうことになったんですよ」

「へぇ・・・」

 

友達の為にそこまでするのかと思ったフェイトとティアナ

 

「ともかく、デバイスマイスターとしては子供みたいなもんですからね・・・しっかり診てやりたいんです」

「マリーさんも同じこと言ってそうだね」

「ま、本人からの受け売りだったりもするんですけどね・・・俺もその思いには共感できますしね・・・お?」

「あ・・・」

 

リョウが何かに気づいたのを見たティアナがその視線を追うと、綾人がスバル達を連れて食堂に入ってきた

 

「やっとご飯だぁ!!」

「次からはもう少し効率よくな・・・2人もだぞ?」

「「はい・・・」」

 

解放されたのが余程嬉しいのか、ハイテンションのスバルを溜息混じりに叱る綾人

 

その時にはエリオ達に言うのも忘れない

 

2人もまだ事務仕事のペースが遅いのだ

 

経験も含まれるがそのへんのレベルアップをしてくれることを期待している

 

 

「エリオ、キャロ!」

「あ、フェイトさん!!」

「オッス」

「リョウ・・・珍しいな・・・こんな時間に」

「まぁな」

「あ、リョウ・・・バルムンク、今渡したほうがいいか?」

「いや、後ででいいよ・・・ティアナ達と一緒に受け取る」

「わかった」

 

リョウが何を言うまでもなく聞いてくる綾人

 

リョウもそれだけ答える

 

「すごいね・・・わかってるんだ・・・」

「時期的にもそろそろですし、今日はもう訓練もないですからね・・・言い出してくるなら今日辺りだと思いまして」

 

付き合いの長さから来る予測

 

 

それから綾人は、スバル達と一緒に昼食を摂り、デバイスをバルムンクに預けたのだった・・・




どうも


というわけで、ティアナのフラグも訓練校時代に建設済みということで・・・彼はフラグを熟成させるタイプのようです


そういう意味ではあと1人フラグを長期熟成させている女性が1人いるんですが・・・まあ、それも追々・・・


では、短いですが次回予告


その日の訓練は、再び訪れた綾人の教導

「さぁ・・・・・・どう出る?」

前回とまったく同じ条件の下、ティアナ達はどう動くのか・・・


そして語られる綾人の“過去”

「え・・・?」
「これが・・・・・・その“力を行使した結果”です・・・」


次回、『綾人流教導・応用編』


“力”とは何を指すのか・・・?

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