魔法少女リリカルなのはStrikerS 信念の刃   作:sufia

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本編が続いた後に、こういうオリジナルは入れていきたいと思っています



第10話 ≪綾人流教導・入門編≫

 

初出動から数日、訓練も集団訓練から個人訓練にステップアップした

 

スバルはヴィータと、ティアナはなのはと、そしてエリオ、キャロはフェイトと各ポジションに合わせた訓練を行っていた・・・

 

綾人はその訓練を見ながらレポートを作ったり、各教官達の手伝いなどを行ったりしている

 

そんな折、フォワード達がある意味楽しみにしている物が始まろうとしていた・・・

 

 

~訓練シミュレーター・森~

 

「それじゃ、今日の訓練は綾人君が主体でやってもらうね?」

「はい」

 

整列したフォワードを前に一歩前に出る綾人

 

その後ろでは、なのは、フェイト、ヴィータ、シグナムが見守っている

 

 

「さて、六課発足前から何しようか考えていたが・・・やっぱこれにしようと思う・・・」

 

そう言うと、懐から何かを取り出す

 

「それって・・・鈴?」

「そ、何の変哲もないただの鈴・・・」

 

音を鳴らしながらそれを首に下げる

 

「俺の教導の内容は至極簡単だ・・・“俺からこの鈴を奪う”・・・これだけだ」

「え・・・そ、それだけですか?」

「ああ。ただし、条件がある・・・“お互いに一切の魔法使用を禁止する”」

「「「「え!?」」」」

 

綾人の出した条件に声をあげるスバル達

 

「攻撃系はもちろん、スバルは『ウィングロード』、ティアナは『オプティックハイド』に『フェイクシルエット』、エリオは『ソニックムーブ』、キャロは『召喚魔法』、それと『補助魔法』を禁止・・・・・・あと念話も禁止するか。俺の方はそれに加えて『六花』も使わない。その状況で俺からこの鈴を奪ってみろ」

「でも・・・それがどんな意味が・・・」

「そんなことは、まず奪ってから考えてみろ・・・言っておくが簡単には終わらないぞ。なにせ、発足前に一度なのはさん達にも試してもらって・・・俺は逃げ切った」

「えぇ!?」

 

綾人から放たれた一言に驚くエリオ

 

「その時のメンバーはなのはさんにフェイトさん、ヴィータ副隊長にシグナム副隊長だ」

 

さらに驚かせる綾人

 

なのはやフェイトだけでなく、ヴィータやシグナムまで含めて全員から逃げ切ったのだ

 

「隊長達ですら難しかったこの訓練を、お前達が一発でクリアできたら、お前達の頼みを何でも1人1つずつ聞いてやろう」

「凄い自信だね・・・」

「でも、先輩らしいわ・・・しかも、実績もあるしね・・・」

 

不敵に笑う綾人に苦笑いするスバルとティアナ

 

「それじゃ、少しだけ作戦会議の時間をやろう・・・そうだな・・・10分後に開始するぞ」

 

そう言うと綾人は去っていった

 

【ティアナSIDE】

 

 

「で、作戦会議の時間をもらったわけだけど・・・」

「どうしますか?」

「魔法を一切使っちゃいけないなんて・・・考えたことないですね・・・そんな状況・・・」

「うん・・・」

 

キャロの言葉も当然である

 

なにせ彼女達は『魔導師』であり、『魔法』を使うのが大前提なのだ

 

その『魔法』を一切禁止しているこの訓練に意味があるのか疑問にもなっている

 

「ま、先輩の真意とかその辺りを考えるのはあと・・・ともかく、なのはさん達でも出来なかったこの訓練・・・どうこなすかだけど・・・」

 

ティアナは色々な提案を示していき、スバル達も聞きながら考えていた

 

どうすれば綾人から鈴を奪えるのかを

 

 

【綾人SIDE】

 

 

一方綾人は、来るべき時間に向けて軽くストレッチをしていた

 

「やっぱりこれにしたんだ」

「ええ、とりあえず今月はこの訓練だけになると思いますよ・・・アイツ等、どうやって俺がなのはさん達から逃げ切ったのかわからないでしょうから」

「そうだね・・・私達も敢えて言わなかったけど・・・多分、すぐには気づかないよね・・・」

 

なのはも苦笑いである

 

自分達がやった時の状況を思い出していた

 

「ま、万が一ってこともありますし・・・油断はしませんよ・・・それじゃ、そろそろ時間ですね」

 

時計を確認してスバル達の下へ戻る

 

 

 

「さて・・・準備はいいな?」

「「「「はい!」」」」

 

少しだけ距離をとって開始を待つ5人

 

「制限時間は40分! それじゃ・・・・・・スタート!!」

「ふっ!」

「「「「えぇ!?」」」」

 

なのはの開始の合図を受けてすぐ綾人が動く

 

そばにあった木の上に飛び乗ったのだ

 

上に逃げるという事に完全に驚かされたフォワードは動きが鈍った

 

 

「あ・・・スバル! エリオ!!」

「うん!」「はい!!」

 

すぐさまスバルとエリオに指示を出すティアナ

 

2人もすぐに綾人を追いかけていく

 

 

綾人は器用に枝から枝へと飛び移り引き離す

 

スバルとエリオは必死で追いかけるが、慣れない木の上の移動に苦戦し中々追いつけないでいた

 

一方、ティアナとキャロも下から追いかけるが、距離が大分離れてしまい念話も使えない為にスバル達に指示を出せないでいた

 

 

「あらら・・・もうバラバラか・・・」

 

一旦止まって振り向くと、4人の位置を確認する綾人

 

見事なまでに位置がバラバラになっている

 

 

「ええい!」

「おっと」

 

その隙をついたのか、横から飛び出してくるエリオを難なく回避し再び枝から飛び移る

 

(ふむ・・・やっぱこういう状況なら身軽なエリオの方が有利だな・・・だが・・・)

 

そう思いながらスバル達を横目で追う

 

(ま、最初ならこんなもんかな・・・)

「やぁ!!」

「よっ」

 

後ろから果敢に飛び込んでくるエリオを悠々と避ける

 

「エリオ、そんなに勢いよく動くとあとが続かないぞ?」

「その後は、スバルさん達が手伝ってくれますから!!」

「ほう・・・」

 

必死で綾人を足止めしているつもりのエリオだが

 

「そうか・・・なら・・・」

「え・・・?」

 

綾人は三度枝から枝へ飛び移った・・・しかも、かなり離れた場所にある枝へ

 

「これで、その希望も絶たれた訳だが?」

「くっ・・・!」

 

ニヤリと笑いながら再び逃げ出す

 

 

そして、その後もエリオは奮闘するがスバル達が追いつくこともなく時間だけが過ぎていくのだった・・・・・・

 

 

 

「はい、お疲れ様・・・」

 

集められたフォワード達は、皆息が上がっていた・・・

 

「とりあえず、エリオ以外は0点だな・・・ついでにエリオは5点」

「「「うっ!」」」

 

呆れた顔で点数を言う綾人に対し、何も言い返せないティアナ達

 

「まずスバル・・・慌てすぎで動きが鈍りすぎだ・・・」

「うぅ・・・」

「ティアナ、一度指示出した後ただ走ってただけだろ? せめてどうやって追いかけるかぐらいの指示もだせ」

「はい・・・」

「キャロに至っては・・・・・・何かしたか?」

「あぅ・・・」

 

三者三様に言われて凹んでしまう

 

「これでわかっただろ・・・お前達はいかに“『魔法』に頼り過ぎているのか”が・・・」

「「「え?」」」

「魔法に頼ってる結果、魔法によって強化した状態に慣れて、自分達の元々の持久力ってのが弱い・・・・・・それをしなかった状況での対応が出来ない・・・魔導師である以上、魔法は切っても切れないものだ・・・それに頼るのも仕方のないことだ・・・だが、それゆえに封じられたら一溜りもないくらいに弱体化するんだ・・・AMFなんかがいい例だな」

 

淡々と語る綾人

 

「だから、俺のいた225隊では魔法を使わない訓練ってのをたまにやっている・・・無力化されても戦える程の体力と筋力は付けるようにな」

 

この訓練も、何度か225隊で体験済みの綾人

 

自分も似たような感じで翻弄されていたこともある

 

「こんな状況下でお前達ができることはなんなのか・・・それを考えてみろ」

「魔法が使えない状況でできること・・・」

「ましてや、お前達は“チーム”だ・・・なら、それに合わせた動きだって必要になる・・・・・・これは、次までの宿題だ」

 

その言葉で、この日の綾人の訓練は幕を閉じた・・・・・・

 

 

~機動六課・隊舎前~

 

「あ、みんなお疲れさんや!」

 

隊舎の前に着くとはやて、リインが車で出かけるところだった

 

「確か、今日は綾人君の初訓練やったな? どうやった?」

「あはは・・・見事に0点もらいました・・・」

「あらら~・・・お父さんと同じで厳しいな~」

「妥当な点数ですよ・・・本人達も納得でしょ」

 

綾人の言葉にまた凹む女子3人

 

1人だけわずかだが点数をもらっているエリオに関しては苦笑いしかない

 

「はやてとリインは外回り?」

 

普段と少し違う声色で話すヴィータ

 

「はいです! ヴィータちゃん!」

「うん、ちょお108隊と225隊にな。スバル、お父さんやお姉さんに何か伝言とかあるか?」

「あ、いえ、大丈夫です」

「綾人君は? なんかあるか?」

 

手を小さく振りながら答えるスバルから綾人に目をむけるはやて。

 

「俺も、特には無いですね。ちょくちょくメールしてるんで」

 

少し考えながら答える綾人にはやても「そうか」と頷き車に乗り込み、エンジンをかける

 

「じゃあはやてちゃん、リイン、いってらっしゃい」

「ナカジマ三佐とギンガによろしく伝えてね?」

「うん」

 

はやてを送り出す親友2人

 

リインの元気な声と共に車が出発していった

 

 

~六課食堂~

 

他のテーブルとは段違いのスパゲティが積み上げられたテーブルでフォワード4人と綾人、シャーリーにリョウが食事をしていた

 

配置はシャーリーから時計回りに、エリオ、スバル、ティアナ、綾人、キャロ、リョウの順である

 

「なるほど、スバルさんのお父さんとお姉さんも、綾人さんのお父さんも陸士部隊の方なんですね?」

「うん、八神部隊長も一時期、父さんの部隊で研修してたんだって」

「うちの部隊にも来てたらしいし・・・その頃に俺とも会ってる」

 

キャロの質問に食べながら答えるスバルと綾人

 

キャロも「へぇ~」と納得していた

 

「しかし、ウチの部隊って関係者つながりが多いですよね? 隊長達も幼馴染同士なんでしたっけ?」

 

ティアナが向かいに座っているシャーリーに質問する

 

「そうだよ、なのはさんと八神部隊長は同じ世界出身で、フェイトさんも子供の頃はその世界で暮らしてたとか」

 

パンを食べながら答えるシャーリー

 

「えっと、たしか管理外世界の97番・・・」

「そう」

 

隣で食べていたエリオに頷き返す

 

「97番ってうちのお父さんのご先祖様がいた世界なんだよね~」

 

スパゲティを皿に盛りながら言うスバル

 

「俺と俺の母さんの生まれもそうだぞ」

 

綾人も反対側から盛っていく

 

「そうなんですか?」

 

スバルがエリオの皿にも盛りながら「うん」と頷く

 

「そういえば、名前の響きとかなんとなく似てますもんね? なのはさん達と」

「そっちの世界には、私もお父さんも行ったことないし、よくわかんないんだけどね」

「結構いいところだぞ? 自然もあるしな」

 

そんな会話をしている中スバルが何か思い出したようにエリオに質問する

 

「そういえば、エリオはどこ出身だっけ?」

「あ、僕は本局育ちなんで」

「管理局本局? 住宅エリアってこと?」

「「「「!!」」」」

 

エリオの回答にティアナ、キャロ、シャーリー、リョウの4人が何かに気付いたような顔になり、それに気付き頭に疑問符を浮かべる綾人

 

「本局の特別保護施設育ちなんです。8歳までそこにいました」

 

エリオの言葉をスバルが理解した頃に

 

<バカ!>

 

ジト目で睨みながら念話をとばすティアナを困った顔で見つめるスバル

 

それを見たエリオは慌てながら

 

「あ、あの・・・気にしないで下さい。優しくしてもらってましたし、全然普通に幸せに暮らしてましたんで」

「あ、そうそう。その頃からずっと、フェイトさんがエリオの保護責任者なんだもんね?」

 

暗い雰囲気を拭い去ろうと少し明るく話すシャーリー

 

「はい! もう物心着いた頃から、いろいろよくしてもらって・・・魔法も僕が勉強を始めた頃からは時々教えてもらってて・・・本当に何時も優しくしてくれて・・・僕は今も、フェイトさんに育ててもらってるって思ってます」

 

思い出を語るように話し出すエリオ

 

「フェイトさん、子供の頃に家庭のことでちょっとだけ淋しい思いをしたことがあるって。だから、淋しい子供や悲しい子供のこと、ほっとけないんだそうです。自分も『優しくしてくれる暖かい手に救ってもらったから』って」

 

話し終えるエリオ。それを聞いた綾人は

 

「母親・・・か」

 

とつぶやいた

 

「あの・・・綾人さんのお母さんってどんな人なんですか?」

 

先ほどの会話の中でほんの一瞬出てきていた単語をきいていたキャロが聞いてくる

 

「俺の母さん?」

「あ、僕も気になります!」

「私もかな」

 

エリオとシャーリーが食い気味に聞いてくる

 

リョウ、スバル、ティアナは何とも言えない表情をしているが気づかない

 

「写真データあるけど・・・見るか?」

 

綾人の言葉に全員が頷き、綾人は自分の端末を操作して1枚の写真データを展開した

 

「ほい、この人が俺の母さん・・・『天童 渚(てんどう なぎさ)』」

 

テーブルの真ん中に置きながら写真に写っている女性の紹介をする綾人

 

そこには長い黒髪に黒い瞳、小さな子供を胸に抱えながら柔らかく微笑む女性が写っていた

 

「うわぁ~綺麗・・・」

 

シャーリーの素直な感想

 

「この男の子、綾人さんですか?」

「ああ、俺が4歳ぐらいの時だな」

 

キャロが一緒に写っている子供を指しながら綾人に確認する

 

「ということは、12、3年前?」

「それぐらいだな」

 

シャーリーに答える綾人

 

「ずいぶん前の写真ですね・・・最近のは無いんですか?」

 

エリオの何気ない質問

 

「・・・・・・これが、一番最新の写真だよ」

 

綾人はそのまま爆弾を投下する

 

「母さん、もういないし」

 

周囲の時間が止まった

 

綾人は気にせずに続ける

 

「俺が5歳のときに、病気で死んじまってな」

 

再び空気が重くなる・・・

 

「そんなに気にしなくてもいいぞ? キャロ」

 

苦笑いしながら綾人はそう言うがキャロは少し泣きそうな顔をしている

 

自分からふった話なので責任を感じているようだ

 

「聞かれて困るなら最初から言わない。気持ちの整理はとっくについてる、淋しいと感じることもない。だから気にすんな。いいな?」

 

そう言いながら隣に座るキャロの頭を撫でるとキャロもコクンと小さく頷く

 

 

そんな微妙な空気も十分に晴れることもなく、午後の訓練は全員でフォーメーションの訓練、そして模擬戦を夜遅くまで行いその日は終了した・・・




どうも


綾人君の初訓練でした

どこかで見たことある? 私もですよ


ま、この小説にはこういう“どこかで見たことあるぞ?”というのがそこそこ含まれてますのでご容赦くださいませ


途中の説明は、私個人の見解です

是非は問わないでください


後半は綾人君の過去話・・・スバルとティアナ、リョウ、それとラウスとクリスは訓練校時代に聞いています

その時もこんな感じの空気になっていました


さて、次回予告・・・


訓練と通常業務にも慣れてきた頃・・・聖王教会からとある任務が言い渡された・・・

「異世界に派遣任務・・・ですか・・・?」
「うん。このまま何も無ければ2時間後に出発するから」

ミッド以外での初めての任務・・・その行き先は・・・

・・・・・・なのはや綾人の生まれ故郷・・・『海鳴市』だった

そこで出会う懐かしい顔ぶれ

「なによも~ご無沙汰だったじゃな~い」
「にゃはは・・・ごめんごめん」
「いろいろ、忙しくって・・・」

普段は見れない隊長達の素顔・・・


次回、『出張任務Ⅰ・いざ、海鳴へ!』


故郷では、どんな人間も昔に戻る・・・



次回からはサウンドステージのお話になります

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