なんか微妙な出来になったことは認めざるを得ない
――話は小一時間ほど遡る。
「なんでここにいるんだ赤き翼(オマエラ)、メガロをぶっ壊した主犯格ってことで元老院から賞金かけられてるって聞いたぞ。とっとと出頭しろよ」
「壊した主犯はテメェだろーが!? さらりとヒトに責任なすり付けてんじゃねぇっ!」
「世間的にはオマエラだろ」
なんでか知らんが、赤き翼の英雄未満の面子が王室の極秘来賓室にて待機していた。今や元老院自体の影響力は魔法世界一の最低値へと堕ちに落ち着いているわけだけど、こっそりとA級戦犯として限られた階級以上の者に通達が来ているこいつらの居場所が、こんなところでバレでもしたらヘラスの弱味にも繋がる。鬼の首を獲ったように喜ぶメガロの生き残った元老院のドヤ顔が目に浮かぶようだわ。
つうわけで、帰れーぇ。
「ついでに言うと最近耳にする山賊染みた行為、オマエラの仕業だっていう意見もちらほら出てるんだけど。雷の最上級呪文をぶっぱした痕跡が残ってるんだってよ」
「それだよ! 俺たちはそれの犯人じゃねえ! それを証明するためにここにいるんだ!」
「おそらくだけど、俺たちの名前を貶めるために誰かが暴走してるんだと思う。そうでなければ、赤き翼の代名詞でもある『雷系』で証拠を残す意味なんてないからな」
「言うほど有名でもねーだろ、お前らは」
一番のツッコミどころを指摘すると、赤毛と黒髪がぐうの音も出ない表情で顔を背けた。
原作の時系列じゃ戦果を挙げて、大々的に大手を振って歩けているのであったのだろうけれど、今や後ろ暗い逃亡者。どうしてこうなったんだろうね?
どうもこの英雄未満ども、オスティアの姫さんに伝手を頼ってわざわざヘラスまで身の潔白を証明しに来たらしい。のだが、正直潔白も何も、こいつらを必死になって追いかけているのは元老院ぐらいの暇人くらいで、広義においては“言うほど名前を知られていない”という前提があることを自覚していないようにも思えてくる。
先ほどこいつらが主犯じゃね?ということも口走ったけど、犯人が誰かよりは再犯を防ぐほうに重視している国境警備の面々。そういう“真相を暴こう”という仕事は国の上の方がウィスパードしているくらいのレベルで、本当に犯人であるかどうかというのは至極真面目にどうでもいい問題でしかなかった。
なかったけど、わざわざ語ることでも無いから黙秘でいっか。
「とりあえず犯人捜すってのはまあこっちとしては問題ないから許可くらい下りるだろ。で? 俺が呼ばれた理由ってなんなんだ?」
「うむ。それなのだがな」
前にも顔を合わせたヘラスの重鎮らしきおっさんが、こっそりと耳打ちするように俺の疑問に応えてくれた。
「オスティアのアリカ姫からの推薦状も持っていたので信用はしたいのだが、正直本人たちの過去的に今ひとつ信用ならん。丁度いいレベルの使い手をお目付け役に備えようとしたのだが、それがお前以外にいないのだ」
「おいこら聞こえてんぞオッサン」
ビキビキと赤毛バカがヤンキーみたいに青筋を立てている。が、知ったことではない。
それにしたってアリカ姫の実名付きの推薦状を持ってきているということは、姫直属の配下と見て間違いない立場の赤き翼。こんな不審者を配下にしている辺り、オスティアの姫さんの人格を若干疑う。原作の修正力なのか、はたまたそれだけ実力が認められているとでもいうのか。
それとも足を引っ張るためにわざわざこちらの国に派遣させたか? どういう意図があるにせよ迷惑なことをしてくれる。
「引率の先生役に更に年下を用意するって、人道的にどうなのよ?」
「お前がそんなことを気にするタマか」
「おっさんがやれよ」
「わしはこう見えても国の重鎮だから。こんなことで時間をとられるのは御免なのだ」
アリカ姫とやらの推薦状をぐいぐいと、互いに押し付けあう子供とオッサン。
「おめーらいい度胸してんじゃねーか……!?」
「ナギ、落ち着きなさい。私たちの所属するオスティアはヘラスと同盟を組んでいるのですし、一応は密命を受けている身です。騒ぎを起こすわけにはいかないのですよ?」
「でもよー……」
「…………そうだ! それなら模擬戦をしようぜ! コブシを交えればどんな人間かお互い分かり合えるだろっ?」
「おっ、いい考えだな! さすがはガチョーだぜ!」
「ガチョーって呼ぶんじゃねぇっ!」
ふざけんな脳筋。
押し付けあっている間に変な方向へと話題が進んでいる。そもそも俺は分かり合うつもりも端から無いので、その提案も正直犬の糞にも劣る。
「マリー、代わりに戦っておいて」
「う、うっうー……」(困惑)
「女子を前に押し出すとかそれでも男か!」
黒髪のガキにそんなことを言われた。が、提案したのもオマエラの一方的なものだし、そもそも俺がその話を飲む謂われも無いし。ついでに子供だから良いんですぅー。
間に挟まれたマリーはマリーで、若干引き気味であるのも仕方がない。戦えば首が落ちる(相手の)というのも理由かもしれないけど。
「こぇーのかよー、ヒューヒュー、ヨナたんビビッてるぅー」
「誰だヨナって。つうか魔法使いが隠密で戦うとか無理にも程があるだろうよ」
場所も暇も、此処には無い。素直に帰れば良いのにコイツら。
人を煽っても暖簾に腕押しだったことに不満だったのか、黒髪が舌打ちし、赤髪が腕を振り回す。
「難しいことは関係ねぇ! 要はどっちがつぇーかを決められればそれで良いんだよ!」
「良くねぇよ。やらねぇって言ってるだろうが」
「なんだよお前、それでも男か!」
「聞き分けねぇな、それでも年上か」
うざい。果てしなくうざい。
「まぁまぁ、スプリングフィールドさんも師匠も落ち着いて。怒っていてもいいことないですよー、スマイルスマイル♪」
「俺は別に怒っちゃいない」
「っ、お、俺も怒っているわけでもねーしっ。ただ、」
「ナギ。そこで言い訳を繋げるのも男らしくないぞ」
詠春さんの追撃にむくれて黙る赤鶏冠。というか、マリーに間に入られたとき、なんか顔が赤かったのは気のせいじゃないよな。
どうでもいいけど、こいつが男だってこと……、言う必要ないよな?
そんな微妙すぎる風景を余所に、懐のコインが救難のシグナルを発した。
× × × × ×
救難信号に駆けつけるはトライピースの、一番近い場所にいるらしい部隊長2人と副隊長。そう拾った情報にあったわけで、時間を合わせるようにまっすぐ飛んでゆく。
「こっ、これ速いな! 良く分かったなこんなアイテムがソーセイの蔵にあるって!?」
「俺もあるとは思わなかったよ」
ハングライダーみたいなマントをあまねだちとかいう金髪の異次元蔵から引きずり出し、赤き翼と俺の全員で個別に装備して飛び行く。マクロドライブで射出するのも考慮に入れたけど、隠密である以上それは着弾点が惨劇になるだけだから却下。何かないかと考えていたところに、前回の彼らの戦いを思い出し、不思議アイテムを収納しているのなら何かないものかと手を突っ込んでみたわけである。ちょっとくすぐったいぞ。
思いのほか用途に合ったアイテムをサルベージできて結果は上々であったのだけど、金髪君は中にこんなものが入っているとは思いもよらなかったらしい。まあ件の青い狸も全部を全部完全に把握している風じゃなかったみたいだしね、劣化四次元ポ●ットならそうなるのも仕方なかろうよ気にすんな。
それにしたって飛行能力もそうだけどスピードの出方が半端ない。このままならばル●アの処刑にも余裕で間に合いそうな勢い。あっ、斬月忘れた。
「――と、もう其処みたいだな」
「よっしゃぁ! ニセモノはどいつだーっ!?」
先に到着して制圧を仕掛けているトライピースらしき人物を目視で確認し、その俺を追い抜いて突貫してゆく赤鶏冠。
さぁーあ、夜会≪サバト≫の始まりだ。我は求め訴えたり!
× × × × ×
『――そんなに見たければ見せてやる。レリース、ショートカット“氷輪丸≪ヨルムンガルド≫”!!!』
『『『『『『『『『『『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!???』』』』』』』』』』』
気がついたら遥か遠方にて、氷の龍が暴れていた。
余りにも酷いキングクリムゾンに加えて、理解の範疇の外側の光景を目撃。典如が混乱するのも無理はない。
こうなった経緯を簡単に説明すると、完全なる世界の暴虐に立ち向かった典如を止めに入ったインキュバス、それを囮にソラと赤き翼の面々が参戦したのが数分前の出来事。その典如と集落の生き残りはナイスなタイミングで現れたファウストの采配によって異次元へと避難が成功した。
しかし、突然登場した原作にはいないはずのキャラクターを『ヨルムンガルドのヨナ』かと疑問に思い口に出したのが、完全なる世界のケントゥム。その寸前から知らぬキャラクターを挙げられていて理解の外であったソラが、そんなに見たければ、と術式を解放した結果が、これである。
ドーム状に覆う分厚い雲と、乱気流と雹と雷の絶え間ない奔流が典如のいる場所から遠目に見える。中に置き去りにされた何人もの襲撃者と救助隊が、纏めて嵐に晒され悲鳴を上げているのが良く見えた。
障壁も意味を成さないくらいの何某かを、ソラが仕掛けているのかもしれない。
うわー、と可哀想なものを見る目で遠い目をしている白と黒の翼状の何某かを背に携えている少女デイジィと、物言わぬ紙袋の長身の白衣ファウストが敬礼をしているのが、彼らの現状と未来を端的に表していた。
それを見て、典如もそっと祈りを捧げた。どうか彼らに安息が訪れますように、と。
× × × × ×
『――世界全てが敵、良いではないか。こちらの兵はたったの9人、だが最強の9人じゃ
ならば、我らが世界を救おう。我が騎士ナギよ、我が盾となり剣となれ』
『へっ、相変わらずおっかねぇ姫さんだぜ
いいぜ、俺の杖と翼、あんたに預けよう』
数日後、とある丘の上にてなにやら舞台染みたことをやっている集団に典如は遭遇した。
金髪の二股眉毛美女は見た覚えはないが、その他の面子は数日前の集落襲撃犯と一緒に吹雪と雷雨の嵐に蹂躙されていた赤き翼の面々である。行く先々で出会うのはともかく、こんなところで何を演劇みたいなことをやっているのかと、思わず胡乱な目で典如は彼らを見る。
『――他人の家の前で何やってんだお前ら』
訂正。彼女以外にも胡乱な目を向けるものがいた。
奥の方にある掘っ立て小屋に住んでいるのだと聞いて会いに伺ったはずの、あの日に遭遇した少年兵が件の小屋から顔を出し、10人程の男女に向かって愚痴を零していた。
『うむ。完全なる世界と名乗る連中がまたもや戦争を起こそうと躍起になっておる。そこで、それを阻止するための勇士を募ろうと、先ずはお主に声をかけに参ったのじゃ。手を貸してくれ』
『それが人に物を頼む態度か。帰れ』
小学校にも上がってないであろう少年が、歯に衣着せぬ物言いで二股眉毛の金髪美女の言い分を切って捨てる。
その対応が予想外だったのか、二股(以下略)はううむ、と唸り、
『何故じゃ? 世界を救うことはヘラスの安寧にも繋がるであろう? お主は戦争を止めるために戦い、弱きもののために立ち上がっていたと耳にした。またあの悲劇を繰り返さないためにも、もう一度立ち上がってはくれぬか? 今度は味方として、共に戦おうではないか』
『誰のことだよそれ、すげぇ鳥肌立ったわ
そういう観念的でご立派な大義名分はどうでもいいんだよ。問題は、俺が手を貸すことが当然みたいに勧誘に来ている現状だ。何も支払うものも提示しないで商品を要求とは不逞ぇやつらめ』
『そんな子供のうちから見返りを求めるような生き方は、正直どうかと思うぞ?』
『騙されねぇー、尤もらしいことを口にしながら俺に対する保障を口にしない時点で信用ならねぇー』
ある意味至極尤もな返答を少年兵に返されて、屈んで言葉を続けた二股(以下略)はちょっと困惑していた。
確かに言い分も尤もかもしれないが、女性の言ったように子供が口にすることではないのも事実。典如は事の成り行きをどう見計らったものかと、少しだけ途方に暮れる。
『おい! アリカ様が頼んでいるのだから応えたらどうなんだ!?』
『まぁ待てタカミチ、そう言えば身分を明かしていなかったな。ウェスペルタティア王国第三皇女、アリカ・アナルキア・エンテオフォシュアじゃ。好きに呼ぶとよい』
『そう。じゃあとりあえずアリカさん。帰れ』
頑なだった。
しっしっ、と手を払う仕草で掘っ立て小屋へと戻ってゆく少年兵に、最初に憤慨した子供が更に切れていた。
『~~~っ!!! なんなんですかアイツはっ!? 皆さんもなんであんな奴に好きに話させているんですかっ!』
『いやぁ、そうは言ってもな。アイツのキャラクターがあんななのは元から知っていたし』
『ああ、正直こうなるんじゃないかとちょっと予測してた』
それを宥める、というよりは火に油を注ぐような発言をするのが赤毛と黒髪の少年たち。数日前の余波の影響か、火傷と凍傷でボロボロなところを包帯でぐるぐる巻きになっている赤き翼は力なく笑う。
その彼らの後を継ぐように、タカミチと呼ばれた少年と同じくらいの少年が口を開いた。こちらもボロボロである。
『じゃが、奴の実力が確かなのも、身内に戦力として確保できれば最も安心できるのも確かなのじゃ。まかり間違って完全なる世界へすかうとされたりすれば、目も当てられん』
『帝国からも相応に信頼されているようですしね。しかし困りましたね。三顧の礼をしようにも今の私たちには時間もありませんし……』
女みたいな美形の男性が言葉に賛同しているところへ、丁度別の影が転移してくる。
その転移してきた人物は、軽く追い払われて若干傷ついている様子のアリカを見つけると、ずかずかと近づいてゆく。
『アリカ様! こんなところに居られましたか! もう会議を始められますぞ! 完全なる世界めに目に物を見せてやりましょうぞ!』
仲間、いるんじゃねーか。
『む、朱雀院か。少し待て、今頼りになる人物に伺いを立てているところでじゃな、』
『そのような何処の馬の骨ともわからぬ輩なんぞよりも我らのほうがずっと役に立ちます! ウェスペルタティアの魔導兵を、たかが傭兵と同列に扱うとは! アリカ姫は冗談がお好きのようですなあ!』
目が笑っていない。
なんだか強面の額の広い青年は、少年兵をdisりながらてきぱきと転移陣の構築を用意してゆく。それはアリカの周りのみに準備されており、他の赤き翼の面々すら彼にとっては邪魔者である。と口にしているようにも思えた。
『おいキリー、俺らの分の転移結界は?』
『話しかけるなゲスが。貴様らのような犯罪者もどきがアリカ様のお眼鏡に適うことすら苦痛なのだ。集閣会議には参加させぬからな』
訂正。実際思っているらしい。
これが王国の総意なのか、それとも彼個人の志向なのかはわからないが、赤き翼が大手を振って歓迎される状況ではないのは何処でも同じなようである。
『なぁ詠春、コイツぶん殴っても良いか?良いよな?』
『落ち着けバカ。姫殿下には疑いの目を向けられていないとはいえ、一応俺たちは指名手配中なんだ。そんな対応をされるのくらい当然だろうが』
『勘違いするなよ。指名手配犯であろうとなかろうと、お前らのことなんかゴミくず同然だと思っているんだからな』
『はっはっは、朱雀院は相変わらずツンデレだなー(棒)』
黒髪の少年が時代的に理解できないことを口走ったことを締めに、アリカは転移で消える。続けるように朱雀院と呼ばれた青年も消えていった。
それで少年兵の勧誘は今日はもう諦めたのだろうか。口々に愚痴をこぼしつつ、丘の上から去ってゆく赤き翼の面々。
以上の寸劇を終始目撃していた典如には、誰も触れないままに去っていった。
「………………見えてないわけじゃないよね?」
思わず自分が幽霊か何かになっているのかと、己の身体を見直す典如。ついでに自分に憑いている三匹の動物霊らにも、伺いの視線を向ける。三者三様であるけど、それぞれ問題ないよ、と応えてくれた。
そうしてとりあえずの準備をし直して、典如は小屋へと声をかけた。
「すいませーん、少々お尋ねしたいのですけどー」
× × × × ×
面倒くさい奴らを追い払った直後に、我が家へと現れたのは記憶にない少女だった。
年齢的には年上だから、少女と呼ぶには憚られる気もするけど。幼い感じはまだ抜けない様子なので、背も低いし少女で良いと判断して表現する。
つうか、いい加減この場所から引っ越したほうがいいかなぁ。と新たな住処を思案しかける。
「――で、先日集落襲撃の際に、助けていただいたものなのですけど……」
「ああ、はいはい。なんか御用でもあったかね」
銀河に思いを馳せるかのように、思考が明後日の方向へと吹き飛びかけていた俺を引き戻したのは少女の声。
それにしても普通だ。小学生にしては落ち着いているので中学生くらいかな、と見て取れるが、原作キャラでもないのに素朴系美少女としてキャラが立っているようにも見える。
それなのに普通って、どういうことなのかと問いたくなるけど。
「あの、失礼ですけど、貴方って旧世界の人……?」
「ん? なんでわかった?」
見た目年下であるからだろうか、彼女の口調はなんだか若干言い辛そうにも感じられる。敬語を使った方が良いのか、はたまた年下に対するので構わないのか。彼女自身判別に困っているようにも見て取れる。
こちらとしてはどちらでも良いけれど、どちらでも良いのでわざわざ口にはしない。
そんな彼女から出た次の言葉に、俺は思わず興味を惹かれた。
「貴方のオーラ?が、魔法世界の人にしては奇特で。なんだろう、守護霊が憑いている人が、そんな感じ……かな?」
オーラ。
心当たりは若干ある。
「……ひょっとして視える人?」
「うん。こっちの世界に来てからは私以外ぜんぜん見なかったから、ひょっとしたら、と思って……」
視える。つまりは幽霊とか亡霊とか悪霊とか――――――スタンドとか。
そう判別した俺は、背後にインストールドットを顕現させて、
「――何が、視える?」
「わ、え、えっと、カラス? 人型の……」
一瞬驚きつつも、しっかりと俺の背後へと視線を向けてそう断定された。
はい。確定。
インストールドットを仕舞い、茶を淹れた湯呑みを差し出す。
久方振りに興味を惹かれる客人が来た。
「まあまあ、飲んでくれ。下らない勧誘や苦言や感謝の言葉なら追い返しているところだが、少し話をしてみたい。一先ず名前を教えてくれ」
「あ、ど、どうも。えっと、典如です。祈 典如。貴方、は?」
「こちらは烏丸そら」
久しぶりに、自己紹介というものもした気もする。
「日本人だったんだ……。ソラ、くん? ソラさん?」
「呼びやすいほうで良いかな」
「じゃあくん、で。ていうかその歳相応に見えない話し方、ひょっとしてキミも神様に会ったクチ?」
「……否定はしないよ」
やはりこの娘も転生者か。多いな、この世界線。
「わ、初めて会った。同類の人」
「というか、オーラとやらで判別は出来ないのか」
「そっちの視覚は勝手に見えちゃうんだけどね。長い付き合いだし、一応は見ないように制御かけていたんだ。見えるとその人の心の中まで、ある程度の思考の方向性が見えてくるから、向こうにいたときはちょっと人間不信気味だったなぁ」
人間不信の割にはよく喋る。
「俺をひと目で判別つけた、ってさっきは聞こえたけど?」
「ソラくんのは、見ないようにしていたのに見えちゃったっていうか。目を逸らしてもオーラの種類が丸わかりだったから」
「種類?」
「憑かれてるタイプの人」
スタンドは悪霊扱いですか。何処かのガクランの牢屋住まいを思い出す。
つーかさっきと言ってるニュアンス違ってないか。
「私も動物霊に憑かれているから。あ、心の方までは見てないよ。ていうか、こういう憑かれている人は別のオーラで覆われているから、本人のまで見えないって言うのもあるけど」
「本物のサトリじゃないだけマシかねぇ。つうか動物霊? 見覚えないのはそれが原因か?」
見覚えのないという言葉に苦笑いの典如。
いや、実際あの場に居たと言われても見覚えないから仕方なかろー。
「あのときはオーバーソウルしてたから……」
シャーマ●キングか。
心を見透かす、というのも似通っているし。ひょっとしてそれが特典かね?
……俺の特典って、そういや結局なんだったんだろ……。スタンドは使える奴結構いたし、ATフィールドは心の壁だし……。
思わず心中で浮かんだ疑問に悩まされるも、典如はこちらの心中には気付いた様子はない。
こっちが黙り込んだのを自分が要因なのかと思ったのか、
「じゃ、じゃあちょっと見せてみようかな
――オーバーソウル! 赤目嵐!」
そう言って、背後から現れた兎耳の怪物を自身へと纏わせ――っ! ほほぅ……。これは見事なバニーガールだ……。
肉感的には大分物足りないけれどもコレはコレで尚良し。思わず目が釘付けになってしまうのも仕方ないかと思われる。
つうか、俺ってなんかつくづくこういう兎に縁があるような。俺の嗜好を的確に突いてくる奴ばかりと出会うのは、どういう運命なのだろうね。
「赤目嵐は私の体毛を素体にしていてね。近接戦が得意な状態かな、これで」
「強化外骨格みたいな状態か」
「きょ……? うん、まあ、よくわからないけどそういうこと、かな?」
おい。本人が一番わかってないっぽいぞ。
つうか、若干俺の知ってるオーバーソウルとは別物に思えるのは気のせいなのかね?
~氷輪丸≪ヨルムンガルド≫
氷の精霊を召喚するのではなく、天候操作でもなく、天候再現の術式。中心に聳える氷の龍は赤いギャラドスもビックリな電波塔の役割を持ち、そこから半径数百メートルに渡って吹雪と雷雨の豪風雨、某天空の城の映画に出てきたような“竜の巣”を3時間~半日ほど再現する空間を展開する
氷の龍は術式の核である使い手を守るシェルターの役割も兼ねており、ちょっとやそっとの攻撃では傷一つ付かない。また、変化したフィールド内は魔力ジャミングまで展開しており、“闇の魔法”に匹敵する掌握術式を備えていないと魔法を使うのもままならない。障壁もほぼ無効化されるので、筋力だけで突破する必要性が出てくる地獄みたいな3時間
ちなみにルビがこうなったのはデビ●ルのヨルムンガルドが氷属性だった、というしょうもない理由
~朱雀院キリト
本名、クラディール・オ・レンジ。魔法世界人で転生者
どういうキャラなのかは、名前で察して欲しい
~典如たんprpr
書き込み多かったから再登場。以後もまだ登場予定
口調が安定しないのは仕様です
なんだか長ぇし尻すぼみなry
スランプなのかなー…
好きな話を書いているはずなのにちょっと前へと進まない
書く必要性があるのに面白くない部分ばかり進めているからかも知れん
心機一転してかなりくだらないギャグでも書きたい所存