ネギまとかいっこうに始まる気配がないのだが   作:おーり

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書かなきゃ(使命感)


『永遠のときを超えてぇ』

 

『アイロウ、I Look on Laughing! こんにちは! JOL海賊放送のお時間です! ノアキス亜大陸は木精樹海のとある集落へとお邪魔しているワタクシことリポーターですが、こちらの天気は今日も快晴! 畑仕事にも精が出る盛況ぶりに流す汗もキラリと光ります! 本日は出荷予定だったトマトの食レポを執り行う予定であったのですが予定が未定なのはこの業界当然のこと! 私も鍬を片手にお仕事へといってまいりまーすっ!』

 

 

 懐に仕舞ったコイン(金貨)から、元気にカラッと気持ちの良くなりそうな女の子の声が響く。実はコレ正確にはコインの形を取った最小規模の受信機で、ふちの部分はラジオの音量調節みたいな機能がついている。

 問題は放送局と中継点が少ない魔法世界にどうやって広めようかと思考を捏ね繰り回していたのであったのだが、ふとしたことで知り合えた戦争仲裁機関のコネを片手に最低限、ヘラス領全土へと受信機と中継機を用意してもらうことでなんとか一般への普及も及んだわけである。

 

 いきなり何の話かと問われそうなので、それに及ばざるを得なくなった開発事情を語るがその前に、これを普及するに当たって最低限必要であった基礎情報を暴露させてもらおう。

 

 今からひと月も満たないくらい前のこと。

 戦争は終わった。

 

 ヘラス帝国の最大の対立者であったメセンブリーナ連合の主国であるメガロメセンブリア、そこを極小の流星が降り注ぎ国自体を壊滅の危機に陥れたらしい。

 というか時系列を見て、俺がメガロに向けてぶっぱした赤き翼の面子の弾丸が直接的な原因じゃねえのかな、とも思ったけど黙っておいた。

 それはともかく、さすがに自国が壊滅してまで戦争をする余裕はなかったようで、生き延びた連合の属国からの停戦を望む声を聞き届けたヘラス帝国は、戦災復興の援助に手を貸す代わりに『二度と喧嘩を売るんじゃねえぞアアン?』と確約。

 帝国の勝利という形で、魔法界を二分した分裂戦争は幕を閉じた。

 

 当然戦争なのだから、先も語ったようにその後、復興事業が最優先と成ってくる。

 俺も手を貸すことに吝かではないのだけど、正直魔法開発とかなら分野だったのだけど、復興事業に俺自身の手がどう必要なのかは見通せなかったな。前世で(魔)改造したダイオラマ魔法球がそのまま手に出来れば、かなり役に立ったのだろうけどなー。今の俺ではあそこまで大規模な改造するには時間が足りない。試行錯誤が少ない分、前よりかは時間はかかりそうではないのだろうけど。

 ともあれ最低限必要なことは情報であろうか、と思った俺は一般にも普及できる情報媒体としてラジオもどきを魔法界中へ散布。電波ではなく念話を媒介に音を乗せて、広域にそれこそ格差のないように情報の拡散を実行させてみた。

 一応魔法界にもテレビ的なものはあったのだけど、ほら、テレビじゃ放送する人の情報選別がやっぱり上の方で色々シャットアウトされる部分が生まれるからね。生の声を広げて絆を生むって、超大事よ。

 

 合言葉はアイロウ(私は笑っています)、と最初に言い出したのは誰だったのか。

 帝国領中に広がった公認の海賊放送は、今日も聞く人へと笑顔を届けています。

 

 

「――と、聞くといい話に思えてくるから不思議なんだけどな」

 

 

 その裏側では涙を飲んだ英雄未満がいることを、俺は知っている。赤いなんとかとか、黒いなんとかとか、完全なるなんとかとか。

 まあどうでもいいのだけど。

 

 さてそんな俺が、何故かヘラスの王室へと御呼ばれしているわけであるけど。

 

 ――なんで?

 

 

「やることは大概やったし、貰った褒章分の働きくらいは見せたはずなんだけど。………………ひょっとしてあれかな?」

 

 

 思いつくことと言えば、件のラジオもどきの情報の現状にある一部の不明点。

 シルチス亜大陸を覆うはずの情報ネットワークに、一部欠損が見える部分がある。気になって調べたトライピースの情報によれば、曰く集落の消えた跡がある、焼け焦げた雷系魔法の痕跡がある、山賊が横行している可能性が微レ存?

 ひょっとして山賊狩りでもやれとでも言われんだろうか。俺は直接戦闘は専門じゃないから、そういう話を持ってこられてもお断りするしかないのですけれどー?

 

 そんな迂遠な思考をしつつ、なんでか呼ばれた内密のO☆HA☆NA☆SHIをする用のお部屋へと案内され、まいどーと踏み入れる。

 ガッ、と侵入早々に頭を鷲掴みにされた。

 

 

「――あ?」

 

「ぃよーうクソガキ、久しぶりだなぁ……!」

 

 

 ビキビキと青筋を立てた赤い鶏冠のナギスプリングフィールドが……、ってああ、

 

 

「なるほど。最近の山賊もどきはオマエラの仕業か」

 

『なんでそうなるっ!?』

 

 

 部屋中の英雄未満に総出でツッコまれた。解せぬ。

 

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

『おおぅ、なんという巨大なトメイトゥ……! 収穫祭というには若干早すぎるのではないでしょうか。しかし私はあえてこれをいただきます! 微妙に大味に見えますが甘さも酸味も弾けるフレッシュでまさに奇跡のトマトと叫びたくなる美味さ! 甘ーーーい!!!』

 

 

 懐のコインから囁かれる何処かの芸人みたいな少女の声を聞きながら、背の低い少女は森の中を進む。

 一般に見る冒険者のようなアクティブな出で立ちは歳と肉付きから一見すると少年のようにも思わせるのだが、程よく伸ばした茶色がかった髪と上気して赤みがかった頬に柔和な垂れ目が相俟って少女らしい顔立ち。相乗効果のお陰でようやく少女と認識される年頃の少女の名は『祈 典如(いのり てんじょ)』といった。

 典如の傍らには四肢の無い馬が背後霊のように付き従い、彼女の手には角材のように成っている鉄の棒が携えられている。

 そんな彼女は、この森で狩りをしている最中であった。

 

 彼女自身、出身は魔法世界ではない。

 突き詰めれば転生前の平成の世であるのだけれど、昭和の日本においては彼女の持つ異能(転生特典)は異常に映りすぎたらしい。

 人の心を微弱に読み取れる彼女の異常性を恐れた家族は彼女を売り払い、売られ流れて魔法世界へと流れ着いた彼女を待っていたのは奴隷の身分。何も悪いことをしていないのにこんな身分へと落とされたことを、こんな運命に仕組んだと思われる転生させた神とやらを恨んだ彼女であった。

 だが奴隷として売られた先の集落では、懐いてくる幼い少女もいたことでその無益な恨みはとっくに解けた。付き従うように付随した『才能』で生き残るための実力も得ていたし、自らの立場を脅かしていた戦争が終了したことで、元々自身を脅かさなかった集落への恩返しを兼ねて、彼女は今日も貢献することを生活の一部へと委ねている。

 

 彼女を取り囲む部族は肉食をあまり必要としない。しかし、部族であっても一部のものにはある程度は必要なものであることも否定できない。例えば成人未満の小さな子供だとか。

 そんな子供たちの成長のためには、森にとっては必要である幾許かの獣を狩り獲って栄養とするのも致し方ないことである。無論典如自身の身体の成長のためにも。

 しかし部族のものは獣を森から狩り獲れないという特性を併せ持つらしく、必要なことを実行できない役割を外部の、部族以外の信用の置ける者に任せる必要性があった。

 以上の理由から、典如はこの森の狩人役を担っている。故郷の日本では疎まれていた彼女は、此処では必要とされている。それもまた、彼女の意識を改善の方向へと導いた要因であったのかもしれない。

 

 そんな彼女の手にも受信端末がある。

 戦争仲裁機関の持つ普及率はいったいどれほどのものかと、この場にメタな見方をするものがいれば驚愕したのであろうか。というか発信で言っていた集落というのは、間違いなく典如の携わっている集落である。

 己の知るところが、彼女の好きな人たちのことが紹介されて自然と彼女自身の表情が綻んでいる。

 それを見ていて、彼女に付き従う馬も、何処か嬉しそうな表情で幽かに嘶いていた。

 

 ――そんな折、

 

 

『――ガッ、ガガッ――!』

 

 

 ふと、受信機の様子がおかしくなる。

 電波を受信しているわけではない、と説明を受けていた彼女にはあずかり知らない、不明な理由が発生する音声を異常に高鳴らせる。

 不審に思った彼女は、手にしていた鉄の棒を傍らの地面に刺し、懐から取り出したコインの音量調節を弄くってみた。

 途切れ途切れに囁かれていた音声が、悪意の染み出るような甲高い音へと変化する。泣き叫ぶような音の濁流がいくつも響いた後に、ようやく聴こえる声がコインから流れてくる。

 

 

『――助け、て――っ!』

 

 

 その瞬間、

 

 典如は踵を返して、己の知る集落へと駆け出していた。

 

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「――ふん、こんなものか」

 

 

 集落の大人たちを焼き払い、セクンドゥムが愉悦の貌を浮かべつつ嗤う。

 一時はどうかと思ったが、こうやって少しづつ回帰させてゆかないとやはり追いつかないらしい。リライトを使えるんなら初めっから使えよ、と言いたかったが、同じ組織に属するようになってなんとか理解した。要するに完全なリライトを扱うには出力不足ってことか。造物主も詰めが甘いというか。

 

 

「どうしたケントゥム。手が止まっているぞ」

「――いや、世の中ままならないものだなと、少し感傷に浸っていただけだ」

 

 

 プリームムの疑問の声に応えつつ、迎え撃ってきた他の有角部族をカットし、即座に完全なる世界へと送る。こいつらの一族の末裔である調だかブリジットだかの少女は予定では本来の時間軸に出現しているはずだが、このままだと参戦せずに退場することになりそうだ。まあ運が悪かったと思って諦めてもらいたい。

 

 ネギまの世界に転生し、完全なる世界のオリジナルキャラへと転生を果たした俺ことケントゥム。正確には他の人形連中と違い、人間を素体にした真祖の『なりそこない』だ。

 あの漫画の到達点に納得がいかずに改変を始めたが、その影響じゃないよな? 赤き翼が言うほど有名にならずに、しかもメガロ側が敗北して戦争が終了しやがった。

 おかげさまでもう一度戦争を始めるためにヘラス領内で火種を燻らせる役割だ。ついでに、増えていたおそらくは他の転生者と思われる赤き翼内の戦力に対抗して、2番目も早々に起動させたけれども、どうにも他にもイレギュラーが混じっている可能性がありそうな気もする。なんでアスナがヘラスで捕虜みたいな扱いになってんだよ……。

 まあ造物主自身が活動しているお陰で、個人所有の極小範囲リライトは問題なく発動しているから、アスナが手元にいなくても今のところは問題ないが。

 むしろ有り得そうなのはもっとヤバイ問題だ。ジャック=ラカン付きの赤き翼を脅かせる戦力が、ヘラス側に眠っている。そんな可能性だ。

 それって、普通の転生者じゃないよな。……まさかエヴァンジェリンがいるとか、言い出さないよな。

 

 

「――鋒吹丸っ!」

 

 

 ふと浮かんだ懸念に思考を流されつつ、打ち出されてきた角材みたいな鉄の棒を切断(カット)で弾く。

 思考しながらもしていた仕事の先には、躓いて逃げ惑う少女の姿があった。助けようとした誰かの攻撃? それを今弾いた。

 誰だ?

 

 

「っ、これをやったのは、お前らか」

 

 

 少年みたいな口調の少女。

 現状に怒り心頭なのは間違いない。

 しかし背後に従えた、四肢の無い馬みたいな亡霊染みたあれはなんだ? アレが今の『魔法ではない攻撃』の正体か?

 

 

「そうだ」

 

「なんで、こんなことをしている……っ!」

 

 

 ん? こいつ、転生者とは違うのか?

 このタイミングでやってきて、有角族ではない様子なのにそれを助けた。だから此処がどういう世界なのかを知っている敵かと思ったが。

 

 

「必要なことだからだ。離れていろ女、貴様に用はない」

 

 

 組み込まれた指令(コード)には人間は殺傷不可とある。俺はそれを無視できるが、一応の命令権は未だ造物主のものだ。

 だからこいつも現実世界人、そう判断したが。

 

 

「っ! オーバーソウルっ! 赤目嵐っ!!!」

『がってんでさぁ典如の姐御っ!!』

 

 

 ほう。

 その名称を扱う、ということはやはり転生者か。原作知識が無いとは珍しいが、敵であることに代わりは無さそうだ。

 

 少女の叫びと共に現れた兎の化け物が受け応え、いつの間にか肌蹴ていた少女の身体に鎧のように毛皮を覆う。恐らくはそれが彼女自身の最強の戦闘形態なのかもしれない。

 覆った毛皮が髪と同化し、ケモノノヤリみたいに髪を伸ばして兎の毛皮の少女が生まれる。手には短めの斧を構えて、手足も毛皮で覆われて本物の兎以上に凶暴性が垣間見える。

 むき出しになった攻撃色は俺へと向けられている。お陰で、『人間に』手を出せない1号と2号は静観を決め込む腹積もりらしい。

 

 

「……叩き潰す……っ!!」

 

「やってみろ」

 

 

 マントを翻して爪を構える。目は彼女のものみたいに赤く、血のように染まっていることだろう。要求したワラキアの攻撃能力を確保している俺の、今が本領戦となるのかもしれない。

 

 ――そこへ、

 

 

「ノーーーーーッ!!!」

 

 

 ………………なんか、胡散臭い外国人みたいな発音の男の声が聞こえた。

 若干の胡散臭さを感じつつ、声の聞こえた空中を見上げ、少女も意気を削がれたらしく、少々呆けた表情で声の方向である空中を見上げた。そこには、

 

 

「ノー、ノノノ、ノーデースっ! 喧嘩はノー! 心が荒む、仕方のないこと、デ!モ! そんなときこそ落ち着いて! 戦争を止めることが人類の第一歩なのデースっ! 戦争を止めるためにーっ! そんなときこそ私を見てぇーーーっ!」

 

 

 ………………………………………………なんだ、あれは。

 

 

「何のために生まれてー、何のためによろこぶー、わからないままおわるー、そんなのはノーっ! イッコールっ! それこそが美しいもののためにある唯一の時間っ! 美の鑑賞こそが人の世の真理っ! 今こそ私の真のお披露目っ! 今こそ素晴らしき造形をっ! 最高の芸術をっ! 貴方たちの網膜に焼き付けるのデースっ!!!」

 

 

 ひと叫び毎にポーズをくねっくねっと変化させる、ふっさふさの長髪に薔薇を一輪咥えた優男。そんな『変態』が、空中にて踊っていた。

 もう一度尋ねたい。なんだ、あれは。

 

 

「………………………………………………なんだ、おまえは……?」

 

 

 吐き気すら覚える表情で、少女が泣きそうな声で尋ねていた。俺も立場が違っていたらそうなっていた可能性が大で。

 

 

「!!! ンーーーフゥーーーっ!!!」

 

 

 そして、その変態は尋ねられたことにいっそうの喜びを見せ、くるくるくると回りながら地上へと降り立った。多分、喜んでいる。そんな声音だった。

 

 

「よくぞー、よ、く、ぞ、尋ねまーしたー。そう、ワタクシこそ、地上に降り立った天使の末裔!」

 

 

 叫び、掲げて絡めている両腕を解き、片手を伸ばしてもう片方の手を腰に当て、ポーズを決める。

 

 

「愛と! 美の! 麗しき楽園(エデン)よりの使者!」

 

 

 ひと叫びごとに、バッ、バッ、とポーズを変え、それにあわせて背後に佇むモヒカンのナニモノかが連動して同じようなポーズを決めていた。というかいつの間に現れたそいつら。

 

 

「インキュバスとは、ミーのことデース~」

 

 

 見ているだけで胃凭れしそうな、そんな粘りつく声音が彼女の近くで囁かれた。ご丁寧に薔薇まで差し出されて。

 やめてやれ。もう少女は泣きそうだ。

 

 

「――もっとマシな変態はいなかったのか」

 

 

 ――そして、それが陽動であったと気づいたのは、そんな幼い少年の声が聞こえた。実に遅れまくったその瞬間のことであった。




~アイロウ
 ラジオガール。続きは無いのか

~トライピースの情報
 報告、ではないのがミソ

~祈 典如
 ネギまを知らなかった転生者。漫画の世界に転生できるよ、と唆されて『友達を作れる縁が欲しい』というささやかな願いを曲解された哀れな少女
 友達を作るにあたって信頼できる相手を得るために人の心を読み取れる能力を付加、更にはその延長線である死んだ命との交渉能力も得た。お蔭様で友人となった3体の動物霊、馬の鋒吹丸、兎の赤目嵐、犬の雪房。それらを自身に宿らせて戦う才能まで得たシャーマン系少女。ジャンプは読んでいたらしい
 身長は148。小柄で年は中学生くらい。典如たんprprと書かれると再登場させるのも已む無しと思われる。というか主人公レベルで登場する可能性が大

~ケントゥム
 ネギまの続編だと聞いて期待しつつUQホルダーの単行本を購入、あんまりな内容にコミックスをブックオフへシュゥウーーーッ!超エキサイティン!していたらバイトの店員をやっていた転生神に、じゃあお前が変えてみろよ、と転生させられた少年
 ワラキアのメルティブラッド的な能力だけと言っていたけど、正確には誰かの従者になることでより強くなれるサーヴァンプ的な性質持ち。教えてやってよ造物主

~インキュバス
 ニコポを要求し、鏡の前で笑顔の練習をしていたら「なんだこの天使!俺か!」と惚れまくって脳内も暴虐的に犯された自爆系転生者。スペシャルなナルシストに変貌を遂げた彼の中には最早原作知識とか無いようなもので
 こう見えてトライピース・愛の部隊部隊長。世も末



ごめんね、文章なんか可笑しいけど、次回へ続くんだ

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