ネギまとかいっこうに始まる気配がないのだが   作:おーり

4 / 13
なんだかいい感じのものが出来上がりました
せっかくなので一般に移します


『教えて欲しいですぅ師匠!』

 

「斬撃再現術式である四閃三獄は自分の扱える軌跡を再出現させる代物だ。間合いのうちに対象が入っていれば防御をすり抜けて結果だけを見出せる。但しあくまで再現でしかないから、軌跡を見破られれば防御もされるだろうし、自分自身を守れるわけでもない。ま、結局のところ魔法使いに必要なのは機動力っていうのは“コレ”でも間違いはないってことだなー」

「それで瞬動術ですかー?」

「残念ながら俺はそっちの体術は聞きかじった程度しかないからな、正確には『縮地』を覚えてもらう。居合いとか無拍子とかと同レベルだ、体術というよりは技術の範疇だよ」

「縮地って、確か師匠の出身世界の言うところの究極技法では……」

「大袈裟だな、やろうと思えば猫でもできるぞ。大地を星を一個の自分以上の存在として認識して、それに押し上げてもらうのがイメージだそうだ。大体自分ひとりの力でなんでもかんでもやろうとするのが間違ってんだよ」

「イメージでどうにかなる技法ですか」

「イメージの力舐めるなよ? 格闘が趣味の学生に等身大のカマキリと生死を賭けた死闘を繰り広げさせるポテンシャルを秘めているんだからな、イメージには」

「イメージの力って凄いですー……」

 

 

 そんな会話をしたのが体感時間で大体6年前。騎士勲章と同時に褒章で貰った『体感時間を72倍に延ばす幻想空間幽閉型巻物』に篭もりっきりで外で一ヶ月ほどかけたことになる自身の調整を執り行っていたのだが、どうやらその一ヶ月の間に色々と事態が進行していたらしい。

 修行というよりは技術と術式を照らし合わせる措置であったのだけど、転生し直しているわけだから肉体の効率的な動かし方とかの確認をする時間は必要であったので、肉体を衰えさせないための処置が欲しかった身としては要求が通って万々歳であったのだが。

 必要な処置を取り揃えて外に出たら悠々自適な生活ができると思っていたのに、またもや厄介ごとでござる。

 

 オスティアを侵攻しトリスタンとの国境となるグレートブリッジを崩落させた影響は戦果に響き、ノアキスやシルチス亜大陸なんかをも領地下とすることに成功したヘラス帝国は、実質連合が崩壊したメガロ正規兵らを退去させることに成功していた。

 領地とか支配とかとこちらの政策に口を酸っぱく文句を言う、王権に馴染みがないわけでもなかろうにヘラスのやることをいちいち気に入ってないらしいメセンブリーナ連合の旧世界側の魔法使い陣営は、実質自分たちの連合圏内(と言う名の支配域)に含まれているエオス・トリスタン・オレステス・クリュタエムネストラ等と首都を執り成しているメガロメセンブリアで同盟を組んでいるのだが、戦争をやるには人手が足りない・物資が足りない・勝率が低い、と色々な過不足に陥っていて完全に負け戦な状態であった。

 あった、のだが、そこに投入されたのがナギ=スプリングフィールド率いる『赤き翼≪アラルブラ≫』。彼らの戦力は前線を鼓舞し、最早敗走しか手がないかと思われていたメセンブリーナ連合の意気を揚々と上げた。要するに戦争に勝てるかもしれない、と兵士らに思わせる役割を彼らは担っているのである。

 それに対してヘラス側はというと、魔法世界最古の王国であるオスティアを庇護下という名の実質同盟にまで漕ぎ着けることが出来、必要最低限の支配域も確保したことにより亜大陸内に点在する亜人の集落を庇護下へと引き戻すことにも成功している。中立を謳うアリアドネーを支配域へ引き込むつもりは端から無いし、ボレアリス海峡を飛び越えて龍山山脈まで手を広げる意味も特に無い。必要なものは大概揃え終えているので、これ以上戦争する意味が実は無い。

 正直王家側のモチベーションはこれといって上がっていなかったのだが、オスティアを逆侵攻されたりヴァルカンやニャンドマに戦火が飛び火したりと、領地を奪還されてまでは居らぬが迷惑を被っているのも事実。負けていたのだからそのまま負けて終わらせれば良いのではないかな、と青筋を立てる帝国に未だ喧嘩を売り続ける縮小しているメセンブリーナ連合。

 そして調子に乗り続ける赤毛とその一派。

 

 そんな奴らに対処を頼む、と出所早々依頼を持ちかけられた俺がいた。

 

 

「実質、やつらのやっていることは戦争を無駄に長引かせているだけの迷惑行為でしかない。というか戦場で二つ名を自分から名乗るような恥知らずどもに粛清をかけるのは、停戦を持ちかけているこちらからとしても間違ったことではないと思うのだがな」

「勝っている方の理屈だろうけどね、それも。というか、アリアドネー側からも要請引き受けた旨が届いているらしいのに、更に俺に何をしろと」

 

 

 実情中立であるはずのアリアドネーが影ながらに今回の粛清作戦に戦力を投入しているわけだから、やっぱり赤毛はやりすぎなんだろうなー。と一ヶ月ぶりのまともな食事をしながら、青筋立てたおっさんの憤慨する様を見つつ請け応える。

 肉に野菜・魚に果実に穀物、あるだけ持ってきてほしいとテーブルに並べさせて某自称海賊王のように端から端へと手を伸ばす。いや、仮想空間内とはいえ一ヶ月篭もっていたらさすがに栄養が足りなくて。

 むしろよく死ななかったなと一度あの空間自体を詳しく解体ゲフン解析してみたいとスクロールに意識を向ける。間借りしているスクロールの精霊がビクンと跳ねた姿を幻視した。

 

 

「キミは今回の戦争での立役者ではないか。それと騎士勲預もしているのだから少しは力添えをしてもらわねばこちらとしても困る」

「ふーん?」

「できればというより、実質対抗できる戦力がキミしか見当たらないのも事実なのだ。地雷屋よ、頼む」

 

 

 何かきな臭い匂いが漂ってきているような? 微妙に芳しい気配に穿ったような目を向けてしまう。

 こちらの姿が子供だからか目線を下に向けられるのはまあ仕方ないかな、とは理解するけれども。

 

 というか、前から思っていたのだけどなんで俺ジライヤとか呼ばれてるわけ?

 誰がニンジャだ。何でニンジャだ。

 

 

「請け負うのも吝かじゃないけども。気が乗らないなー。正直俺って前線向きじゃないし」

「まあまあ師匠、顔を出してもいいのではないですか? 懐かしい顔ぶれもいますし」

 

 

 請けたくない空気を醸したところで、マリーが食事を運んできた。

 このメイド、ヘラス皇室に幼少期の家康みたいに囲われているアスナ姫の御付きをしているらしい。なので以前にスクロールに入ったときも三日で先に出て行ったわけだが、今微妙に気になることを呟いたような。

 

 

「懐かしい?」

「あれ? アリアドネーの選抜は見てないのですか?」

 

 

 言われて、おっさんにメンバーの詳細を確認。

 

 あー、ははは。これは確かに懐かしい。

 

 

「なるほど。いーよおっさん、この仕事請けた」

「おお! やってくれるか!」

「まあ、見る限り現地集合みたいだし、いちいち集まって符丁合わせてとかめんどくさい外袷が無いらしいしね。元々個人主義だからそういう点で気になってはいたんだ」

「ああ。それは詳細を語れなくてすまんかった。相手が相手だから軍を動かすのは目立ちすぎてな」

 

 

 要するに今回のは暗殺モドキだ、と。

 集合地はニャンドマの最前線。個人プレーの目立つアラルブラを寄り良く動かすために、メセンブリーナは本人たちを割と好き勝手に最前線へ投入している。

 今回もこの一ヶ月の戦果と同じように投入されているので、そろそろ本気で逆侵攻が始まる前に対処を施すべきだというのが本作戦だ。

 

 こちらから対抗するのは、俺以外にはアリアドネーの中立組合から三名の実力者。どれもが知った顔であるので、久方振りに同窓会モドキと洒落込みますかね。

 ところで、

 

 

「ところでそろそろ甘いものが食べたいなー、と」

「はーい。用意してありますよー」

 

 

 と、マリーから「以前にお師匠さんから聞きかじった旧世界の甘物ですー」と言われつつ突き出されたのは、バケツいっぱいの砂糖水。

 お前俺のこと嫌いか?

 

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「下からシッ↑ツ↓レーイ↑ッ!」

「「「「うおおおおっ!?」」」」

 

 

 戦の前に腹ごしらえとでも言いたかったのか、鍋を囲んでいたアラルブラの面々に真下から突貫かけたのが紙袋を被った大男なのだから、そりゃあ驚きもする。

 鍋を掴み、海面を跳ねるシャチのように地中から飛び上がっていったのは、3メートルに匹敵する大男。但し無駄に手足が長いだけで筋肉はそこまで比率良くはなっていない。背中に抱えた2メートルの赤い大メスが白いスーツと相俟って医者のイメージを髣髴とさせる。実際医者でもあるのだが。

 

 

「なっ、なんだてめぇはッ!?」

「あんたらを刈りに来た。刺客みたいなもんだよ」

「はっ!? んっ、なばぅっ!?」

 

 

 二人目。勇んで立ち上がった黒髪の少年に、じゃらりと鎖が巻きついて高々と放り投げる。

 鎖の出処は背後の森で、放り投げた人物は赤い和服を肌蹴させたポニーテールの赤毛の女性。纏めるところが若干長いために、朝倉みたいなパイナップルヘアではなくてちょんまげみたいな髪型になっているのが目を疑う。

 彼女は袖口から、次々と鎖を吹き出してはアラルブラの面々を捕縛しようとしているが、さすがに実力者相手には大体かわされてしまっていた。しかし吹き出す鎖が無限過ぎる。一向に終わる気配がない。

 

 

「刺客だと? ふんっ、一体何処から来たというのだ。我らは目をつけられるようなことは一切してない!」

 

 

 原作では見たことのない、金ぴかの鎧で着飾ったなんだか勘違いっぽい空気を醸している少年が偉そうに踏ん反り返っていた。黒髪のも見たことなかったけど誰だあいつら。

 あ、あいつらがこの世界線の転生者か。たぶんそうだな。

 つか一人称が我とか。アイツ絶対口癖が愉悦だぜ。ゲートオブバビロンとか使うんだぜ、きっと。

 

 

「その台詞、よく自身の胸に手を当てて考えてもらえませんか?」

 

 

 赤い和服の横から出てきたのは、背中に白と黒の翼を携えた尻尾の生えた少女。こちらは青い髪色でロングヘア、纏った空気は深窓の令嬢を思わせる。

 その女性が出てくると赤毛の女性も舌打ちし、噴出させていた鎖を全て切り離す。放り投げられた黒髪はそのまま逆さに地面へと墜落したが、誰も気にかけることはなかった。

 

 

「今日和、アラルブラの皆様。私たちは本日、今回の戦争の中心点である貴方方を排除するために赴いた者達です」

「戦争の中心だぁっ!? ふざけんな! 俺たちはオスティアを奪回するためにこの戦争に参加してるだけだっ!」

 

 

 青髪の少女の言い分に噛み付いたのはリーダーと思わしき赤毛の少年。原作から鑑みるにアレがナギなのだろう。本当にこの時点ではガキにしか見えない。

 

 

「そのオスティアを奪回し、その後は本当に戦争を止めるのですか?」

「帝国が向かってこなけりゃ終わるだろうが!」

「いえ、それではヘラスも納得がいきません。延々と終わることがない戦いが続くことになります」

「俺たちに言うんじゃねーよ! 帝国が諦めればそれで終わるんじゃねーか!」

「それをメセンブリーナにも言ってやりなさい。そもそもグレートブリッジを陥落された時点で負けたと認めていれば、此処まで戦火を広げることも無かったのでしょうから」

「っ!」

 

 

 おい、赤毛がいきなり論破されたぞ。

 そこ言われたらなー、という顔でみんな目をそらしてる。自覚してたんかい。

 確かに原作では「この戦争はいつ終わるんだ……」みたいなかっこつけな台詞呟いていた気がするけど、考えてみればあいつらが戦場に赴かなければ巻き返しも特に無くメガロ側に手段は無かったっぽいんだよな。上手いこと『黒幕』という存在が戦争に加担していたから、それを討ち倒して英雄として祭り上げられたことで、一定のハッピーエンドは迎えたように見せてはいたけれど。

 実際戦争に参戦していたくせに、甘いこと言ってんじゃねーって話だよな。

 

 

「だ、大体おめーらは誰なんだっ! まず名乗りやがれ!」

「いいでしょう――」

 

 

 え、名乗るの?

 仮にも暗殺としてやってきた少女が片手を掲げた。

 

 

「我ら中立都市より派生した戦争仲裁機関! この世界から戦争を無くす! そのためだけに戦場を駆ける、『戦えない者』のための守護天使!」

 

「世界の破壊を防ぐため」

 

「世界の平和うぉー、守るためぇーぃ」

 

 

 ナニコレ。

 弾頭的な前口上を口にしだした少女に合わせて、赤毛のちょんまげと紙袋の大男も一緒に唱えだす。

 

 

「愛と真実の悪を貫く! 信念を推して道理を叩く、華やぐ戦場の敵役! 愛情部隊副隊長! デイズィ!」

 

 

 青い少女が名乗り、

 

 

「暴虐部隊副隊長、梅喧」

 

 

 赤いちょんまげが名乗り、

 

 

「医療部隊隊長ぅ、ファウストっ!」

 

 

 紙袋が名乗った。

 というか、いつの間にか紙袋がちょんまげとは反対の少女の隣に陣取っている。

 

 

「そう、我らこそ!――」

 

 

 バババッ、とそれぞれがそれぞれのポーズを決めた。

 

 

「戦「戦争「争「仲裁「仲「ぅ裁「機関「機k「機かぁー「ん! ト「トライ「ライ「ピース「ピーぃ「ピースッ!」」す」

 

「バラバラじゃねえかッ!!!」

 

 

 鎖から抜け出した黒髪くんがツッコミをいれた。

 確かに。決めたポージングも台詞合わせもばらっばらであった。

 

 ともあれ、拾えた正式名称は『戦争仲裁機関トライピース』。面白そうなこと始めてんな、あいつら。

 

 

「ともあれっ! この戦争を止めるために、『仲裁』を執行しますっ!」

 

 

 若干頬を染め、デイズィの宣言とともに事は始まるのであった。

 

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 まあ要するに、あの3人が俺の知る懐かしい顔ぶれであったりする。

 マリーを連れて放浪していた頃、似たように戦火に駆り出されて被害を被っていた奴らに処置を施した『被験者』の一部が彼女らである。

 そんな彼女らに植え付けたのは『空間制御術式』。

 一言に言えば魔力で空間を歪曲させる術式なのだが、その『空間』という範疇が広すぎてどうやって制御するかと思い悩んでいたのが当時の記憶として蘇る。

 範囲が広いのなら別個に腑分けしてそれぞれの専門術式を確立させればいーじゃない、と思い至ってそれぞれ植えつけた3人なのであったのだが、よくもまあ互いに見知らぬはずの御三方が一同に会せたものである。なんだこの無駄エンカウント率。

 

 デイズィには魔力を形状として確定させるための領域確保術式。要するに目に見える掌握領域を再現させてみようと方向性を定めた術式だ。

 あの背中の翼がそうだろう。一方通行の暴走バージョンみたいなのを同時展開しているけど。

 

 梅喧には亜空間接続術式。英雄王とか、漫画とかで見るような『蔵』みたいなのを再現できないかと構築した代物である。

 見たところ袖から鎖とか鉤爪とか、暗器を無限に引っ張り出しているが、『入り口』は袖だけじゃないはずだ。実際足元から畳を引っ張り出して、畳返しで古本を潰してるし。って、畳返しってそういう技じゃねーから。

 

 ファウストには亜空間潜入術式。アイツが一番の成功例な気がする。つなげた空間を自在に“泳いで”赤毛たちの死角から襲撃を繰り返しているし。

 最初に飛び出したのも“それ”を扱った結果だろう。鍋の下の地面は全く穴も傷も無かった。親和性の高い披験体に巡り合えて万々歳だよ俺は。

 

 

 対する赤毛側、むしろ転生者と思われる黒髪と金髪の二人はというと。

 黒髪のほうは魔力量は少し多いが、それだけだ。特に目立った何かがあるように思えない。戦闘技術も中の下。俺から見て弱いとしか言いようの無いデイズィより更に経験が足りないように思える。

 そのデイズィの翼の暴虐で、赤毛側は戦闘距離を測り兼ねているのが現状だ。遠距離がデイズィ、中距離が梅喧、近距離がファウスト。一見ばらばらだけど、上手い具合に割り振りが決まっているんだな、あいつら。

 

 そして金髪の方。予想通り、ゲートオブバビロンを使ってきた。っていうかそう叫んでた。

 叫んでたのはいいけど、射出は出来ないらしい。空間に手を突っ込んで剣を取り出して振るっている。アレも一見すると神秘性の高いアイテムに思えるのだけど、振るう側の使い方が若干残念に思えてならない。もうちょっと上手く扱えないのか?

 

 そうして三時間ほどほぼ互角の勝負を繰り返したところで、3人のスタミナや魔力が切れてきたのかそれとも赤毛側が間合いを読み切り始めたのか、デイズィは大振りになり、梅喧の暗器も見破られ始めた。今は最早ファウストの死角突破のみで現状が持っている状況だ。

 考えてみれば原作でのラカンとの迎合の時も、嘘かホントか十三時間やりあったとか言っていたので、それくらいのスタミナは転生者組み以外は持っている可能性がある。というか、ちょいと問題のある人物がさり気に参入している状況にツッコミを入れたいのであるが。

 そろそろ俺も参戦するべきかもしれない。

 

 

「というわけでお邪魔ー」

 

「「「っ!?」」」

 

「あんっ!? なんだてめぇは――」

「なあおい、旅行するなら何処に行きたい?」

「――は」

 

 

 ボシュン、と先ず赤毛のガキを吹っ飛ばす。

 今の俺からすれば年上なんだけど、正直赤毛の人間が多すぎるからちょっと邪魔なんだよね。

 

 

「「「「「――は……?」」」」」

「にっ、ニキュニキュの実ッ!?」

 

 

 一人、というか黒髪くんが元ネタに反応した。

 残念、バシルーラさ。

 

 

「っ、な、なんだ貴様! ナギを何処へ、」

「ハイ邪魔」

 

 

 金髪も吹っ飛ばす。

 座標は赤毛と同じ場所だから、寂しくないよ!

 

 

「汎断っ!? くそっ、お前一体、」

「はいどーん」

 

 

 黒髪くんも射出。

 腕をぐるぐる回しながら次を狙う。

 

 

「瞬動か……! なんて使い手、」

「そいやっ」

 

 

 針金みたいな剣士を吹っ飛ばす。多分詠春さん。

 ふははは、俺今超無っ双ー。

 

 

「くっ、最強防護っ!」

「無駄ぁっ!」

 

 

 子供と古本を一緒に吹っ飛ばし、術式の限界時間が切れる。

 あー、これが限度かー。

 

 と、いうわけで残ったやつに話があるのだが。

 

 

「お前ぇ……、何者だ? こんなガキの使い手がアイツ以外にこの世界にいたとはな……。しかもあの赤毛バカよりずっと年下じゃねーか……」

「使い手云々はまあどうでもいいとして、あんたヘラス側の傭兵じゃなかったのか? メガロ側に寝返って戦争に参加とか、何してんだよ」

 

 

 残っているのはそう、筋肉ダルマことジャック=ラカン。邂逅というか喧嘩参入というか、そんななんやかんやは既に通過していたらしい。

 聞いたところで意味なんて無いかもしれないが、とりあえず尋ねてみた。

 

 

「戦争? 傭兵? 関係ねーなっ! 俺は俺のやりたいようにやる! それだけだっ!」

「あーそーかい」

「つうわけでっ、いっちょ俺ともやろうじゃねーかっ!」

 

 

 予想通りの答えを返して、突っ込んできた筋肉。

 威圧感が凄い。とりあえず殴ってみればわかる、みたいな思考でかかってきたのかもしれないが、――そりゃ悪手だろ。

 

 

「――レリーズ。ショートカット、“マクロドライブ”」

「ぬぅおっ!?」

 

 

 腕に仕込んだ凍結術式の一つを解除。さっきと同じ術式で、筋肉ダルマも吹っ飛ばす。

 着弾地点はメガロメセンブリアだ。精々良い弾丸として働いてもらおうじゃないか。

 

 さて、これで仕事は終わった。

 撃ち出した7人は生きているだろうけど、戦力を削るという目標は果たしたわけだから問題はないだろう。ついでにメガロの国力も削る『攻撃』になったはずだから、戦争も少しは抑制できていればいいなー。

 そんなことより懐かしい顔ぶれに挨拶せねば。

 

 

「よーお前ら、ひっさしぶりー」

「「「お、お久しぶりです師匠……」」」

 

 

 おいおいどーした。声が震えてるぞ。




~猫でも出来る縮地法
 出典はパタリロ源氏物語
 スーパーキャットさんぱねえです

~格闘が趣味の学生
 イメージだけで技術を極める地上最強の男の息子
 トリケラトプス拳ッ!

~バケツいっぱいの砂糖水
 烏丸そらッ、復活ッ! パンッパンッ(手拍子)
 烏丸そらッ、復活ッ! パンッパンッ(手拍子)

~戦争仲裁機関トライピース
 アリアドネーに集中した戦争被害者の中でも特化した術式を運良く授かった者たちで構成された、『戦えないものたち』のための戦争阻止組合
 負けているはずなのにいつまで経っても抵抗を止めないメガロに、苛立った被害者たちが主立って設立。主力は大体ソラの仕組んだ被験者で構成
 デイズィ・梅喧(ばいけん)・ファウストは某格闘ゲームから参戦。転生者ではありません

~金髪
 転生者2人目。名前は『汎断 創世(あまねだち そうせい)』。かのりかなめさん、お借りします
 特典は「神秘を溜め込んだ蔵を扱いたい」とピンポイントで英雄王を狙った注文。但し“射出”は出来ないし、中に何があるのかを確認も出来ない(自分で集めた代物ではないので中身を知らない)
 その代わり中にアイテムを入れることも出来るし、そのときの状態で保存も出来る。中身さえ把握できていれば実は最良な特典

~マクロドライブ
 所謂バシルーラ。強制射出術式
 対象を選択しマッハ50で射出。運動エネルギーだけで着弾点を破壊し、“弾丸”とされた対象にはその衝撃は一切かからなくする保護結界で包み込む。着弾点にきちんと“到着”するように、飛行中は一切の影響から守られる


アンチと銘打ったのだからメガロメセンブリアを徹底的に叩き潰す
魔法使いも同列だぁーヒャッハーッ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。