バカと異色と冬休み   作:近衛龍一

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プロローグ
買い物、居合わせた四人が変わってる件について


 

 

 

学生にとって嬉しい長期休暇である冬休み。

 

 

文月学園では今日、終業式があったので実質今日からがその冬休みとなる。

 

 

ここ数ヶ月、姉さんがいたせいでゲームを買えなかった分冬休みの初日である今日、冬休み期間中は海外出張で姉さんがいないことを祝って晩御飯は奮発してすき焼きにしようとスーパーで買い物。

 

 

そう、買い物……なのだが……。

 

 

 

「ネギは必須だよな」

 

 

「エノキも欠かせませんわね」

 

 

「ね、ねぇ二人とも……少しは遠慮しなよ……?」

 

 

 

なぜか……なぜか僕は異色のメンバーと買い物をしている。

 

 

しかも、今日の僕の晩御飯であるすき焼きの、だ。

 

 

そのメンバーたるや聞いて驚くなかれ。

 

 

 

「ボク達これから吉井君に迷惑かけるんだよ……?」

 

 

 

他のAクラスの面々がいない状況下で遊んだことのない2-A所属ボーイッシュ娘こと工藤さん。

 

 

 

「豚野郎に遠慮は無用ですわよ、工藤さん」

 

 

 

美波絡み以外では初エンカウント、2-D所属百合娘こと清水さん。

 

 

 

「そうっすよ。このバカに遠慮するなんて勿体無いっすって。どうせこいつの金なんですから」

 

 

 

学校外であまり交流の少ないクラスメイト、2-F所属FFF団団長こと須川君。

 

 

そんな3人に僕を含めたこの4人。

 

 

個々の交流こそあれど、この組み合わせで会うことなんてまずない。

 

 

ありそうでない『あ、お菓子食べます?』この組み合わせを見たら『あら、意外と気が効きますわね。折角ですしこれも』雄二達はなんて『う〜ん。だったらボクも遠慮せずにこれも…』言うだろ『おっ、いいっすね〜』

 

 

 

「ってなんでみんな関係ないものまでバンバン入れてるの!? 」

 

 

「何怒ってるんだ吉井?なんかおかしいか?」」

 

 

「おかしいよ!何で僕が怒ってるかって!?これ誰が会計するか分かってるの!?」

 

 

「吉井だろ?」

 

 

「豚野郎ですわね」

 

 

「吉井君だね」

 

 

「だ・か・ら・だ・よ!」

 

 

 

ハァ……ハァ……

 

 

ヤバい……これ持たないぞ……

 

 

ツッコミ1ボケ3

 

 

普段はツッコミ担当ではないだけにこれはツライ。

 

 

いつもなら工藤さんはツッコミ側のはずなのだが、今の流れの間はボケに回ることにしたらしい。

 

 

にしてもだ。

 

 

 

「まぁ、清水さんと工藤さんは100歩譲っていいとして、須川君はお金出してよ」

 

 

「ん?あぁ、いいぞ」

 

 

「え?いいの?」

 

 

 

冗談で、いや、冗談ではないけど、なんとなしに言った要求。

 

 

内心イヤだって言われるだろうなぁと思っていたのに、案外すんなりと了承の返事が来たので正直戸惑っている。

 

 

あ、別に僕なら断るのになんて思ってないよ?

 

 

 

「んだよ。吉井が言ったんだろ?別にいいって。さっきも言ったけどどうせ使い道なんてあんまりないんだし。ただし、割り勘だからな」

 

 

「い、意外と男らしいねだね須川君……」

 

 

「野郎共とのすき焼きだったら出さないけどな」

 

 

 

きっちり下心はあるが、これは須川君を見直さなければならないかもしれない。

 

 

 

「じゃあ、追加でこれとこれも……あ、炭酸飲めます?」

 

 

「美春は問題ないですわ」

 

 

「ボクも大丈夫だよ」

 

 

「……須川君、6:4でどうかな?」

 

 

「は?ロクヨン?ゲームの話か?」

 

 

 

割り勘だというのにポンポンと買うものをカゴに入れることのできる須川君の財布が少しだけ羨ましかった。

 

 

 

 


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