相克する狭間で   作:甲板ニーソ

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第6話

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

艦隊これくしょん 『相克する狭間で』 第四話 望まぬ門出に 後編

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

大言壮語は犬にでも喰わせなさい。彼女は蔑むようにそう言い放った。

実績の伴わぬ輩のなら特に気に入りませんわ。熊野はそう酷評した。

ホラ吹きはお呼びじゃありませんの。込められた感情は負、理由分からず、先行きにはただ暗雲が立ち込めていた。

 

よく晴れた午後、病み上がりに初めて苛め抜かれた。

よく晴れた午後、病み上がりに初めて限界を垣間見た。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

―――過去をやり直したいと思ったことはあるだろうか?

誰であれ1つ2つ後悔の種は心に根を張っている。多い奴は日々増産体制で尽きることない、誰であれだ……憂いなしってのは、現実に生きてない空想上の産物に他ならない。

故に人は己が手から溢れてしまった未来を求めて、超常の力に縋り祈るのである。

 

だが……祈っても一向に打開の糸口が見出だせない辺り、神は居らず、軌跡は覆らず、奇跡は起こらぬ。ファッキューゴッド!悪意は頼まれもしないのにダース単位で押し売りする癖、救いは滅多に顕れない。地獄逝きをキャンセルしろとは高望みしない、せめて先ほどの抱負の宣誓まで巻き戻して欲しいものだ。そうすればせめて……もうちょっとマシな待遇で迎えられたろうに……益体のない思考が延々堂々巡り、思考は逸れに逸れ、元凶まで遡っていった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

外見は立派なのに学園は寒々しく休日の上、部活動すら休止してるのではと思わせる伽藍洞さ。学級閉鎖ならぬ学校閉鎖規模でなければ説明のつかぬ不気味な静けさは、登校=喧騒の方程式に慣れきった自分にとって、無性に気になる疑問だった。

昇降口の靴箱から運動靴を取り出し、来客用スリッパから履き替える。流れこむ一筋の風が息苦しさを和らげ心地いい、ぐ~んと背伸びしたくなる衝動に駆られるものの人前。

 

「事務仕事に掛り切りだったから肩が少し凝ってるわね。私も鈍った体、訓練に参加して解きほぐすべきかしら……ん?どうしたの?」

 

気も漫ろなのを見抜かれたのか、問いかけられる。注意することに注意して結果的に注意散漫とは本末転倒極まりない……片手落ちもいいところだ。

 

「いえ、通りがかりなのではっきりとは、断言は出来ませんが……妙に人気が少ないなぁ……と気になってしまっていたもので」

 

清潔感で満たされた教室、磨き上げられた教卓と机はまるで新品、使用された形跡があるのかどうかも疑わしい。幽霊が授業を受けてでも無い限り、汚れがなきゃおかしいのに……ない。授業を受けるには持って来いの設備だが、勉学を人を通じて学べる場所とは思えなかった。

 

「あぁ……たしかにこんな立派な校舎と敷地なのに、総数両手で足りちゃう生徒数だから不審に感じて当然よね。宝の持ち腐れだけど、共同で使うわけにもいかないから……慣れてもらうしかないのよ」

 

「えっ……?……えっ!?」

 

―――限界集落かなにかだろうか……二桁にすら達してないとか肩透かしってレベルじゃない。大は小を兼ねるとは故事にあるが分校が精々の人員にこれは正直大袈裟の一言。

 

いや……そりゃあ最初からゴーストスクール染みてたはずじゃないのは予想つくが、一体何がどうなってこの様になったのか聞けるなら聞きたいところ……しかし迂闊に好奇心を優先してミリタリー物でよく話題に出るNeed to knowの原則に反するのはなるべく避けるべきである。リアルでも同じ、聞けば答えが返ってくると思考停止に陥ると進歩がない、自力で導き出したほうが頭の体操にもなろう。

 

「これから貴方が配属されるのは国立第一横須賀艦娘訓練学校第13艦娘訓練分隊、略称は13分隊及び横須賀訓練分隊。訓練の内容だとかは口頭で伝えるより習うより慣れろの心意気で望みなさい……中途半端に教えても付け焼き刃じゃすぐ剥離するはめになると思うし」

 

送られた訓示が不吉な未来を暗示してるのは、冷汗を禁じ得ない。身構える以外の対策が用意しようがない辺り泣ける。神様ルナ様仏様、両手パンパン、今日は平和でありますように。

 

「ふぅ……無駄に広くて初見じゃ迷子になる場合が多いから、気晴らしついでに案内したけど……もう校庭近くまで来たし大丈夫よね?残して来た書類作成に戻るわよ。日々是成長、一緒に終わらない明日目指して頑張りましょうナナシ」

 

「問題ありません!お忙しい中お手数を掛けしてしまい恐縮です。どうもありがとうございました」

 

励みを贈り去る彼女を尻目に呑気な生まれの異邦人たる己は、いまいち共感を得られず内心困惑するばかり、危機も喉元を過ぎ去ればなんとやら……記憶は埋もれ薄れる定め。夢の現実に生きると誓ったものの2つのリアルの摺り合わせは、そう上手くいくものじゃなかった。意識しないことには進歩がないが、意識するだけで解決するなら世の中ヒーローだらけである。

 

「えっと~あれが……そうか?」

 

前方に目を凝らせば人が数人薄っすらと視認可能、やっと生徒の集団に会えた……片手でこと足りる数でも複数には違いない。広大な敷地にご立派な建造物があるのに遭遇率は相当低そうだった。くちぶえでもなければレベル上げ相当面倒臭そう、案内して貰えなきゃ軽く迷子になってた自信があるね。なにせ道に迷っても尋ねられない上、地図がない不親切にはもう脱帽……これは初見の奴に喧嘩売ってるとしか思えん。付き添い前提の難易度じゃねぇかこれ?

 

「お~い!こっちこっちぃ!!」

 

こちらから見えれば相手からも見えるが道理、休憩中なのか地面に思い思いに座り込んでいる。呼びかけには手を振って応答、栄えある?訓練生初日……さてはてどうなりますことやら。

 

とりま、週刊跳躍の熱血スポ根的な青春展開がいいけど、世界観を鑑みると虫も殺したことのない少年を一流の戦闘マシーンへと変貌させそうなお話だから期待するだけ無駄だな。

 

「―――貴方たち、チャイムが鳴ってないからって随分とだらけていますわね。五分前行動は必須と口を酸っぱくして教え込みましたのに、体もおつむも愚鈍なのね……それとも態と失点してもっと調教して欲しいという殊勝な意思表示なの?今後の教育方針の参考に私に教えてくださる」

 

……ほらな?期待ってのは基本裏切られるためにあるものさ。声量は怒鳴るには遠いのに鶴の一声、弛緩しきった空気が一変、緊張感漂う針の筵に早変わり、鬼教官のお出ましだ。

 

「……がっかりですの。惰眠を貪りたいだけのノータリンだったなんて……残念ですわ二重に。新しい娘が来るっていうのにこの体たらく―――恥ずかしさのあまり死にたくなりません?」

 

笑うというより嗤ってる。言葉尻と罵倒は海兵隊と比べればお上品ではあるものの実際攻口されると胸にくる。それが自分に向けられたものでなくとも……

 

「あら?新入りさん来てましたの?着いてるなら着いてると報告なさい。新手の案山子を呼んだ覚えはありませんわよ。ホウレンソウすらやれない娘は来世から鍛え直さないといけませんけど」

 

「は、はっ!今日付けで横須賀訓練分隊に配属されましたナナシであります。教官、先輩方に於かれましてはご指導ご鞭撻宜しくお願い致します」

 

食品売り場の商品を品定めするが如く無遠慮な視線……訂正もっと悪質、製品工場で不良品が混ざってないかの選別に等しい。

 

「全員揃っていますし丁度いい塩梅ですので紹介しますわ。この平和呆けした締りない顔で突っ立ている女こそ、以前より説明されていた追加の同じ釜の飯食う戦友でしてよ」

 

鼻からこき下ろされとる。事実無根どころか真実、的を射ているのでぐうの音も出ない。公開処刑で底辺から始めろというお達しだろうか……なんとか挽回したい初対面理論的に考えて。

 

「噂の校長似さんが……仲間入りです?」

 

興味隠せぬのか、眼鏡の似合う童女が我慢しきれず口走った。

 

「然り、半端な人員で演習にも苦労してたのが無事解消されますわ。喜びなさい。しかも世にも珍しいできたてホヤホヤの正規空母、軽空母含め空母2隻、戦艦こそ居ないもののひよっこ共の分際に身分不相応な豪勢な陣容でしてよ。他所様が泣いて羨みますわね」

 

「喜ばしいことです!新しい仲間の誕生を祝いましょう」

 

「祝うのはいいですけれど……巻雲、貴方には質問を許可した覚えもなければ、挙手すらしてませんでしたね。信賞必罰、粗相した畜生には罰を与えねばなりませんの……分かりますわよね?」

 

笑みは本来、攻撃的な感情の発露という……獰猛な気配に頬が引き攣る。

 

「ひゃわぁ!?あのですね……これはそのぉ……」

 

「弁解は罪悪と知りなさい。貴方には通常を終えたら特別コースを課しますので楽しみにしてらっしゃい」

 

「うわーん、巻雲のばかばかばかぁ!!もう気絶不可避かもー」

 

「間引かれないだけ、生まれに感謝するといいですわ。無能でも十把一絡げと違って、使い捨て前提の促成栽培はされませんもの」

 

失点には容赦がなく、お目こぼしなぞ埒外。目を付けられたら嫌というほど可愛がられるのは相続に難くない……幸か不幸かまだスタートライン、ここで決めれば少なくとも悪化はしまい。

 

「それと名を名乗って、はいっお仕舞いとばかりにぼさっとしてないで、抱負等を手短に述べて欲しいのですけれど」

 

場の視線すべてが集まり、注目は熱を帯び、物理的な圧迫をも錯覚させる。病院、基地への道中、好奇の目は絶えることなく人前では常に付き纏っていたが、こうまで心揺れることはなかった。第三者視点からしてナルシストみたいでやだが、今の俺は美しい、人は後ろめたさでもない限り、自然と美に惹かれるのものだ。それが救世主とくれば見るなという方が無理だろう、誰だってそうだ。俺だってそうする。故に他者を攻める気にはなれない、自分ができないのを相手に求めるは理不尽の権化だろう。

 

本来の姿は醜悪とは無縁で贔屓目にそこそこな顔立ちだった?が、衆目を得られるのは発表会やらを除けば皆無で、道端を歩いてたら群衆に埋没する一般人だったのにえらい落差だといわざるを得ない。戸惑うこともしばしばあったものの、関わるのは一瞬、かぼちゃだ有象無象だと決め込んで凌いでいたが、今回はそうはいかない。フィルターが外れナマの感情が直撃する。人生の岐路にでも立った気分だ。心の臓の鼓動が唸りを上げ、限界スレスレに駆動する。血の巡りが良すぎて逆に思考が覚束ぬ。その癖刹那に取り留めのないのが浮かんでは消えていく……もう楽になろう。台本は頭から吹っ飛んだが、国防について宣誓すればよろし―――覚悟はついた。

 

「ナナシ、貴方はなにを願うのでして」

 

「お国を守るため―――とにかく棲艦をぶっ殺したいです!」

 

…………あれ?俺の今の台詞、どう受け取ってもウォーモンガーじゃね?一体何処を浚ったら、このチョイスがなされたのかテンパってたとはいえ不思議でしょうがない。おかしいのは後悔してるのに気分は爽快、晴れがましかったことだ。矛盾してる……理解に苦しむ。

 

「へぇ……そう。ふ~ん、承りましてよ。それはそれは勇ましくて素晴らしいですわね……ふふっ」

 

自問自答に嵌る前に、我に返る。後ろに位置する教官の表情は伺えないが……鈴谷を含めた全員の瞳の色に諦観が滲んでいた。まるで養豚場を送りにされる子豚を憐れむかのよう……鈍かろうと察せる。待ち受ける処遇は―――

 

「気に入りましたわ。特別愛でて差し上げるから……壊れちゃいやですのよ?」

 

地獄だった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

ことのあらましはこんなもんである。完膚なきまでに自業自得な辺り救いがない。地獄を超えた先はまた地獄だった……どんな糞だって?長距離地獄だよ……

 

―――体中が軋み、指先から小指までいたるところ苦痛を発してる。胃の中は荒れ狂い、吐き気でコンディションは最高に最低。犬のそれみたいに舌が外気に露出され続けて、締りがない。顎があまりの横暴にストライキを起こして上がらないせいだ。息をする度激痛が繰り返され、のたうち回りたい。多量に噴き出た汗で衣服はグチャグチャ、張り付いて不快度指数はとうに振り切れてる。整地された校庭ではなく荒れた山道を舞台とした結果、必要以上に体力は擦り切れてもう泣きそう。立ち止まるのは許可されない。

 

「病み上がりだから、労って貰えるとでも考えてました?まぁ、入院中軽傷にも関わらず、余裕かまして惰眠を貪ってた自信家さんのようですから、このぐらいじゃ根をあげませんわよね?」

 

並走する教官こと熊野。これさえ居なかったら、泥水の水溜りが点在する山道がふかふかのベットに幻視してしまう現状、反射的に倒れこんでると断言可能。意識を手放し、地面とキスしても手荒く叩き起こされるのが明白故ギリギリのところで踏ん張っているのだ。……自発的というより強制的なので踏ん張らされているというのが正しい。

 

「ほらほら!ペースが落ちていましてよ。前へ前へ前へ!!」

 

叱咤を燃料とし、進撃するが障害物もない地形で足をとられ蹌踉めき躓く。いよいよ年貢の納め時が近い、俺にしてはよく頑張った……怠けてた割には驚く自力を発揮して粘り強く走り続けた。でも、彼女の中には敢闘賞は存在しない。

 

「ガッツを魅せなさい!ガッツを!!だらしない様、そのみっともない腰振りは男でも咥えこむつもりですの?ここには雌しかいませんわよ!それとも私を誘ってるのかしら……見境のない淫売ですわね!気色悪い」

 

「ちが……ぁい…ま……す」

 

「蚊にも劣りましてよ。精一杯努力しましたってアピールはお止めなさい、戦場はファッションじゃありませんの!!気分であれこれ着せ替えは無理ですわ」

 

「ま……まっ……ける…も、もん……かぁ!」

 

「そう、負けたくない。蔑まれたくないなら、死力を尽くしなさい。出し惜しみは愚の骨頂!絶頂まで駆け上がるつもりで、走れ!走れ!走れ!!」

 

怒りのあまり吐出された言葉も虚しく掠れ気味、煽りに負けて喋ったおかげで肺に余計な負担を強いて、ヒビ割れたダムが赤信号。痛みは激痛へと進化を遂げ、視界が朦朧としてきた。軍人はサディストとマゾヒズムの2種で構成されると揶揄される。この熊野間違いなくサディストだ……一方こちらは残念マゾじゃない。相性最悪であった。

 

木にゴールを指示すであろう旗が靡いてる。朝が来れば夜になるように、物事には終わりが来る。客観的には短かったが、体感時間からすれば長く苦しい戦いだった。背嚢のベルドが肩腰に食い込むのともおさらばである。

 

「はっ……はぁ~~~これで!ラス……」

 

「―――なに勘違いしてまして?まだ折り返し地点ですわよ」

 

希望は絶望へとキャンセルされる。人は苦しくなると都合の良い現実しか見えなくなるものらしいが、なるほど正論。今の己が正しくそうであった。

 

「あっ……それと体がようやく暖まってきた頃合ですので、準備運動は終了。背嚢の中身を本物と同じ重量にすべく詰替へなさい。ほら、早く!ダミーは破棄して」

 

傷心に追撃、ダメージ判定をするまでもなく再起不能。糸が途切れて意識は宙へと旅だった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

地に伏せ気を失った泥だらけの少女を汚れるのも気にせず大木に立て掛ける。

 

「やってたみたいだね……これはやってた跡地かなぁ」

 

「えぇ、無様極まりない敗北主義者の休憩ですわ」

 

「あははっ……気絶を休憩にカウントするのは流石熊野クオリティーだね」

 

熊野の辛辣さに、鈴谷からは乾いた笑いが口からはみ出た。

 

「チェックポイントに到達してすぐ駄目になるなんて、不良品かと疑いたくなりましてよ」

 

「いや、あのさぁ……最初にしては健闘した方だと思うよ本当。私たちが訓練生、もしあの頃やれたとして初日にオーバーワークやらされたら、ナナシと一緒でご覧の有様だよー」

 

「分を弁えない戯れ言をした当然の報いですわ」

 

お嬢様ぜんとした少女は花柄のハンカチで汗を拭い、こともなげにそう吐き捨てた。

 

「疑わしいねぇ。失言を渡りに船としただけで、どうせ理由をつけて始めから限界に挑ませる腹づもりだったしょ。じゃなきゃ、此処に背嚢用の偽装道具がワンセットだけ都合よく置いてあるのが説明つかないじゃん」

 

「―――勘のいい娘は嫌いではないけれど、時と場合によりますわね。今は私が引率、貴方は不肖の教え子…・…オッケー?」

 

「はいはい、分かった、分かりましたぁ。分を弁えさせてもらいましょう……でも1つ質問させてもらうよ」

 

故あって鈴谷は訓練生なんぞやってるが基本は遥か昔に体に染み付いてるし、衰え知らずに研ぎ澄まさてる自負があった。熊野にだって負けてない互角な自信がある。だが、機種転換で新しい分野に手を出し、艤装も改修中なので選択肢なく、しょうがなく今の身分に甘んじているのだ。彼女が目の前の少女の命令を人前以外で素直に聞くかは気分したいであった。

 

「体力増強だとかは少しずつ鍛えてかなきゃ逆効果じゃん?それに艦娘は戦闘服を身に纏っちゃえば運動能力は飛躍的に向上するし、そこまで追い込む必要あるかっての。扱きもすぎると育つものも育たないぞぉ」

 

忠告どこ吹く風と首を振り、求めているものはこれだと吠える。

 

「私が育てたいのは根性ですわ!体力なんて、その過程で生まれる副産物にすぎませんの。根性論が今日日流行らないなんて吐かす輩は、敗戦濃厚となれば即座に股開くビッチ。幸福も捕虜も取らない化け物との戦争してるのに訓練で安全マージン?そんなものはファッキンシットですの!予行で命賭けれない奴が、実戦で命賭けれるはずありませんわ!!」

 

「お、おぅ……」

 

「虜囚になれば死より辛い責め苦、味方は居ない、燃料弾薬残り僅か、鈴谷―――貴方ならどうしますかしら?」

 

「そりゃ死ぬまで戦うさ、一匹でも多く道連れに死なきゃ割に合わないしねぇ。勿論、死中に活あり、最後の最後まで生き残る算段は止めないよ」

 

 

「満点ですわ。花丸あげちゃいますの。それが艦娘の正しき姿……でもナナシを除外しても貴方の除いた娘たちは、悪夢に遭遇したら、死に時考えず玉砕覚悟で特攻して命散らすか、膝をついて許しを請いながら喰われるでしょうね」

 

「そう……かもしれないね。私より頭のいい奴もいたし、強い奴もいた……でも、自滅戦争、沖ノ島沖血戦を経て……生き残ったのは私たち……だったし」

 

鈴谷は当時を振り返っていた。分隊の面々がその顔を目撃すれば驚いたであろう。何時も絶やさぬ明るい雰囲気が鳴りを潜め、憂鬱で物憂げな顔していたのだから。

 

「とかく、あの娘たちが生き残れるよう私は、全力を尽くす義務がありますわ。その為には多少を振りきった無茶だろうと実行しましてよ。甘やかして、結果死なせる無能は御免ですわ」

 

「無茶苦茶だけど……一応納得した。納得ついでに手伝うことある?あるなら協力するじゃん」

 

「じゃあ、この娘起こすのにバケツ一杯の水を持ってきてくれませんこと。流石に泥水をぶち撒けるのは忍びないですし」

 

「了解、水場少し遠いし、往復だからちょっち時間掛かるのはご容赦願うよぉ」

 

直接口に出しては言わないが彼女は知っていた。これが熊野なりの優しさだと……あれだけ手際が良かったのに水だけ手抜かりはあり得ない。用意する間は羽を伸ばせる。誰がかって……それは言うまでもないだろう。

 

「そう言えば熊野―――あれだけ嫌がってたお下品な罵倒の数々板についてきたね。昔からすれば考えらないけど、鬼教官ちゃんとやれてるじゃーん。おめっ!」

 

「貴方って人は……本当一言多いですわね!好きでこうなったわけじゃありませんのに、責任取りなさい!!!」

 

「鈴谷のせいじゃないしー」

 

背に怒鳴り声がするが意趣返しに無視、さて今日も平和でありますように。

 

 

 




こんにちわ、前回のアプデからバシーを延々と回し続けてついに
昨日弥生を手に入れて喜んでる作者です……S勝利300回近くかかったけど今ではいい思い出(白目

さて、4話終わりましたが訓練生の半分以上まだ未登場とか(汗)一応残りの登場枠は
瑞鶴を除けば軽空母1軽巡1駆逐1の三人で訓練生編主要人物は出揃う予定
予定は予定ですが誰が出るか次回で明らかに

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