英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第67話 剣聖の帰還

~封印区画 最下層最深部~

 

「はあはあ……。な、何とか倒せた……?」

「う、うん……。動けなくはしたみたいだ……」

リシャールとの戦いを含め、三連戦で疲弊したエステルとヨシュアはトロイメライが崩れて動かなくなるのを見て、安心し膝をついた。

 

「ふぅ、流石に疲れたね。」

「はうう~……」

「ハァ……なんとか終わったわね。」

レイアやティータ、シェラザードも疲弊した様子でその場で膝をついた。

 

「『環の守護者』か……どうやら、そいつの目的は『輝く環(オーリオール)』を封印していたこの施設の破壊だったようだな……そして、『輝く環』の封印と同時に扉の中で機能を停止したのか。『輝く環』をめぐって古代人同士が対立していたのかあるいは……しかし……肝心の『輝く環』はどこに……」

エステル達との戦いから回復して立ち上がったリシャールは崩れているトロイメライを見て呟いた。その時崩れていたはずのトロイメライの手が動き始めた。

 

「なんと……まだ動けるのか!?」

それに気付いたリシャールは驚愕の表情でトロイメライを見た。そしてリシャールの言葉通りトロイメライは立ち上がってエステルをめがけて腕を振りかぶった。

 

「まだ動けたの!?」

レイアも同じように驚いた後、予備のスタンハルバードを構えた。

 

「ヨ、ヨシュア……!」

「エステルッ……!」

ヨシュアは疲弊した体で無理やり立ち上がり、エステルの壁になりトロイメライの攻撃をエステルの代わりに受けようとしたところ、トロイメライの腕が攻撃されトロイメライは攻撃を一端やめ、自分に攻撃をした敵――リシャール大佐に体を向けた。

 

「……させんっ!」

「え……」

「た、大佐……!?」

意外な人物の援護にエステルとヨシュアは驚いた。

 

「君たちは今しがたこいつと死闘したばかりだ!私の方はもう動けるようになった!時間を稼ぐことくらいはできる!」

「す、凄い……!」

「さすが、父さんの剣技を継いだだけはあるね……」

「へ~………結構、やるじゃないですか。」

リシャールの強さにエステルやヨシュアは驚き、レイアはリシャールの強さを見て感心した。

 

「何をしている!早く行け!!」

リシャールは自分の戦いを見て感心しているエステル達に早く逃げるように言った後、トロイメライに攻撃をし続けたが、敵の固い装甲への度重なる攻撃に刀が耐えきれず折れてしまいリシャールはそれに気付いて、無防備になってしまったところを敵の巨大な手に体ごと掴まれた。

 

「う、うおおおおおおっ!?」

「た、大佐!?」

「く……どうしたら!?」

リシャールの窮地にエステルとヨシュアは疲弊した自分達での助け方がわからず、焦った。

 

「レイアお姉ちゃん、な、何とかならないですか!?」

「……できなくはないけど、下手したら捕まっているリシャール大佐を殺してしまうかもしれないね。」

ティータはレイアにリシャールを助けられないか尋ねたが、レイアは難しそうな表情で答えた。今の状態では下手に加減をすれば逆に彼の命が危うくなる。

 

「レイア殿!」

「……何?」

トロイメライに掴まれているリシャールに呼ばれたレイアはリシャールを見た。

 

「できるのならどうか、私ごとこの守護者を破壊して下さい!……それが無理ならエステル君達を連れて、撤退して下さい!」

「そ、そんな!?」

自分を犠牲にしようとしているリシャールにエステルは悲痛な声を出した。

 

「諦めないで下さい、大佐!」

「私の事は気にするな!君たちとの勝負に敗れた時……私の命運は……尽きていたのだ!」

「そ、そんな……」

自分の命を諦めているリシャールにエステルは悲痛な表情で呟いた。

 

「だから……気にすることはない……。私の計画は失敗に終わったが……。最期に君たちを助けられれば後悔だけは……せずにすむ……」

リシャールが自分が死ぬことに観念した時、入口から男性らの声が聞こえて来た。

 

「「諦めなければ必ずや勝機は見える。そう教えたことを忘れたか?」」

そして男性らは一瞬でトロイメライに近づいて攻撃した。

 

「せいっ!」

「はあっ!」

男性の一撃はリシャールを掴んでいる腕ごと、棒による強烈な一撃でへし折った。そして、もう一人の男性はもう片方の腕を剣による強烈な一撃で叩き斬った!

 

「え、貴方は……!」

「カイトスさん………!」

「カイトスって……!それに……!」

「“光の剣匠”ヴィクター・S・アルゼイド。これはまた豪勢な……」

男性――カイトスとヴィクターの姿を確認したエステル達は驚いて呟いていたが

 

「「今だ!止めを刺せ!!」」

二人の号令に今優先すべきことに気付き、全員は残る力全てを使って弱っているトロイメライに強力な集中攻撃をした。

 

「か、覚悟してください!い、行きます!やあぁぁぁぁぁ!」

「行くわよ、カオスティックビュート!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はぁっ!!!」

「はぁぁぁぁぁぁ!!はっ!……漆黒の牙!!」

「受けなさい……絶技!グランドクロス!!」

4人の総攻撃を受けたトロイメライは体の到るところから爆発を起こしていた!そこに棒を構えたエステルがSクラフトを放った!

 

「ハァァァァァ!これが私の全力全開……奥義!鳳凰烈破!!」

エステルが放った鳳凰烈破を止めに受けたトロイメライは体中が爆発が連続で起こった後、胴体や足が爆発によって破壊され完全にバラバラになった…………!

 

「か、勝ったぁ~~っ……」

バラバラになって完全に沈黙したトロイメライを見てエステルはその場に座り込み、安心した。

 

「……みんな、ご苦労だったな。」

安心しているエステル達のところにカイトスが近付いてきた。そして、カイトスが兜を脱ぐと……それは紛れもなくエステルとヨシュアの父親であるカシウス・ブライトの顔だった。

 

「ただいま。エステル、ヨシュア。ずいぶん久しぶりだな。」

「と、父さん!?カイトスが父さんだったの!?」

今まで行方不明だったカシウスを見てエステルは驚いて叫んだ。

 

「まだまだ詰めは甘いが一応、修行の成果は出たようだな。今回は合格点をやろう。」

「ご、合格点じゃないわよ!なによ、父さん!なんでこんな所にいるの!?しかも、何でカイトスの正体が父さんって……何でなのよ!?というか、あたし達がグランセルにいた時には既にいたってことじゃない!説明してよ!!」

「なんでって言われても……まあ、成り行きってやつ?」

「ど、どんな成り行きよっ!武闘大会にまでちゃっかり出てるだなんて……ああもう、訳わかんないわよ!!」

エステルとカシウスの親子漫才が始まり、ヨシュアは相変わらずの様子に苦笑した。

 

「はは、父さんも相変わらず元気そうだね。」

「ほう、お前も少し背が伸びたみたいだな。どうだ、エステルのお守りは色々と大変だっただろう?」

「どーいう意味よ、父さん!?」

ヨシュアを労っているカシウスに自分の名前が持ち出され、エステルは父をムッとした表情でカシウスを睨んだ。

 

「まあ、それなりにね。でも、それと同じくらい僕もエステルに助けられたから。だからおあいこってところかな。」

「そうか、いい旅をしてきたみたいだな………そう言えばお前達、レイア達と旅をして来たようだな?」

「うん。彼女達にもずいぶん助けられたよ。」

ヨシュアは苦笑しながら言った。そして親子のやりとりが終わった後、シェラザードが話しかけた。

 

「お帰りなさい、先生!」

「おお、シェラザードか。お前には2人の世話を任せてしまって、すまなかった。」

「フフ、別にいいですよ。私自身もレイアやシオンには大分助けられましたし。」

そしてシェラザードとカシウスの会話が終わるとティータが話しかけた。

 

「あのあの、お久しぶりです、カシウスさん!」

「おお、ティータか。以前会った頃と比べて、背が伸びたんじゃないか?」

「えへへ………」

カシウスに言われたティータは可愛らしい笑顔を見せた。そして、それが終わるとレイアが話しかけてきた。

 

「お久しぶりです、カシウスさん。」

「レイア、色々と済まなかったな。手のかかる子どもらで。」

「気にしないでください。私にしてみれば、エステルやヨシュアは妹や弟のようなものですし。」

「そうか。それはよかった。」

「な、和やかに会話している場合じゃないってば!まったく、ヴィクターといい、二人して見せ場をかっさらって……もしかして出てくる瞬間を狙っていたんじゃないでしょうね……?」

「そのつもりはなかったんだが……」

ヴィクターとカシウスに見せ場をとられたと思ったエステルは、二人が見せ場の瞬間を狙って待っていたと思ってジト目でヴィクターとカシウスを睨んだ。

 

「やれやれ……どうやら片づいたようじゃの。」

そして少しすると中継地点にいた博士達が来た。博士は周りの状態を見て、安心して溜息をついた。

 

「ええ……色々と課題は残ったが、とりあえず一件落着でしょう。」

「で、でも……情報部に操られた大部隊がお城に迫ってるんでしょ。女王様、大丈夫かな………?」

「確かに……警備艇も来ていたみたいだし。父さんが来た時、地上の様子はどうだった?」

エステルとヨシュアは地上の様子が気になり、カシウスに聞いた。

 

「ああ。その事ならもう心配ないぞ。向こうに残った『知り合い』やモルガン将軍に頼んで事態を収拾してもらっている。リアンにも動いてもらったからじきに騒ぎは沈静化するだろう。」

「あ、あんですって~っ!?」

カシウスの手際のよさにエステルは驚き叫んだ。

 

「ふふ、なるほど……ここに来るまでに仕込みをしていたわけか。」

「……目を覚ましたか。」

カシウスは気絶から覚めたリシャールに気付いてリシャールの方に体を向けた。

 

「モルガン将軍、そしてリアンも家族を人質にとって逆らえないようにしていた……どちらもあなたによって自由の身になったわけですか。」

「まあ、そんなところだ。だがな、俺がしたのは『その程度』のことさ。」

「違う。カシウスさん、やはりあなたは本物の『英雄』ですよ……私は不安で仕方なかった。エレボニアやカルバードの侵略を受けてしまったら勝てるとは思えなかったから……だから、貴方以外に頼れる存在を他に探した。貴方さえ軍に残ってくれたら、私もこんな事をしなかったものを……」

カシウスの言葉をリシャールは否定するように、顔を横にふって悲痛な表情で呟いた。

 

「………」

「ぐっ……!」

リシャールの呟きを聞いたカシウスはリシャールに近づき、先日以上の勢いを込めて、拳で思いきり殴り倒した。殴られたリシャールは倒れたまま、殴られた部分の痛みに呻いた。

 

「甘ったれるな、リシャール!俺はお前を甘やかした覚えなどないが……いつまで俺という幻想に囚われ続けるつもりだ!俺がすっぱりと軍を辞めて遊撃士に転向できた理由……軍にいたモルガン将軍やリアン、そしてお前という有能な人間がいたからこそ後腐れなく後を託すことができたんだぞ!!」

「た、大佐……(ぐ……先日よりも遥かに重い……)」

カシウスの言葉にリシャールは驚いてカシウスを見た。

 

「俺は周りから『英雄』とは呼ばれているが、そんな肩書に見合うほどそんなに大層な男じゃない。百日戦役の時も、将軍やお前たちが俺を助けてくれたからエレボニアに勝つことができた。だが、俺が本当に守りたいものを肝心な時に守れなかった……お前たちに大した相談もせず、己の現実から逃げてしまった……『遊撃士』という場所に逃げ込んだ、情けない男に過ぎん。」

「……父さん……」

エステルはもし、あの時アスベル達がいなかったら母――レナがどうなったかを考え悲しげな表情をした。そしてカシウスは決意の表情で話を続けた。

 

 

「だが……お前のお蔭で俺も目が覚めた。そして、覚悟も決まった……リシャール、お前もこれ以上逃げるのはよせ。罪を償いながら、今一度自分に何が足りなかったのか……俺とは違う、お前自身にしかできないことをじっくり考えるがいい。」

 

 

こうして、情報部によるクーデター計画は幕を閉じた。『知り合い』やモルガン将軍とリアン少佐によって王国軍部隊の混乱は収拾され……計画に荷担していた情報部の人間は各地で次々と逮捕されていった。

 

そして数日後………

 

 




てなわけで、一区切り。FC編はもう少し続きますがw


■■■■■、もう少しで出番ですよ(ニヤリ)

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