英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

93 / 200
第66話 環の守護者

~封印区画 最深部~

 

エステル達と人形兵器の戦いはエステル達が圧倒的に優勢だった。今までの戦いから得た経験をフルに生かし、速やかに殲滅した。そして、レイアとリシャールの戦闘……互いに得物が違う者同士の戦いは、互角だった。抜刀術のリシャール、一方パワー主体のレイア……対照的な戦い方とはいえ、どちらも一進一退だった。

 

「流石は『天上の隼』の三席に名を連ねる者……だが、私とて負けられない……!!」

リシャールは手に持つ刀に最大限の闘気を込めた!

 

「散り逝くは叢雲(むらくも)………咲き乱れるは桜花……今宵、散華する武士(もののふ)が為、せめてもの手向けをさせてもらおう!」

そしてリシャールはレイアに一瞬で詰め寄って、抜刀した!

 

「はあああああああっ……!!」

いつもは中々見せない怒りの表情でリシャールを見た後、身体能力を上げるクラフト『リィンフォース』を発動させ、スタンハルバードに魔力と闘気を込めてリシャールに放った!

 

「奥義、桜花残月!!」

「クリムゾンゲイル!!」

 

「ぬぐっ!?」

互いのSクラフトがぶつかり合い、闘気の刃で相手を圧倒するレイアのクラフト――クリムゾンゲイルを受けたリシャールは着込んでいた鎧が破壊されて、呻いた。

 

「これで終わらせます……ヴォルカニック、フォール!!」

「ぐっ!?…………ガハッ!!」

衝撃を破壊力に変換する導力ユニットの特性をフルに生かした必殺技……上空から強烈な一撃を叩き付けるレイアのSクラフト『ヴォルカニックフォール』を至近距離で受けたリシャールは吹っ飛ばされ、壁にぶつかって呻いた。

 

「これで終わりだ……はっ!」

「ガッ!?」

そこに人形兵器との戦闘を終えたヨシュアがSクラフト――漆黒の牙を放って、リシャールにさらにダメージを与えた!そしてそこにエステルが棒を構えて、Sクラフトを放った!

 

「これで決めるっ!絶招、桜花大極輪!!」

「これまでか…………」

エステルのSクラフトを全て受けてしまったリシャールはついに膝をおり、立ち上がれなくなった…………だが、リシャールが膝をおると同時に黒のオーブメント――『ゴスペル』が妖しく光り出した。

 

「さすが、“朱の戦乙女”にカシウス大佐の子供たち。だが……時間は稼げた。」

リシャールは自分を破ったエステル達に称賛の言葉を送った後、目的は達することができたので不敵に笑った。

 

「しまった……!」

「くっ……!」

それを見たエステルとヨシュアは『ゴスペル』を止められなかったことに無念を感じると同時に、『ゴスペル』が出す妖しい光にうかつに近づけなかった。

 

「「……………」」

「ふ、ふええ~!?」

レイアとシェラザードは何が来てもいいように警戒をし、ティータは慌てて声を出した。そして地震が起こり、『ゴスペル』が妖しい光を周囲にまき散らすと遺跡内の照明がどんどん消えて行った。『ゴスペル』の妖しい光は広範囲にわたって影響を与えた。そして地震が終わると同時に『ゴスペル』も役目を果たしたかのように見え、妖しい光を出さなくなった。

 

「な、何だったの、今の……」

「導力停止現象なんだろうけど、今までのものとは違っていた……。まるで、何かが解放されたような……」

エステルの呟きにヨシュアは答えたが、実際に何があったかよくわからず困惑気味で答えた。そして突如部屋の床が光りに謎の装置に金色の光が宿ると同時に謎の声が響き渡った。

 

『……警告します……。全要員に警告します……』

 

「え……」

「あの装置が喋っているんだ……」

エステル達は聞き覚えのない声に驚いた後、ゴスペルが置いてある装置を見た。

 

『『オーリオール』封印機構における第一結界の消滅を確認しました。封印区画・最深部において『ゴスペル』が使用されたものと推測……『デバイスタワー』の起動を確認……』

 

そしてエステル達の周りに建っていた4本の柱が地面へと収納されて行った。

 

「な、なによこれ!?一体何が起こるの!?」

「落ち着いてエステル。ただ、いつでも戦える準備はしておいて!」

慌てているエステルにレイアはスタンハルバードを構えて警告した。

 

「第一結界……『オーリオール』封印機構……大佐、これはいったい!?」

「わ……わからない……。このような事態になるとは想定していなかった……」

唯一事情を知っていそうなリシャールにヨシュアは尋ねたが、リシャールも何が起こったかわからず戸惑いの表情を見せて答えた。そして装置はさらに伝え続けた。

 

『第一結界の消滅により、『環』からの干渉波、微量ながら発生……『環の守護者』の封印解除を確認……全要員は、可及的速やかに封印区画から撤退してください……』

 

機械的な声の警告がなくなると、エステル達の横にあった壁がなくなり、大きな空洞が出来た。そして空洞の奥から小さな赤い光がいくつか出て、リシャール達が連れていた人形兵器とは核が違う超大型の人形兵器と周囲を浮遊している人形兵器が現れた。

 

「な、なに、このブサイクなの……」

「気を抜かないで!こいつが『環の守護者』だ!」

人形兵器の見た目に呆れているエステルにヨシュアは警告した。

 

「これほどの人形兵器が地上に解放されたら、とんでもないことになるわ!なんとしてでも、ここで仕留めるわよ!」

「は、はい!」

シェラザードの言葉にティータは頷き、導力砲を構えた。

 

「ゲート固定……導力供給完了……再起動確認……MODE:索敵行動……座標確認……『環の守護者』トロイメライ……索敵行動開始……」

未知なる存在、『環の守護者』がエステル達に襲いかかったが、相手の攻撃は単調であったので、メンバー全員でSクラフトや強力なアーツをトロイメライに命中させたのだが敵は倒れなかった。

 

「な、なんで倒れないの!?」

普通なら倒れているはずの攻撃を与えたつもりなのに全然弱っている様子を見せない、トロイメライを見てエステルは焦った。

 

「まだ、何かするつもりだ!」

ヨシュアはトロイメライの様子がおかしいことにいち早く気付き、仲間達に警告した。そしてトロイメライは取り巻きの浮遊していた人形兵器を自らの手と合体させ、さらに足や手も伸び、頭の部分も変形して姿も戦闘向けに見える姿になった。

 

「MODE:完全殲滅(ジェノサイド)……『環の守護者』トロイメライ……これより殲滅行動を開始する……」

トロイメライは変形した後、エステル達に襲いかかった。後にクーデター事件と呼ばれる真の最終決戦がついに始まった……!

 

「(エステル達から聞いた『ゴスペル』絡み……となれば、下手にアーツは使えないわね)……集いし怒りの風よ、吹きあがれ!!大竜巻!!」

シェラザードはクラフト『アルカナイズカード:大嵐』を放った。するとトロイメライは何の反応もせず、シェラザードのクラフトを受けた。トロイメライの足元で大きな竜巻が出来て、トロイメライを襲ったがあまりダメージを受けている様子ではなかった。

 

「……あんまり効いていないわね……でも、これでクラフトには反応しない事がわかったわ!」

「わかったわ!」

シェラザードの言葉を聞いたエステルは頷き、武器を構えた。トロイメライは腹の部分から砲口を出した後、エネルギーらしきものを溜めた!

 

「!散って!」

トロイメライの次の攻撃がなんとなく予想できたレイアは横に跳んで回避しながら、警告した。そしてエステル達が散開するとエステル達がいた所に強力な爆撃が放たれた!爆撃は床を走り、壁にぶつかった後大きな爆音をたてた。そして爆撃の後の床ははがれ、壁は爆撃によって黒ずみ煙をたてていた。

 

「あ、あぶな~………」

その壁を見て、エステルは冷や汗をかいた。

 

「………………」

そしてトロイメライはなんと、小型の人形兵器を数体召喚した!そして小型の人形兵器達は体を光らせた後、アーツを放った。

 

「わっと!?」

「はわわ!」

「フッ!」

標的にされたエステルやティータ、ヨシュアはなんとか回避した。

 

「えいっ!」

そしてティータは導力砲で召喚された人形兵器達をトロイメライを巻き込んで攻撃した!

 

「おぉぉぉぉ!」

「……………」

「!……ハッ!」

さらにヨシュアがクラフト――魔眼を使って、小型の人形兵器達の動きを止めたが、トロイメライの動きは止まらず、片手でヨシュアを攻撃して来た。トロイメライの攻撃に気付いたヨシュアは間一髪で回避に成功した。

 

「……………」

「えいっ!」

「はあっ!!」

トロイメライはまたしても腹の部分の砲口からエステル達に向かって連射した。それを全て回避すると、ティータが放った導力砲の砲弾とヨシュアが放ったクラフトがトロイメライ達に命中した!

 

「はっ!シルフェンウィップ!!」

さらにシェラザードの鞭のクラフトがトロイメライ達に命中し、小型の人形兵器は壊れる寸前になった!

 

「ハァァァァ………旋炎輪!!」

そしてエステルは闘気の炎を棒に宿した旋風輪――旋炎輪を放って、トロイメライのダメージを与えると同時に小型の人形兵器達を倒した!トロイメライはそれを見て、両手を広げると合体させていた浮遊兵器でエステル達を大きく囲み、背中にエネルギーをチャージした!

 

「(この攻撃……チャージは、間に合った!!)はああああああぁぁぁっ!!!」

恐らくトロイメライの最大攻撃……そこから大きな攻撃が来ると判断したレイアは、隠し持っていたオーブメントの『チャージ』が間に合ったことを確認し、今までに無い規模の闘気を放つ。さらに、彼女の持っているスタンハルバードを包み込むように闘気の刃が形成された。

 

「『オルティア』、『エレメンタル・アクセラレーション』、『オーバルブースト』起動!!」

 

『エレメンタル・アクセラレーション』……第七世代型戦術オーブメント『オルティア』の持つ機能の一つで、使用者が使うことのできる導力魔法の『重複を含む同時使用』。

 

本来であれば一回の駆動につき一回しか使えないが、これはオーブメントのリミッターによるものである。連続して使えば、クォーツはおろかオーブメント本体も無事では済まない。下手すれば使用者が被害を受けかねないためだ。

 

そこで、『十三工房』より得た導力技術を基に、オーブメントの駆動エネルギーをオーブメント内にチャージし、ノーウェイトかつ任意で発動できるようにしたもの……それが、『エレメンタル・アクセラレーション』。この機能の使用は、EP消費が激しくなるデメリットを持つ。その部分についても対策はされているが、今は説明を省く。

 

レイアがあらかじめ駆動させた魔法は風属性全体魔法『グランストリーム』、同じ属性の直線魔法『プラズマウェイブ』『ラグナブラスト』『ゲイルランサー』……それらの四つの魔法をスタンハルバードに纏わせる。普通であれば武器自体がもたないが、それらの魔法を纏った武器――ツインスタンハルバードは神々しく輝き、彼女がもちうる力を込めたクラフト……Sクラフトを超え、Fクラフトすらも超越した……EX(エクシード)クラフトを放つ!!

 

「自らの力でその報いを受けよ……これが、私の全力の一撃!!」

地面を蹴り飛ばすように飛び上がり、トロイメライの直上まで到達……そしてそこから、敵を叩き割るかのごとく放たれた技。“朱の戦乙女”としての膂力を余すところなく発揮し、極限まで高めた破壊力を以て敵を叩き斬る一撃が炸裂する。その姿はまるで空より飛来する天罰の雷……彼女は、その名を叫んだ!!

 

 

『絶技……活心撃・神雷!!』

 

 

「!!……」

トロイメライは、レイアのEXクラフト『活心撃・神雷』の一撃を受けて、浮遊兵器を何とか腕に戻したが煙を立て動かなくなり、トロイメライはついに音をたてて崩れた……!

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。