~エルベ周遊道~
「え、えと、その……」
「やっぱり、か…オリビエ、クローゼにその『宣戦布告』はインパクト強すぎじゃないのか?」
慌てふためくクローゼを見つつ、ため息をつくシオン。一国の皇族がある意味『これからクーデターを起こします』と言っているようなものになるわけで、それに耐性の無いクローゼには些か非常識に見えたようだ。
「私も同意見かな、オリヴァルト皇子。」
「そうかい?あの宰相なら意図するまでもなく唐突にやるだろうから、問題ないと思うがね。」
「そう言う問題ではないだろう……お前と違って、クローディア姫はまだ政治の場数など踏んでないのだぞ?」
「こればかりはミュラーさんの意見に同感ね。」
だが、あの御仁――ギリアス・オズボーンはそんなこともお構いなしに事を運ぶだろう。泣き言など言っていられない。
「お気遣いありがとうございます、ミュラーさん。ですが……私自身、オリヴァルト皇子の決意を聞いて、負けていられない気持ちになりました。」
「クローゼ……」
……私なんかが、国王の座を継いでいいのかと、正直思っていました。でも、エステルさんたちやオリビエさん……それに、シオンも。色んな人が自分の身分に拘らず、動いてくれることに。ならば、私は私にしかできないことを始めよう。それが、一緒に旅をしてきたエステルさん達への、私なりの『礼』として。
「シオン。以前、お祖母様と貴方が話しているのを聞いてました。その時は、私自身も悩んでいたのですが……オリヴァルト皇子と話して、共に行動して……私も、次期国王として精進します。この事件が終わったら、私はお祖母様にこの決意を話します。」
至らぬことばかりであるのは承知の上。でも、私は一人ではない……いろんな人たちが、私が今まで出会ってきた人の分だけ私は強くなれた。強がりに聞こえるかもしれませんが、彼らの思いや優しさが私を強くしてくれたのは、紛れもない事実なのだと。そのきっかけをくれたのは、ユリアさん、アスベルさん、シルフィさん、ジル、ハンス、ミーシャ、テレサ先生、ジョセフさん、孤児院の子どもたち……それとシオン。
「フフ、クローディア姫……いや、クローディア王太女殿下。些か早いですが、このオリヴァルト・ライゼ・アルノール、貴殿のご決断に敬意を表し、貴殿がいずれ治めるリベール王国とは互いに良き関係でありたいものです。そして、私も一層精進することを誓いましょう。」
「こうしてると、本当に皇族なんだけれど……」
「その疑問には尤もだな……いつもこのように在ってくれれば、俺も苦労せずに済むというのに……」
「あはは……いつもお疲れ様です。」
オリビエの畏まった言葉に疑問を浮かべたシルフィア、それに答えつつも珍しく少し疲れたような表情を浮かべるミュラーを労わるかのようにレイアが声をかけた。
~グランセル城内~
その頃、エステル達はグランセル城の中に案内された。
「うっわ~……」
「当然と言えば当然だけど……。今まで見てきたどの屋敷よりも圧倒的に豪華だね。」
「ただ豪華なだけじゃなくて歴史と伝統を感じさせる壮麗さ……。つくづく、旧き王国の格式と伝統を感じさせるねえ。」
城に入ったエステル達は城内の風景に感嘆の声を上げた。
「ようこそ、グランセル城へ。ジン選手御一行でいらっしゃいますわね?」
(げげっ……カノーネ大尉……)
(予想してなかったわけじゃないけど……)
カノーネの登場にエステルは嫌そうな顔をし、ヨシュアはカノーネを警戒した。
「ああ、そうだ。公爵さんの招待を受けて参上した。えっと……あんたは?」
一方、エステル達の様子に気付いていないジンはカノーネが何者かを尋ねた。
「うふふ、申し遅れました。グランセル城の警備を担当する情報部のカノーネ大尉と申します。ジン選手御一行におかれましては御優勝、おめでとうございます。試合を拝見させていただきましたが凛々しくて、本当に素敵でしたわ。」
「いやあ~、それほどでも。そちらこそ、その若さと美貌で軍の大尉とは本当に驚きですな。よほど優秀でいらっしゃるのだろう。」
「まあ……お上手でいらっしゃいますこと。でも、そちらの若き遊撃士殿ほどではありませんわ。」
ジンの賛辞を受けたカノーネは意味深な表情でエステルとヨシュアを見た。
「……!」
「………」
カノーネに見られたエステルとヨシュアは何を言われてもいいように身構えた。
「エステル・ブライトさん。ヨシュア・ブライトさん。お会いするのはルーアンの事件以来ですわね?」
「……うん、そうね。」
「ご無沙汰していました。」
カノーネの当り触りのない挨拶の言葉にエステルやヨシュアは笑顔で答えた。
「あいにくですが、ラッセル博士の一件はまだ解決していないのです。どうやら、博士と孫娘さんを誘拐した不届き者がいるらしくて。エステルさんたちにお心当たりはないかしら?」
「全くと言っていいほど、心当たりがないわねぇ。」
「あの事件は正遊撃士に任せて僕たちは王都に向かいましたから。その後の続報も聞いていません。」
カノーネは意味深な表情でいきなりラッセル博士達の事を尋ねたが、エステルやヨシュアは知らないフリをした。
「そう……ふふ。それは本当に残念ですわ。まあ、情報部の力をもってすれば誘拐犯の逮捕も時間の問題でしょう。楽しみに待っていてくださいね。」
「そうね。誘拐犯ぐらい貴方達なら捕まえられそうだものね。(こ、この雌ギツネ~……)」
「わかりました。博士は僕たちにとっても恩人なのでよろしくお願いします。(エステル、少しは成長したみたいだね……)」
不敵な笑み浮かべて博士達を捕まえる事を宣言したカノーネを見て、エステルとヨシュアは笑顔で答えつつも、エステルは内心怒りを溜め、ヨシュアはそんなエステルの成長を実感していた。
「それはもちろん……。さて、それでは皆さんをお部屋までご案内申し上げましょう。シアさん……あとはお任せしてもいいかしら?」
「はい……お任せくださいませ。」
カノーネに言われ、カノーネと一緒に来たメイド――シアが少し前に出て来た。
「念を押しておきますが……お客様に、つまらない話をして失礼をかけることがないように。いいですわね?」
「は、はい……わかっております。」
カノーネの言葉にシアは恐縮しながら答えた。
「うふふ、それでよろしい。それでは皆さん。よき夕べをお過ごしください。わたくしは、これで失礼しますわ。」
カノーネはどこかに去って行った。そしてエステル達はシアの案内によって、客室に着いた。
~グランセル城内・客室~
「うっわ……」
「こんな所に泊まれたなんてちょっと想像できなかったな……」
「いやあ~、何ていうかいい土産話になりそうだぜ。」
エステル達は客室の豪華さに驚いた。
「晩餐会が始まるまでしばらくあるかと存じます。城内は自由に見学して頂いて構いませんが、警備上の理由で立入禁止にしている区画があります。くれぐれも立入はご遠慮ください。」
「えっと、具体的にはどういう所がダメなわけ?」
どこが立入禁止になっている場所か気になったエステルはシアに尋ねた。
「まずは、女王陛下がいらっしゃる女王宮ですね。屋上にある空中庭園の一角に築かれた小宮殿ですわ。」
「空中庭園……すごく綺麗そうな雰囲気ねえ。」
「うふふ、生誕祭の時にはそこのテラスから王都の市民に陛下が挨拶してくださるんです。空中庭園に出るくらいなら大丈夫だと思いますよ。それと、他の立入禁止場所ですが……。1階にある親衛隊の詰所と地下の宝物庫がそうなっております。」
「親衛隊の詰所っていうと……」
「たしかテロリストとして指名手配されてる連中らしいな?」
浮かれ気分だったエステル達は親衛隊の話が出て来ると、表情を真剣にし、ヨシュアやジンが尋ねた。
「は、はい……現在、その場所は情報部の方々が使用されています。立入は禁じられているのでどうかご了承くださいませ。」
尋ねられたシアは言いにくそうに答えた。
「だいたい判りました。ところで、晩餐会に招待されている他の方々はどうしているのですか?」
「すでに全員お見えになっていますわ。たぶん、それぞれのお部屋で寛(くつろ)いでいらっしゃるかと思います。」
「そうですか……」
「それじゃあ、もうクラウス市長も来てるんだ。」
「はい、先ほどいらっしゃったばかりですわ。それでは私は失礼しますが……何か御用がございましたら1階の控室までご連絡ください。」
そしてシアは部屋から出て行った。
「う~………ちょっと、惜しい事をしたわね………まさか、こんな豪華な部屋に泊まれるとは思わなかったし………」
シアが出て行った後、エステルは客室に泊まれない事を微妙に悔しく思った。
「ハハ………それだったら、ここに泊まるかい?」
悔しがっているエステルを見て、ヨシュアは苦笑しながら提案した。
「う~ん……それだと逆に名残惜しくなっちゃうしね。というか、あたしにとって最高のベッドは家のベッド以外にないわ!」
「ハハ……エステルらしいな。」
「そうだな。」
力強い口調で力説を披露したエステルを見てヨシュアは苦笑し、ジンは感心した。
「さてと……」
そして表情を真剣に直したエステルはジンに気付かれないよう、ヨシュアに目配せをした。エステルの目配せに気付いたヨシュアも真剣な表情で頷いた。
「……ねえ、ジンさん。あたしたち、ちょっとお城の中を見物しに行きたいんだけど……」
「晩餐会が始まるまでには戻ります。」
「やれやれ、試合の後だっていうのに若いモンはタフだねえ。いいぜ、行ってきな。俺はメシまで、この豪勢な部屋でのんびりと休ませてもらうぜ。」
そしてエステルとヨシュアは部屋を出た後、招待客である各市の市長やルーアンの市長代理で来ているコリンズに挨拶をしに行くことにした。
~メイベル市長の部屋~
二人が部屋に入ると、メイベルとリラ、そして昨日の試合で見かけた二人の選手がいた。
「あら、エステルさんにヨシュアさんではないですか。」
「ご無沙汰しております、エステル様にヨシュア様。」
「久しぶり、メイベル市長にリラさん。」
「お久しぶりです。」
「エステルさんにヨシュアさん、話はかねがね聞いておりますわ。何でも、ルーアン地方やツァイス地方で色々な実績を挙げている期待のルーキーという噂を聞きますし。」
「あはは……あたしとしては、出来る範囲でやってるだけなんだけれど。」
メイベルとリラ、エステルは言葉を交わし、最近の事についていろいろと話を交わす。
「それと、そちらの方々は……確か、アスベルのチームにいた……」
「ふふ、なるほど……アンタ達がカシウスさんの子どもってわけね。」
「……言われてみれば、面影はあるかな。」
「こ、ここでも父さんなのね……」
「……リベールでは見ない顔ですね。」
ヨシュアの指摘はある意味当たっている。何故ならば、本来であればリベール国外の人間がこのような場所にいること自体が不思議なのだ。
「あたしはサラ・バレスタイン。君たちと同じ遊撃士よ。」
「フィー・クラウゼル。よろしく(ペコリ)」
「あたしはエステル・ブライト。よろしく、サラさん。」
「僕はヨシュア・ブライトです。それにしても、まさか“紫電(エクレール)”と呼ばれる帝国きっての遊撃士が何故ここに?」
互いに自己紹介した後、ヨシュアは気になることを尋ねた。帝都支部所属の遊撃士がここにいることもそうだが、何故メイベル市長の部屋にいるのか……
「いや、あの公爵さんが勝手にアタシらも準優勝扱いにしたじゃない?それで、個人的に親交のあったメイベルの部屋に泊まることになったのよ。」
「私としても、サラさんがいてくれることに安心しておりますわ。」
「……酒だけが心配。」
「フィー、その口を塞いであげましょうか?」
「それは勘弁」
(ある意味シェラ姉みたいなものってことかしら……)
(三人揃ったら、オリビエさんが死んじゃうんじゃないかな……)
サラの説明、メイベルの安堵した言葉、釘を刺すように放たれたフィーの言葉……エステルらはサラ・シェラザード・アイナの三人が集ったイメージを想像し、オリビエの安否を少しばかり気遣うようなことを思ったとか……
その後、クラウス市長とルーアン市長代理として来ていたコリンズ学園長に挨拶した後、ヴィクターの泊まる部屋に足を運んでいた。
~ヴィクター侯爵の部屋~
その部屋にはヴィクター、マードック工房長……そして、アルトハイム自治州の長である男性がいた。
「ふむ、気配からするに君たちだとは思っていたよ。」
「おお、エステル君にヨシュア君。」
「久しぶり、ヴィクターにマードックさん。」
「お久しぶりです。」
「いや~、キリカ君から話は聞いていたが、無事に会えて何よりだよ。」
「いえ……ところで、そちらの方はどちら様ですか?」
ヴィクターやマードックと言葉を交わした後、ヨシュアはその男性に気づき、尋ねた。すると、その男性は微笑んで二人の方を見た。
「おや、これは可愛らしい方々だね。」
「はじめまして。あたしはエステル・ブライトといいます。」
「ヨシュア・ブライトです。」
「これはご丁寧に……僕がアルトハイム自治州の当主、フィリオ・フォン・アルトハイム。よろしくね。」
一通り言葉を交わした後、自己紹介する男性もといフィリオとエステル、ヨシュアの三人。
「ところで……ヨシュア君だっけ。君はどこ出身なんだい?」
「えと…すみません、よく覚えていないんです。」
「そうか。何、知り合いによく似ていたからね。僕の勘違いかもしれないし、気にしないでくれ。」
「えと、フィリオさん。見たところ、あたしやヨシュアより少し年上にしか見えないんだけれど……」
ヨシュアの姿を見てどことなく見覚えがありそうな表情で尋ねると、ヨシュアは申し訳なさそうに答えた。その答えを聞いてフィリオは申し訳なさそうに言葉を呟いた。すると、エステルはフィリオの容姿が当主にしては若々しすぎると感じ、尋ねた。
「実際その通りかな。今年の春にツァイス工科大学を卒業したばかりでね。帰ってきたらいきなり当主に抜擢されたんだ。アハハ……」
「……な、何と言うか、ヴィクターといい、この人って本当に貴族なの?デュナン公爵とは全然違うわね……」
「でも、アルトハイムって名乗ってるし、間違いないと思うよ。というか、失礼だよエステル。」
「気にするな。私が許しているし、ここまで私と対等に話せる少女など、珍しいという他あるまい。」
「アハハ♪それは僕自身も思ってることだよ。でも、それがアルトハイム家の信条だからね。」
アルトハイム家には、初代当主から受け継がれてきた信条がある。
『人なくして国は無し、人なくして貴族など無し』
……人がいるからこそ国は成り、敬う人がいるからこそ貴族は在り……そこに身分は関係なく、人であればこそ分け隔てなく手を差し伸べ、耳を傾ける。それが、貴族という身分に生まれた者の“貴族の義務(ノブレスオブリージュ)”であると。尤も、そのような貴族は少数の部類に入ってしまうのだが……
「ともあれ、今後何かとお世話になるかもしれないね。もしセントアークに来るようなことがあれば、遠慮なく訪ねてきてくれ。」
「ええ、そうさせてもらうわね。」
「何はともあれ、その時はお邪魔させていただきます。」
その後、エステルらは女王宮がある空中庭園に向かった。
~グランセル城・女王宮入口前~
「あ……」
「ここが女王宮みたいだね……」
空中庭園を歩いていたエステルとヨシュアは女王宮らしき建物を見つけた。しかし、そこには二人の特務兵が門番として女王宮の入口に立っていた。
「む……なんだ貴様らは。」
「おい……こいつら……」
エステルに気付いた一人の特務兵は警戒し、もう一人の特務兵はエステル達が胸に付けている遊撃士の紋章に気付いた。
「えっと……あたしたち、公爵さんに招待された者なんだけど……」
「こちらは、陛下のいらっしゃる女王宮でいいんでしょうか?」
「……その通りだ。」
エステル達は普通に自分達が何者かや女王がいるかを尋ねた。尋ねられた特務兵は普通に返した。
「だがここ数日、陛下は御不調でいらっしゃる。お目通りを願っても無駄だぞ。」
「や、やだな~。そんな大それたこと考えてないわよ。そりゃあ、ちょっとはお目にかかれたらな~って思うけど。」
特務兵の注意にエステルは苦笑しながら答えた。
「ところで、クローディア姫もこちらにいらっしゃるんですか?」
「いや、こちらには……」
「……おい。」
「とと、それは熱心に陛下の看病をなさっていらっしゃるぞ。もちろん、お前たちの相手をなさる余裕などないからな」
ブラフも込めてヨシュアが尋ねた事に思わず答えそうになった特務兵はもう一人の特務兵の注意に慌てて誤魔化した。
(ま、本物はここにはいないけれど……ヨシュア、意地悪すぎない?)
(いいんだよ。こういう時は虚実を交えて話さないと、真実は見えてこないしね。)
その言葉にエステルは小声で呟き、ヨシュアは満面の笑みを浮かべて答えた。
「……こんな所で何をなさっているのですか?」
その時、女王宮の中から中年の女性が現れた。
「夫人……」
「もうお帰りかな?」
「もうすぐ晩餐会ですからいったん控室に引き上げます。ところで、こちらのお客様は?」
中年の女性はエステル達に気付き、特務兵達に尋ねた。
「武術大会で優勝したチームの者です。たかが遊撃士の身分ですが一応、招待客とはいえるでしょうな。」
尋ねられた特務兵は嘲笑しながら答えた。
「ムッ、たかが遊撃士って……!」
特務兵の嘲笑にエステルは怒ろうとしたその時
「無礼者っ!」
中年の女性が特務兵達を大声で一喝した。
「あなた方は、王城の招待客を侮辱するつもりですか!」
「や……自分たちはその……」
女性の迫力に特務兵達はたじろいだ。
「たとえ招かれたのが公爵閣下でも城を来訪された方は、陛下のお客様!その事を忘れてもらっては困ります!」
「りょ、了解しました。」
(す、すごい迫力……)
(ひょっとしてこの人が……)
特務兵をたじろかせた女性を見て、エステルは驚き、ヨシュアは女性の正体を察した。
「ですが夫人……彼らを通すわけにはいきません。その事は、大佐の説明で分かっていただけたはずですな?」
「……その事は聞き飽きました。」
特務兵の言葉を聞いた女性は溜息を吐いた後、エステル達の前に出た。
「申しわけありません、お客様。警備上の理由で、女王宮の付近に近づくことは禁じられています。できれば、晩餐会が始まるまでお部屋でお待ちくださいませんか?」
「あ……は、はい。」
「わかりました。そうした方が良さそうですね。……すみません。色々とお騒がせしました。」
頭を下げる女性を見てエステルは頷き、ヨシュアは特務兵達にも謝った。
「フン……」
「分かればいいのだ、分かれば」
「………(ギロッ)」
「……どうぞ、気を付けてお戻りください。」
ヨシュアの謝罪にいい気になった特務兵達だったが、女性に睨まれると丁寧な物言いで言い直した。そしてエステルとヨシュア、女性は空中庭園の広場に来た。
「……お客様の前で見苦しいところをお見せしましたね。申し遅れました。私の名はヒルダといいます。グランセル城の女官長として侍女の監督にあたっております。」
「やっぱり……」
「あなたがヒルダ夫人だったんですね。」
女性――ヒルダが名乗り出ると、エステルとヨシュアは納得した。
「おや……。失礼ですが、面識がありましたでしょうか?」
2人が自分を知っているかのような様子にヒルダは驚いて、尋ねた。
「えっと……ある人から教えてもらったんです。」
ヒルダの疑問に答えたエステルはユリアから貰った紹介状をヒルダに手渡した。実は、シャルトルイゼから降りる直前、ユリアから何かの助けになってくれるだろうという期待を込めて、エステルらに紹介状を手渡していたのだ。
「この筆跡は……」
紹介状を読んだヒルダは驚きの声を出した。
「あ、それだけで判るんだ。」
「その紹介状と、遊撃士の紋章が僕たちの身分証明となります。」
「わかりました……。ここでは何ですから侍女達の控室に参りましょう。そこで話を伺わせていただきます。」
そしてエステル達はヒルダの案内によって侍女達の控室に向かった……………………
まず、FCと違う点ですが……
・クローゼの王太女の決意(SC編よりも早い時期での決断)
・オリビエの意志表明(これも早い時期での表明)
しかも、それをお互いに宣言しています。ですが、公表自体はまだ先の話です。それにはそれぞれの思惑もあったりしますが……『あのシーン』が茶番劇にしかなり得ませんw
ちなみに、第59話で出てきたスコールはFF8+アレンジ、今回出てきたフィリオはスパロボOGのイメージでお願いします。