~グランアリーナ・選手控室~
控室に入るとそこにはヴィクター達がいた。
「あ、ヴィクターもこっちなんだ。」
「ああ。お互いに決勝まで行けるといいな。」
「ええ!負けるつもりなんてないんだから!!」
ヴィクターとエステルが会話でもりあがっている所、試合開始のアナウンスが入った。
「皆様……大変長らくお待たせしました。これより武術大会、本戦2日目を始めます!早速ですが、本日最初の第五試合のカードを発表します。南、蒼の組―――カルバード共和国出身。武術家ジン以下4名のチーム!北、紅の組―――遊撃士協会、グランセル支部。クルツ選手以下4名のチーム!」
「来たっ!しかもカルナさんたちが相手だわ!」
「……強敵だね。僕たちが、ジンさんの足を引っ張らないようにしないと……」
クルツ達が相手と知ったエステルは目を輝かせ、ヨシュアは気を引き締めた。
「そう慎重になることはないさ。お前さんたちの実力はじゅうぶん正遊撃士に迫ってる。後は勝とうという気合いだけだ。」
「うんっ!」
「頑張ります!」
「フッ……いざ行かん、戦いの園へ!」
「勝利を祈っているぞ。」
「……幸運を祈っておこう。」
ヴィクター達の応援の言葉を背に受け、エステル達はアリーナに向かった…………
~グランアリーナ~
「来たね。エステル、ヨシュア。」
「新人君たち、やっほー!」
エステル達と顔を合わせたカルナは不敵な笑みを浮かべ、アネラスは元気良く言った。
「えへへ。どーも、先輩たち。」
「胸を貸していただきます。」
エステルとヨシュアは軽くお辞儀をした。
「『不動のジン』……あんたとは一度やり合ってみたかったんだ。どれほどの腕かこの剣で確かめさせてもらうぜ!」
「フ、いいだろう。こちらも全力でいかせてもらう。」
不敵な笑みを浮かべているグラッツにジンも不敵な笑みで返した。
「はは、出来れば決勝戦で戦いたかったものだが……ここで当たったのも運命だろう。」
「片や、ベテランの遊撃士集団。片や、注目の新人コンビと武術家ブレイサーと天才演奏家との混合チーム。どちらが勝つかは女神達のみぞ知る、だね。」
決勝戦でエステル達と当たらなかった事にクルツは苦笑し、オリビエはいつもの調子で言った。
「これより武術大会、本戦第五試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」
審判の言葉に頷き、エステル達とクルツ達達両チームはそれぞれ、開始位置についた。
「双方、構え!」
両チームはそれぞれ武器を構えた。
「勝負始め!」
そしてエステル達とクルツ達は試合を始めた!
「みんな、行くわよ!」
「うん!」
「おう!」
「フッ、了解した!」
「油断はするな……相手にはあの“不動”がいる。気を引き締めてかかれ!」
「ああ!」
「ええ!」
「了解です!!」
双方、エステルとクルツの号令で互いに戦闘力を上げる。
「先手は俺が取るぜ!食らえ!!」
「……くっ!!」
グラッツの剣による攻撃……ヨシュアは辛うじて受け止めたが、予想していたよりも重い攻撃に表情を歪ませた。
「ヨシュア!せいやっ!!」
「おおっと!!」
そこへ割って入る形でエステルの棒が振り下ろされ、グラッツはたまらず距離をとる。
「援護するよ、グラッツ。シューティングレイン!!」
「あうっ!」
「つっ!」
そこへカルナがすかさずクラフト『シューティングレイン』を放ち、二人が怯む。
「よし、隙が「そうはいかないぞ」っ!!」
それを好機ととらえたアネラスが襲い掛かるが、割って入ったジンの攻撃に止められ、やむなく後退する。
「ここは愛と真心を込めて回復と行こう……ホーリーブレス!」
そして、チャンスと言わんばかりにオリビエの回復アーツがエステルとヨシュアを回復させた。
「ありがと、オリビエ。」
「助かります。」
そして、回復した二人はオリビエに礼を言った。愛と真心の部分についてはあえて触れないことにしたのは言うまでもないが……
「方術―――攻めること雷の如し。」
一気に攻め切らなければ此方が不利……そう考えたクルツは方術を使い、メンバーの攻撃力を上げた。
「(攻撃力を上げてくるか……ならば)はああああああ………はあっ!!」
ジンはそれを見てクルツの考えていることを推測し、クラフト『龍神功』で自らの身体能力を上げる。
「続けて、雷神脚!!」
続けざまにジンは雷神脚を相手の陣内に飛び込む形で叩き込む。
「く……なら、二の型“疾風”!」
「おおっと」
アネラスはダメージを負いながらもクラフト『疾風』を放つが、ジンはその巨体とは思えぬ回避を見せて、他のメンバーの近くまでいったん下がった。
(どうする、ヨシュア?)
(グラッツさんとアネラスさんは前衛、カルナさんは後衛……となると、鍵はクルツさんになると思う。)
(それはこちらも同意義だね。僕らのチームで言えばエステル君がそれにあたるわけだ。)
(とはいえ、向こうはまだ切り札を切っていない……なら、俺とヨシュアで前に出る形だな。エステルにオリビエ、サポートを頼む。)
四人は小声で速やかに作戦を立て、ジン・ヨシュア―エステル―オリビエの構成になるよう陣形を整える。
「(成程……ならば)方術――堅きこと鉄の如し!」
その陣形を見たクルツは笑みを浮かべ、方術を前衛であるアネラスとグラッツにかけた。
「グラッツにアネラス。あまり前に出るなよ!」
「オッケーだ!」
「了解!」
クルツの意図を理解し、グラッツとアネラスはクルツと一定の距離を置いて構えた。だが、それすらもエステル達の考えた策のうちだった。
「ならば、縁起ではないが……僕は愛を込めて君たちに贈ろう……」
「は?薔薇?」
「リュート?」
笑みを浮かべてオリビエが投げたのは薔薇の花束……続いて取り出したのはリュート。その光景にグラッツとアネラスは呆気にとられるが、
「(まさか……!)まずい、二人とも」
「愛という名の鎮魂歌(レクエイム)をね!!」
その意味をクルツは察したが、時既に遅し。リュートに仕込まれた銃弾の雨を相手に与えるオリビエのSクラフト『レクイエムハーツ』が二人に炸裂した!
「ぐ!?」
「きゃっ!!」
その意表をついた攻撃は二人に命中したが、
「………」
相手チームのクルツとカルナ、それと自軍のメンバーであるエステルとヨシュアとジン……そして、観客全員ですら唖然としていた。もう色々ツッコミどころが多くて、意味不明のレベルである。
「っと、いけない。今がチャンスよ、二人とも!」
「う、うん!解ったよエステル!!」
「お、おう!そうだったな!!」
呆気にとられていたエステルがいち早く我に返り、ヨシュアとジンに号令をかけ、戸惑っていた二人も我に返って構えた。
「こ、こちらもいくぞ!」
「あ、ああ!そうだったね!」
「お、おう。」
「は、はい!」
それは向こうのチームも同じようで、クルツの号令にようやく落ち着きを取り戻した。
「フ……僕の愛のベーゼも相当磨きがかかったようだね。」
「何を言っているんですか、貴方は。」
「とゆーか、会場を凍り付かせたアンタが言うな。」
「それはいけないね。ならば一曲……」
「今、武闘大会で戦闘中だからな?」
「ふむ……ならばあとにしよう。」
(め、珍しくオリビエが引いたわ……)
(まぁ、晩餐会のことがあるからね。)
オリビエのいつもの如く珍妙な発言にヨシュアとエステルはジト目で注意し、それを聞いたオリビエがリュートを取り出そうとしたため、ジンが已む無く忠告するとあっさり収まった。その理由は優勝および準優勝した時の“褒美”目当てであることは言うまでもないだろう。
「その、エステルにヨシュアにジンさん……誤解してたわ。」
「うんうん。頑張ってるんだね。」
「アレ!?何で僕が加害者扱いされてるのかな!?」
「何を今更……ともかく仕切り直しね!」
グラッツとアネラスの生暖かい視線を感じ、オリビエはそれに納得がいかない様子だったが、エステルはあっさりと切り捨てて、仕切り直しの言葉を言い放った。
「ならば……一気に勝負を決めることとしよう。グラッツ、カルナ、アネラス!」
「おうよ!」
「ああ!」
「了解です、先輩!」
クルツの言葉に三人は頷き、闘気を高めた。
「俺から行こうか……『轟刃』たる所以……その意味を知れ!」
先手を取ったのはグラッツ。そう言って、高く飛翔した。
「俺の全力の刃……轟け、ハイパーグラッツフォール!!」
今までのよりもさらに高い跳躍から放たれる唐竹割り……跳躍の距離をそのまま威力に転換するSクラフト『ハイパーグラッツフォール』。それを食らったヨシュアはかろうじて踏みとどまったが、
「続けていこうか……放て、無数の弾丸。敵を撃ち払う刃となりて、己が敵を滅ぼす魔弾となれ――ジャッジメント・バレット!」
「く……エステル、ごめん……」
続けざまに放たれたカルナのSクラフト……全ての弾丸の軌道を曲げて、敵に命中させる奇跡の技『ジャッジメント・バレット』によってヨシュアは戦闘不能となった。
「まだまだいくよ!これで、決まりだよ!!」
アネラスがそう言って放ったのは、闘気による十字型の斬撃を飛ばすSクラフト『双刃・光破斬』。それをジンが耐えた。
「雷よ……全てを討ち抜く光の柱となりて、我らを勝利へと誘わん………ライトニング・ボルテックス!!」
「きゃあっ!?」
「くっ!?」
「ぐっ!?」
エステル達をほぼ全画面の雷が襲うクルツのSクラフト『ライトニング・ボルテックス』が炸裂し、三人は大ダメージを受けるが、
「むふふ、愛と真心を君たちに……せいっ!」
オリビエのSクラフト『ハッピートリガー』の上位技――『ハピネスシンフォニー』によって全員の体力とCPが回復し、ヨシュアも戦闘不能状態から回復した。
「なら……いきます!!」
そして、ヨシュアは間髪入れずにSクラフト『漆黒の牙』で全員にダメージを与えると同時にクルツらの足並みを崩すと、
「よし、ならば………はあああああああああああああ………奥義!泰炎朱雀功!!」
「ぐ、す、すまない……」
その隙を突く形で泰斗流の奥義の一つ……炎の如く荒れ狂う威力の拳を叩き付ける技――ジンのSクラフト『泰炎朱雀功』が炸裂し、クルツは戦闘不能に陥る。
「(レイアが使っていた技……使わせてもらうわ!!)はあああああぁぁぁっ……!!!」
そして、エステルは闘気を高める。それと同時に、彼女の脳裏に浮かんでいたのはレイアが予選で見せた『朱雀烈破』……その技と自分の持てる技を組み合わせた、最高の技を閃き今ここに顕現させる!
「それそれそれそれぇ! とおぅりゃぁ! 」
一気に加速し、エステルは自身の持ちうる現時点で最高の技……『絶招・桜花大極輪』……その回転力を余すことなく、更に回転力を上げる。回転したエステルを闘気が包み込み……闘気は羽ばたく鳳凰の姿となって、グラッツらに襲い掛かる。『絶招・桜花大極輪』と『朱雀烈破』……それを直感で組み合わせたエステルの新たなSクラフト……その名をエステルは高らかに叫んだ!
「これがあたしの!『奥義!鳳凰烈破!!』」
「がっ!?ちくしょう……」
「くっ!?やるじゃないか……」
「あうっ!?きゅう~………」
そしてエステルの新たなSクラフト『鳳凰烈破』を受けて、残る三人も戦闘不能になった。
「勝負あり!蒼の組、ジンチームの勝ち!」
そして審判はクルツ達の状態を見て、エステル達の勝利を宣言した……………
「クッ……見事だ。」
「『不動のジン』……まさかここまでの凄腕とは……」
跪きながらクルツとグラッツはジンに称賛の言葉を贈った。
「お前さん達もさすがに手強かったぜ。エステル達がいなかったら俺も勝ち目は無かっただろうな。」
称賛の言葉を贈られたジンは逆にクルツ達を称賛した。
「はあ…あたしたち、勝ったの……?」
「うん、何とか……足を引っ張らずにすんだね。」
エステルは息を切らせながら自分達がクルツ達に勝った事に信じられないでいないところを、ヨシュアが肯定した。
「ふふ、謙遜するんじゃないよ。ジンの旦那もそうだがあんた達も充分手強かった。特にエステル。武術の腕だけならアガットと並ぶ……いえ、それ以上ね。」
「あはは………あたしなんてまだまだですよ。」
カルナの称賛にエステルは謙遜した。
「ふう、さすがはシェラ先輩の教え子だなぁ……それに、そこのお兄さんがそこまでやるとは思わなかったよ……」
「フッ、お嬢さんの方もなかなか痺れさせてもらったよ。よければ試合の後にお互いの強さを讃えて乾杯でも……」
「いいかげんにしなさいよ!ぶっ飛ばすわよ!」
「スミマセンデシタ……」
場所を考えず、いつものようにアネラスをナンパしようとするオリビエをエステルは注意した。そしてエステル達は控室へ戻って行った。
~グランアリーナ・選手控室~
「フ……おめでとうと褒めておこう。」
「そうだな。決勝進出おめでとう。」
エステル達が控室に戻るとヴィクター達が称賛の言葉を贈った。
「ありがとう、ヴィクターにカイトス。……あれ?そう言えばヴィクター達を含めて試合をしていないのは3チームになっちゃったけど、どうなるんだろう??」
「受付の方に聞いたら、今から行われる我らと当たるチームの試合が終わって、休憩の時間をしばらく入れて、我らと当たったチームの勝者のチームが残りのチームと試合をするそうだな。」
ヴィクターは首を傾げているエステルの疑問に答えた。
「という事はヴィクターさん達が勝ったら、1日の間に2試合する事になるのか………体力とか大丈夫なのですか?」
「フフ、その点については問題ない。アルゼイド流の師範ともなれば、一日中手合わせすることもあるからな。」
ヨシュアの心配をヴィクターは微笑みながら答えた。
「ハハ……連戦の心配をするのも結構だが、とりあえず、まずは一勝する事だ。」
「貴公達の勝利を祈っているよ。」
「フ、その言葉には礼を言っておこう。」
その時、次の試合のアナウンスが入った。
「続きまして、第六試合のカードを発表させていただきます。南、蒼の組―――遊撃士協会レグラム支部所属。ヴィクター以下2名のチーム!北、紅の組―――王国軍情報部、特務部隊所属。ロランス少尉以下4名のチーム!」
「頑張ってよね!」
「フ……応援されたからには、勝たねばならんな。」
―――この試合の結果だが、ヴィクターとロランスの一騎打ち、そしてカイトスと特務兵三人の戦いとなり、ヴィクターはロランスの動きを読み切って快勝し、カイトスに至っては、相手に攻撃すらさせることなく打ち倒し、準決勝へと駒を進めたのであった。
ヴィクターvsロランス戦はカットしました。だって、ロランス本気じゃねーしwまぁ、クルルとの戦闘の影響がまだ残っていると解釈してくださいw
あと、クルツ・カルナ・グラッツ・アネラスごめんなさい。君たちはパワーアップイベントがあるからそれで勘弁してくださいw