英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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リベール王国武闘大会~予選~

~グランアリーナ 観客席~

 

「うわぁ……いっぱい入っているわね~!」

「うん、すごい熱気だね。予選からこの数っていうことはかなり大きなイベントみたいだ。」

「ここまでのイベントが行われているとは……エレボニアにはない趣だね。これは面白そうだ。」

チケットを買ってグランアリーナに入ったエステル達は観客席に行って、ほぼ満席になっている観客席を見て驚いた。

 

「って、そうなの?エレボニアぐらいなら闘技場ぐらいあると思ったのだけれど?」

「エレボニアはリベールと違って貴族制度が健在だからね。自ら身を傷つけるという行為は家の尊厳を貶める……そんな風習みたいな“しがらみ”があるのだよ。」

「そうなんですか……」

「それにしても予選試合、どこまで進んでいるのかな。」

エステルがそう呟いた時司会の声が聞こえて来た。

 

「お待たせしました。これより第3試合を始めます。」

「あ……始まったみたい。」

「それじゃあ、どこか空いている所に座ろうか。」

そしてエステル達は空いている観客席を探して、座った。

 

「南、蒼の組。国境警備隊、第~部隊所属。~以下4名のチーム!」

片方の門から兵士達が現れた。

 

「あれっ……試合って1対1じゃないんだ?」

「うん、団体戦だったみたいだね。僕の記憶だと確か個人戦だったはずだけど……」

団体戦である事にエステルは驚き、ヨシュアは首を傾げた。

 

「北、紅の組。遊撃士協会グランセル支部。クルツ選手以下4名のチーム!」

そしてもう片方の門からクルツ達が現れた。

 

「あっ、カルナさんたちだわ!」

「危うく見逃すところだったね。」

クルツ達の登場にエステル達は興味津々でクルツ達を見た。

 

「これより武術大会、予選第3試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」

審判の言葉に頷いた両チームは開始位置についた。

 

「双方、構え!勝負始め!」

そして兵士達とクルツ達は試合を始めた!試合は終始クルツ達の有利で運び、結果はクルツ達の勝利となった。

 

「勝負あり!紅の組、クルツチームの勝ち!」

「やったあああーーっ!すごいわ、カルナさんたち!」

「うん。それにほかの遊撃士の人達も凄く強いね。遊撃士の人達の動きはとても参考になるよ。」

「いい勝負と言わざるを得ないね。軍人たちもいい動きだったが、連携攻撃と役割分担の上手さで遊撃士チームには及ばなかったようだね。」

試合がクルツ達の勝利で終わった事にエステル達が興奮しているところ、また司会の声が聞こえて来た。

 

「……続きまして、これより第4試合を始めます。南、蒼の組。チーム『レイヴン』所属。ベルフ選手以下4名のチーム!」

片方の門からかつてルーアンで操られていた不良集団――レイヴンの下っ端達が現れた。

 

「あ、あの連中!?」

「ルーアンの倉庫街にいた不良グループのメンバーだね。なるほど、普通の民間人にも開かれている大会なのか……」

「はあ、場違いもいいとこだわ……。戦闘や武術のプロが集まっているのにあんな連中が敵うわけないじゃない」

レイヴンの登場にエステルは溜息を吐き、ヨシュアは驚いた。

 

「北、紅の組。隣国、カルバード共和国出身。武術家ジン選手以下1名のチーム!」

「おや、あの御仁は……」

「ジ、ジンさん!?」

「また知り合いか……。世間は狭いって感じだね。でも、一人で出場なんてさすがに不利だと思うけど……」

「確かに……。いくら相手がチンピラでも囲まれちゃったらマズイかも。」

ヴァルターとの遭遇の際に助けてもらい、また、アガットを助けるための薬の原料をとりに行く時、手伝ってくれた遊撃士――ジンの登場にエステル達は驚き、また一人で出場している事に驚いた。その時、司会の説明が聞こえて来た。

 

「ジン選手は今回の予選でメンバーが揃わなかったため1名のみでの出場となります。著しく不利な条件ではありますが本人の強い希望もあったため今回の試合が成立した次第です。みなさま、どうかご了承ください。」

「これより武術大会、予選第4試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」

審判の言葉に頷いた両チームは開始位置についた。

 

「双方、構え!勝負始め!」

そしてジンとレイヴンの下っ端達は試合を始めた!

 

「「「「オラァッ!!」」」」

「こおぉぉぉぉ、奥義………………」

レイヴン達は同時に襲ってきたが、ジンは余裕の笑みを浮かべた後……ジンの両手から大きな闘気でできた弾ができた。

 

「破っ!雷神掌!!」

ジンの両手から放たれた闘気の弾はレイヴン達に命中して、爆発した!

 

「勝負あり!紅の組、ジン選手の勝ち!」

「ひゃっほーーっ!さすがジンさん、圧倒的!」

「余計な心配だったみたいだね。あの巨体で、動きも速いし、技のキレも凄まじいものがある。ただ、さすがに本戦になったら1対4は厳しいとは思うけど……」

「うーん、確かに……」

その時、また次の試合の組み合わせのアナウンスが入った。

 

「……続きまして、これより第5試合を始めます。南、蒼の組。王国正規軍所属、第~部隊所属。~以下4名のチーム!」

片方の門より、また王国軍の兵士達が現れた。

 

「北、紅の組。遊撃士協会ロレント支部、レイア選手以下3名のチーム!」

もう片方の門からは何と、レイアとシオン、そしてクローゼが現れた。

 

「レイア選手はジン選手と同じように今回の予選でメンバーが揃わなかったため3名のみでの出場となります。著しく不利な条件ではありますが本人の強い希望もあったため今回の試合が成立した次第です。みなさま、どうかご了承ください。」

3人だけの出場にざわめいている観客達に司会は説明をした。

 

「レ、レイア!?い、いつのまに出場手続きをしちゃったんだろう……(てか、クローゼを大会に出して大丈夫なの?)」

「彼女達の用事ってこの事だったんだ……(レイアのことだから、何か手は打ってありそうだし、心配はしなくていいんじゃないかな。)」

「ほう……(敢えて渦中に飛び込む勇気………嫌いじゃないね)どうやら、レイア君の事をライバルとして認定する必要がありそうだね。」

「何でよ……」

レイアとシオン、そしてクローゼの登場にエステルとヨシュア、そしてオリビエは驚いた。

 

「これより武術大会、予選第5試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」

審判の言葉に頷いた両チームは開始位置についた。

 

「双方、構え!勝負始め!」

そしてレイア達と兵士達は試合を始めた!

 

「例え相手が女子供であろうと大会に出ている上、油断や手加減はするな!行くぞ、お前達!」

「「「イエス、サー!!」」」

隊長らしき人物の声に部下達は頷いて、レイア達に攻撃をしようとしたが

 

「女子供ねぇ……仮にも“上司”として、少しお灸をすえないといけないね。」

「フフフ……久しぶりにやっちゃおうか、レイア。」

「まったく……支援はしておきますね。ラ・フォルテ!」

不敵な笑みを浮かべつつ棒を構えるレイアとレイピアを構えるシオン。その様子に乾いた笑みしか出てこないクローゼは支援のアーツをかけて二人の攻撃力を上げた。それを確認した二人は武器を構え、突撃した。そして、クラフトを繰り出した!

 

「ちょっとした奥義、朱雀烈破!!」

「ミラージュ・インフェルノ!!」

「「「「グワァァァァ!?」」」」

レイアとシオンの放ったクラフト……朱雀の姿の闘気を敵にぶつける『朱雀烈破』、全方位から収束させた闘気の刃を縦横無尽に放つ『ミラージュ・インフェルノ』が放たれ、命中した兵士達は断末魔を上げた後、倒れた。

 

「死なないように手加減はしてあるからね。」

「問題はないだろ。」

「そう言う問題じゃないですよ、これは!ともかく……ホーリーブレス!」

倒れて、ピクリともしない兵士達にレイアやシオンはそれぞれ勝ち誇った笑みで言った。一方、クローゼは怒りつつも呆れた表情で回復のアーツを兵士にかけて最低限の処置を施した。

 

「しょ、勝負あり!紅の組、レイアチームの勝ち!救急部隊!今すぐ来てくれ!」

「オオオオォォォォォォォォ!!!」

観客達は見た目とは裏腹に圧倒的な強さを見せたレイア達に驚愕した。ピクリともしない兵士達を見て審判は驚いた後、レイアの勝ちを宣言した後、ピクリともしない兵士達をすぐに治療しないとまずいと思い、救急部隊を呼んだ。

そして救急部隊がやって来て、担架に一人一人乗せて、医務室に運んで行った。

 

「す、凄っ………!何よ、アレ……(あたしとの鍛練でもあんな技は見せたことないのに……どんだけ強いのよ、レイアは)」

「クローゼはともかくとして、レイアとシオン……流石リベールでもトップクラスの正遊撃士とでもいうべき実力だね。」

「いやはや、凄い御仁だね。(“紫電”といい、“剣聖”といい、遊撃士にはただならぬ実力者が多いね。)」

レイア達が見せた戦技にエステルやヨシュアは驚き、オリビエは感心したような表情でレイア達を見ていた。

 

無理もないことだ。レイアは独立機動隊『天上の隼』の三席、シオンは王室親衛隊大隊長……曲がりなりにも王国軍での実力者。肩書のみならず、実を伴ったその力はまさしく本物である。そして次の試合の組み合わせのアナウンスが入った……………

 

「……続きまして、これより第6試合を始めます。南、蒼の組。王国軍正規軍所属、第~部隊所属。~以下4名のチーム!」

今までのように片方の門より、また王国軍の兵士達が現れた。

 

「北、紅の組。遊撃士協会ロレント支部。アスベル選手以下2名のチーム!」

もう片方の門からはなんと、アスベルとセリカが現れた。

 

「セリカ!?それに、アスベルまで出場していたの!?」

「ハハ……顔見知りばかりの大会になってしまいそうだね………」

学園祭で顔を合わせたことのあるセリカ、そして近所の顔馴染であるアスベルまで出場している事にエステルは驚き、ヨシュアは自分達の知り合いばかりが出ている大会になる事に苦笑した。

 

「アスベル選手はジン選手やレイア選手と同じように今回の予選でメンバーが揃わなかったため2名のみでの出場となります。著しく不利な条件ではありますが本人の強い希望もあったため今回の試合が成立した次第です。みなさま、どうかご了承ください。」

「これより武術大会、予選第6試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」

審判の言葉に頷いた両チームは今までと同じように開始位置についた。

 

「双方、構え!勝負始め!」

そしてアスベル達と兵士達は試合を始めた!

 

「先の試合でやられた仲間達の思いを汲むためにも、遊撃士に我等王国正規軍魂を見せてやれ!突撃!」

「「「イエス、サー!!」」」

隊長の言葉に力強く返事した兵士達は武器を構えて、アスベル達に突撃して来た。

 

「アハハ……どうします?」

「ま、久々だしな……ここらでちょっと“威圧”しておくか。」

「手厳しいですね……でも、嫌いじゃないです♪」

その光景に苦笑を浮かべたが……彼らには悪いが、“説教”も兼ねてちょっとばかし本気でいくことにした。

 

「そこだっ!!」

兵士らは容赦なく突きを繰り出すが、

 

「ふ、ほ、はっ、っと……」

「よっと……確かに、練度はそれなりのものですね。」

アスベルとセリカは難なくそれをいなす。

 

「第二陣、行けっ!!」

そして、隊長らしき人が指揮し、後方にいた兵がアーツを放つ。

 

「悪くはないけど……(ちょいと“実験”してみるか……『ALTIA』、オーバルブースト……リフレクト)」

それを見たアスベルはわざと足を止め、小声でオルティアの機能を駆動させ……兵の放った風属性のアーツを太刀に浴びせ“溜めこんだ”。

 

「なっ!?」

「(うん、悪くはないかな……)さて、セリカ。“準備運動”の仕上げと行くか。」

「了解。」

驚きを隠せない隊長格の兵士だったが、その隙を見逃さず、アスベルとセリカは構えた。

 

「二の型“疾風”が奥義……壱式『風神烈破』!!」

「受けよ、我が剛剣…断崖斬!!」

Sクラフトクラスのクラフト……『八葉一刀流』二の型“疾風”の奥義で、風の闘気を纏い高速の斬撃と強烈な一撃を浴びせる『風神烈破』、『地裂斬』の上位技でありその技の威力は崖すら生み出すほどの破壊力を誇る『断崖斬』が兵士たちに命中し、兵たちは気絶した。

 

「勝負あり!紅の組、アスベルペアの勝ち!」

「さすがアスベルとセリカね。余裕勝ちじゃない!動きも洗練されていて、全く隙がなかったし!」

「うん。さすがレイアが言うだけあるね。親衛隊クラスはおろか、特務兵ですら相手にならないんじゃないかな。」

「……ヨシュア君、君とエステル君の近所に住んでいる御仁らは人間なのかい?(“鉄血宰相”……あれで本気すら出していない『彼ら』に喧嘩を売るのは正気と思えないね……冗談抜きでエレボニア帝国を崩壊させる気かい?)」

「人間だと思いますよ……多分ですが。」

エステルはアスベルの強さを改めて見て興奮し、ヨシュアは率直に評価をしていた。そして、先程の試合を見ていたオリビエは内心冷や汗をかきつつも恐る恐るヨシュアに尋ね、ヨシュアは疲れた表情を浮かべつつ半ば信じたくないような気持ちで答えた。

第7試合は特に何もなく、普通の試合であった。そしてまた次の試合の組み合わせのアナウンスが入った。

 

「……続きまして、これより第8試合を始めます。なお、この試合をもちまして予選試合は終了となります。南、蒼の組。王国軍情報部、特務部隊所属。~以下4名のチーム!」

片方の門からはなんとルーアン、ツァイスで対峙した特務兵達が現れた。

 

「あいつら……!」

「どうやら正体を隠すのはやめたようだね………」

特務兵の登場にエステル達は驚いた。

 

「北、紅の組。遊撃士協会レグラム自治州支部、ヴィクター選手以下2名のチーム!」

もう片方の門からはその存在感だけでも全ての者を圧倒するだけの威圧を放っている男性――レグラムを統べる長にして、かつては帝国の双璧と呼ばれ……現在は白隼の武門として名高い『アルゼイド流』筆頭伝承者……“光の剣匠”ヴィクター・S・アルゼイドと、もう一人は白の仮面と白銀のコートで身を包んだ御仁がいた。

 

「ヴィクター選手はジン選手やレイア選手、アスベル選手と同じように今回の予選でメンバーが揃わなかったため2名のみでの出場となります。著しく不利な条件ではありますが本人の強い希望もあったため今回の試合が成立した次第です。みなさま、どうかご了承ください。」

「リベールはおろか、西ゼムリアではトップクラスの実力を持つ人か…………多分特務兵達じゃあ、数がいても敵わないね。」

「そうね。確かラウラのお父さんだったっけ。どんな強さか気になるわね。」

「にしても、隣にいるあの御仁の格好は中々趣があるじゃないか。」

「……」

「エステル?」

「あ、いや、何でもないわ。(何でだろ……あの人、父さんと似たようなオーラを感じたのだけれど……)って、ちょっと待って。ヴィクターさんのこと、遊撃士協会所属って言ってたような……」

「言ってたね……どういうことなんだろう?」

「……とりあえず、本人に聞いた方が早いわよね。うん……驚くことが多すぎて、疲れちゃうわよ。」

これから見せるであろうヴィクターの実力にヨシュアやエステルは見逃すまいと試合に注目し、オリビエはヴィクターの隣にいる仮面をつけた人物の格好に興味がいっていた。

 

「これより武術大会、予選第8試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」

審判の言葉に頷いた両チームは今までと同じように開始位置についた。

 

「双方、構え!」

両チームはそれぞれ武器を構えた。

 

「勝負始め!」

そしてヴィクターらと特務兵達が試合を始めた!

 

「相手は2人とはいえ、油断するな!“光の剣匠”に我等誇り高き特務部隊が最強の部隊である事を証明するぞ!」

「「「イエス、サー!」」」

黒を基調とした服装をした隊長の言葉に特務兵は力強く頷いた。

 

「ふむ………あれがクーデターをたくらんでいる特務兵か………お手並み拝見といこうではないか……はっ!」

ヴィクターは剣を振って、衝撃波を起こして特務兵達に向けて放った。

 

「!全員、散開!」

「「「ハッ!」」」

自分達に襲いかかって来る強力な剣風に気付いた隊長は特務兵達に命令した後、特務兵達と同じようにその場を横に跳んで回避した。

 

「敵を囲めっ!相手は2人だ!」

「「「ハッ!」」」

隊長の言葉に頷いた特務兵達は素早くヴィクターと仮面の人物の攻撃範囲外らしき場所から3人で囲んだ。

 

「ふむ……そこそこ鍛錬はされているようだな。」

「どうやら、そのようだな。」

ヴィクターと白仮面は特務兵達の動きを見て、自分なりの評価をした。

 

「突撃!同時攻撃で一瞬で決めろっ!」

「「「ハッ!」」」

特務兵達は3人同時に二人に襲いかかったが

 

「だが、その範囲も我が間合いと知らぬとは笑止………真・洸円牙!!」

「「「ギャァァァッ!?……………」」」

ヴィクターの周囲を巻き込み殲滅する衝撃波を出す強力なクラフト――『洸円牙』よりも更に洗練された上位技『真・洸円牙』を受けて、断末魔をあげて、吹っ飛ばされた!吹っ飛ばされた特務兵達は壁に当たった後、重傷を負った状態で気絶した。

 

「え。」

一瞬の出来事に隊長は呆けた。

 

「……戦場で余所見は厳禁だ。」

そこに白仮面が一瞬で隊長の目の前に現れた。

 

「なっ!?」

「食らうがいい、はあっ!!」

「ガアッ!?……………」

白仮面のクラフト――高速斬撃を受けた隊長は部下達と同じように一瞬で全身傷だらけになった上、体中の神経もいくつか斬られて動かなくなり、その場に崩れ落ちて二度と立ち上がらなくなった。

 

「ふ……筋だけは中々のものだったぞ。」

そしてヴィクターは倒れている特務兵達に勝利のセリフを言った。

 

「しょ、勝負あり!紅の組、ヴィクターペアの勝ち!救急部隊!今すぐ来てくれ!」

「オオオオォォォォォォォォ!!!」

観客達は圧倒的な強さを見せたヴィクターらに驚愕した。重傷を負って呻いている隊長や特務兵達を見て審判は驚いた後、ヴィクターらの勝ちを宣言した後、痛みで呻いている特務兵達をすぐに治療しないとまずいと思い、救急部隊を呼んだ。

そして救急部隊がやって来て、担架に一人一人乗せて、医務室に運んで行った。

 

「な、何あれ………あたし達と次元が違うじゃない!?あいつらそこそこ強いのにあの人達、苦もなく一瞬でやっつけたじゃない!(学園祭で見せたのは手加減してたってことよね……)」

「今までの参加者の中でも圧倒的な強さだね………あれなら例え相手が4人いても関係ないね………多分、彼らが優勝候補に上がっているだろうね………」

「で、出鱈目だね……(ミュラー君の言っていたことは当たっていたということか……いやはや、なんとも恐ろしい御仁だよ。)」

ヴィクターの圧倒的な強さにエステルやヨシュアは驚き、オリビエは引き攣った表情を浮かべつつ、彼らに勝てる人物がいるのか疑問に思った。その時、試合終了のアナウンスが聞こえて来た。

 

「ただ今の試合をもちまして予選試合は全て終了となりました。本戦出場チームは9組。明日から3日間にわたって開かれる、トーナメント戦で優勝チームを決します。なお、先ほど行った抽選によってヴィクターペアはシード権取得となり、2回戦からとなっております。それでは最後に、大会主催者であるデュナン公爵閣下から挨拶があります。」

そして特別席にいたデュナンが椅子から立ち上がって、喋り始めた。

 

「ウオッホン!あー、親愛なる市民諸君よ、本日はわざわざの観戦ご苦労だった。私は残念ながら、政務で忙しかったため一部の試合を見逃してしまったが、私が見た試合はどれもレベルが高く非常に楽しませてもらい、また興奮した!最近、テロ事件に陛下の健康不調と深刻なニュースばかり続いているが……だが、どうか安心して欲しい!陛下から政務を託された者としてこのデュナン・フォン・アウスレーゼ、身を粉にして諸君らの期待に応えよう!そして、この武術大会の活気が諸君らの気持ちを明るくするのに役立ってくれればと思う次第である!明日からの本戦を、どうか楽しみにしていて欲しい!」

デュナンの演説が終わると観客席から大きな拍手が起こった。

 

「あ、あの公爵さんにしては言ってることがマトモすぎる……」

「多分、情報部のスタッフが文面を考えているんだろうね。」

デュナンのまともな演説にエステルは驚き、ヨシュアは大体の事情を察した。

 

「はっはっは……おお、そうだな。大会の優勝者ならびに準優勝者には、賞金とは別に私からのプレゼントを用意しよう!」

一方デュナンは自分に向けられている拍手に気分をよくして、ある提案をした。

 

(か、閣下……勝手によろしいのですか?)

そこにフィリップが後ろからささやいた。

 

(うるさい、黙っておれ。私の気前の良さを見せる良い機会だ。)

フィリップを黙らせたデュナンは向き直って、ある事を宣言した。

 

「そのプレゼントとは、3日後にグランセル城で行われる宮中晩餐会への招待状である!陛下は残念ながら出席されないが各界の名士が集う、最高の晩餐会だ。王侯貴族のみに許された、最高の料理ともてなしを約束しよう。今日勝ち残った出場者は、どうか励みにして頑張ってほしい!」

デュナンの突然の提案に観客達は驚いた後、大きな拍手と歓声をデュナンに送った。こうして武術大会予選試合は締めくくられた……………

 

 


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