英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第51話 気付かされる想い

温泉の異変をどうにか止めることができたエステル達はドロシーを旅館に送り届けたシオン達と合流し、女将の粋な計らいで旅館に泊まることにした。エステル達は部屋に荷物を置いた後、旅館名物の温泉に向かっていた。

 

~紅葉亭 温泉への道~

 

「あれ?見たことの無い女の子……?」

「そうですね。」

「えと、何をしてるの?」

エステル、クローゼ、ティータの三人が温泉への廊下を歩いていると、何かを待っているような仕草の女の子が目に入った。

 

「ん?……あら、今日の宿泊している人たちには見えないけれど……」

「えと、あたしたちは女将さんの計らいで泊まることになったの。」

「ふ~ん……ねぇ、レンも一緒に入っていいかしら?」

「えと、レンちゃん、でいいのかな?家の人とか心配してない?」

その少女――レンの問いかけにエステルは簡単に事情を説明し、それを聞いたレンは三人に尋ね、ティータはレンに家族のことを尋ねた。

 

「ふふ、大丈夫よ。『レンの事はちゃんと信頼してるから、好きに行動していいぞ』って言われたもの。」

「えと、どうします?」

「う~ん……ま、本人がそう言うなら一緒に入りましょ。」

「うふふ♪それなら、行きましょうか。」

「(いいのですか、エステルさん?)」

「(ここで拒否していなくなったら面倒なのよね……目に届くところにいてくれた方がいいし。)」

「(成程……それでしたら、私も一緒に見ておきますね。)」

レンの言葉を全面的に信用するのは流石にできないが、あえて提案を受け入れて目の届くところにいてくれた方が何かと動きやすいのは事実だ。クローゼもエステルの考えに同意し、手伝うことを伝えた。

 

その少し後方で、レイアはその光景に頭を抱えたくなった。

 

「(あの少女……制圧作戦の時に助けた子じゃない……)はぁ……」

『楽園』を潰した際に助けた子……その『預け先』からするに、彼女も『かの者』達と同じ存在なのだろうと簡単に推測できた。とりあえず、気を取り直してエステルらと合流し、互いに自己紹介した後温泉に入ることにした。

 

 

~エルモ村 紅葉亭・女湯~

 

「はぁ~気持ちいい。温泉って初めてだけど予想以上ね。こりゃ、病みつきになっても仕方がないわ~。」

「本当ですね。」

「これは温まるわね……気持ちいいわね、ティータ。」

「えへへ、わたしもかなり病みつきなんです。小さな頃から、おじいちゃんに連れてきてもらってましたから。」

エステルの呟きやクローゼとレンの喜びにティータは頷いた。

 

「は~、これはいいわね。」

そして、続いて湯船に浸かったレイアもその心地よさに喜びの言葉を呟いた。

 

「う……(わかってはいたけど、レイアって腰が細い上、胸が大きいわね……下手したらシェラ姉以上かも……うう、同い年なのにどうしてこんなに違うの?)」

「(はぁ……レイアさんって意外と着痩せしてるんですね……)」

「わあ……レイアさんって、スタイルがいいですね。」

レイアが温泉に入った時、湯につかった為タオルが体に張り付きよく見えるようになったレイアの体つきを見て、エステルとクローゼは内心羨ましがり、ティータは感嘆の声をあげた。

 

「エ、エステルにクローゼ……できれば、そんなによく見ないで欲しいんだけれど……」

エステルやティータに見られたレイアは恥ずかしそうな表情で両手で胸を隠した。

 

「そんな事言ったって、実際レイアって女性として完璧なスタイルだもん。それでいてあの強さだもの……同じ女性として普通、一体何をしたらそうなるか気になるわよ……」

「それはレンも気になるわね。どうやったらそんなに魅力的な体に成長するのかしら?」

「レンちゃんまで……こればかりは遺伝なんじゃないかな?」

レイアの身内には胸があまりないことを少しコンプレックスに思っている少女の事を思い出し、それから比べればマシなのだと思った。

 

「遺伝かあ……じゃああたしは、将来はお母さんみたいなスタイルかな?」

エステルは自分の将来の姿をレナと重ねて思い浮かべた。

 

「そういえば、エステルさん。わたし、エステルさんに聞きたいことがあるんですけど。」

「聞きたいこと?なになに?何でも聞いていいわよ?」

ティータの疑問にエステルは答える姿勢に入った。

 

「えと、あの、その……エステルさんとヨシュアさんって結婚して何年なのかなぁって。」

「…………………………………………」

しかし、ティータの疑問に驚き、笑顔の状態で固まった。

 

「ドキドキ……」

「ジー………」

エステルが答えるのをティータは目を輝かせて待ち、レンは興味深そうな表情で待っていた。

 

「えっと、ゴメン。聞き間違っちゃったみたい。あたしとヨシュアが何だって?」

「あう、ですからぁ。結婚して何年になるのかな~って。」

「な、な、な……。なんでそうなるワケ!?」

固まっていたエステルだったが、ティータの疑問は何かの間違いだと思い、を聞き返すために尋ねたが返って来た答えに絶叫した。

 

「だ、だって名字が同じだし……。兄妹にしては似ていないからてっきりそうなのかな~って……」

「に、似てないのは血がつながっていないからっ!みょ、名字が同じなのはヨシュアが父さんの養子だから!」

ヨシュアと結婚していると思った理由にエステルは即座にヨシュアと夫婦でない理由を答えた。

 

「あ、そーなんですか……えへへ、ごめんなさい。ちょっと勘違いしちゃいました。」

「と、とんだ勘違いだわ……そもそも、あたしもヨシュアもまだ16歳なんだから。結婚なんて全然先の話だし……」

ティータの勘違いにエステルは呆れながら答えた。

 

「そ、そーですよね。いくらお互いが好きでもそんなに早く結婚しませんよね。」

「エステル、仲人には私を抜擢してほしいかな。」

「エステルさん、ヨシュアさんとの結婚式を行う際は必ず呼んでくださいね。盛大にお祝いをいたしますので。」

「ウフフ、それを聞いたからにはレンも呼んでほしいわね♪(ヨシュアのことがねぇ……この反応からすると、面白いことになりそうね♪)」

「ガクッ……だ、だからぁ!あたしとヨシュアは恋人でも何でもないの!ただの家族よ、家族!」

ティータやレイアにクローゼ、レンの言葉を聞いたエステルは再び絶叫した。

 

「そ、そーなんですか!?」

「そーなんですかって……ねえ、四人共。あたしとヨシュアってそーいう雰囲気に見える?」

「そーいう雰囲気って?」

エステルの疑問にティータは首を傾げて尋ねた。

 

「だ、だから……。こ、恋人同士みたいな雰囲気よ。らぶらぶとかあつあつとかいちゃいちゃとか、そういうの。」

ティータの疑問にエステルは照れながら答えた後、顔を背けた。

 

「あう……そーいう感じはしませんけど。でもでも、いつも一緒で自然な感じだし、お互いのことを分かり合ってるような感じだし……」

「ティータちゃんのいう通りかな。エステルとヨシュアはいっしょにいて当然みたいな雰囲気を感じたかな。」

「そうですね。いるだけでお互いの事を分かり合える感じがします。」

「レンは会ったばかりだからわからないけれど、ヨシュアって人の事を好いているのは間違いなさそうって思ったわ。」

「いや、それはまあ、少しはそうかもしれないけど……それって、家族とか親友でもありそうな雰囲気じゃない?だいたい、あたしとヨシュアってそんな雰囲気になったことすら……(な、何思い出してんのよ~!っていうか、あたし今まであんな恥ずかしいことを平気で……)」

3人が言った理由をエステルは誤魔化して否定しようとしたが、旅に出る前にしたロレントの時計台での約束やマノリア村で昼食をとっていた時の出来事等思い出した後、顔を真っ赤にして黙った。

 

(あらあら?顔が真っ赤になってるよ?)

(これは微笑ましいですね……私も頑張らないと。)

(フフ、これは楽しいことになりそうね。(エステルってば、とうとうヨシュアの事を意識し始めたのね……ヨシュア、責任を取らないとレンが殲滅しちゃうんだから♪))

エステルの様子にレイアとクローゼ、そしてレンは思い思いに二人の行方をそれなりに案じていた……一部私欲が混じっていることに関しては否定できないが。

 

「???エステルさん?お顔、まっかですけど……」

「あわわ……何でもない、何でもないから!いや~、それにしても温泉ってホントーに効くよね!?血の巡りが良くなりすぎて頭がクラクラするっていうかっ!」

「は、はあ……」

勝手に慌てているエステルの様子にティータは首を傾げながら頷いた。

 

「そ、そういえば露天風呂があったんだっけ?のぼせてきちゃったし、あたしちょっと行ってくるね!」

「あ、はい……あ、そーいえば。エステルさん、露天風呂って……混浴なんですけど。」

慌てているエステルは温泉から立ち上がり、ティータの言葉を最後まで聞かずに逃げるように露天風呂に行った。

 

 

(は~、あせった。心臓がバクバクいってる……あたし……この前からどうしちゃったんだろ。今まで、ヨシュアをそういう風に意識したことなんてなかったのに………ええい、悩むのやめっ!あたしのキャラじゃないしっ!)

露天風呂がある場所に出たエステルは先ほどのティータ達との会話を思い出して顔を真っ赤にした後、首を何度も横に振って忘れた後表情を元に戻した。

 

「は~っ、いい気持ち~!中のお風呂もよかったけど外のはまたカクベツよねぇ。うーん、広くてのびのびできるし……誰もいないみたいだからここは……」

エステルが泳ごうとした時、湯気の向こうから声が聞こえて来た。

 

「……言っておくけど、泳いだりしたらダメだからね。」

「ギクッ……な、何を言ってるのかしら!?そ、そんなことしないわよ!」

湯気の向こうから聞こえて来た注意の声にエステルは図星をさされたかのような表情をした。

 

「あれ、ちょっと待って………今の声って………………………。」

エステルは湯気の向こう方聞こえた声の主を思い出した後、目をこらして湯気の向こうを見た。すると湯気は晴れ、そこにはヨシュアが温泉に浸かっていた。

 

「……え………………………………」

「やあ、エステル。お先に入らせてもらってるよ。はは……この格好だとさすがにちょっと照れるね。」

ヨシュアを見て、エステルは口を開けたまま放心した。

 

「えっと、その……。こういう状況で黙られると落ち着かないんですけど……」

ヨシュアはエステルの様子を見て居辛そうに言った。

 

「え、う、あ……。きゃあべしっ!」

「少し黙ろうね、エステル。他の客もいるんだし。」

ようやく我に返ったエステルは旅館全体に響き渡るほどの声を上げ……る前にレイアのチョップがさく裂した。そして、レイアの説明……ここの露天風呂は混浴になっていることにエステルはまたもや大声をあげそうになったため、再びチョップの餌食となったのは言うまでもない。

そこに男湯の方向から来たシオンと、もう一人の男性……ルドガーがその場に現れた。

 

「なんつーか、エステルらしいというか……」

「あはは、楽しそうで何よりだな。(ヨシュア……フッ、元気そうで何よりだな。)」

「何を言ってるんだか……」

で、エステルとヨシュアを二人きりにして、シオンとレイア、そしてルドガーの三人は少し離れたところで湯につかりながら話していた。

 

「……はぁ、私(沙織:レイア)に……輝(アスベル)に詩穂(シルフィア)、拓弥(シオン)にアンタ……悠一(ルドガー)まで同じ世界に転生してるなんて……」

「しかも、柚佳奈(フーリエ)までもとは……これ以上増えたりしないよな?」

「これで、国のトップが『実は俺、転生者なんだ』とか言ったら尋常じゃないわよ……」

ルドガーの話……『結社』のことも大層驚いたが、それ以上に『転生者』の多さに驚きを隠せずにいた。その殆どが『あの事故』絡みの人間ばかり……しかも、アスベルの転生前である輝とのかかわりが深い人物だという事実に。

 

「ん?『転生者』ならあと三人ほどいるぞ。―――に、―――もそうだし、あとは―――だな。」

「はぁ!?アイツが『彼』に転生しても違和感が全くねぇぞ!?つーか、あの輩が『彼女』に転生したっつーことは……」

「『ご愁傷様』ってことね……あれ?でも、あの二人って……」

「その時は『彼女』の人格は眠ったままだったからな……つーか、『あの人物』に転生したアイツはどうなる……」

「根っからの『馬鹿』だものね……あの情熱だけは感心するわ……」

 

ルドガーが知る転生者の存在……それを明かされたレイアとシオン、明かした側のルドガーの三人はこれから訪れるであろう“苦労”に三人揃ってため息を吐いた。

 

 




この転生者三人ですが……既に決まっています。原作キャラの誰かに転生しています。

誰なのかはネタバレになりますので、言えませんが……レイア、シオン、ルドガーの会話がある意味ヒントですw


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