英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第41話 劇の準備

エステルら四人はジェニス王立学園に着き、コリンズ学園長と挨拶をした。今回の学園祭のお手伝いをすることと、孤児院の事件が解決したことを伝えると、コリンズは安堵の表情を浮かべ、孤児院の皆を楽しませる劇にしてほしいと頼まれ、エステルらは自信を持った口調で力強く答えた。一通り話し終えたところでチャイムが鳴ったので、クローゼの案内で生徒会室へと向かった。

 

~ジェニス王立学園 生徒会室~

 

「は~、忙しい。各出店のチェックと予算の割り当てはオッケー……招待状の発送も問題なしっと。」

生徒会長のバッジをつけ、眼鏡をかけた制服の少女――ジル・リードナーは書類を見て呟いた。忙しいと言いつつも着実に仕事をこなしていくさまは、流石王立学園の生徒会のトップを務めているだけあるだろう。それを見た誰もが『前会長よりもはるかにマシ』と評している。

 

「残る問題は、芝居だけか……このまま見つからなかったら俺たちがやる羽目になるのかね。唯一の候補だったシオンは前日まで帰ってこない予定だし。」

副会長のバッジをつけた制服の少年――ハンス・シルベスティーレは今抱えている懸念事項に溜息をついた。それは、未だに二役が決まらない芝居だった。ちなみに、シオンは都合上の休学ということで『逃げた』。彼曰く

 

『男としての尊厳を失うくらいなら、クローゼと付き合うか、もしくは逃げた方がはるかにマシ』

 

だそうだ。 

 

「そうだね……ジルはともかくとして、ハンスにあの衣装は……」

そう言って苦笑を浮かべる書記のバッジをつけた制服の少女――ミーシャ・クロスナーはハンスの『アレ』を思い出して、怖気が走るほどの表情を浮かべた。

 

「それを言うなっての、ミーシャ……俺も、思い出したくないんだから」

「ただいま。ジル、ミーシャ、ハンス君。」

ハンスも『アレ』を思い出し、身を震わせながら呟いたミーシャの言葉に同意して溜息をついている所にエステル達を連れたクロ―ゼが生徒会室に入って来た。

 

「あ、クローゼ!?孤児院の話、聞いたわよ。大変だったそうじゃない。」

「院長先生とチビたちは大丈夫だったのか?」

「ええ。遊撃士の皆のお蔭で。それと、事件も無事解決しましたし。」

「そっか、よかったねクローゼ。」

「はい。」

ジルの心配そうに尋ねた疑問とハンスの孤児院のみんなは無事なのか、という質問にクローゼは笑みを浮かべて答え、孤児院がもう襲撃されることは無いと伝えると、三人は安堵の表情を浮かべた。

 

「フフフ……不安ごともなくなったとすれば、私たちはチビちゃんたちが楽しめるように、何が何でも学園祭を成功させないとね。」

「だな。今回の事でチビたちも色々大変だったからな。俺らが楽しませて、明るくしてやらないとな。」

「そうだね。」

「そうですね。私も、全力で頑張るつもり。」

「あんたが本気を出せば百人力だから期待してるわよ。ところで、さっきから気になってるんだけど……その人たち、どちらさま?」

後顧の憂いがなくなったことに喜びつつ、ジルとハンス、ミーシャはテレサや孤児院の子どもたちを元気づけるためにも絶対に学園祭を盛り上げる、と三人は意気込んだところで、ジルはエステル達に目をやって尋ねた。

 

「初めまして。あたし、エステルっていうの。」

「ヨシュアです、よろしく。」

「レイアというんだ。」

「トワと言います。」

「それじゃ、あんたたちがクローゼの言ってた……!」

ジルはエステル達が名乗り出ると驚いた。自分がお願いしていた『役のための人材』が来たことに内心喜びを感じていたのは事実だが。

 

「って、レイアにトワ!」

「ミーシャ、久しぶり。」

「久しぶりです。」

「って、知り合い……あ、そっか。ミーシャのお兄さんって」

「“重剣のアガット”だからな。その繋がりで知っててもおかしくないが……」

ミーシャはエステルらの後ろにいるレイアとトワに気付いて挨拶をし、二人もミーシャに言葉を返す。その光景を見たジルは三人の繋がりを一瞬疑問に思ったが、彼女の兄であるアガットの存在を思い出し、ハンスも感心するように呟いた。

 

「ジルの約束通り連れてきたわ。4人とも協力してくださるって。それとレイアさんにはエステルさんにフェンシングを教えて貰うために、トワさんにも色々手伝ってもらうために、一緒に来てもらったわ。」

「いや~、助かったわクローゼ!初めまして、エステルさん、ヨシュアさん、レイアさんにトワさん。私、生徒会長を務めているジル・リードナーといいます。今回の劇の監督を担当してるわ。」

「俺は副会長のハンス・シルベスティーレだ。脚本と演出を担当している。よろしくな。」

「私は書記のミーシャ・クロスナーといいます。私は主に衣装や小道具を担当しています。よろしくね。」

「うん、こちらこそ。」

「よろしくお願いします。」

「どこまで力になれるかわからないけれど、よろしくね。」

「私は直接劇に関われないと思うけど、お手伝いする事があったら何か遠慮なく言って下さい。」

四人は一通り自己紹介した後、ミーシャがエステルに話しかけた。

 

「成程、貴方がエステルさんですか……何でも、兄が迷惑をかけたようで……すみませんでした。」

「へ?……あ、さっきハンスが言っていたことね……あたしは気にしてないから、安心して。それに、馬鹿にされちゃったから返り討ちにしちゃったし。」

「あ~、そうだったんですか。兄ったら、『くそう……あのガキ、いつか見返してやる……』と寝言を言っていましたから……」

エステルの姿を見たミーシャは謝罪の言葉を述べ、謝られたエステルはそのことに首を傾げたがハンスの言っていた『アガット』という言葉とミーシャの関係の事を思い出し、気にすることは無いと答えつつ、笑みを浮かべてアガットを圧倒したことをあっさり言うが、その言葉には驚きもせず寧ろ納得した表情で答えたミーシャだった。

 

「………いや、ミーシャ。何で彼女の言うことをそんなあっさりと信じるんだ?」

「エステルさん……本名は、エステル・ブライトさん、ですよね?」

「へ?うん、そうだけれど……どうして知ってるの?」

「実は、貴方とヨシュアさんの両親――カシウスさんとレナさん、それと私と兄の両親は仲が良かったんです。私の両親が亡くなってからも、カシウスさんは度々私や兄にも会いに来ていましたので。その時にエステルさんやヨシュアさんの話を聞いていたので『もしかしたら』……と思いまして。」

「あ、あんですって~!ここでも父さんなのー!?」

ハンスの疑問を気にもせず、ミーシャに問いかけられたエステルは正直に頷くと、ミーシャから言われた事実と『父』の名前がここでも出てきたことにエステルは驚愕した。

 

「……えと、ヨシュアでいいか?」

「うん、呼び捨てでいいよ。僕もハンスでいいかな?」

「ああ。で、だ……お前たちの親父さんはそういった事も言わなかったのか?」

「僕も初耳だよ…というか、父さんはそういったことを話したがる性格じゃないからね。」

「……成程。ということは、エステル……彼女は親父さんの『功績』を知らないってことか?」

「全く、と言っていいぐらいにね。」

………家ではそんなことすら話さない父親に少し呆れつつ、ハンスの問いかけにきちんと答えたヨシュアであった。

 

「いや~、世間は狭いわね……う~ん、それにしても……」

「な、なに?」

話しが一区切りついたところで、ジルはエステルの方を見ていた。見られた側のエステルはその視線にたじろぐ。

 

「さすが遊撃士だけあって、スポーツも得意そうな感じね。エステルさん、剣は使える?」

「そんなに上手くないけど多分、大丈夫だと思うわ。棒術がメインだけど父さんに習ったこともあるし、それにレイアにも教えて貰うもん。」

「へ~…………ん?そういえばさっきクロ―ゼも言ってたけど、レイアさん、フェンシングが出来るの?」

ジルはレイアに尋ねた。みたところ剣の部類は持っていないように見えるので、扱っていないのかと思うところはあったようだ。

 

「そうなるかな。ただ、私の剣技はほぼ独学なので……」

「そんな謙遜しなくても……シオンですら、貴方の事を褒めてたじゃないですか。」

「アイツですら認める剣捌きか……嘘じゃなさそうだな。」

「クローゼが言うぐらいだものね…………閃いたわ!まずエステルさん。あなたは騎士役で、クローゼと剣を使って決闘してもらうわ。」

「け、決闘!?」

「もちろんお芝居で、ですよ。」

何かに閃いたジルはまずエステルに劇の役割と何をするか言った。ジルの言葉にエステルは驚いたが、ミーシャが補足した。

 

「クライマックスに二人の騎士の決闘があるのよ。まあ、劇の終盤を彩る迫力のあるシーンなんだけど……この学園にクローゼと勝負できるくらい腕の立つ女の子がいなくてねぇ。この子、フェンシング大会で男子を押しのけて優勝してるし。」

「へ~、すっごい!」

ジルの説明にエステルは感心してクロ―ゼを見た。補足しておくと、その大会には、シオンは参加していない。丁度遊撃士の依頼の関係で休学しており、その間に行われたからだ。シオンの腕前としては、百日戦役…教団ロッジ制圧作戦…その後もあらゆる研鑽を重ね、クローゼ以上の実力者となっている。

 

「ちなみに、決勝で負けたのはそこにいるハンスだけどね~」

「悪かったな、負けちまって。ちなみに俺が弱いんじゃない。クローゼが強すぎるんだよ。しかも、シオンがいない状態での話だからな。」

「あれは、あくまで学生レベルの話ですから……本職のエステルさんやレイアさん(+シオン)には足元にも及ばないと思います。」

溜息をつきながら話すハンスにクロ―ゼは苦笑しながら答えた。

 

「クローゼったら、謙遜しちゃって。でも、そういう事ならちょっとは協力できるかも。クローゼさん、頑張ろうね♪」

「はい、よろしくお願いします。」

「う~ん……クロ―ゼがそこまでの腕なら、正直私は必要ないと思うんだけど……」

クロ―ゼの腕を知ったレイアは苦笑いをしながら答えた。シオンからある程度の話は聞かされていたが、そこまでの腕前ならば特に教えることなどなさそうに思えた……だが、ジルは次の一手となる言葉を放った。

 

「フッフッフ……そこはご心配なく!レイアさんとトワさんにも、当然劇に参加してもらうわ!」

「え?私が劇に?」

「私もですか?」

何かを思いついたように笑みを浮かべつつ言い放たれたジルの言葉に、レイアとトワは驚いた。

 

「え?ジル、でも……」

「そうだよ。余っている役なんてもうないだろ?」

そして、ジルの様子を不審げに思ってミーシャとハンスは尋ねた。今のところ空いているのは二役……『四人』全員となれば、『四役』なければ意味が通じないし、その余裕もないはずだと二人は知っていた。

 

「二人の役がないのなら、作ってしまえばいいのよ!!蒼騎士オスカーと紅騎士ユリウスの剣を叩き込んだ師匠と、姫君を幼き頃から守り、オスカーとユリウスの幼馴染にして若き護衛騎士!名前はそうね……師匠の名前は『“瞬剣”バージル』、護衛騎士の名は『“若騎士”チェスター』っていうのは、どうかしら?」

「「「「「…………………」」」」」

嬉しそうに説明をするジルをエステル達は呆けてジルを見た。この状況で役を増やして、演出に彩を加えようとする行動……いち早く立ち直ったハンスがジルに慌てた様子で尋ねた。

 

「って、おい!ここで役を増やすとか何、考えてんだ!?ようやく役が揃ったってのに、新しい役なんて増やしたら今までの練習がパアになるだろ!?」

「どのみち、主役クラスが抜けてたから大した事ないわよ。今までの流れに少し加えるだけだし、その辺の台本もシオンが『こんなこともあろうかと』残してくれたものから拝借すればいいだけよ。」

ジルは涼しい表情でハンスの反論を打ち破った。そのために、シオンには『あらゆる状況に対応できる台本』作りをお願いしてあり、そこから拝借してしまえば何ら問題はない……とすっぱり言い切った。

 

「そ、そりゃあそれでいいのかもしれねえけれど、でもな……!」

「あら、あんたは孤児院の子供達を喜ばせたくないの?役が増えればその分、さらに面白くなるのに。」

「グッ!」

「はぁ……」

今回の事件で大変な目に遭った孤児院の子どもたちを喜ばせる……『大義名分』を得たようなジルの言葉に、図星をつかれたかのようにハンスはその場でのけ反り、こうなった状態のジルはもう止められず、反論すら無駄なのだと知っているミーシャはため息をついた。

 

「あの……本当に大丈夫なのですか?急に役を増やしたりして……」

「大丈夫!必ず成功させるわ。だからレイアさんとトワさんも急で悪いんだけど、頑張ってもらえないかしら?」

「……わかりました。どこまでできるか解りませんが、私にできる精一杯の力を出させていただきます!」

「そうだね。折角の劇だしね。」

「がんばろうね、レイア、トワ!」

「お互い頑張ろうね、エステルちゃん。」

トワは引き攣った表情で尋ねたが、問題ないとジルは言い切り……その言葉を信じて、エステルとレイア、そしてトワは気合を入れるように互いを励まし合った。

 

「ハハ……それにしても、女騎士の決闘なんて中々ユニークな内容だね。それに、女性騎士団長なんて珍しくてお客の目を引きそうだね。」

「女騎士に女性騎士団長?そこの四人に演じてもらうのは、れっきとした男の騎士役に騎士団長役だぜ?」

「え……じょ、女性が男役?」

ヨシュアの感想に意外そうな表情で答えたハンスの言葉にヨシュアは驚いた。

 

「ヨシュアさんの方は文句のつけようがないわね……これは、かなり期待してもいいんじゃない?」

「ああ。俺は悔しいが、ジルの意見に同感だぜ。」

「そうだね。資質は十分だし。」

「???」

「え、えっと、その劇……どういう筋書きなのかな?」

ヨシュアを見る目が妖しいジルの言葉にハンスとミーシャは頷き、エステルは三人の言葉に首を傾げ、ヨシュアは嫌な予感がしながらも尋ねた。

 

「題名は『白き花のマドリガル』よ。」

貴族制度が廃止された頃の王都グランセルを舞台にした有名な話で、貴族出身の騎士と平民出身の騎士による王家の姫君をめぐる恋の鞘当て……それに貴族勢力と平民勢力の思惑と陰謀が絡んでくるという話で、最後は大団円、文句なしのハッピーエンド……という史劇である。

 

「へ~、面白そうじゃない♪」

「ええ、中々いいお話ですね。」

「た、確かにいい話なんだけれど……それで、どうして女の子が男性役を?」

劇の内容をジルが説明し、それを知ったエステルとトワは期待したが、ヨシュアは不安そうな表情で尋ねた。

 

「それが、今回の学園祭ならではの独創的かつ刺激的なアレンジでね。男子と女子が、本来やるべき役をお互い交換するっていう趣向なのさ。」

「男女が役を入れ替える?へ~、そんなのよく先生たちが許してくれたわね。」

「性差別からの脱却!ジェンダーからの解放!…………とかなんとか理屈をこねて、無理矢理押し通したちゃったわ。本当は面白そうっていう、それだけの理由なんだけど♪」

「それを最初に聞いたときは驚きだったし、まさか通すとは思ってなかったよ……」

「ジルったらもう……」

「ほんと、こんなヤツが生徒会長とは世も末だよな。」

力説した後、無邪気に笑うジルにミーシャとクロ―ゼは苦笑し、ハンスは溜息をついた。

 

「それに、顧問のトマス先生も協力してくれたしね。『そう言う趣も面白いですね!』と言って、今回の劇に全面的に協力してくれることになったのよ。」

「ホント、あの顧問にしてこの生徒会長だよ……(正直、前の会長の時にトマス先生がいなくてよかったかもしれないが……)」

「あははは……トマス先生の性格は知ってたけれど、ねえ……(あの時のジルとトマス先生……メガネを光らせて、本気でヤバかったし……)」

「……話を聞くに、相当凄い顧問なのは気のせい?」

「えと、優しい先生ですよ……ちょっと個性的ですが。」

「あの先生を『ちょっと個性的』というのは語弊があると思うぞ、クローゼ……」

生徒会顧問にして、国風文化課程と社会教育課程の地歴公民分野を担当するトマス・ライサンダー先生。歴史の事となると、眼の色が変わり……話す内容は何時間にも及び……彼の作るテストで満点をとったのは、この学園でも三人……主席のシオンと次席・三席のクローゼとジルぐらいだ。

 

「あれ?ってことは、この流れで行くとヨシュアは……」

「えと、うん、だよね……」

レイアとトワは横目でヨシュアを見て言いかけた所に、ヨシュアが青褪めて会話に割って入った。

 

「ちょ、ちょっと待った!その話の流れで言ったら……僕が演じなくちゃいけない『重要な役』っていうのは……」

「いやぁ、ホント助かったぜ」

「クローゼに感謝しないとね。」

「クローゼ、ありがとね。いい人たちを紹介してくれて♪」

「あ、あはは……ごめんなさい、ヨシュアさん……」

(………な、なんてこった……)

最早、退路は断たれてしまった…あるのは進路のみ…その事実に絶望しつつ、項垂れるヨシュアであった。

 

クローゼは衣装の事や役の事を頼むため、レイアとトワは寸法合わせのために先に行った。エステルらも行こうとしたところ、ジルに話しかけられた。

 

「そういえば、エステルにヨシュア。二人はクローゼのことを知ってる?」

「クローゼの?……もしかして、シオンが言っていたことかな?」

「シオンが?」

「うん。彼女の事についてね。」

ジルの質問に、エステルはシオンの言っていたことに心当たりがあり、ヨシュアもそれを思いだしていた。それは、デュナンの我侭によって泊まれるはずだった部屋を追い出され、ナイアルの部屋に帰ってきて、ナイアルが酒の飲み過ぎで先に寝てしまった後の事だった。

 

 

~ナイアルの部屋~

 

「へ!?クローゼがお姫様!?」

「……成程、確かにそっくりだとは思ったけれど。」

「って、ヨシュアは気付いてたの!?」

「確証はなかったけれどね。ただ、あの喋り方はやんごとなき身分の……この国だと自治州の当主に関わる家系か、王族の人間。そうなると選択肢はそう多くない、ってところまでは推理できていたけれど。」

「まぁ、そこまで推理されてたらばれているも同義だけどな。誰かさんは全く気付かなかったみたいだけれど。」

「うう~……」

驚きっぱなしのエステル、冷静に呟くヨシュア、ため息をつくシオン……三者三様の言葉と表情だった。

 

「でも、何であたしたちにクローゼの正体を話したの?」

「まぁ、カシウスのおっさんの子なら信用におけると思っていたし、二人の人となりはお前らのご近所さんから聞いてたからな。」

「(ご近所……セシリアさんやレイアのことかな?)」

「(その可能性が高そうだね……)」

シオンは個人的に交流のあるアスベル、シルフィア、レイア、セシリア、トワから話を聞き、誰にでも分け隔てなく接するエステルと、その影響を受けているヨシュアならばクローゼのことを話しておいても問題はないと判断したのだ。

 

「それに、早めに釘を刺しておけば変に驚かれる可能性も少ないし……希望的観測でしかないけれど。」

「成程……それは納得だね。」

「ちょっと二人とも、どーしてそこであたしを見るわけ!?」

「「どうしてだろうね?」」

「変にシンクロするな!!」

事実を知っていても驚きそうなエステルの光景が目に浮かび、その答えでシンクロしたシオンとヨシュアにエステルはジト目で反論した。

 

 

~今に至る~

 

「成程ね。ちなみに、クローゼのことを知っているのは私達にシオン、あとは学園長ぐらいかな。」

「一番最初に気付いたのはミーシャだったな。俺からしたら、普段はあまり怒らないミーシャがクローゼに説教していたからな。」

「私もその光景を見た時は吃驚よ……前会長ですらトラウマレベルだもの。」

「あはは……」

二人の話を聞いて納得した表情を浮かべた三人。ジルはこのメンバーの中で最初に気付いたミーシャの事を話し、ハンスもあの時の彼女を思い出し、ミーシャは苦笑していた。

 

 

『二人とも、其処に正座!!』

『『は、はい!!』』

『あらあら♪ミーシャさんには敵わないみたいですね、フフ……』

『ルーシー、そのような表情で呟くな……』

『あははは……』

『……ミーシャを怒らせたらダメだな、うん。』

『その意見に同意せざるを得ない。』

ミーシャは同じルームメイトとして、クローゼの余所余所しい態度には半ば呆れていた。そして前会長のレクターの奇行。これらのダブルパンチに本気で怒ったミーシャは二人を生徒会室で正座させて、説教を始めたのだ。ある意味『兄』譲りの凄まじいオーラを纏ったミーシャの威圧に二人は完全に委縮し、その光景を楽しそうに見つめるルーシー、それを見て冷や汗をかくレオ、笑いしか出てこないジル、ミーシャを怒らせることはダメだと本能的に悟ったハンスとシオンだった。

 

その後、クローゼのことを改めて知ったミーシャとジル、ハンスはそれでいてもクローゼとは仲良き友でありたいとクローゼに話し、彼女もそれを受け入れた。他の生徒会のメンバーには話していないが、前会長のレクター辺りはクローゼに対して色々とちょっかいを出しているので、薄々気づいていたのかもしれないが……

 

 

「けれども、私達からすれば友達であることに変わりはないわ。」

「うん。その点については同意するかな。」

「だな。お前らもいろいろあると思うけれど、クローゼと友達になってやってほしいのさ。」

「それは勿論!」

「うん、そのつもりだよ。(この後のアレは正直嫌なんだけれど……)」

「解ったわ。それじゃ、講堂に行きましょうか!」

そしてエステル達は早速衣装合わせや劇の練習をするために、自分の役割を知り絶望したヨシュアを連れて、講堂へ向かった………

 

 




てなわけで、頑張れヨシュアw(凄く他人事)

トマス先生ですが、彩を持たせるために追加しました。あの性格ならああ言いそうだったのでw

あと、アルバ教授ですが、原作でも学園祭に来ていたので、チョイ役程度の出演ですw扱い酷くないかって?いやだなぁ、あの人は出た瞬間に濃いキャラじゃないですかw

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