英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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原作キャラ一人登場です。
 
ヒントは『データは出てないけれど、会話から公式チートみたいな扱いされてる人』


第2話 まさかの遭遇

―ロレント郊外の森 平屋―

 

一通りの整理を終えた後、少年は考え込む。

この先、外に出ていくということは、誰かとの接触がある前提で考えなければならない。

 

だが、この後の『シナリオ』を考えた時、一人で何とかするのは無謀だろう。

神様による恩恵でいくら一騎当千の動きができたとしても、相手が膨大な量と質の力を持てば、容易に駆逐されることは目に見えている。解りやすい例で言えば三国志の世界において一騎当千の武を持っていた『呂布』や、公式チートな扱いを受けることが多い『曹操』がその最たる例である。一人が優れていようとも、一人でこなせる分量には限界が生じるのは明白。

 

それ以前に年齢の問題がある。中身というか精神は10代後半だが、外見は8歳でしかないわけで。下手に見つかれば保護だのなんだのと面倒なことになりかねない。

 

「名前も一応考えとかないといけないな……(流石に四条輝という名前は名乗れないし)」

まぁ、自分の名前をある意味捨てることになるので、真剣に考えなければならない。

 

『確実に自分の身を守れる力』を手に入れること、そして『きっかけ』を確実に掴み取っていくこと。その二つをやっていかなければいけないのだ。前者はともかく、後者はこの身なりなので信用されるかどうかは別問題だが……

 

「……とりあえず、装備類をそろえるか」

必要最低限の装備をそろえるべく、取りかかる。え?刀があるんじゃないかって?

あれは最終手段としてだし、迂闊に見せていいものじゃないからな。

パワーバランス的な意味で。

 

―――3時間後、一通りの武器を揃えた。

 

平屋の中には武器の改造やオーブメントの合成など、戦闘に関するものならば一通り揃っていた。流石に書籍類は置いていないので、後で調達することにしよう。情報はあるのなら手に入れるにこしたことはないし。

 

いやぁ、アイテム無限所持って自分が言うのもなんだけれどチートだわ。

ゼムリアストーン、Tマテリアル、Uマテリアルを大量に使用したからな。

棍、小太刀(二刀)、導力弓、方天戟、導力銃………ま、これだけあれば身を守るのに十分でしょ。

 

「自分の身を守るための武術……今更になって伯父さんと兄貴、姉貴に感謝する日が来るとはな、ハハハハ……」

転生前の時、居候で世話になっていた伯父や、伯父の弟子である義兄と義姉に『男児たる者、武を磨くことは必須』とか言って、よく付き合わされていたことを思い出す。

 

『良い筋だな。その歳で息子といい勝負ができるほどに。では、次は私が相手だ』

『二人と模擬戦でボロボロなのに……殺す気ですか!?』

『アハハ……』

『まぁ、頑張ってくれ。父さんの事だから手加減ぐらいはしてくれると思うぞ?』

『ただ、お父さんがノリノリだからねぇ……』

ノリノリの伯父、義兄と義姉との模擬戦でボロボロな俺、苦笑を浮かべた義兄と義姉、見学していた義妹の光景はある意味『日常茶飯事』だった。

あの三人、この世界だと確実に「理」に至ってそうなほど強かったよ……それに追随できていた自分もどうかしていたのかもしれないが。

 

『輝お兄ちゃんって、すごいね。私でもちょっとぐらいしか出来ないのに……人間じゃないんじゃないの?』

いや、義妹よ。あの三人が人間離れしていたからと言って、俺が『人間をやめました』的な感じで言わないで。悪あがきかもしれないけれど、せめて人間でいたいの。たとえ、あの三人に追随できていたとしても。

 

「アハハハ……はぁ」

散々しごかれたトラウマが蘇りそうになったので、思い出すのをやめた。

そういえば、転生前の世界はどうなっているのだろうな……大方葬式をして、悲しみにくれているってところかな。この世界に来れたのも『俺の死に納得できない人』がいたからこそなんだが。

 

(突発的とはいえ、別れも言えずじまいだったからな……やっぱり、『俺、家に帰ったら全力で伯父を叩きのめすんだ……』って死亡フラグ立てたからか!?バカ野郎、転生前の俺!!………はぁ、何やってるんだろ俺)

あることないことを回想して、心の中で一人漫才のようなことを思い、それがかえって空しくなったので途中でやめた。

 

一人漫才はさておいて、転生してしまったものはどうしようもない。今できることを確実にやっていくしかないのだ。

そういうことで、近くの山に経験値稼ぎも兼ねて探検することにしたのだが……

 

―近くの山―

 

「ぜぇ~……ぜぇ~……」

解ってた。うん、解っていた。こうなることは予想していた。

転生前に比べて体力が半分以下に落ちていた。いや、肉体が未熟な故に転生前の普段通りの動きだとすぐに息切れしてしまうのだ。

いくら精神が人間離れ?していたとしても、肉体は小学生程度のものでしかないわけで………いくらソフトが優れていようとも、それを十二分に発揮するハードが整っていないと、まともに機能しないのは至極当然である。

おまけに筋肉痛もあちこちきている。不幸中の幸いは山のふもとまで降りてきていたってところだけだ。正直ため息しか出ない。ただ、これは体が出来上がっていくにつれて慣れていくだろうと思いつつ帰ろうとした時、

 

―――目の前で何かが『落ちた』

 

「え?」

あ、ありのままに起こったことを話すと、目の前の空中に少女が現れ、落ちた。

助けようにも、あまりにも非常識すぎることが起きて、反応できなかった。

 

「えと、もしもし?」

問いかけたが、反応はなし。見た限り、目立った外傷はなし。

呼吸は規則正しくなっており、時折寝言を言っている……

 

「寝てる、のか?」

面識はない。というか、目の前に突然現れた時点で『普通』ではないのだが……流石に、魔獣のこともあるので放ってはおけず、お姫様抱っこで連れて帰ることにした。

 

―ロレント郊外の森 平屋―

 

とりあえず、空いているベッドに寝かせると台所に向かった。

時間的には夕食の時間で、2人分の食事を作ることとした。

 

「ん………」

しばらくすると、少女が目を覚ました。

 

「おや、目が覚めたみたいだな……」

「………」

声をかけるが、唖然とした表情でこちらを見ている。

 

「?どうした?どこか痛むのか?」

「……えと、ここどこですか?」

怪我とかを心配したら、率直な質問が返ってきた。まぁ、至極当然な疑問です。

 

「ここは、ロレント郊外の森の中の小屋だけれど……」

「え?そんな場所なんて原作には……」

……え?今、何て言った?“原作”って言葉が出てきたよな?

少なくともこの世界の出身だとそんな言葉は基本的に使わない……となると

 

「ひょっとして、“転生者”なのか?」

「え!?もしかして、貴方も!?」

あの神様、そのようなことを言っていたよな……こんなにも早く会えるとは誰だって思わないが。

とりあえず、夕食を食べてからお互いに知る限りの経緯を説明することとなった。

 

彼女の経歴も中々すごいものだった。それなりの身分の生まれで、音楽や武術に秀でていたらしい。俺なんてそれに比べたら凡人だな、とか言ったらどこかからツッコミが入りそうだな。流石に転生前の名前は聞かなかったが。

 

「自己紹介かな……俺はアスベル・フォストレイト。よろしくな」

「私はシルフィア・セルナート。よろしくね、アスベル」

……『セルナート』?今、目の前に映る少女―――シルフィアの名字が気になり、質問をしてみることに。

 

「今、名字が『セルナート』って言ってたけれど……七耀教会絡み?」

「あはは……内密にしてくれる?」

「ああ。その代り、時が来たら手伝ってくれるか?」

「勿論……えとね、どうして私が総長の名を名乗っているかというと……」

シルフィアはアスベルの言葉を聞き、改めて経緯を説明することとなった。

 

 

―アルテリア法国―

 

「失礼します……」

「おや、シルフィアではないか。」

シルフィアは枢機卿の部屋から出て無表情で歩いていたが、廊下の途中で『ある人物』と出会うと今までの表情から一転して怒りの表情を滲ませていた。

一方、『ある人物』――星杯騎士団の中で特別な力を持つ12人の騎士“守護騎士(ドミニオン)”のトップ、“紅耀石(カーネリアン)”の渾名を名乗るアイン・セルナート総長は、彼女の様子を見て笑みをこぼしていた。

 

「お勤めご苦労様だな。」

「よく言いますよ、お姉様は…あんな薄汚い奴、聖域にいることすら烏滸がましい限りです。」

アインのある意味皮肉めいた言葉に、シルフィアは皮肉どころか隠すことなく本音で先程の会話を思い出していた。

 

「『その美貌、将来の七耀教会に役立ててくれることを祈る』って、どう見ても自分の手駒にしたい気満々ですよ。」

「ま、いずれその辺りは『整理』する予定だがな。ともかくご苦労だった、第七位“銀隼の射手(ぎんしゅんのうちて)”」

シルフィアは、七耀教会の総長の執務室に飛ばされたのだ。そんな転生の仕方など前代未聞というか、転生させた神様がいい加減だったのか……

アインは彼女を保護し、戸籍上はアインの義理の妹という形になっている。アインは彼女に『守る術』として戦闘技術を教え、彼女の親友の正騎士から戦闘の駆け引きを学び、8歳にして人並み外れた技能を身に付けたのだ。

その過程で彼女に『聖痕』があることを知り、彼女の『立場』を枢機卿などといった欲の凝り固まった連中に利用させないために“守護騎士”へと推薦し、任命された。第七位“銀隼の射手”として。

 

「さて、お前にはここに留まる選択と出かける選択があるのだが」

「どっちも地獄でしょう……お義姉様なら、ここに留まったら書類仕事でもやらせるのでしょう?それなら出かけますよ」

「流石私の義妹。よく解っているじゃないか。」

そう言ってアインが一枚の紙をシルフィアに渡す。

 

「『結社』ですか……噂程度、ですよね?」

「どうだかな…お前にはリベールに行ってもらう。彼らが騒ぎを起こしそうなところを重点的に探ってほしい」

「無茶言いますね。まぁ、いつものことなので何も言いませんが」

紙を受け取り、不満げに呟いてその場を後にした。

 

「……さて、種は蒔いた。」

シルフィアを見送ったアインは意味深な言葉を呟き、シルフィアとは反対の方向へ歩いて行った。

 

 




ようやく原作キャラ一人登場です。エステルじゃないのですがw

そしてオリキャラも一人登場です。コンセプトは決めてますが、ステータスは決めていません。ただ、師事した人たちが『あの二人』なので、色々おかしいのはデフォ仕様ですww


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