英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第17話 存在価値の意味

~紫苑の家 敷地内~

 

5対100……オーウェンは絶対の自信があった。いくら相手が人間離れしていると言っても、これだけの猟兵をすべて倒せるはずなどないのだと高を括っていた……その驕りが自らの身を滅ぼすことに気が付かぬまま……

 

「さて、行きましょうか!はぁっ!!」

「ガッ!?」

レイアは棒を巧みに操って鎧ごと突き、その衝撃に猟兵は呻く。だが、彼女は止まらない。左足で猟兵の腕を蹴り、弾かれた大剣は宙を舞う……彼女は蹴りの勢いを生かし、落ちてきた大剣目がけて

「せいっ!!」

何と、大剣の柄頭を『蹴った』のである。飛んでくる大剣に反応できず、串刺しの如く、猟兵が貫かれていく。

「そらそらそらそらっ!!」

更に百烈撃で近くにいた猟兵を完膚なきまでに叩きのめし、レイアは棒をしまうと

 

「見せてあげましょうか……本当の怖さというものを!」

そう叫んだレイアの手元に光が集まり、大型のライフルが姿を現す。一般的に使われているものとは異なり、明らかに特注のライフルで銃身の上下に可動式の刃が取り付けられている。特注のライフルを使いこなすオルランド一族の中でも、一際目立つ黒と白銀のカラーリングが施された“運命の三女神”の名を冠したツインブレードライフル……『シルメリア』を構え、闘気を込める。

 

「永久に刻め、“戦乙女”の名を!」

いつもは大胆な破壊が目立つ彼女が撃った弾は寸分の狂いもなく、猟兵の手足を撃ちぬいていく。

「食らいなさい、ニーベルング・ベルゼルガー!!」

そして、彼女の持つブレードの刃が展開され、“闘神”から受け継ぎ進化させた彼女のSクラフト『ニーベルング・ベルゼルガー』によって、次々と絶命していく。

 

「……私たちを怒らせた罪、償ってもらいますよ?」

その言葉に戦慄する猟兵たち。だが、その意味を知ることなく、彼女の後ろから二人の男性が猟兵たちを襲撃する。

 

「そらあっ!!」

「せいやっ!」

その二人の男性…マリクとレヴァイスは手持ちの武器で次々と猟兵たちをなぎ倒し、レイアの背中に立つ。

 

「フッ、流石は“闘神”の娘。これほど武の才能に満ち溢れているとは……」

「買いかぶりすぎですよ。これでもあの二人には勝てていないんですから。」

「仕方ねえだろ。あの二人は『特殊』だ。」

三人は互いに声をかけ、“守護騎士”である二人の事に苦笑した。

 

「さて、奴さんが気を引き締める前に終わらせちまうぞ。」

「ああ」

「ですね」

三人の闘気が更に高まり、威圧となって猟兵たちを襲い、猟兵たちはたじろいだ。

 

「炎の刃を受けよ、ロールフレア!!」

マリクの放った投刃が炎を纏い、猟兵たちは逃げ惑うが

「おせえよ、スカッドリッパー!!」

レヴァイスの双剣による追撃に猟兵たちは次々と倒されていく。

「油断しないほうが身のためですよ、クロスレイヴン!」

更にレイアの銃撃で猟兵は息絶えていく。

 

「さあ、終幕と行こうか。炎と踊れ、カラミティロンド!!」

「“西風”たる所以、その身をもって知れ。バーティカル・エアレイド!!」

「これで終わりです、クリムゾン・ライアット!!」

三人のSクラフトが炸裂し、周囲にいた猟兵が次々と倒れ、三人の周りの猟兵は全員息絶えた。

 

「こんなところ、ですかね。」

「『こんなところ』じゃねえよ。お前ら、やりすぎだ……3人で90人近く吹っ飛ばすって……」

「はは、まあ楽できたからいいけれど。」

アスベルとシルフィアは三人の暴れっぷりにため息をつく。その一方、あまりにも一方的な蹂躙劇に唖然とした表情を浮かべるオーウェンだった。

 

「そ、そんな馬鹿な……な、何かの間違いだ!これは、夢なん……だっ……!」

その続きを彼は告げることも見ることもできなくなった。アスベルとシルフィアの斬撃は彼の心臓を貫き、絶命した。

 

「下衆が……」

「本当に、どうしようもない人……」

このような輩がいるから、組織というものは腐敗していく……それは、古今東西どの組織にも言えたことだ。だが、ため息をついている間もなく、第二陣が到着したようだ。

 

「レイア、マリク、レヴァイス…ここは任せた!」

「お願いします!」

先に行ったルフィナの安否が気にかかり、アスベルとシルフィアは三人にこの場を任せて礼拝堂の中へと入っていった。

 

「さあて、ウォーミングアップは済んだ。しっかり『教育』してやらねえとな?」

「まったくだ。この程度で≪猟兵団≫を名乗ろうなんざ、先が知れるな。」

「仕方ないですよ。ある意味では」

あれだけの戦闘をこなしながらも、三人に疲労の様子は見られない。むしろ、次々とくる敵に喜びを抑えきれずにいた。

 

 

襲い掛かる猟兵たちは知らない。彼らの存在を……そして、後悔することすらできずに敗北してしまう未来が確定的だということに。

 

 

~紫苑の家・礼拝堂 地下~

 

礼拝堂の隠し扉を開き、二人は長い階段を下りていた。この先にあるのは星杯騎士の中でも位の高いものしか知らない場所……古代遺物<アーティファクト>が眠る安置所。階段が終わり、真っ直ぐ伸びる通路を渡った先に『開いている入り口』……二人は迷わずに入り込むと、そこに映る光景は………残酷だった。

 

猟兵と思しき人間は悪魔のような姿に変わっていたが既に事切れており、ルフィナと似たような色の髪をした少女が倒れこんでいるが外傷は見られない。だが……

 

「っ……」

「遅かったか……」

ルフィナは緑髪の少年を抱きしめたまま、その瞳は閉じられていた。彼女の体にはいくつもの槍が刺さっていた。一方、少年は茫然としていた。彼女に刺さった槍と化け物を殺した槍、その光景からして何が起きたのかを悟った。

 

「あ、アスベルにシルフィア、オ、オレは……」

「とりあえず、眠れ。少しは……な」

「せ、せやけ…ど…」

アスベルの法術により、その少年…ケビン・グラハムは眠りに就いた。

 

「さて、ケビンのことは総長に任せるか。」

「……まぁ、いつもグータラしてる姉上には『お返し』しないとね。でも……」

「俺らの誰か一人でもついて行けばこんなことには……とりあえず、傷だけでも」

「ええ。………えっ」

せめてもの手向けとして、彼女の傷を治そうとシルフィアが手首に触れた時、彼女の脈が『動いていた』……改めて確認するが、脈が動いている。どう見ても明らかに人間が流せば致死量に至る血液を流しているはずだ……だが、彼女の脈は確かに規則正しく脈動している。

 

「アスベル、彼女……『生きている』みたい。」

「シルフィ、心臓の方は?」

「うん……こっちも、動いている。どういうこと?」

彼女はれっきとした人間である。それは自他ともに認めるほどだった。だが、彼女の血液の流れは生きているときと同じように脈動している。これは最早、『普通』ではないと率直に感じた。

 

「(まさか……)シルフィ、≪聖痕≫を使って回復させる。もしかしたら……」

「うん、了解!」

二人は精神を集中させて、聖痕を発動させ、二人の背中に紋章が輝く。

 

 

――我が深淵にて煌く紫碧の刻印よ。

 

 

――我が深淵にて煌く白銀の刻印よ。

 

 

『『かの者に課せられた戒めを解き、この世への生を再び繋がん!!』』

 

 

二人の詠唱に≪聖痕≫は輝きを増し……二人の≪聖痕≫の輝きが収まると、ルフィナの傷は全て癒え、顔色も血の気が戻っていた。

 

 

「あ……あれ……ここは」

「ルフィナさん…」

「良かったです。」

「えっと、アスベルにシルフィ?私、ケビンを庇って死んだはずでは……」

「どうやら、死に損なったようだな……ルフィナ」

戸惑いの表情を見せるルフィナ、元気そうな姿を見て安堵するアスベルとシルフィアの元に、一人の女性が姿を現す。

 

「総長!?」

「何やってるんですか、姉上……」

「アイン…」

「よせよ、照れてしまうじゃないか。」

三人は各々の反応でアインの方を見た。一方のアインは三人に見つめられ、冗談混じりに言葉を返した。

 

「っと、冗談はさておき、ルフィナ……お前には『一度死んだ身』として、暫くは潜伏してもらう。」

「解ってはいたことだけれど、ケビンを『成長』させるためね?」

≪聖痕≫……ひいては“守護騎士”というものは、誰よりも気丈でなければならない。誰もが目を背けたくなるようなことをも平気でやらねばならない。光のそばに影があるように、綺麗ごとの裏では謀略渦巻く歴史があるということは、歴史が証明してしまっている。例えその手が血まみれになろうとも……影となりて動く“守護騎士”には必要なことである。

 

「枢機卿の連中の『材料』ともなりえるからな。ようやく最終段階だ。」

「はぁ……何を言っても無駄みたいね。でも、フォローはしなさいよ?」

「善処はしよう。渾名はそのまま使うか?」

「それは拙いでしょう……大人しくしている間に考え置くことにするわね。」

 

こうして、紫苑の家での『事件』は幕を閉じることとなる。ルフィナはその後、アスベルとシルフィアの手引によってリベールに移住し、髪と瞳の色を変えて『遊撃士:セシリア・フォストレイト』として活動することとなる。その実績は瞬く間に上がり、僅か半月で正遊撃士に、その1年後にはA級正遊撃士“黎明”の異名を轟かせることとなる。また、アスベルとシルフィアもカシウスの推薦と遊撃士協会からの『特例』で、遊撃士として活動することとなり、瞬く間に実績を挙げていったのである。

 

それを受け入れた理由はいくつかある……遊撃士という表の顔を持てば、顔を知られやすくなるという一面があるのは否定しない。だが、遊撃士の裏で星杯騎士を務めているという実態を把握できるのは『結社』絡みの数少ない人間であろう。あとは教会関連の人間ぐらいだ。実態を隠すための『隠れ蓑』……そのために、遊撃士という職業を選んだ。

 

それから数年の月日が経ったある日……

 

 

~ロレント郊外~

 

久々の休日ということで、三人は気ままに過ごしていた。ちなみに、この三人が“星杯騎士”だと知っているのはカシウスだけである。その家に一人の少女が訪ねてきた。

 

「あの、ここにアスベルという人はいますか?」

「知り合いにそういう人はいるけれど……貴方は?」

「セシリア、誰か……って、見ない人だな。」

「私も初対面かな。」

話し声が聞こえ、アスベルとシルフィアも二人の元にやってきた。

 

「えと、貴方が総長の言っていたアスベルさんですか?」

「まぁ、そうなるな。俺がアスベル・フォストレイト。君は?」

アスベルが尋ねると、淡い栗色の髪に琥珀の瞳が特徴的な少女は自己紹介をした。

 

「えと、守護騎士第四位“那由多”トワ・ハーシェルといいます。総長からアスベルさんの補佐をするよう言いつかっております。至らぬ身ではありますが、どうぞご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。」

「「「はぁっ!?」」」

原作を知るアスベルとシルフィアにしてみれば寝耳に水の出来事だ。しかも、守護騎士が守護騎士の補佐って全くもって意味が解らない。しかも、彼女が言うには『好きにやってくれ♪by総長』との伝言らしい……あ、シルフィがキレてる。明日は晴れ時々総長の血の雨だな……

 

「放して!やっぱり『お話』しなければいけない気がするの!」

「止まってください、シルフィ!!」

「え、えと……」

「ま、いつものことだから。難しく考えたら負けだ。」

「そ、そうですか……」

守護騎士第三位、第四位、第七位の三人がリベール入り……“任務”絡みとはいえ、過剰戦力じゃね?これ。と率直に思ったアスベルであった。

 

 




てなわけで、次回からFC編です。長かったぜ……w

ルフィナは3rdのイベントのためにああいう形での生存としました。

ドビン?いや、ネギだったか……あれ?ww

そして、会長登場w色々説はありますが、私はハーシェル繋がりで神聖っぽい感じに……あれれ?むしろ黒くなったような……殺されるな、トワファンに(gkbr)

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