英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第119話 欺くことの意味

~アルセイユ 会議室~

 

緊急指令による着陸で難を逃れたアルセイユ。そこでエステル達やユリアが今後の動きについて話し合っていた。すると、様子を見に行っていた博士とティータが戻ってきた。

 

「あ、博士にティータ。どうなの?」

「うむ。エンジンの故障はなさそうじゃが、動力源がやられてしまったからのう……復旧だけでなく、その他の機器の調整もあるから、諸々合わせて丸一日かかりそうじゃ。」

「そうですか。」

エステルの問いかけに博士はそう答え、ヨシュアもその答えに頷くしかなかった。先程の“輝く環”の光……恐らくは、以前ツァイスのラッセル家で見せた黒い光と同質のもの―――『導力停止現象』を引き起こすものに違いなかった。その証拠に、エステル達が使っているオーブメントを駆動させようとしても、中のEPが空になってしまっているため、全く機能しない状態だ。試しにEPを回復させても動かなかったのがその証拠だ。

 

「けれど、弱ったわね……導力銃を使うアタシや導力砲を使うティータちゃんにはかなりの痛手よ。」

「あう、そうですよね……」

「フム……それの心配はいらんぞ。」

「それって、どういうことかしら?」

オーブメントが使えないとなると、導力を用いた武器を使うサラやティータにとってはかなり厳しい。自分の得物を封じられたも同然なのだから。だが、博士はその心配をする必要などないと断言し、シェラザードが首を傾げた。

すると、扉が開いて現れたのは……エステル、ヨシュア、アガット、ティータ、クローゼが知る人物との対面だった。

 

「あ、クラトスさん!」

「お久しぶりです。」

「おう、久しいな。二人に渡した武器の姿を見ると、俺も嬉しいぜ。爺さん、頼まれてたものを持ってきたぞ。」

エステルやヨシュアと挨拶を交わした人物―――クラトスは博士の方を向いて、持っていた荷物をテーブルの上に下ろして包みを開ける。

 

「これは、銃に導力砲みてえだが……それと、変わった形のブレードだな。」

「魔導銃『ストライクルージュ』、魔導砲『ファーディライズ』……そして、魔導剣『ディオスパーダ』。サラっていう人とティータちゃんの武器だ。」

「へ、アタシの武器!?」

「そ、それに魔導って……導力とは違うんですか?」

アガットの感想を聞きつつもクラトスが説明したことにサラは自身の武器を持ってきたことに驚き、ティータはクラトスの言葉に疑問を浮かべた。

 

「う~ん、俺も人伝で聞いた話だからすべて納得したわけじゃないんだが……お前らは導力というものをどう思ってる?」

「どうって……う~ん……」

「どう、と言われても……」

「今となっては生活に無くてならないもの、という他ないでしょうが……」

クラトスの問いかけにエステルらは明確な答えが出せずにいたが……博士は違っていた。

 

「そういうことではなく……導力そのものの意味、ということじゃな。」

「ああ。そもそも、導力というのは全ての人が恩恵を受けられる存在じゃなかったんだそうだ。」

「えっ!?」

(確かにそやな。教会の人間でも、その恩恵を受けられる人間は限られとるし)

『導力革命』というもののお蔭で導力そのものの恩恵を受けることができるが、そもそも、それは導力を引き出すための機械を通しての恩恵であり、使用者自身が七耀石から『導力』を取り出しているわけではない。厳密にその恩恵を受けているのは、そういった『神の加護』を受けたものか、法術によってその力を発揮できている者など……『空の女神』に関わる者が多いのが事実だ。だが、ごく稀に突然変異的な形でその力を引き出せる者が生まれることがあるのも事実だが、その大半はそれを知ることなく一生を終えることが大半である。

 

「本来の『導力』は、自身の精神力を媒介にして超常現象を引き起こす力。オーブメントは、『女神の加護』に縁のある七耀脈から精製された七耀石を用いて『導力』を発現させているに過ぎない……と聞いている。つまり、俺が持ってきた武器は……」

「精神力で『導力』の代わりをさせるってことね……」

「ああ。」

「………」

クラトスの説明に納得したサラが問いかけ、クラトスが頷く。一方、ケビンはクラトスの持っている知識を疑問に思いつつ、クラトスのほうを黙って見ていた。その後、クラトスが取り出したのはオーブメントであった。

 

「こっちはマードックさんから預かったものだ。」

「あれ?戦術オーブメントみたいだけれど……あたし達が使ってるのとは微妙に違うような……」

「第五世代型戦術オーブメント『ALTSCIS(アルトサイス)』……最大の特徴は『零力場発生器』を組み込んでおる。簡単に言うと、『ゴスペル』が発生させる特殊な波長の導力場……それによる共鳴を相殺する力場を発生する機能というわけじゃ。」

『ALTSCIS』……ALl-round orbmenT driver system and Septium-jamming CancelIng System(全局面対応型オーブメントシステム兼導力停止現象無効化機構搭載型)の略称であり、ZCF主導の第五世代型戦術オーブメントにして、第七世代型『ALTIA』に続いて『二つ目』の規格となる戦術オーブメントである。今エステル達が持っているのは第四世代型……つまりは世代交代となる。

 

「つまり、この状況下でもアーツは使えるということですね。」

「そういうことじゃ。じゃが、一応規則でこのオーブメントを渡せるのは殿下、それと国内所属の遊撃士のみじゃ。それ以外の者に関しては『零力場発生器』搭載の第四世代型オーブメントの『貸与』となっておる。すまんのう。」

「いえ、お気遣いなく。」

「リィンや俺はアーツをメイン戦う訳じゃないからな……これも、“柵”という奴か。」

この面子の中では、リィンとジンが対象になってしまうが、彼等は元々アーツをメインに戦っているわけではない。それでも、貸与とはいえ他の面々と同じようにアーツを使えることに安心した。

 

「え?何でリィンやジンさんは……」

「エステル、彼等は事情があるとはいえ、出身が出身だからね。」

「確かに……リィンさんは帝国出身、ジンさんは共和国出身ですから。」

オーブメントの技術に関しては、エプスタイン財団でも最近第四世代型に移行したばかり。それを飛び越した形での第五世代型導入のため、技術漏洩は避けたい……そのために、王国所属の遊撃士のみにオーブメント支給がなされることとなっている。それだけでなく、この第五世代には“個人適性による完全区別化”が導入され、本人以外がオーブメントを使用できないようにされているのだ。そのことに関してはエステル達にも知らされていない。

 

「さて、一通り済んだところで……遊撃士協会に依頼をせねばなるまいのう。全ての街の様子を見てきてほしいのじゃ。」

「街の様子?」

「うむ。これは王国軍から『予想だにしない事態』が発生した際、それを頼むようお願いされておる。報告に関してはカシウスに頼むぞ。あやつがその依頼主じゃからな。それと、レグラムとアルトハイムに関しては、既に遊撃士が動いてくれておるからのう……ツァイス、ロレント、ボース、ルーアン……それと、王都グランセルの五か所じゃな。」

確かに、今回の『輝く環』の出現によって混乱していないとも限らない……話し合いの結果、エステル、ヨシュア、クローゼ、シオン、アガット、ティータがルーアン・ボース方面へと回ることとなり、シェラザード、ジン、レイア、リィン、ケビンがツァイス・グランセル方面を受け持つ形で見回ることとなった。

 

エステル達が出て行って少し経つと……博士はため息をついた。それを見て、ユリアも沈痛な表情を浮かべた。

 

「しかし……彼等に嘘をついてしまうのは心許無いですね。そのために、博士には態々『ゴスペル』の模造品まで作っていただきましたし……」

「仕方ない。これも、あの『首謀者』を騙すやり方じゃからのう。」

そう話す二人……それはエステル達と合流する前。正確には塔の異変が起こる前、『アルセイユ』に集ったユリア、博士、カシウス……アスベル、シルフィア、マリク……そして、そこにいたのはかつて国家に反旗を翻した黒の軍服に身を包んだ人物―――アラン・リシャールであった。

 

 

~三日前 『アルセイユ』会議室~

 

「『天の鎖計画』、それと『水の鏡計画』だと?」

「ええ。今回の作戦の要とも言うべき『対抗策』です。」

そう切り出したのはカシウスの発言。それにアスベルが頷く。

 

「ふむ……『首謀者』を燻りだすもののようだが……内容はどのような感じなのかね?」

「それはこれから説明します。」

リシャールの言葉にアスベルは機械を操作してモニターに王国の地図を表示する。

 

『輝く環』単体での『導力停止現象』の範囲は、半径1000セルジュ……直径範囲2000セルジュ(200km)の円形状に及ぶ。これは、“カペル”による『ゴスペル』の効果範囲の力場が及ぼす効果から割り出した分析結果。更に、端末である『ゴスペル』を用いると、更に拡大可能。大本である『輝く環』から一定の範囲内であれば、更に拡大可能の代物である。

 

「『天の鎖』の要は第二結界……つまり、空間拘束を担う『デバイスタワー』に『ゴスペル』を用いるでしょう。尤も、彼等は執行者を動かしますから必要以上に手を出すのは拙い。下手すれば『方舟』を本格的に持ち出してくるかもしれませんしね。」

そこで、『デバイスタワー』にある仕掛けを施した。『結社』が第三段階となる行動を実施した際、四輪の塔の封印装置を一定以上のエネルギーが流れた際に強制遮断するように仕込んだのだ。これには、今まで奪ってきた『十三工房』の知識を生かす形となった。強制遮断すると、今までの封印が解ける形となるように……

 

「そして、王城地下の封印区画。実は、アレも細工してあったんです。博士の協力を得た形で。」

「なっ!?」

「博士、本当ですか?」

「うむ。そのお蔭でわしもいい勉強をさせてもらったわい。」

更に、『時間拘束』を担う『封印区画』にもゴスペル使用時に強制遮断、封印解除のシステムを組み込んだのだ。だがそれは……この先の事態を乗り切るための、『事前準備』に過ぎない。

 

「『天の鎖計画』は『結社』を止めるための計画。そして『水の鏡計画』は『結社』を欺くための計画なのですから。」

そう言い切ったアスベル。

 

仕組みはこうだ。『零力場発生器』を組み込んだ封印区画と四輪の塔……それの始動キーであるゴスペルと同じ形の白いオーブメント『テスタメントゥム(聖典)』を用い、五つの場所の装置を再起動させる。そして、四輪の塔は『輝く環』の周囲に目視できない程薄い空間の力場を形成して、導力吸収範囲を狭める。

 

『テスタメントゥム』……『ゴスペル』の上位版で、『条件付きでの導力停止』および『ゴスペル』―――『導力停止状態』の強制無効化の能力を持っている。その能力を四輪の塔に接続することで、『テスタメントゥム』による『導力停止状態』無効化の『空間拘束』を可能にした。その開発は内密に行われ、その実情を知るのは七耀教会の星杯騎士団といえどもごく少数……アスベルとシルフィア、そして総長であるアイン・セルナートの三人だけである。

 

それと同時に、封印区画の時間拘束によって異空間形成の補助を行うと同時に、四輪の塔へエネルギー供給を行う。封印区画のエネルギーそのものに状態変化の時間凍結を行い、『永遠に減らない導力エネルギー』によって無限供給を可能にする。そのエネルギーで王国の上空全体に“導力停止状態のリベール”を投射するものだ。更に、各都市や街道に密かに配置された『テスタメントゥム』により、『指定されたもの以外の導力をすべて吸収する』という状態を意図的に作り出し、一時的に導力停止状態を作り出す。

 

あと、『輝く環』停止時にZCFが優先して動き、今回の事態で導力機器が問題ないかどうかという名目で一度回収し、帝国進撃後にすべて返す予定だ。その間に関しては、都市に蓄えられた備蓄の開放や、内燃機関などの利用でその場をしのぐこととした。一応全国民には抜き打ち式で二~三日ほど“導力が停止した際の訓練”の実施ということで通知を行い、理解を得ているので問題は無く、王国議会や王国軍もこれに同意している。

 

後は、通信器の細工やら、王国軍での導力に頼らない戦略・戦術……多岐にもわたる対策を立て、実行してきた。

 

「敵を騙すためには味方から、か。中々いい案だな。」

「アスベル、大変だったでしょ?」

「ここまで来るのに結構苦労したけれど……こちらの読みが正しければ、帝国軍は来ます。それがもし、“導力に頼らない武装”だった場合……その辺はカシウスさんにお任せします。オリヴァルト皇子とも色々話してましたからね。」

「そこまでお見通しか……アスベル、その根拠は?」

「向こうの軍の動き……第三機甲師団が帝都南部に集結していました。」

帝国正規軍がこの時期に演習場もない帝都南部にいる意味……そこから予想できるのは、“嫌な予感”だけであろう。

 

「この時期に、となると些か邪推しかしないがね。私の部下からの報告では、王国へ軍を差し向けるというのは確かなようだ。」

……原作では、リシャール率いる情報部は解体された。ここでも、“名目上”解体された形である。だが、実際には解体しておらず、『天上の隼』傘下の『特務部隊』という形に収まっている。折角の情報網を自ら手放すのは不本意……そこで、アスベルとカシウス、女王にモルガン、リアンやシオンの説得により、リシャールらは非公式に恩赦を与えられ、今の地位―――特務中佐に収まり、『特務部隊』の隊長を務めることとなった……まぁ、『芝居』とはいえ王家に剣を向けたことに対する寛大な処分には、本人が苦笑いを浮かべたのは言うまでもない。

 

「っと、失礼する。」

すると、会議室の通信器が鳴り、ユリアが応対する。

 

「どうした………何っ!?……解った。大佐に伝えておこう……カシウス殿、エレボニアとカルバードの国境師団より連絡。『赤い星座』『北の猟兵』それと……『黒月(ヘイユエ)』が国境を越えたそうです。ですが、自治州の各都市やヴォルフ砦を通らず……その後、行方が分からなくなったそうです。」

ユリアはその重大さに驚くが、すぐさま気持ちを切り替えて報告を聞き終えた後、他の面々に通信内容を伝えた。

 

「この時期に、か……」

「大方『結社』に雇われた……そう見るべきですか?」

「その可能性が高いだろう。アルトハイムやレグラム、それとツァイスではないとなると……」

「グランセル、ロレント、ボース……その三都市ですか。」

「だろうな。」

報告を聞いた博士は黙り込み、リシャールは可能性をカシウスに尋ね、カシウスはそれに答えつつも彼等の狙いはアスベルの述べた三都市の可能性が高いと考えた。尤も、ボースは貿易の中継地とはいえ、其処を落としたとしても戦略的に価値が薄い。となれば、ロレントとグランセル……その辺りが落としどころだろう。

 

 

~霧降り峡谷~

 

アスベル達が『アルセイユ』で話していた頃、滅多に人の出入りが少ない峡谷。そこにいるのは屈強な兵士たち。そして、その一番奥にいるのは見るからに偉丈夫と表現するにふさわしい男性、そしてその傍には活発そうな少女の姿だった。すると、その二人に近づく一人の男性―――彼らの部下の一人が情報を伝え、その場を離れると男性は笑みを浮かべた。

 

「フン……にしても、『結社』とやらは随分と羽振りがいいな。ミラと戦場を態々用意してくれるとは……俺達を理解してくれているようだ。」

「だよねぇ。シャーリィも楽しみになって来たよ。なんたって、凄い人たちがいるんでしょ?確か“剣聖”だったっけ?」

「それだけではないみたいだがな。強者の匂いがこの国に集まっている……こいつ等にいい場所を提供してやれそうだ。」

男性―――“赤い戦鬼(オーガ・ロッソ)”シグムント・オルランド、少女―――“血染め(ブラッディ)のシャーリィ”シャーリィ・オルランド。名字からわかると思うが、二人は『赤い星座』の一員。シグムントはバルデルの弟にして副団長、シャーリィはシグムントの娘である。

 

二人がこの依頼を引き受けたのは、団長であるバルデルと副団長のシルフェリティアが所用で団を離れている際、『結社』の使いが来たのだ。最近激しい戦いをしていなかったシグムントはこの依頼を団長の意向を無視した形で受け、シャーリィや彼を慕う面々らが集った形ではあるが、一個中隊ほどの規模となっていた。

 

「それに、この国には“猟兵王”や“驚天の旅人”もいるらしい。そいつらを食らうのも、一つの楽しみだな。」

「む~……シャーリィには手が余りそうだよ。あ、でも、レイアもいるのかな?楽しみだなぁ。」

「フ、久々の再会になったら遊んでやれ。“俺達の流儀”でな。」

「解ってるよ、パパ♪」

シグムントの言葉にシャーリィは少しむくれるも、自分の身内である少女の事を思い出し、すぐに笑みを浮かべた。その一方、ミストヴァルトにも屈強な者たちが集っていた。

 

 

~ミストヴァルト~

 

「しかし、よろしいのですか?」

「確かにその点に関しては腑に落ちねえ。けれども、長老たち(ジジイども)がああ言っている以上」

「無視もできない、ということですか。」

そう言っているのは、東方風の服装に身を包んだ二人の男性。共和国に広い基盤を持つマフィア『黒月(ヘイユエ)』で若くして一、二を争う実力者“赤炎竜”ライガ・ローウェン。そして、その副官であるラウの姿であった。ライガは口にくわえた煙草を指で持つと、息を吐いた。

 

「ああ。ラウ、お前はヤバくなったら真っ先に離脱しろ。俺にしちゃあ不服だが、ツァオの野郎にはこの国の“現実”を知ってもらわなきゃならねえ。」

「……ライガ様、やはり“黒月”を恨んでおられるのですか?」

「クク、さあてな。あのジジイども、正直八つ裂きにしてえのは事実だが……それを言えるのはラウぐらいだぜ。」

「初対面から度肝を抜かす発言を平然としたのは、後にも先にもライガ様ぐらいです。」

マフィアにおいてそういう発言は『粛清』の対象になりえるのだが……ライガはそれを己の身一つで退け、中には長老どもの場所に直々乗り込んで脅したこともある。これには長老たちもライガへの圧力は無意味であると結論付け、必要以上の干渉をしないことに決めた。ライガが『黒月』にいること自体他のマフィアに対する抑止力みたいなものになっていたのは、否定しようもなく、長老たちは胃を痛める状態であった。そこに降ってわいたかのように『結社』の依頼……長老どもはライガにリベール行きを勧め、最初は拒否しようとしたが……何か考えがあったらしく、これを引き受けることとした。

 

すると、二人のもとに仮面と特殊な服装で姿を隠した人物が現れる。

 

『フン、“赤炎竜”とも呼ばれる人間が殊勝な台詞を吐くとはな。』

「貴様、一体何者だ!?」

「落ち着け、ラウ。もしかして、お前が長老たちの言っていた“銀(イン)”とかいう凶手か。」

その人物の物言いにラウは食って掛かるが、それを制してライガが問いかけた。

その凶手―――“銀”と呼ばれた少年は口元に笑みを浮かべた。

 

『如何にも。此度の協力は『黒月』との長期契約の一環、と捉えてくれていい。尤も、こちらがやるのは奇襲ではあるがな。何か質問は?』

「特には無い。こちらとしても借りれる手は多い方がいいからな。」

『いいだろう……貴殿の健闘を祈っておこう。』

そう言葉を交わすと、銀はその場を去った。

 

「よろしいのですか?」

「大方長老たちが付けた監視役みてえなもんだろ……だが……」

「だが?」

「いや、なんでもねえ。他の連中にも英気を養うよう言っておけ。」

「畏まりました。」

 

 

 

―――この戦い。いや、戦いになるかどうかすら、俺自身疑わしくて仕方ねえんだよ。

 

 

 

先程言いかけた、ライガが内心で呟いた言葉。その言葉が現実となるまで、あと四日のことだった。

 

 




単純に無効化するのではなく、段階的に無効化を解いていく……頑張って描写していきます、ハイ。

“敵を騙すにはまず味方から”とも言いますしね。原作だと、ヨシュアは『あるシーン』まで普通に行動していましたが、その間にも情報を流してなかったとは解りませんので……そういうことがある前提で話を進めています。

それと、ツァオと対になるようなオリキャラを持ってくることにしました。


次回、エステルらの奇妙な冒険~スターライトブレイカーズ~(嘘)

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