英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第96話 オルグイユ

波止場についたエステルらは軍用犬の襲撃を受けるが、難なく退け……そして、倉庫に着くと……特務兵が倉庫番に襲い掛かろうとしたため、これも打ち倒した。

 

~波止場 倉庫~

 

「ま、まあいい。これで時間は稼げた……あとは大尉殿にすべてをお任せするだけだ……」

「え………」

他の特務兵達が倒れている中、一人の特務兵が呟いた事にエステルは驚いた。彼等の存在自体が『時間稼ぎ』だということに……

 

「じょ、情報部に栄光あれ……」

「ちょ、ちょっと!?」

「アカン、気絶してもうた。」

エステルは今呟いたことを問いただそうとしたが、ケビンは特務兵の状態を調べて、溜息を吐いた。『お茶会』の意味も解らないだけでなく、『時間稼ぎ』の意味すらも解っていない……謎が解るどころかさらに深まったのは言うまでもないことだろう。

 

「ねえ、オリビエ。『大尉』ってもしかして……」

「間違いないだろうね。君が思っている人物……武闘大会で出会ったリシャール大佐の副官らしき人物の事だね。」

「うん。カノーネ大尉ってことね。」

呆れた表情をしているエステルの確認にオリビエは真剣な表情で頷いた。リシャールの副官的存在であるカノーネ・アマルティア大尉……彼女の行方に関しては、クーデター事件時に封印区画で出会った時以来行方知れずであった。その人物がこの王都にいるということだろう……

 

「あんたたち……本当によく来てくれた!」

「ありがとう……君たちは命の恩人だよ。」

エステル達が相談しているその時、倉庫番達が近寄ってお礼を言った。

 

「えへへ……どういたしまして。あれっ……ああっ!」

「どうしたんだ、エステル?」

「なんかゴツそうなオーブメント装置やねぇ。何に使うもんなんや?」

エステルはそこにあるものの違和感に真っ先に気付き……機械に近寄ったエステルにアガットは尋ね、ケビンは機械の正体を尋ねた。

 

「アルセイユ用に開発された高性能のオーバルエンジンよ!確か3つあったはずなのに……」

ケビンの疑問にエステルは焦った表情で叫んだ。レンを探していた時、グスタフ整備長がエンジンを運んでいたのを思い出しつつ、数が足りない事を言った。今ここにあるのは1基だけ……その疑問に倉庫番の人が答えた。

 

「ああ、こいつらの仲間が運搬車で持っていったんだ。この先にある波止場の方に……」

「あ、あんですって~!?」

倉庫番の答えにエステルは声を上げた。ここにある……あったエンジンは『アルセイユ』に搭載されている代物……正確にはかつて搭載していた物というべきなのだが、それを2基使う代物……その時点で嫌な予感しかせず、エステル達は波止場へ急いだほうが無難と考え、急ぐことにした。

 

「嫌な予感がするな……波止場に急ごう!」

「ああ!」

「了解した。」

「よしきた!」

そしてエステル達は先を急いだ。

 

 

~波止場 最奥部・倉庫前~

 

「フン、やはり来たわね。」

エステル達が奥に到着するとそこにはカノーネと複数の特務兵、そして特務兵に拘束されたデュナンがいた。各地に出現した特務兵は囮であり、狙いは初めから王都であったようだ。

 

「やっぱりあんただったのね……カノーネ大尉!」

「フン、元大尉ですわ。犬どもが騒がしかったからもしやと思って出てみれば……遊撃士というのはよっぽど鼻が利くみたいね。」

「なめんじゃないわよ!あんな真似をしておいて!」

「何を言ってるのかしら?私はただ、公爵閣下の王位継承をお手伝いするだけ。部外者はすっこんでいなさい。」

自分を睨み、怒鳴るエステルにカノーネは不敵な笑みを浮かべて答えた。

 

「公爵さん!?あんたまた馬鹿なことを……」

「だ、誰がこのような無謀な計画に荷担するかっ!こ、こやつらは私のことを利用しようとしているだけだ!」

カノーネの答えに驚いたエステルはデュナンを信じられない表情で見たが、デュナンは心底嫌そうな表情で否定した。見るからにそれは演技などではないということをエステルらが悟るのにさほど時間はかからなかった。

 

「うーん、何か本気で嫌がっとるみたいやねぇ。」

「となると、彼女らの独断ということだな……」

「カノーネ・アマルティア元大尉、いい加減本音を言ったらどうかな?本当の目的はリシャール大佐の解放ではないのかね?」

「ええっ!?」

ケビンとクルツはデュナンの状態を見て呟き、オリビエの推測にエステルは驚いた。

 

「行方知れずの特務兵ら、城に届いた陳情……それと、極右勢力が口を閉ざされている状況……それから鑑みれば、その筆頭であるリシャール大佐を釈放させようとするだろう。潜むということは、『そういったこと』への意思表示という他ないだろうしね。」

オリビエの意見は正論だろう。軍の呼びかけに対して素直に投降しなかったということは、再び同じようにクーデターを企むという意思の裏返し……城への陳情に関しては、そういったところを見せることで、リシャールへの道場を煽ろうとする目論見もあったに違いない。

 

「うふふ、そこまで判っているなら話が早い……―――これより『再決起作戦』を開始する!あなたたち!2分間だけ持たせなさい!」

「イエス・マム!」

そしてカノーネは特務兵達に指示をした後、数名の特務兵達と倉庫の中に入った。

 

「こら、待ちなさいよ!公爵さんはともかくレンは解放してくれても……」

「大尉殿の決意と覚悟、邪魔させるわけにはいかん!」

「来い、ギルドの犬ども!」

「こ、この~っ……」

「いい度胸だな……エステル、こいつらに労力と時間を費やすだけ無駄だ。少し下がってろ。」

エステルはカノーネを追いかけようとしたが、特務兵に阻まれ、武器を構えた……だが、アガットはため息をついてエステルを制し、後ろに下がらせると……背負っていた武器を構えた。

 

「ほう、我々相手に一人でかかってくるとはな……命が惜しくないと見た。」

「とんだ大馬鹿者もいたものだ……」

その姿勢に嘲笑う特務兵たち……

 

「エステル君、私達も加勢すべきではないのか?」

「せやな。流石に向こうも手練れのようやし……」

クルツとケビンもアガットの振る舞いには流石に焦りを感じ、手助けしたほうがいいのではないかと声をかけた。だが……

 

「あ~あ……あたし、知~らないっと……」

「???」

『事情』を知るエステルの言葉に、首を傾げるオリビエ。その言葉の意味は、その後にすぐさま理解した。

 

「……来いよ。」

「貴様……ギルドの犬如きが偉そうに!!」

口元に笑みを浮かべて手招きしたアガットの挑発に業を煮やした特務兵の一人が斧を振るうが、

 

「おせえよ。そらあっ!!」

「ぐあっ!!」

何と、アガットは振るわれた斧の上から叩き伏せるように剣を振るい、その反動で特務兵は吹き飛び……倉庫の壁に打ち付けられた。その光景に他の特務兵は動揺したが……

 

「どうした?あのロランスに鍛えられた連中がそんな様たぁ……情けねえな。」

「貴様っ……犬如きが調子に乗るな!!」

白兵戦主体の特務兵が爪付の手甲を振るい、アガットに襲い掛かる。

 

「犬如きねえ……なら、その犬に負けるアンタらは犬未満ってこった、なっ!!」

「は………なぁっ!?ぐはっ!?」

それすらも見えたアガットは返す刀の如く剣を振るい、爪を叩き折った。その光景を目の当たりにした兵士は夢でも見ているかのように焦燥の表情を浮かべたが……次の瞬間には、先程の特務兵と同じように、倉庫の扉に打ち付けられていた。

 

「さて、俺も今日ばかりは虫の居所が悪いんでな……これでおわりだっ!!」

アガットは残る特務兵らに向かって走り出し……飛び上がり、重力の慣性に従うかの如く剣を地面に向かって振り下ろす。

 

「ぎゃあああああっ!!!」

アガットの新しいクラフト……地面に剣撃を叩き付け、その衝撃波で相手を吹き飛ばすと同時にダメージを与える『グラウンド・バースト』によって、残った特務兵らも吹き飛び……最早彼らに戦闘する気力すら残っていなかった。

 

「……エステル君、アガットはいつの間にこれほどまで……」

「何でも、相当訓練を積んだみたいなのよ。父さん直々に鍛え上げてたみたい。それに、一人でレーヴェ相手に勝ったしね。」

「ハハ、それは頼もしいやっちゃな……(レーヴェと言うたら、確か『結社』の『執行者』“剣帝”……姉さんですら何とか引き分けに持ち込んだとか言うその御仁に勝ったって……この国の遊撃士、騎士団どころか“守護騎士”に匹敵するとちゃうんか?)」

冷や汗を流しつつ尋ねたクルツにエステルはそう答え、それを聞いたケビンは内心青ざめた感じでこの国の遊撃士のレベルの高さ……下手すれば“守護騎士”ですら簡単に捻ってしまうのでは……という懸念を抱きつつ、衝撃を感じずにはいられなかった。

 

「く、くそっ……」

「何て奴だ……」

「往生際が悪いわよ!ほら、とっととどきなさい……」

エステル達の攻撃によって蹲って呟いている特務兵達にエステルは怒鳴ったその時、特務兵らの後ろにある建物―――倉庫の扉が突如内側からへこんだ。

 

「わわっ……」

「な、なんや!?」

「まさか……これが設計図の……」

「ははは……間に合ったようだな……」

「じょ、情報部に栄光あれ!」

そして扉が何かによって吹っ飛んだ―――中から姿を見せたのは戦車。それも、かなりの重装甲を有し、火力に関してもそれなりのものを搭載していそうな雰囲気を出していた。

 

「せ、戦車……!?」

「これが『オルグイユ』……成程、あの場所にあった設計図はこれということか。」

「ご明察。どうかしら……この『オルグイユ』は?情報部が独自に開発していた最新鋭・高機動の導力戦車よ。火力はエレボニア製戦車の2倍―――ほぼ警備飛行艇に匹敵するわ。」

オルグイユを見て驚いているエステル達に戦車のハッチの中からカノーネが出て、勝ち誇った笑みで答えた。つまり、クルツ達が見つけたのはこの戦車―――『オルグイユ』の設計図だったということだ。

 

「ふむ……ラインフォルト社製のよりも遥かに重装甲……となると、火力に関しても、あながち嘘ではないみたいだね。」

「ム、ムチャクチャだわ……」

冷静にそのフォルムを見てオリビエは感想を述べ、エステルはその形に驚きと呆れが交錯したような言葉を述べた。

 

「これを動かせるだけの高出力なエンジンがなかったので、完成一歩手前で保管されたけど……まさか『アルセイユ』の新型エンジンが手に入るなんてね。うふふ、空の女神はわたくしに微笑んだみたいね。」

「ちょ、ちょっと……そんなものを使って何をするつもりなのよっ!?」

勝ち誇った笑みを浮かべて語るカノーネに、エステルは睨みながら何を企んでいるかを尋ねた。いや、この時点である程度の予測は出来ている……その予測は当たりだとでも言わんばかりにカノーネは高らかに言い放った。

 

「言ったでしょう。公爵閣下の即位を手伝うと。そのためには女王陛下に認めていただかなくてはねぇ。」

「ま、まさか……」

「狙いは城の女王様!?」

「ははは!今ごろ気付いても遅いわ!この『オルグイユ』ならたやすく城門も粉砕できる!城詰めの部隊も敵ではない!お前たちはせいぜい指をくわえて見ていなさい!」

そしてカノーネはオルグイユの中に入り、オルグイユを進ませた。自分達を轢くつもりで進んできたオルグイユに対して、エステルらは間一髪でかわした……そして、エステルらは城へと移動するオルグイユを急いで追った。

 

「ふふ……完全に引き離せたようね。このまま城を占拠して女王陛下を拘束できれば……な……!?」

安堵しきった表情のカノーネを突き崩すかの如く放たれた砲弾。突然の攻撃にカノーネは驚いて、攻撃が来た先を見た。そこには―――

 

「ふう……どうやら間に合ったようだな。」

ユリア率いる親衛隊達が大砲らしき導力の大型武器を設置して待ち構えていた。

 

「お、王室親衛隊……!それに……ユリア・シュバルツっ!」

「久しぶりだ、カノーネ。まさかお前とこんな場所で相見えることになろうとはな。」

「あなたたち……どうしてここに!?レイストン要塞で飛行訓練をしていたのではなくて!?」

ユリア達の登場にカノーネは驚いて尋ねた。王国軍はもとより、王室親衛隊の動きは全て把握していた。その動きのイレギュラーさにはさしものカノーネですら動揺を隠せずにいた。その問いかけに答えるかのごとくユリアが言葉を発した。

 

「リアン中佐から緊急の応援要請があってね。どうやらグランセル市街で変事が起こるのを読まれていたらしい。そこで我々が飛んで来たわけさ。」

「くっ……ただの昼行灯かと思えば……」

「中佐はリシャール大佐と同じくカシウス准将の元部下だからな。侮ったお前のミスということだ。」

マクシミリアン・シード……その実を知るのは、軍の中でも女王陛下やアスベルらを除けば、カシウス・リシャール・モルガン……そして、ユリアだけであった。そういった意味では、リシャールがカノーネにリアンのことを話していなかったからこそ、不意を突く形に持って行けただけに過ぎない。

 

「どうやらそのようね……。それで、あなた達。何をしようというのかしら?」

「なに……?」

「アルセイユに搭載された移動式の導力榴弾砲……。そんなものでこの『オルグイユ』に対抗できるとでも思って?」

眉を顰めているユリアにカノーネは不敵な笑みを浮かべて尋ねた。戦車相手に心許無い代物……たかが榴弾砲如きで何ができるのか、と。それを使って本気で対抗する気でいるのかと。

 

「対抗できぬまでも足止めくらいはできるさ。じきにリアン中佐の部隊もこちらに到着するはずだ。投降した方が身のためだぞ。」

「うふふ……。アーハッハッハッ!」

「……なにがおかしい。」

突如笑い出したカノーネをユリアは訝しがった。

 

「相変わらずね、ユリア……。真っ直ぐで凛とした気性は士官学校の頃のまま……昔から顔を合わせるたびにいがみ合ってきたけれど……。わたくし、あなたのそういう所は決して嫌いではなかったわ。」

「カノーネ……それは私の方も同じだ。」

士官学校時代に幾度となく顔を合わせてきた二人……得意とする分野や配属されることとなった部隊の違いはあれど、その実力は互いに認め合っていた。だが、片や王室親衛隊の中隊長……もう一方は、国家の反逆者……互いに国を思うが故に、対立する構図となったこの状況に、最早言葉など意味を成さない。

 

「でもね……。リシャール閣下の解放を邪魔するなら容赦しないわ!」

「!!仕方ない……。1番、2番共に発射用意!戦車の足を止めるぞ!」

カノーネの固い決意に説得を諦めたユリアは親衛隊員達に指示をし、親衛隊員達が導力榴弾砲にエネルギーを充填し始めた。

 

「撃て――」

ユリアが号令したその時、オルグイユに装着されてあった『ゴスペル』が妖しく輝き、ユリア達の周りの導力が全て停止した。

 

「な……!?」

「だ、だめです!機能停止しました!」

「くっ……導力停止現象か!?だが、そんな事をすれば肝心の戦車だって……」

導力が停止した事に焦ったユリアはオルグイユを見たその時、オルグイユは周りの導力が停止しているにもかかわらず動き始めた。

 

「ば、馬鹿な!どうして動ける!?」

そしてオルグイユは砲弾や高出力の導力を放って導力榴弾砲を破壊し、銃弾をユリア達に向けて連射して放った。銃弾を受けたユリア達は傷つき、跪いた。

 

「周囲の導力器を停止しながらも接続した機体は動かせるユニット……うふふ……予想以上の力ですわね。」

「くっ、カノーネ……。その『ゴスペル』はいったい……」

「うふふ、ある筋から入手したのよ。『実験』を手伝うのと引き換えにね。」

『ゴスペル』の想像以上の力に感激するカノーネ……導力停止下でも動いている『オルグイユ』のことも疑問に思うが、ユリアはカノーネが何故『ゴスペル』を手にしているのかを尋ねると、カノーネはぼかしつつ答えた。

 

「な、なによあれ!?」

「新型ゴスペルの実験……!チッ、こんな形でやるとは!」

一方オルグイユを追い掛けて、到着し、状況を見たアガットは驚いた。『結社』の実験をこのようなかたちでやるとは思わなかったことが裏目に出てしまったようだ。

 

「ちっ……マズイな。アレが動いている間はアーツの類も使えへん……待てよ。エステルちゃん、君の持っとる『力』は使えるか?」

「え?……うん、いけそう。」

ケビンはこの状況の打破を考えていた最中……エステルが言っていた言葉を思い出し、彼女に問いかける。エステルは確認するかのように意識を集中させ……問題なく使えることをケビンに伝えた。

 

「(この状況下でも使える……『聖天兵装』がアーティファクトやないとすると、騎士団でもノータッチにせなあかんな……こんな前例聞いたこともないで)なら、エステルちゃん。頼めるか?」

「オッケー。」

「私は念のために待機しよう。」

「僕は大人しく待機しておくよ。銃が使えないとなると演奏位しか取り柄がないからね。」

「なら、俺も加わろう。エステル、俺がアイツの気を引き付けるから、一気に近づいてぶっ壊せ。」

「了解したわ、アガット」

導力を用いない『聖天兵装』にケビンはその対応に頭を悩ませつつも、今はその突破口であるエステルに頼み、クルツとオリビエは後方に回り、アガットはエステルの行動をサポートすることにした。

 

「さて……『砲炎撃剣』解放!穿て、焔獄の柱!!」

アガットの叫びに呼応し、『レーヴァテイン』に内蔵された『ブレイドカノン』が煌き、『オルグイユ』の周囲に炎の柱を立ち昇らせ、動きを封じた。

 

「なっ!?」

「エステル、今だ!」

「解ってるわ!はあああああっ……!!」

動揺するカノーネ……『オルグイユ』が動きを止めたことにアガットはエステルに指示を送り、彼女は一目散に目標物―――『ゴスペル』に向かって走り出した。

 

「元凶を砕け、とうりゃああっ!!」

そして、自分の持てる膂力と武器―――ヘイスティングズと『ゴスペル』がぶつかる。そして、その瞬間を見逃さずエステルは更なる力を解放する。

 

「『聖天光剣』……解・放!!」

エステルの想いに呼応するかの如く光り輝く彼女の武器。その光は『ゴスペル』に罅を入れ……そして、『ゴスペル』は次の瞬間には完全に砕け、周囲の導力が正常に稼働し始めた。

 

「うん、やったわ!」

「し、信じられん……」

「こ、小娘如きが、一体何のトリックを……しかし、この『オルグイユ』は健在であることに変わりはないわ!」

笑顔を浮かべるエステル、彼女が為したことに夢でも見ているような錯覚を覚えたユリア、そして『ゴスペル』が壊されたことに憤りつつも、『オルグイユ』はまだ動けることを確認してエステルに攻撃をかけようとした。

 

だが……『オルグイユ』から聞こえてきたエンジンの唸り。それが突如として消え……その直後には『オルグイユ』が完全に停止した状態となった。

 

「え?」

「これは……」

「一体どうなって……」

その様子に首を傾げるエステル達……

 

「一体どうなっていますの……くっ、かくなる上は!!」

この状況はカノーネですら予想外だったようで、オルグイユから出て来て、カノーネに続くように特務兵達も出て来た。

 

「隠れている同士達よ!全員出てきなさい!!」

「なっ……まだこんなにいたの!?」

「これは、流石にまずい状況だね……」

「ああ……」

「チッ、俺らだけならともかく……」

更に、カノーネが叫ぶとさらに複数の特務兵達がさまざまな所から現れ、エステル達を囲んだ。その状況はエステルらに不利となったその時、

 

 

―――風巻く光よ、わが剣に集え。

 

 

思わぬ形での『援軍』が姿を現した。

 

 

「二の型が奥義―――風神烈破!!」

特務兵の包囲を崩すかのごとく吹き荒れる剣撃の暴風……その中心にいたのは、エステルらがよく知る人物だった。

 

「よっ、エステルにアガット、オリビエにクルツさん。……それと、懐かしい顔ぶれが色々いるな。」

「アスベル!」

頼もしき援軍―――“紫炎の剣聖”アスベル・フォストレイトの姿にエステルは声を上げた。さらに……

 

 

「―――泣いたところで、許してあげません!トリリオン・ドライブ!!」

 

「―――巻き起こすは暴風!クリムゾン・フォール!!」

 

「―――七耀の顕現せし力、刃となりて敵を貫け!ミラージュ・ストライク!!」

 

特務兵の包囲を難なく吹き飛ばす三人………“霧奏の狙撃手”シルフィア・セルナート、“紫刃”改め“赤朱の槍聖”レイア・オルランド、“紅隼”改め“紅氷の隼”シオン・シュバルツの姿だった。

 

「これは、頼もしい援軍だね。」

「だな。」

「そのようだな……」

「ハハハ……(やっぱりこの国におったんか……)」

彼等の姿を見たオリビエとアガットは珍しくも揃って彼らの頼もしさに安堵を浮かべ、クルツも彼らの実力を知る者として安心した表情をし、ケビンはシオンを除く三人が自分の“身内”であり、彼らが自分の予測通りこの国にいたことに対して内心青ざめつつ、もはや乾いた笑いしか出てこなかった。

 

「カノーネ。『彼等』も出て来た以上、お前の勝ち目は完全にない。それでもまだ、戦うか?」

「当り前よ!ユリア!遊撃士ども!これで最後よ!いざ尋常に勝負なさい!」

ユリアに尋ねられたカノーネは怒鳴って否定し、銃を構えた。

 

「戦車まで持ち出してきておいて、ムシがいい気がするけど……いいわよ!やってやろうじゃない!」

「お前との決着を付ける時が来たようだ………行くぞ、カノーネ!」

そしてエステル達はカノーネ率いる特務兵達との戦闘を始めた。

 

 




ここで、ようやくアスベルらの登場です。

次回は戦闘編になるのですが……とりあえず、カノーネ。次の出番までおやすみ(黒笑)

そういえば、閃Ⅱ公式が更新……トヴァルに加えてクレアサブキャラ!?いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!(超絶歓喜)

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