英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第87話 二つの調査~帝国大使館~

 

~エレボニア大使館前~

 

「やあ、兵士君。元気でやってるかい?」

「オ、オリビエさん!?今まで何をしてたんですか。」

呑気に話しかけて来たオリビエに気付いた兵士は慌てて尋ねた。兵士の反応とは対照的に、それを不思議に思いつつもいつもの口調でオリビエが尋ねた。

 

「おや、どうしたんだい?鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべて……」

「どうしたもこうしたも……エルモに湯治に行ったきり行方をくらましたそうですね?ミュラーさんが怒っていましたよ。」

「フッ……相変わらず、僕の予測を裏切らないその反応……全くもって、可愛い男だな。」

「って、オリビエ……まさかあんた、あたしたちと一緒に行動していることを大使館というかミュラーさんに知らせてなかったの?」

兵士の話を聞いたエステルは平然としているオリビエを呆れた表情で睨んで尋ねた。前に一度その経験があるだけにある程度予測はしていたが、一度ならず二度までもそう言った行動をとったことには流石に怒りを通り越して呆れに近い感じではあるが……

 

「ハッハッハッ。何を言っているのかね、エステル君。僕は愛の狩人……愛を求めて彷徨う旅路は忍ぶものと決まっているからねぇ。それはともかく……中に通してもらえるかな?」

「構いませんが……ええと、そちらの方々は?」

「遊撃士協会の人間よ。こちらの大使さんにちょっと話が聞きたくてね。それで、このお調子者に紹介してもらおうと思ったの。」

エステルは兵士に正遊撃士の紋章と手帳を見せて答えた。

 

「なるほど、そうでしたか。身分も確かのようですし、お通しできると思いますが……大使館の敷地内は治外法権となっていますのでくれぐれもお気をつけて。」

「うん、わかったわ。」

そしてエステル達はエレボニア大使館の中に入った。

 

 

~エレボニア大使館内~

 

「ほう……こりゃまた立派な建物だな。」

「うわ~……カルバード大使館に負けず劣らず豪華な雰囲気の内装ねぇ。」

「壮麗にして力強い雰囲気……帝国風の調度で内装が統一されているようですね。」

「何と言うか……古の豪といった感じの質実剛健を体現したような装飾だな。」

カルバードとはいっそう変わった雰囲気……『黄金の軍馬』を形にしたかのような装飾を含めた内装にエステル達は驚きや関心といった表情を浮かべていた。

 

「フッ、大使館はいわば『国の顔』。こういった場所だからこそ大使館は『舞台』として、エレボニアの威光をアピールする場所だからね。尤も……残念ながら、役者の方がやや見劣りしているようだが。」

「その国の出身である無関係とも言えないお前が、率先して何を不穏なことを抜かしているか。」

大使館内の景色に感嘆な声を上げているエステル達とは逆にオリビエは不穏な事を呟き、その呟きに答えるかのように近くの部屋からミュラーが出て来て、エステル達に近付いて来た。

 

「おお、親愛なる友よ!久しぶりだね。元気にしてたかい?」

「貴様というヤツは……あれほど常に所在を連絡しろと言いつけておいたにもかかわらず……」

いつもの調子で話しかけて来るオリビエを見て、ミュラーは今にも怒りが爆発しそうな様子だった。それも無理はない話だ。人の言うことを無視し、あまつさえ連絡さえしていなかった御仁が目の前に現れ、それを悪びれる様子すらない……これで怒らないのは相当寛大な心を持つ御仁でなければ不可能の所業だろう。

 

「フッ、これも恋の駆け引きさ。離れているからこそ募る思いもあるものだからねぇ。」

「……エステル君、感謝する。どうやら、このお調子者が迷惑をかけてしまったようだな。」

諦めたのか、言っても無駄だと悟ったミュラーはオリビエを無視して、エステルにお礼と詫びが混じった言葉を言った。

 

「あはは……ま、それほどでもなかったわ。私が知る限りじゃ比較的おとなしくしてたしね。」

「まあ、そこの変人は一先ず放置しておくとして……君らはどうやらエレボニア大使館に用があって来たみたいだな?」

「あ、うん。実は、ここの大使さんに話を聞きにきたんだけど……」

いつものオリビエからすれば比較的大人しめだったのは否定しない……エステルはミュラーに、脅迫状の件を聞くためにエレボニア大使に面会に来たことを説明した。

 

「成程、あの脅迫状か……自分も気にはなっていたが、まさかギルドが動くとは思わなかった。つかぬことを聞くが、王国軍の依頼ということかな。」

「ええ。ただ、遊撃士という観点から、できるだけ中立の立場で調べさせてもらうつもりよ。」

「ふふ、いい心がけだ。それでは、自分の方からダヴィル大使に紹介しよう。そのお調子者よりは信用してもらえるはずだ。」

「え、いいの!?」

「いやぁ、助かるぜ。」

「ありがとうございます。」

「助かります。」

「ありがとう、ミュラーさん。」

ミュラーの申し出を聞いたエステル達は驚き、明るい表情をしてお礼を言った。

 

「それにしても……まさか、巷で噂のシュバルツァー家の御子息が君たちと行動を共にしているとはな。」

「!!ご存じだったんですか?」

「半信半疑の部分があったのは否定しないが……それと、俺は一度シュバルツァー侯爵がまだ男爵位だった頃に一度お会いしたことがある。中々に豪胆なお人だと感じた。お元気でいらっしゃるのか?」

「ええ。相変わらずの狩り道楽だと思います。尤も、先日の出来事絡みで手紙が届いて、忙しいことを嘆いておりました。」

「フッ……そうだったか。」

ミュラーとリィンの会話……あの一件以降、テオは<四大名門>と同等の地位……貴族でも<うつけ者>と呼ばれたかつてのそれではなく、<五大名門>の一角……皇族の信任を得た<守護貴族>の地位を与えられる形となった。そのため、かつての狩り三昧だった隠居に近い生活から、今は他の主立った貴族と同様に忙しい毎日を送っているとのことだ。尤も、シュバルツァー家の信条である『貴族は民に寄り添うべし』という考え方は全く変わっておらず、その影響は少しずつ出てきているのが実情だ。

 

「……そんなにボクって信用ない?」

「え!?あるとでも思ってたの!?」

「寧ろ、あると思っていたのが驚きなのだけれど?」

「まあ、お前さんの紹介だと余計な誤解を招きそうだしな。」

「えっと……ごめんなさい、オリビエさん。」

「すまん、どう考えても今までの行動からしたら信用できない。」

「ごめんね、オリビエ。」

「その……同じ国の出身としては、とても信用できるとは……」

オリビエの疑問にエステルとシェラザードは心外そうな表情で答え、ジンとレイアにシオンは呆れた表情で答え、クロ―ゼとリィンは申し訳なさそうな表情で答えた。

 

「シクシク……」

「賢明な判断だ。ダヴィル大使は2階の執務室にいる。確認を取ってくるからしばらく待っていてくれ。」

「うん、オッケー。」

そしてミュラーは先に2階に行き、エステル達は少ししてから2階に行き、大使がいる部屋の扉の前で待った。

 

 

~エレボニア大使館 大使執務室~

 

「えっと……ここが執務室なのかな。」

「フッ、その通りさ。それでは華麗に乱入して大使殿を驚かそうじゃないか。」

「ミュラーさんにぶん殴られるわよ。」

「寧ろ沈められますよ?」

オリビエにエステルとレイアが注意したその時、ミュラーが大使の部屋から出て来た。

 

「待たせたな。大使がお会いになるそうだ。」

「あ、うん。それじゃあ失礼します。」

そしてエステル達はエレボニア大使がいる部屋に入った。

 

「ようこそ。エレボニア大使館へ。私は駐リベール大使のダヴィル・クライナッハだ。」

エステル達が部屋に入るとエレボニア大使――ダヴィル大使が重々しく名乗った。

 

「えっと、遊撃士協会のエステル・ブライトです。」

「ジン・ヴァセック。同じく遊撃士協会の者だ。」

「シェラザード・ハーヴェイ、同じく遊撃士協会所属の者よ。」

「同じくレイア・オルランドです。」

「同じくシオン・シュバルツだ。」

「ジェニス王立学園2回生、クローゼ・リンツと申します。」

「協力員のリィン・シュバルツァーです。」

「そして愛と平和の使者、オリビエ・レンハイムさっ!」

エステル達は礼儀正しく名乗ったが、オリビエはいつもの調子で名乗った。

 

「フン……君か。何でもエルモ村に行ったきり行方をくらましていたそうだな。あまりミュラー君に心配をかけるのはやめたまえ。もちろん、私にもな。」

「フッ、これは手厳しい。」

ダヴィルの注意にオリビエは軽く目を閉じて答えた。

 

「さて………ん?ところで、其処の彼……今『シュバルツァー』と名乗らなかったか?」

「ええ、俺の事ですが……」

「……な、何ゆえ<五大名門>の方がここに!?」

「えと、大使さんが慌てちゃってるけれど……というか、<五大名門>って?」

「フッ、その問いに僕が答えよう。この国じゃ珍しい『貴族』の存在……エレボニア帝国には未だに貴族制度が残っていて、その中でも名実ともにトップクラスの四つの家がある。いや、あったというべきだろうね。」

東のアルバレア家、西のカイエン家、北のログナー家、かつて南を統べていた貴族にして、今は南西のサザーラント家。その四つを総称して<四大名門>と呼ばれていたのだが……リィンの実家であるシュバルツァー家が五番目の名門として相成ったのだ。

 

「けれど、帝国の貴族って確か血筋も重視しているはずよね?」

「それについては問題ないのさ。シュバルツァー家は『獅子心皇帝』と呼ばれたドライケルス大帝の血筋を引いている『皇族の分家』。リィン君の存在で疎ましく思おうとも、皇帝陛下の信任を得ている以上反論は出来ないってことになるのだよ。」

「成程……大変なことになっちゃってるね、リィン。」

「あはは……ここまで来ると、もうどうにでもなれって感じだけれど。」

シェラザードの疑問にオリビエはいつもの口調で答え、それを聞いたレイアは苦笑しつつもリィンに同情し、リィンは最早何かを諦めたかのように呟いた。婚約の事に家の発展……リベールに来てからというものの、リィンの心労は嵩むばかりで……結果として、もう行きつくところまで行ってほしいと思わざるを得ず……ある意味悟りの境地に突入していた。

 

「大使、驚かれるのも無理はありませんが、話が進みません。」

「う、うむ……例の脅迫状の一件で話を聞きに来たそうだな。どんなことが知りたいのかね?」

「えっと………それじゃあ、単刀直入に聞きますけど。大使は脅迫者に心当たりはありませんか。たとえば、エレボニア国内で条約締結に反対する勢力とか。」

ミュラーの言葉にようやく我を取り戻したダヴィルは質問を投げかけ、エステルは頷いた後、単刀直入に尋ねた。

 

「はは、率直な物言いだ。しかし、生憎だが全くもって心当たりはないな。皇帝陛下も条約締結には随分と乗り気でいらっしゃる。それに異を唱える不届き者など我が帝国にいるはずがなかろう?」

「成程ね……つまり、帝国の外に反対する者がいると大使はお考えで?」

ダヴィルの答えを聞いたシェラザードは大使の考えを聞くために尋ねた。

 

「当然、そうなるな。おおかた、カルバードあたりの野党勢力の仕業だろう。衆愚政治の弊害というやつだ。」

「そりゃ、どうかと思いますぜ。確かに共和国の与党と野党は毎度のように対立してますが……たとえ条約が阻止されたとしても大統領の責任になるとは思えない。」

ダヴィルの話を聞いたジンは心外そうな表情で答えた。ロックスミス大統領の責任になりえないものを邪魔してどのようなメリットがあるのか……いや、逆にデメリットしか生じないものに態々首を突っ込むこと自体『自殺行為』にしか成り得ないのだ。

 

「フン、詳しいことは知らんよ。確実に言えるのは、脅迫者が帝国の人間ではありえないことだ。それだけ判れば十分ではないかね?」

「う、うーん……」

ダヴィルの話を聞いたエステルは言葉に詰まった。そこにクロ―ゼがダヴィルに静かに問いかけた。

 

「……あの、ダヴィル大使。オズボーン宰相閣下は不戦条約について、どのように受け止めてらっしゃるのですか?」

「なに……!?」

クロ―ゼの質問にダヴィルは驚いた。

 

「ほう……」

「成程……」

「………」

「フフ……なかなか鋭い質問だね。」

一方横で聞いていたミュラーとシオン、リィンとオリビエは感心した。

 

「えっと……そのオズボーンさんって?」

一方クロ―ゼが出した人物の事がわからないエステルは答えを求めて、苦笑しながら尋ねた。そしてエステルの疑問にオリビエが答えた。

 

「帝国政府の代表者である宰相、“鉄血宰相”ギリアス・オズボーン。『国の安定は鉄と血によるべし』と公言してはばからないお方でね。帝国全土に導力鉄道を敷いたり幾つもの自治州を武力併合したりとまあ、とにかく色んな意味で精力的な政治家さ。」

「そ、そんな人がいるんだ……」

「こ、こらオリビエ君!自国の宰相を、批判めいた言葉で語るのは止めたまえ!」

オリビエの説明にエステルは驚きを隠せず、一方ダヴィルはオリビエを睨んで注意した。

 

「フッ、別に批判をしているつもりはないけどね。あくまでも帝国に住む市民が知る程度の情報を言ったまでの事。ただ、もう少し協力的になってもバチは当たらないんじゃないかな?先ほど、共和国のエルザ大使から色々と話を聞かせてもらったが……あちらの方が遥かに協力的だったよ。」

「な、なに!?」

「『三大国』の一角であるカルバードの顔を務める大使様があのような誠実さを見せてくれた……このままだと、おなじ『三大国』の看板を背負うエレボニアという国の度量が疑われてしまうことになる……それが僕には耐えられないのさ。」

「むむむ……」

オリビエの説明を聞いたダヴィルは反論が見つからず、唸ってオリビエを睨んだ。

 

「ところで……『三大国』とは、どういうことですか?」

「近隣諸国に彼らと渡り合える国なんてあったっけ?」

「おや……君らは知らないのか?」

ただ、その中で出てきた『三大国』という単語にクローゼとレイアは首を傾げ、それを見たミュラーは意外そうな表情を浮かべて二人を見た。

 

「ああ……エレボニアとカルバード……それらと引けを取らない国の存在なんて……」

「ま、無理もない話だね。『隣の芝は青い』……当事者である彼等にはなじみが薄いのも頷ける話さ。」

「は?え?何が何だか……」

「まさか……」

シオンの疑問に答えた形となるオリビエの発言にエステルは首を傾げ、シェラザードは何かを察したのかオリビエに問いかけた。

 

「その通り……『三大国』―――エレボニア帝国、カルバード共和国……そして、この国。リベール王国も大国の仲間入りを果たしたのさ。十年前の『百日戦役』でね。」

百日戦役で得た人的資源や領土に莫大な賠償金、其処から急激に発展した各地域。経済規模からすればクロスベルの三倍強、導力技術では西ゼムリアトップクラス、更には優秀な多くの遊撃士たちがこの国に所属している事実……軍事力に関しても、時代の最先端を行く飛行部隊に屈強な正規軍、国境を守る師団……そこにアリシア女王の強かな外交も合わさって、リベールは大国の一角を担うまでの規模に成長したのだ。

 

「………」

「え、えと……」

「ま、自覚はないだろうね。そう言っているのは諸外国……エレボニアやカルバード、レミフェリア……アルテリア法国あたりもそう思っている事実だね。」

「自覚ないんだけれど……」

「全くだ……」

その国に住んでいるエステル、クローゼ、シオンにしてみれば全く自覚がない。七年前に移ったレイアですら、そういった空気を感じることがなかった。

 

「……ダヴィル大使。その件に関しては、秘匿すべき情報はありません。率直な事情を説明しても問題ないのではありませんか?」

「……ふん、まあよかろう。先ほどの質問だが……陛下と同じくオズボーン宰相も条約締結には極めて好意的だ。むしろ宰相の方から陛下に進言したと聞いている。」

その様子を見て内心驚きつつもミュラーはダヴィルに言い、ダヴィルは重々しく答えた。

 

「まあ……」

「ほう……」

「えっと……それは条約締結の場で、新型エンジンが手に入るからですか?」

「いや、彼が陛下に進言したのは新型エンジンの話が出る前らしい。まあ、事情はどうであれ私としては妙な圧力がかからずにホッとしているというのが本音だ。」

軍拡政策を取り続けているオズボーン宰相が不戦条約に前向きであったというダヴィルの言葉にクローゼとオリビエは感心した。それを聞いた上で尋ねられたエステルの質問にダヴィルは否定した後答えた。

 

「(もしかして……)厳密、とは言いませんが、それはいつ頃の話か解りますか?」

「今年の初めごろ、だな。丁度年度が替わる時期に進言したということで聞いている。その辺りから不戦条約絡みの案件も関わっているからな。」

何かを察したのか、レイアがそのことを尋ねると、ダヴィルは詳しい時期こそ知らないものの、初春あたりにその話をしたとのことだ。それを聞いたレイアは再び考え込んだ。

 

「ふむ、なるほどな……こりゃあ、エレボニア関係者もシロの可能性が高そうだぜ。」

「うん、そうみたいね。大使さん、教えてくれてどうもありがとうございました。」

ジンの推測に頷いたエステルはダヴィルにお礼を言った。

 

「ふ、ふん……どうだ。私が最初から言った通りだろう。犯人探しがしたければさっさと他を当たるんだな。……ただでさえ、こちらは今回の会談に参加する事に非常に気を張っているのだから、せっかく張った気をまき散らすような事はできればやめてくれ。」

「えっと………どうして、そんなに緊張しているんですか?」

ダヴィルの話を聞いたエステルは首を傾げて尋ねた。それほどなまでに緊張する事態なのかと疑っているエステルにクローゼが説明した。

 

「エステルさん………何と言っても、カルバードからはロックスミス大統領、レミフェリアからはアルバート大公……共に国家元首が出てくるのですから、誰でも緊張しますよ。」

「あ、なるほど。えっと………忙しい所、本当にすみません。」

クロ―ゼに言われたエステルは頷いた後、ダヴィルに謝った。確かに今の時期ならば必要以上に神経質になっていても、張りつめていても何ら不思議ではない。それに、自分の国とは異なり、相手方とリベールは国家元首……役者不足の点が否めないことにダヴィルは言葉をつづけた。

 

「いや、君達に当たり散らした私も悪かった。………こちらとしてもカール帝都知事や私ではなく、皇帝陛下は無理としてもせめて皇族の一人でも参加させないと、役者不足と思っているのだが………生憎、皇族の方々は皆、スケジュールが合わなかったからな………」

謝られたダヴィルは逆にダヴィルも謝り、疲労感漂う様子で溜息を吐いた。

 

「あはは………あ、そうだ!えっと、実はもう1つ聞きたいことがあるんですけど……」

脅迫状の調査を聞き終えたところで、エステルはレンの両親についてダヴィルに尋ねてみた。

 

「そうか……それは不憫なことだな。うーむ、帝国商人なら時々この大使館を訪れるが……さすがにクロスベルの貿易商には心当たりがないな。ミュラー君の方はどうだ?」

「いや……自分も記憶にはありません。」

「そっか……うーん、こっちも前途多難な雰囲気ねぇ。」

ダヴィルとミュラーの答えを聞いたエステルは、レンの両親の情報が中々手に入らない事に溜息を吐いた。

 

「しかし、脅迫犯と迷子の親を同時に捜しているとはな……月並みな言い方にはなるが、あきらめずに頑張るといい。」

「あ……はい!」

「では、自分が門まで送ろう。」

そしてエステル達はミュラーと共に大使館を出た。

 

 

~エレボニア大使館前~

 

「ミュラーさん、ありがとう。おかげで大使さんから色々と聞くことができたわ。」

「いや……大したことはしてないさ。それに本来、4ヶ国の問題だ。協力するのは当たり前だろう。」

「はは、違いない。」

「何とか解決できるといいんですけど……」

「「………」」

ミュラーの答えを聞いたジンやクロ―ゼは同意していたが、レイアとオリビエは何故か真剣な表情で黙っていた。

 

「あれ……。どうしたの、レイアにオリビエ?」

「あ、ごめん。別件で考え事をしてたの。」

「同じく、少し考え事をね。脅迫事件の話じゃないから気にしないでくれたまえ。」

「う、うん……?」

珍しく真剣な様子のレイアとオリビエにエステルは首を傾げた。

 

「……オリビエ、王都にいる間は大使館に泊まるんだろうな?」

「フッ、もちろんさ。いつものように君のベッドで甘い夢を見させてもらうよ。」

「ええっ!?」

「まあ……」

「へぇ……」

ミュラーの問いかけとオリビエの答えを聞いたエステルとクロ―ゼは驚き、シェラザードは感心するかのように声を上げた。

 

「……お嬢さん方が信じるからくだらない冗談をさえずるな。あまり冗談が過ぎると遠慮なく簀巻きにして床に転がすぞ。」

「いやん、それっていわゆる緊縛プレイ?」

「お望みとあらばな。ミノムシのように窓から吊るしてやってもいい。」

「ゴメンナサイ、調子に乗りました。」

「さすが、幼馴染ですね。」

「はは、何だかんだ言ってバッチリ息があっているな。」

何だかんだで会話できているミュラーとオリビエの様子をレイアとジンは感心していた。

 

「二人しておぞましいことを言わないでもらいたい。まあいい……俺はこれで失礼しよう。調査の方、頑張ってくれ。」

「うん、ありがと。」

そしてミュラーは大使館の中に戻って行った。

 

「大使館を2つ片付けたから、あとは公国大使館にお城とリベール通信ね。手がかりがあるといいんだけど。………」

そしてエステル達は次に公国大使館に向かった………

 

 




閃の軌跡Ⅱの公式サイトがオープンしていましたが……登場人物……アリサに天使の羽が生えてるー!!(ガビーン)
というか、アリサ・エリオット・ラウラの台詞……まさか、零→碧の時と同じように全員の実績引き継ぎ可なのですか!?というか、前科があるだけにやりかねませんがw

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