英雄伝説~紫炎の軌跡~   作:kelvin

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第78話 紅焔の重剣

 

一通りの救助活動が済んだ後、ギルドに戻ったエステルらは新たに現れた『執行者』―――ロランスもといレーヴェの事について話していた。見た目からして、孤児院に放火しようとした特務兵らと同じように見えないが、今回の出来事をそう簡単にできるものなのかと困惑の表情を浮かべていた時、通信機が鳴った。

 

アガットからの連絡ではないかと一同は想像したが、通信していたルグランは伝えられた情報に驚愕しつつも、冷静に応対した後、通信機で伝えられた情報―――ラヴェンヌ村に竜が現れ、果樹園の一部を焼いて飛び立ったことと、その後にアガットが来て消火活動を手伝ったことをエステルらに伝えた。

 

「分かった!あたしたちも行ってみるわ!」

「お、お姉ちゃん!私も連れていって!」

「えっ……!?」

話を聞いたエステルがラヴェンヌ村に行こうと声を上げた時、名乗り上げたティータを見てエステルは驚いた。

 

「空飛ぶ竜が相手だったら導力砲が役に立つと思うし……それに……それに……」

「……うん、分かった。でも……無茶をしたらダメだからね?」

「はいっ!」

アガットが心配だというティータの心情を察しつつも、自分のできる範囲での行動を……という忠告を込めたエステルの答えを聞き、ティータは明るい表情で頷いた。その時、ギルドの扉が勢いよく開いて、大分息が上がった状態の少女……クローゼと同じ制服を身に付けた赤髪の少女の姿に、彼女をよく知るエステルとクローゼは驚いていた。

 

「はぁ、はぁ………あ、エステルさんにクローゼ!」

「ミーシャ!?ちょっと、大丈夫!?」

「その、大分息が上がっているみたいだけれど……」

「ご、ごめんね……ふぅ……」

少女―――ミーシャの姿を見たエステルとクローゼは駆け寄って、心配したが……ミーシャはただ息が上がっていただけのようで……少しすると、落ち着いた。

ミーシャは、コリンズから学園の用事を頼まれて少し前……厳密には、竜によるマーケット襲撃後にボースへと到着した。その際、耳に挟んだ『ラヴェンヌ村方面へ飛び立った竜』の事を聞きつつも……ギルドに向かったクローゼならば何か知っていると思い、急いで来たということらしい。とりあえず、現状を伝えるとミーシャは安堵して全身の力が抜け、その場に座り込んでしまった。

少しすると自分の力で立ち上がり………とりあえず、初対面の方々がけっこういるため、ミーシャは自己紹介をした。

 

「えと、エステルさん以外は初めてですね。私はジェニス王立学園生徒会書記のミーシャ・クロスナーと言います。皆さんの事はクローゼと兄から色々聞いております。」

「へぇ……貴女があのアガットの妹さんね。あたしはシェラザード・ハーヴェイ。貴女のお兄さんと同じ遊撃士よ。」

「遊撃士のジン・ヴァセックだ。しかし、奴さんとは似ても似つかないな。」

「僕は不世出の演奏家にして愛の狩人、オリビエ・レンハイムだよ。しかし、あの御仁の妹さんがこのような麗しい女性とは……その美貌に酔ってしまいそうだよ。」

「相変わらずねぇ……遊撃士のサラ・バレスタインよ。よろしくね、ミーシャ。」

「スコール・S・アルゼイドという。よろしくな。」

「リィン・シュバルツァーだ。よろしく、ミーシャ。」

「私はアネラス・エルフィード。よろしくね、ミーシャちゃん。」

ミーシャの自己紹介を聞いて各々自己紹介をした。そして……

 

「えと、ティータ・ラッセルといいます。よろしくお願いします、ミーシャさん!」

「あ、貴方が兄の良く言っていたティータちゃんだね。」

「え、そうなんですか?」

「うん。兄ったら、ティータちゃんのことを話す時だけ何故か慌てるんだよね……情けない兄だけど、ティータちゃんならきっと支えられると思うから。その、頑張ってね。」

「え、えと、その………が、頑張ります!」

ティータとミーシャの遣り取り……それを見たエステルらは……

 

(これって、アレよね?)

(ええ、アレでしょうね。)

(フッ、あの御仁も彼女の魅力には勝てなかったということだろうね。)

(そういうものなのでしょうか?)

(ほう、彼も満更ではないということか。)

(こんな可愛い子のハートを射止めるなんて……私、アガット先輩にライバル宣言します!)

(どういう理屈なのよ、アネラスってば……)

(………他人事に思えないのは、俺だけだろうか?)

(………ある意味、この先苦労しそうだな……アガット、頑張れ。)

大方の事情を察しつつ笑みを浮かべたエステルとシェラザード、意味深な笑みを浮かべたオリビエ、引き攣った笑みを浮かべていたクローゼ、二人の話からアガット本人もそうなのだと知って感嘆を浮かべたジン、可愛いティータのハートを射抜いたアガットに対して敵対心を抱いたアネラス、それに対して『お前は何を言っているんだ』とでも言いたげなサラ、この状況下をデジャヴに感じたリィン、そしてこの先凄まじい苦労をする羽目になりうるであろうアガットに少しだけ同情したスコールだった………

 

とりあえず、一通り説明がついたところで、エステルはサラ、リィン、ティータ、オリビエ、アネラスの五人と共にラヴェンヌ村へと向かうことになり、王国軍との連絡のためにクローゼ、ジン、スコールの三人がギルドに残った。

 

ラヴェンヌ村に到着したエステル達は村長に状況を聞き、アガットは竜を追って北――廃鉱に行った可能性があったので、急いで廃鉱に向かった。その廃鉱への入り口が開いており、傍に落ちていた鎖の痕跡を見たティータが先程外されたものであると気付き、それを聞いたエステルらはアガットを探して廃鉱に入った。

 

~廃坑・露天掘り場所~

 

エステル達が廃鉱に入ったその頃、古代竜が何かに抗うかのように暴れていて、レーヴェは冷静に見ていた。そしてレーヴェは”ゴスペル”を取り出して、暴れている竜を鎮めた。

 

「よし……それでいい。ふむ、データを取るにはまだしばらくの時が必要か。まったく、面倒な仕事を押しつけてくれるものだな。」

「……何が、面倒だと……?」

「お前は……」

竜を見つめて呟いたレーヴェに問いかけられた言葉……その声の主であるアガットがレーヴェに近づいて来た。

 

「……ずいぶん久しぶりじゃねぇか。こうして相対するのは『二度目』になるか。」

アガットはレーヴェを見て、不敵な笑みを浮かべた。

 

「ランクB“重剣”アガット・クロスナー。いや、クーデター事件の後、A級に昇格したそうだな。」

「……ヘッ、流石は元情報部の人間だな。あの時はネズミみたいにコソコソしてやったが……今回はまた、ずいぶんと派手にやらかしたもんだぜ。」

レーヴェの言葉を聞いたアガットは鼻を鳴らした後、武器を構えた。

 

「……今度ばかりは逮捕だの悠長な事を言うつもりはねえ。てめえみたいな野郎相手に加減したらどうなるかぐらいは解っているつもりだからな。」

「ほう、威勢がいいだけではないとはな。だが、あの程度の被害、火災などという可能性を考えれば派手というほどではあるまい?十年前……お前が見た光景に較べればな。」

「!!」

勢いのみならず、相手の実力を推し量った上での冷静さが垣間見えたことにレーヴェは少し驚きつつも、今回の被害などアガットが見たものに比べれば“軽微”とでも言わんばかりの発言にアガットの顔色が変わった。

 

「この国の遊撃士の経歴は一通り調べさせてもらった。フフ、やはりお前はどこか俺と似ているようだ。」

「似ている、か……確かに俺とてめえは、似てはいるな。レーヴェ……いや……レオンハルト・“メルティヴェルス”」

「なっ!?」

得意気に言い放ったレーヴェだったが、いつもの調子とはかけ離れた冷静な様子で呟いたアガットの言葉―――彼が名乗らなくなってしまった“名字”を知っていたことにレーヴェは驚きを隠せなかった。

 

「ロランス・ベルガー……最初聞いたときはどうにも引っ掛かりを感じてた。それと、ヨシュアの存在もな……で、てめえが『レオンハルト』と名乗ったことと、あの演奏家が言っていた『レーヴェ』……それで思い出したんだよ。『ハーメル』でてめえと出会い、一度だけだが剣を交えたことも……あれっきり、俺の中で燻っていた気持ちもな。」

アガットの生まれであるラヴェンヌ村はかつて地理的要因から『ハーメル村』との交流があった。その際、アッシュブロンドの髪をしたアガットよりも少し年上の少年と手合わせをした。その時、彼の幼馴染であった黒髪と琥珀色の姉弟……カリンとヨシュアとも一度だけではあったが、少しだけ話をした。その後、ハーメル村とは音信が途絶え、彼との手合わせができずに不満を漏らしていたこともあった………その不満が溜まりに溜まって……結果的には、それが一時期“反抗期”として荒れていた自分に繋がっていた。

 

だが、その時期があったからこそ……あの少女の父親に武術や遊撃士の心得を叩き込まれ……そして、一年前に痛感した“未熟さ”……それがアガットを更なる高みへと押し上げるための……ひいてはA級正遊撃士に到達しうるだけの原動力になっていた。

 

「フッ……成程。あの時の血気盛んな赤毛の少年……あれから十年が経っても、互いに覚えていたとはな……それとこうして相対するとは。」

「全くだぜ……『二度』てめえに勝ち逃げされた分……きっちり返させてもらうぜ!」

『執行者』と『遊撃士』……『百日戦役』によって引き裂かれた二人……レーヴェとアガットの戦いが幕を開ける!

 

「ふっ!」

「そらあっ!!」

(ほう……俺の剣撃と互角の力……)

ぶつかり合う二人の剣……その膂力自体はほぼ互角という事実に、さしものレーヴェも少し驚いた。

 

「成程……剣聖とその娘……彼らに叩きのめされたのは、余程堪えたようだな。」

「否定しねえよ。けれど、てめえに勝ち逃げされたことと比べれば、遥かにマシだ!!」

そう言って、アガットは“片手”で重剣を振り、横薙ぎを浴びせようと振るうが、

 

「むんっ!」

レーヴェは両手で剣を持ち、アガットの剣撃を止めた。すると、剣同士のぶつかり合いによる衝撃波でレーヴェの足元に亀裂が走った!

 

「……(この一ヶ月という短期間で、あの時以上のパワーとスピードだと……ロランスとして相対していた時のアガット・クロスナーとは違いすぎる……)」

正直に言って、『まるで別人』と評する他なかった。だが、“一ヶ月”でここまでの成長を成し遂げた……そのことに関しては、否応にも認めざるを得ない。レーヴェはそう感じた。

 

「フッ……」

口元に笑みを浮かべると、アガットの剣を弾いて距離を取った。

 

「アガット・クロスナー……お前の力に敬意を表して、“剣帝”の奥義でお前を倒そう………はあああああああっ!!」

「(凍り付く闘気だと……)うおおおおおおおおおおおおっ!!!」

レーヴェは闘気を込めると同時にアガットの周囲が凍り付く……それを見たアガットは負けじと闘気を解放した!

 

「凍てつく刃……その身に受けよ……『冥皇剣』!」

「いくぜ!ファイナル、ブレイクゥ!!」

互いのSクラフト……レーヴェの『冥皇剣』とアガットの『ファイナルブレイク』……その衝撃波はほぼ互角……だが、その時、

 

パキンッ!

 

「………なっ」

アガットの重剣が『折れた』……そうなると、互角であった衝撃波……アガットからすれば、それの発生源である重剣が折れた……すなわち、

 

「があああああっ!?」

ファイナルブレイクで幾分か威力は弱まっていたが、それでもかなりの威力を誇る冥皇剣の衝撃波がアガットを襲った!!

 

「……かはッ………」

「………(俺の『冥皇剣』を受けてまだ生きているとはな…その強運さには敬意を払いたいところだが…)」

レーヴェの攻撃をまともに受けたアガット………折れた重剣の刃はアガットの傍に刺さり、アガット自身は崩れ落ちた。それとは対照的にレーヴェは、武器の影響があったとはいえ互角に戦ったのは事実だということに少なからず驚嘆を浮かべたのは言うまでもない。だが、今はそんな感傷に浸っている場合ではないと踵を返したレーヴェであったが……

 

「……ま、待ちやがれ……ま……まだだ……まだ終わっちゃいねえぞ……」

レーヴェが何かをしようとしたその時、アガットは傍に落ちていた刃の折れた武器を拾って、レーヴェに向け立ち上がった。

 

「この期に及んでまだ戦おうとするとは。いいだろう。至らぬ身のまま果てるがいい。」

「だめーー!!」

レーヴェがアガットに止めを刺そうとしたその時、なんと導力砲を持ったティータがアガットを守るかのように、アガットの前を立ちはだかった!

 

「チビスケ!?…………なんで、こんな所にいやがるッ……」

「えとえと………アガットさんが心配で、それでお姉ちゃんと…………」

アガットはティータの姿に驚いていた……ティータはアガットに事情を説明しようとした時、

 

「ティータ!!」

「ティータちゃん!!」

「……留めろ。」

後を追ってきたエステル達もアガット達の所に走って近づこうとしたが、レーヴェがゴスペルを出して呟くと、鎮まっていた竜がエステル達に向かってドラゴンブレスを吐いた。

 

「くっ……!」

「チッ、やっかいな……」

竜の攻撃によって、エステル達は近づく事ができなかった!

 

「………」

「あ、あう………こ、来ないでくださいっ!」

「ば、馬鹿野郎……。そんな物が通用するかっ!いいから……とっとと逃げろ……!」

一方エステル達を留めたレーヴェは静かにアガットたちの所に歩み寄った。相手は曲がりなりにも『執行者』……銃如きが通用する相手ですらない……ティータの様子を見たアガットはティータに警告した。

 

「ラッセル博士の孫娘、ティータ・ラッセルか。天才少女と聞いていたが、いささか無鉄砲が過ぎるな。女子供を手にかけるのは俺の趣味ではないが―――必要とあらば斬る。大人しくそこをどくがいい。」

「ど、どきませんっ!」

レーヴェはティータに警告した後、ティータに剣の切っ先を向けたが、それに臆することなく……ティータは決意の表情でレーヴェを見て言った。

 

「わたし……アガットさんに助けてもらってばかりだから……。こういう時くらいしかお返しすることができないから……。ううん……違う……。ぶっきらぼうで……フキゲンな顔ばかりして……いっつもわたしのことチビスケって子ども扱いするけど……。本当はとっても優しくて……いつも見守っていてくれて……。大好きで……大切な人だからっ!だからわたし……ゼッタイにどきませんっ!!」

どこか優しげな様子を見せて語ったティータは導力砲を地面に置き、そして……両手を広げてアガットを庇い、叫んだ!

 

「……あ…………」

 

―――俺は、俺はいつも助けられてばかりだ。あの時も……

 

百日戦役の時、俺はミーシャを連れて逃げ出すことしかできなかった。その途中で忘れてきたプレゼントを取りに戻ったミーシャ……そこに落ちてきた砲弾。俺は絶望を感じた。

 

―――『全く……命あっての物種だぞ。』

 

だが、間一髪助け出されたミーシャ……それを助けたのは、漆黒の髪に深紅の瞳を持った……俺からすれば年下の少年……

 

―――俺は、無力なのか……

 

そして、今も俺の前に盾として立ち塞がったチビスケ……いや、ティータ。そうして初めて、俺は昔も今も……何も変わっちゃいなかったことを知った。大切な奴が目の前からいなくなる……エステルの奴もヨシュアがいなくなった時は、その苦しみを味わったんだろうな……それから比べりゃ、俺はまだ幸せ者じゃねえか。まだ、守れるものが近くにいる俺は……ホント、てめえ自身が情けねえな。

 

己の強さと弱さ……全てを理解し、納得したアガット。その時、彼の脳裏に響く声。

 

 

―――……ようやく理解したようだな。己の強さと弱さに。

 

 

厳しくも優しい声……アガットのことを『待ち望んでいた』かのように響く声……

 

 

『アンタは……』

 

 

―――一つ聞こう……お前は、力を得て何を為す?

 

 

正体を聞こうとしたが、先に問いかけられた。

 

 

『そうだな……目の前にいる野郎……レーヴェに勝ちたいってのもあるが、それ以前に<本分>を貫き通すっていうのが本音だな。』

 

―――『本分』……とは?

 

『決まってるだろ……俺は遊撃士だ。困ってる奴がいれば、助けてやるのが遊撃士の仕事だ。目の前に『壁』が立ち塞がるのなら、這いつくばってでも乗り越えてく……俺が望むのは、そんな力だ。』

 

 

確かに、『結社』は得体の知れねえ連中ばかりだ……俺でも、正直勝てるかどうかなんてわからねえ……けれども、そこで逃げ出して、大切な人をみすみす失うなんて、俺には出来っこねえ相談だからな……遊撃士の本分である『民間人の保護』……そのスペシャリストである遊撃士という道を選んだからには、それを曲げたくねえ。この道に導いてくれた、エステルの父親……カシウスのおっさんに顔向けできねえようなことは、したくない……ただ、それだけなのだと。

 

 

―――……承知した。これより、汝の剣となりて汝を守ろう。汝の赴くままに振るう、『刃』として。

 

 

「フッ、健気なことだ。その半端者に、そこまで慕う価値があるとも思えないが……何だ?」

ティータの言葉にレーヴェが感心していたその時、アガットの握っていた折れた剣、折れた刃……そして、彼の身に付けていたシンプルなペンダント……そこに填められた石が白く光り始めた。

 

石から離れた光は剣と刃を吸収し……更に、もう一つの光――紅い光が天から舞い降り、二つの光は合わさり、アガットを包み込んだ……

 

「ふえっ!?」

「なっ!?」

「えっ!?」

「い、一体何が……」

ティータやレーヴェは無論の事、エステル達も驚いていた。

そして、次第に輝きが収まり……そこには………

 

「ア、アガットさん?」

「………ったく、チビスケのくせに無茶しやがって……けどまぁ、今回ばかりは俺にも責任はあるからな……ありがとな『ティータ』……少し、下がっててくれよ。」

「あ……は、はい!!」

傷は完全に消えてなくなり、先程まで持っていた重剣とは異なる紅蓮の片刃剣を持ったアガット……心配するティータに呆れつつも、自分の非である部分は否定せず……大丈夫であることと感謝の意味を込めて『彼女の名前』を初めて呼び、ティータはそれに呆けたが、すぐさま我に返って元気よく返事をし、アガットの後ろに移動した。そして、その様子を見たレーヴェが口元に笑みを浮かべた。

 

「ほう……まだその余力があったとはな。」

「コイツは余力じゃねえよ……ま、正直癪だが、てめえのお蔭だということは否定しねえけど……なっ!!」

「フッ、どこを狙って……」

そう言って、アガットは剣を振るった―見当外れの方向に飛んでいく衝撃波……すんなり回避したレーヴェは期待外れかと思ったが……その衝撃波の先―――狙いは……

 

パキンッ!!

 

「!?……なっ!?」

何かが壊れる音……レーヴェがその方向を向くと、竜に付けた『ゴスペル』……それをピンポイントで破壊していた。

 

「これで竜はてめえの思い通りにならねえな……ついでに、こいつも持っていきやがれ!!紅炎聖剣『レーヴァテイン』………砲炎撃剣『ブレイドカノン』解放!!」

そう言い放ったアガットの叫びに呼応するかの如く、『レーヴァテイン』の刀身が前後に分割し……中に内蔵された『ブレイドカノン』の刃が深紅に染まり、アガットの周囲に立ち上る荒々しい炎。

 

「……面白い、アガット・クロスナー!今度こそその命、刈り取らせてもらうぞ!!」

レーヴェは内心驚きつつも、彼の『進化』に武者震いし、全ての力を以て“剣帝”の一撃を放つ!

 

「受けよ………冥皇剣!!」

「………」

凍り付く闘気の剣……だが、アガットはそれも意に介せず、構えた。

 

「これで決める!うおおおおおおおっ!!」

俺にできるのは、相手を叩き伏せる剣捌き……それは、得物がコイツに代わろうとも……俺は貫き通すだけだ……そう決意したアガットはレーヴェの闘気を振り払うかのように高く飛び上がった。そして、アガットの背中に顕現する竜のオーラ……今まで勝ちえてきた技術と遊撃士の信念……その信念から生み出した、渾身の一撃……己の強さと弱さ……それらを知り、受け入れたアガットと、彼の持つ『レーヴァテイン』『ブレイドカノン』にしかできないSクラフトが炸裂する!!

 

「いくぜ!ヴォルカニック!ダァァァァァァイブ!!!」

アガットの新たなSクラフト『ヴォルカニックダイブ』がレーヴェの『冥皇剣』とぶつかり……互角だった力は次第に竜の如く『ヴォルカニックダイブ』が『冥皇剣』を飲み込み、レーヴェに襲い掛かる!

 

「なっ……がああああああっ!?」

荒れ狂う竜の怒りの如き炎のようにレーヴェを襲い、その余波でレーヴェは壁に叩きつけられた。そして、壁から離れたレーヴェは地面に跪いた。

 

「………」

それを見つつも、アガットは静かに解放状態を解除し……剣を背中に仕舞った。

 

「フフ……見事だ、アガット・クロスナー……今回はこれで退かせてもらうとしよう。あと少しでいらぬ邪魔が入りそうなのでな………」

よろめきながらもレーヴェは口元に笑みを浮かべてアガットに言い放ち、その場を去っていった。その様子に呆然としていたエステル達だったが、我を取り戻して、アガットとティータの下に駆け寄っていった……

 

 




原作での会話から、『十年前に一度だけ面識があった』という設定を加えました。

あと、アガットが原作男性キャラで最初のパワーアップを果たしました。

武器イメージですが、ギルティギアのソルが持っている剣(ジャンクヤードドッグ)を片刃剣っぽくしたものだと考えてください。

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