起きたらマ(略)外伝?   作:Reppu

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ムーン・アタック執筆理由となった、友人から送られてきた怪文書です。
供養(さらしあげ)のためにここに掲載したいと思います。


SSSEX1:世界の傑作戦闘車両別冊 地球連邦軍主力戦車開発史

かつての一年戦争において、地球連邦軍の主力戦車であった61式戦車はジオンのモビルスーツ・ザクに全く歯が立たず、あっさりと主力兵器としての座をMSに譲り渡した。これは世間一般に広まっている通史とも言えるが、その実情はいかなるものであったのか、そして連邦の戦車開発者たちはどのように新時代の戦場に対応を試みたのか。そして、連邦における戦車開発の将来はどうなるのか。筆者は、地球連邦軍における戦車開発の重鎮、コーチン技術大将への取材を行った。

 

 

 1.61式戦車の栄光と挫折

 1年戦争において当時主力だった61式戦車は一部の例外的事例を除いてMSに対して圧倒的に劣勢であり、戦前主流だった人形兵器無用派の嘲笑を実力を持って吹き飛ばした。巨大な人形兵器など地上ではただの的、戦車の敵では無いとは何だったのか。一体何が間違っていたのだろうか。

 

 「いや、全く間違っていないのです。端的に言えば、アメリカ人に戦車なんて作らせたのが全ての敗因ですな。」

 

 なるほど、もう少し具体的にお願いします。

 

 「そう、旧世紀の終わり頃からですが、アメリカでは一つの思想が蔓延していたのです。戦争の霧など払拭できる、高度な観測手段と戦場のネットワーク化で戦場の全てを明らかにし、まるでボードゲームでもやるかのように自由に部隊を動かして戦場を支配できると。当時アメリカが超大国として世界に君臨し、圧倒的な軍事力で戦争の行方を欲しいままにしていたのもあって、それは正しく思えました。61式戦車はそういった思想を具現化した戦車です。地球連邦と正面切った戦争ができる有力な敵は存在せず、仮想敵は精々が小規模な反地球連邦ゲリラ。戦場は常に衛星や航空機に監視され、敵の情報は戦術ネットワークで共有され、戦車兵の仕事はオペレーターの指示に従って車両を移動させて居場所のわかっている目標を撃つだけ。これなら乗員が2名でもやっていけそうだし、つまりは平時の軍の財布にも優しい、まさに理想の戦車ですな。」

 

 なるほど、つまり旧世紀のネットワーク戦前提に最適化されすぎてしまった故に、ミノフスキー粒子下の戦闘に61式戦車は対応できなかったのだと。

 

 「まあ他にも問題は色々とありますが、大体そういうことです。要するに平時の兵器だったということですな。当時競作に敗れたオブイェクト7012が採用されておればこれほどの醜態を晒すことはなかったでしょう。戦車のことは我々か、或いはせめてニェーメツにでも任せておけばよいのですよ。」

 

 旧ロシア地域出身のコーチン大将らしい物言いだ。しかし、連邦軍内では1年戦争以前からミノフスキー粒子下での戦闘へ対応する動きがゆっくりではあるが始まっている。次世代MBT開発計画もその一環だ。戦車開発者として、内幕を話していただけないでしょうか。

 

 「アメリカ人は実際に痛い目に遭うまで敵を舐めてかかる悪癖がありますな。まあ、其の分痛い目に遭ってからの立ち上がり方は大したものですが・・・。実際にはそういう声は殆ど顧みられなかったものです。部内では、これを機会に次期主力戦車の座をもぎ取って復権ってことで、我々とニェーメ・・・ドイツの開発部隊が少々張り切りましてね。」

 

 試製79式戦車ですね?ジオンのMSに十分対抗出来る性能が有りながら、量産に移されなかったという。

 

 「一般に流布されている話とは違いましてね、そもそも量産できる段階まで開発が進んでいませんでした。我々のオブイェクト7012も、彼らのVK80.01も。ロボット狂いのアメリカ人共が作ったRTX-44は開発ペースが早かったので試作機こそ出来ていましたが、案の定欠陥だらけで採用どころではありませんでしたよ。」

 

 え、そうしますと、サンクトペテルブルク防衛戦で試製79式戦車の試作車を装備した部隊が攻め寄せたザクをことごとく撃退したという話は・・・。

 

 「あれは熟練の歩兵と戦車兵が地形と陣地を駆使した巧みな連携の成果であって、使われたのは61式の初期型です。競争試作が終わる前に戦争で中止になりましたからな、試製79式なるものは存在しないのです。まあ何というか、士気も練度も高いロシア方面軍の兵だからこその芸当であって、ヤンキー共ではとてもサンクトペテルブルクを守り切れなかったでしょう。」

 

 

 

 2.試製79式戦車(仮)

 当時開発が進んでいたとされるオブイェクト7012とVK.80.01、開発の進捗状況はどの程度のものだったのでしょうか。

 

 「競争試作でしたからな、どちらも詳細設計を終えて試作車の製造に取りかかるところでした。あちらの方はどうだったか忘れましたが、オブイェクト7012の方は部品が全て納入され、まさに組み立てが開始されるところでした。そこにコロニー落としと地球降下作戦で混乱の最中に開発は中止、部品は開発部隊がサンクトペテルブルクから疎開する途中で失われたと聞いております。」

 

 なんてもったいない。ところで、これらの新戦車達が開発中止された理由は何でしょう。ジャブローへの疎開後も開発を継続すれば、ジオンのMSに対して有力な対抗手段が手に入ったと思うのですが。

 

 「そこは色々としがらみとか、状況判断が有るところですな。レビル将軍を筆頭とする当時のMS推進派は、61式だけでなく在来兵器そのものにある程度見切りをつけていました。だから、新戦車の開発や生産に回す資源をMSに注ぎ込むべきだと考えていました。他の派閥の連中も、緒戦で受けた大損害を回復して頭数を揃えるのが優先でしてね。ほぼモスボール状態だった戦車製造ラインを復活させるだけでも大仕事なのに、新しい製造ラインに切り替えるなんて論外だと言う判断でした。」

 

 ジオンが次々に新型MSを投入してきたことを考えますと、そんなに難しい話ではないと思えますが。

 

 「結果論から言えば、新戦車を採用して、製造ラインを切り替えるのは十分やれたでしょう。でも、当時は生産効率が優先されたということです。61式の主砲そのものはザクに対し有効ですからな。」

 

 そうなのですか?61式戦車の150ミリ砲はザクに対して有効でなく、新しい155ミリ砲へと換装されたとされていますが。

 

 「まず最初に申し上げますと、61式戦車の主砲が後期型で換装されたというのは全くの誤解に基づくものです。61式の主砲は、初めから155ミリです。旧NATO規格のね。常識的に考えて、複合装甲では無く大して厚くもないザクの装甲が15センチ級の砲から撃ち出されるAPFSDSで抜けないと思いますか?150ミリでも155ミリでも変わりやしない。変える必要など全くないのですよ。まあ、ドイツ人共は長距離狙撃を狙ってVK.80.01で180ミリ砲なんぞを採用しましたし、アメリカ人はRTX-44で何を考えたか240ミリ砲まで持ち出しましたけどね。」

 

 確かにそうですね。しかし、VK.80.01は180ミリ砲ですか。もしかして、ヤシマ重工製ですか?

 

 「さよう、MSの武装として採用された180ミリ砲は、元はVK.80.01のために開発されたものを流用したものです。ドイツ人らしいといえばらしいですが、そのために80トン級の車両になりました。オブイェクト7012は61式の弾薬を流用できるよう、改良型の155ミリ砲を採用していましたがね。これは試作砲が砲兵博物館に展示されていますよ。61式の主砲が換装されたというのは、これまで書類上で15センチ呼びしていたのを、途中でミリ表記に変えたというか、表記揺れが原因じゃないかね。」

 

 しかし、新戦車の開発は全くの無駄になってしまったのでしょうか。何かに活かされたりなどしていないのでしょうか。例えばガンタンクの開発に活かされたとか。

 

 「新戦車の開発成果も全てが無駄になったわけじゃない。君の想像通り、実はRX-75の試作機は向こうに合流したアメリカ人共のRTX-44がベースになっているのだ。それに時期にもよるが、再生産された61式には新戦車の開発要素を反映した改良が色々と加えられている。61式から変えられるわけじゃないから、根本的な改良はできなかったがね。だが、それが無ければオデッサ作戦はもっと悲惨な結果になっていただろう。何せ、結局のところ主力は61式だったのだから。」

 

 具体的にはどのような点が改良されたのでしょう。

 

 「例えば、駆動系だ。知っての通り、ミノフスキー粒子は電子回路に干渉するから、電動の61式は最悪の場合起動すらしなくなる。だから、駆動系と制御系の耐ミノフスキー粒子化対応は必須だった。他にも、FCSは新しく開発されたものに置き換えられていたな。」

  

 最後にオブイェクト7012がどのような車両だったのか教えて頂けますか?

 

 「VK.80.01やRTX-44とは違って全く面白みは無いが堅実な戦車だよ。先ほども申し上げたとおり、主砲は61式と同じ155ミリ連装砲。改良されて威力や発射速度は上がっていたがね。それを無人砲塔に積んで、浮いた重量で防御を強化した。旧世紀のT-14の現代版と言ったところだな。もちろん、ミノフスキー粒子散布下での戦闘を前提に、近距離通信や電子装置はしっかり強化しておるし、乗員も昔のように3名に戻してセンサー類も一新されていた。RTX-44の様な目新しいだけの玩具と違って、どんな戦場でも必ず期待に応えてくれる車両に仕上がったのだがね、もう半年開発が早ければ戦争の流れが変わっていたかもしれない。実に悔しい。」

 

 

 

 3.アヴァランチ大捷

 オデッサ作戦といえば、敗北したとはいえスーパーアヴァランチ部隊の活躍が目を引きますね。もしや、あれにも関わっていらっしゃるので?

 

 「無論だとも。もっとも、TYPE79は実際はガンタンク系列の機体だから我々が直接開発したわけではない、・・・いや最早我々の子供と言ってもいいかもしれないな。当初RXシリーズの開発チームがRX-75ガンタンクを開発した際に、我々はRTX-44を開発部隊ごと提供しただけだった。彼らもRX-75は腰掛け程度のつもりだったのだろうが、どう転ぶかはわからないものだね。あれが結局のところ今の主力機につながるのだから。TYPE79の開発に当たっては、足回りだけではなく全面的に協力したが、概ね満足できる結果だと自負している。」

 

 ガンタンクですか、確かに元が元だけに戦車型の足回りをしていますからね。

 

 「あまりおおっぴらにはされていない話だが、RX-75は本来はあくまでコアブロックシステムを含めたMSの上半身部分の試験機に過ぎなかったのだ。だから戦闘に投入したり、あまつさえ量産するような性格のものではなかったのだが、それでは上層部が納得しないからね。説明の為に武装して支援機としてでっち上げたが、何の因果か戦闘に投入され、あまつさえ量産型が配備されることになってしまった。」

 

 話している最中にだんだんコーチン大将の顔が赤くなってきた様に見える。それに、口の滑りがだんだんよくなってきているような・・・。もしや、大将の手元のグラスに入っているのは水ではないのでは?筆者は疑問に思いつつも話を続けた。

 

 それでも、機械化混成連隊に配備された量産型ガンタンクは部隊からの評判も良く、活躍していますね。

 

 「うちの自走砲開発部隊の連中が、砲の駐退復座機構から射撃統制装置まで徹底的にいじり倒したからね。量産のための簡易化ではなくて、完全に一から作り直したに等しい代物だよ、あれは。RX-75の段階では砲塔にあたる上半身を旋回させることすら出来なかったのだから。全く、RTX-44開発部隊のアメリカ人どもは何をやっていたんだ!それに、あの程度の運用ならば通常の自走砲でいいと思っただろう?実際そうなのだ。しかし、あれはあくまで量産されたガンタンクでなければならなかったのだ。そうであることが求められていた、政治的にね。TYPE79開発の頃にはそういう枷も大分外れていたからね、全体的なシルエットこそRX-75を踏襲しているが、中身はほぼ新型戦車みたいなものだったと思っていいだろう。」

 

 なるほど、戦車開発部隊の技術力がアヴァランチシリーズの開発にも活かされているのですね。そして、その結果が実戦でのあの戦果につながったと。やはり歴史に裏打ちされた技術力の重みというものを感じます。アヴァランチが活躍する一方、強襲型ガンタンクは期待外れに終わりましたね。

 

 「RTX-440か、あれはね・・・。ジオンがヒルドルブなんて大型戦車擬きを繰り出してきて仰天したMS派が大騒ぎして対抗兵器を繰り出した結果があれだよ。少し落ち着いて我々に任せてくれれば、あんな不細工な代物よりも遙かにマシな物を送り出せたのだが・・・。それに、我々には有力な空軍もあるだろうに。まあ、あの頃はまだ猫も杓子もモビルスーツといった雰囲気があったからね。それに運用も悪かった。対ヒルドルブ用の戦車駆逐車擬きを、まるで普通の重戦車のように扱って損耗させてしまった。当初の目的通りか、或いは陣地攻略にでも専従させておけばもっと有効に使えたのではないかな。我々の名誉のために念のため言っておくが、我々はあれには全く関わっていないぞ。あれは、RX計画に合流した愚かなアメリカ人技術者が勝手に作り上げたものだ。」

 

 実質的な61式戦車の後継はガンタンクⅡに決まりましたね。ガンタンクやアヴァランチの後継機ということで、今では見慣れた形ではありますが、戦車らしからぬ形でもあります。一方、Iフィールドを始めとした新機軸や一年戦争の戦訓を反映した装備が目立ちます。これもやはり?

 

 「戦争中はTYPE79の開発に協力したが、今は彼らはどちらかと言えばライバルだよ。我々は我々で、一年戦争の戦訓を反映させた新世代戦車の開発を進めている。RTX-45は原型たるRTX-44やTYPE79をベースにしているから開発が早かったが、我々は戦争中は61式の改良やTYPE79を始めとするMS以外の兵器開発への協力で忙しく、新戦車の構想を練ることは出来なかった。それに、条約でMSの保有と開発が制限された以上、すぐに手に入れられるものが必要だった。となると、ある意味必然の流れだよ。とは言え、我々の次世代戦車に向けた戦訓分析がRTX-45の開発に活かされているのは確かだ。しかし、RTX-45のIフィールドに関する情報は公開されていないはずだが?」

 

 いや、さる情報提供者から話を聞きまして。ビーム兵器が一般化した戦場では大きなアドバンテージになるだろうと。Iフィールドと言えばジオンMAの専売特許でしたが、ついに連邦軍も追いついたのだなと感慨深く感じます。

 

 

 4.SMBT-X

 「ふむ、ミノフスキー粒子散布下の戦場で当初敗北を重ねたから誤解されがちなのだが、連邦のミノフスキー粒子応用技術そのものは実際は高い水準にある。考えてもみたまえ、フィールドモーター、戦闘機に搭載可能な小型核融合炉、メガ粒子砲、エネルギーCAP技術、ミノフスキークラフト搭載艦、みな連邦がジオンに先んじて確立した技術だ。Iフィールドも、フィールドモーターや小型核融合炉には必須の技術だ。ビーム防御に使うことを思いついたのはジオンが先だがね・・・。」

 

 アッザムやアプサラスの様なジオンの大型MAの能力は驚きでした。

 

 「組織としての、連邦の技術的優位を私は信じる。だが、それを一人で覆すような天才が時に存在することも事実だ。ギニアス・サハリン技術少将だな。あれは鬼才と言うしかない。それに、マネジメント面でジオンを支えたマ大佐の存在も抜きにしては語れないな。」

 

 確かにそうですね。アプサラスの対抗兵器も聞かれません。

 

 「まあ、あれは凄い代物だが、実際には運用も限られるからね。しかし、連邦に対抗兵器の開発計画が無かったわけでは無い。」

 

 初耳ですね、聞かせてもらっても大丈夫なものでしょうか?と質問を続けたが、コーチン大将の手には既にグラスでは無くボトルが握られている。最早隠す気も無いのだろうか・・・、私としては何でも答えてもらえそうでありがたいことだが。

 

 「これが記事になって出版される頃には多分機密指定解除されるはずだからいいだろう。これもRTX-45が限定的とはいえIフィールドを搭載するからだがね。実は、アプサラス対抗兵器の計画はあった。地球連邦軍参謀本部付実験航空隊ジャブロー防衛移動飛行要塞T-1なる長ったらしい名前の兵器だが、現場ではもっぱら略称のSMBT-Xと呼ばれていたかな。ミノフスキークラフトで飛行して、飛んでくるアプサラスの前に立ち塞がってIフィールドを展開してあの大型メガ粒子砲を弾き返そうって代物だよ。アッザムやアプサラスにショックを受けて、とりあえずこちらも対抗できる兵器を作らねばってコーウェン少将(当時)が音頭をとってね。ペガサス級を作った艦政本部の連中も、対ビーム装甲を担当した我々も、とにかく連邦中の技術者が結集されたプロジェクトだったな。1号機はミノフスキークラフトで飛行するMAの技術実証機みたいなもので、データを取った後は解体して2号機に流用だったかな。本格的に実戦投入を目指して作った2号機は、最終的にメガ粒子砲をただ弾くんじゃどこかに被害が出るからIフィールドを上手く制御してビームを相手の方向に上手に反射できないかってことになって、ジャブローに転がっていた核開発用のスーパーコンピューターを積んでなんて肥大化してね、一から作れば同じ値段でペガサス級が建造出来そうな高価な機動兵器が出来上がったよ。結局、ジャブロー防衛戦に間に合わなかったのと、そんな凝ったことをする必要は無いということで試作機だけでお蔵入りになったが、当時の我々はいかにアプサラスに衝撃を受けたかということだな。」

 

 そんな物があったとは・・・、驚きですね。

 

 「終戦のゴタゴタでどうしたかよく覚えていないが、ジャブローのどこかにまだ眠っているはずだ。現物が博物館に展示されるのは相当後になると思うがね。そして、君が一番聞きたいであろう次期主力戦車の開発にはその時関わった技術者が集められた、と言えばヒントになるかな?」

 

 え!?

 

 「ジオンのドム、あれの機動に戦車ではついていけない。無論、射撃戦だけならばFCSの対応の問題でしかないからね、適切なFCSを持ってくれば複葉機並みの速度しか出ないあれに当てるなど容易なことだ。だが、戦術的な主導権をあの速度で取られっぱなしになる事態が問題視されていてね。それに、ドダイとMSの組み合わせによる戦略的な高速展開能力も侮れない。攻防能力は当然ヒルドルブも上回らなきゃならん。それに、オデッサ作戦の時に、ファンファンⅡが予想外に活躍しただろう?それで戦闘ヘリとの統合も視野に入ってきて、それらを連邦の持てる技術を注ぎ込んで最大公約数的にまとめ上げたのがこれだ。」

 

 席を立ったコーチン技術少将が、鞄から何枚かの写真を取り出して机の上に広げた。シルエットは、確かに伝統的な戦車そのものだ。かなり大きく、ヒルドルブよりも大きく見える。ビッグトレーにはさすがに及ばないが、ミニトレー位のサイズはあるだろうか。最大の違和感は、履帯が無く、飛んでいることだ。

 

 「正式発表はもう少し先になるが、統合開発名称はRTXではなくSMBT-X3、部内名称オブイェクト1279だ。アッザムやアプサラスのような一品物の大型MAを別にして、地球上でこれに対抗できる機動兵器は存在しない。もちろん、こいつは量産される。RTX-45とはハイローミックスで平行配備になるがね。地球舐めるな宇宙人!」

 

 顔を紅潮させて叫ぶコーチン技師の言うとおり、なるほど確かに頼もしそうな兵器だ。しかし、最早陸上戦艦に片足を突っ込みかけており、飛行可能なことも相まって旧来の戦車とは別物ではないかとも感じる。時代の流れとはいえ、このまま伝統的な戦闘装甲車両達が消滅してしまうとしたら残念なことだ。

 

 「何、戦争はMSや宇宙戦艦だけでやるものじゃない。結局の所、最後は歩兵が突入して占領し、敵に銃口を突きつけなければならんのだ。であれば、従来の車両もこれからも必要とされ続けるさ。」

 

 本日は貴重なお話の数々をお話し頂きありがとうございました。

 

 

 

 

 

開発名称:オブイェクト1279

 主砲:356ミリ電磁投射砲1門ー主砲塔に100ミリ機関砲同時装備。

 副砲:180ミリ砲ーそれぞれ副砲塔に装備。同軸60ミリ機関砲装備。

 車体VLSに近距離SAM、対MSミサイル装備、Iフィールド発生器内蔵、近接防御装置装備

 乗員:7名(車長、操縦手、砲手、副砲手2、索敵・火器管制手2)

 副砲を実弾砲・メガ粒子砲両用砲身とする案もあったが、主砲電磁投射砲にミノフスキークラフト、Iフィールドまで運用する本車は既にかなり大出力の核融合炉を搭載しており、これ以上の肥大化を避けるために搭載は見送られた。

 




次回作も鋭意執筆中とのことですので先生(おばかさん)の活躍にご期待下さい。

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