起きたらマ(略)外伝?   作:Reppu

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SSS26:かいへいたいにっき

○月×日

夕食の時趣味の話になり、特に趣味や習慣が無い事を部隊の先輩に話したら真剣な顔で何か一つくらい作っておけと言われた。何かを始めると言うのもそれなりに労力と時間を消費するから、手っ取り早いという事で日記をつけることにする。

 

 

○月△日

書き始めて二日目だがもう書くことがない。いつも通り訓練をして飯を食って寝る。それだけの一日だった。同室の先輩にそう言ったら日記なんて書きたいように書けと言われた。成程その通りだ、毎日などと気張らず書くことがあった時だけ書くことにしようと思う。

 

 

○月□日

基地司令と数人の兵士が夕食の時、ひたすら器に放り込まれるソバヌードルを食い続けるという行動を取っていたが、アレはなんだったのだろうか?基地司令は旧世紀の文化にも精通しているらしいので、もしかしたら何かの宗教的儀式だったのかもしれない。途中通りがかったイネス少佐がぶん殴って司令を連れて行ってしまったが、あれは良かったのだろうか。

まあ、俺には関係無い事だが。

 

 

○月×日

今日は部隊内で選抜テストが行われた。基本的に海兵隊はMS-22をチューニングした機体を使っているが、どうも特殊な機体を少数配備するらしい。新人の俺もテストを受けたが、あのプログラムを考えた奴は絶対頭がおかしい。ロックアラートも鳴らないビームが四方八方から飛んでくるのを避け切れとか出来るわけないだろ!

と思ったら先輩方の大半は出来ていた、落ちたのは俺とクララ曹長、それから数人の若い連中だった。独立戦争経験組の技量はマジでヤバイ。結局テストだけでは絞りきれず模擬戦上位者で枠を埋めていたが、その上位メンバーの小隊を一人でなぎ倒すガラハウ大佐殿はおかしいを通り越してチートだと思う。絶対逆らわないようにしよう。

 

 

○月*日

独立戦争経験組はヤバイと改めて実感させられた。他兵科との模擬戦と言う事で基地に居るMT部隊と戦った。正直戦後ろくに更新もされていない兵科だし、部隊も年々縮小されているオワコンだと馬鹿にしていたら模擬戦開始5秒で撃破された。ログを見てみたら開始と同時に発砲された初弾が命中、即死だった。だからなんでロックアラート無しに弾が当たるんだよ!?

模擬戦終了後、MT部隊の大佐殿が大人げなかったとガラハウ大佐殿に謝罪していた。屈辱だ、次は絶対勝つ!

 

 

○月$日

先日選抜試験を行った特殊作戦機が早速配備された、と言うかここのラボで全部製造したらしい。格納庫を試作機で占領するだけの連中じゃなかったんだな。慣熟訓練のついでだとか言われ、選抜試験に落ちたメンバーで特殊作戦機と模擬戦をすることに。うん、あの訓練の意味を理解した。まあ、ロックアラート鳴るだけこちらの方が遥かにマシだが。模擬戦を見ていた基地司令と開発者の技術大尉が何やら話し込んでいた。もう少し増やすって配備数のことだろうか?出来れば俺にも廻ってくるくらい造ってくれないかな。

 

 

□月△日

模擬戦をやるようになって1週間、遂にリチャージまで逃げ切ってやったぞ!その後サーベルでぶった切られたのはまあご愛嬌ということで。気分良く夕食を食っていたら、基地司令が何か緑色のボールみたいな物を抱えながら現れた。しかもそれに飯を食いながら頻繁に話し掛けていた。そう言えば司令の勤務状況はかなりブラックだと聞いた事がある、心を病んでいないと良いのだが。

 

 

□月×日

司令の持っていた緑色のボールはハロと言うペットロボットだそうだ。基地司令から支給された先輩が教えてくれた。特殊作戦機のパイロットは漏れ無く渡され司令直々に仲良くするように命令されたそうだ。いい大人が揃ってペットロボットに語りかける食堂はシュールを通り越してちょっとしたホラーだ。この時ばかりは選抜に落ちて良かったと思った。

 

 

□月○日

何がいけなかったんだろう?先輩を笑ったこと?ハロに話し掛けているガラハウ大佐殿から目をそらしたこと?それとも…、いや止めよう。逃避しても現実は変わらない。あれから数日して海兵隊のパイロット全員にハロが支給された。司令はサンプルを増やすとかなんとか言っていたが良く覚えていない。重要なのはあのシュールな空間に自分も加わると言う逃れられない現実と向き合う頑強な精神だ。だけど即日はキツイから明日有休が取れないか申請してみよう、そうしよう。

 

 

□月□日

このハロってペットロボット滅茶苦茶賢いぞ!?何でも話してくれと言って来たから適当にMSの戦術について振ったら、俺の特性に合わせた戦闘プランを提示して来やがった!

聞くとどうやらこいつ、基地のデータベースとリンクしているらしい、どころかこのハロと言うのは単なる端末で、本体は基地の地下にあるサーバーなんだとか。一体何のためにこんな大がかりな物作ってんだ?理解できん。

 

 

□月$日

ハロが配られてから今日で一週間、日常に明確な差が出てきた。ハロと積極的に関わっている奴といない奴で模擬戦の勝率に差が出てきているのだ。特にコックピットまで持ち込んでいる連中は判りやすく強い。俺も試したけれどアレは狡い、ちょっとしたナビどころか機体制御の補助までしてくれる。それだけではなく目標の脅威度を判定してプランを提示してきたり、ダミーバルーンを自動で排除してくれたりと、まるで二人で機体を操縦しているような状態だ。そりゃ露骨に勝率が上がるわけだ。即禁止になるかと思ったのに、なんと基地司令の判断は運用継続だった。ただし訓練の半分はハロ無しの状態で熟すようにだそうだ。滅茶苦茶を言ってくれるよ。

 

 

□月〆日

馬鹿な奴らだ、強いのはハロであって俺達じゃない。そんなことも判らずに増長するから手痛いしっぺ返しを喰らうんだ。問題はその馬鹿が俺の小隊にもいたという事だが。

仲間内だけでは技量の向上が判りにくいと基地司令がアグレッサー、教導団のパイロットを招いてくれた。結果からすると俺達の大金星、確かに教導団のパイロット相手に同じ機体で勝ち越したんだからそう言ってもおかしくはないだろう。だがそれは俺達の機体にハロが積まれていなければの話だ。馬鹿が不用意に放った教導団を貶める言葉は、ガラハウ大佐の逆鱗に触れた。それはもう引っぺがす勢いで触れてしまった。今日が日記を書く最後の日になるかもしれない。

 

 

△月○日

いきてるってすばらしい。

 

 

△月×日

今日、とんでもない連絡を受けた。海兵隊で運用していた特殊作戦機が正式に量産されるとのことだ。しかも俺達の部隊は全員特殊作戦機、MS-24“ヴェア・ヴォルフ”に機種転換されると言う。そしてそれに伴い俺達海兵隊は第1特機大隊に名称が改められ、所属も総司令部直属の部隊となるそうだ。まあ、基本的な待遇はこれまでと変わらず、今後の活動もこの基地を拠点するとのことだから、変わるのは給料と部隊章くらいだが。

そう伝えてくれたガラハウ大佐が少し寂しそうにしていたが何かあったのだろうか?

 

 

△月$日

ヴェア・ヴォルフはとても優秀な機体だ。間違いなく今まで俺が乗ったMSの中で最高と言える。だが、残念ながら最強の機体と聞かれたら名前を挙げることが俺には出来なくなった。何故なら今日、もっと強いMSと戦う事になったからだ。上には上が居る事を思い知らされたが、あんな物を作ってあの連中は一体何と戦う気なんだ?

 

 

△月#日

ここ数日第1特機のパイロットは張り詰めた空気を放っている。それというのも先日基地司令が“解禁”したMS“デア・ケーニッヒ”がシミュレーターで猛威を振るっているからだ。触れ込みはMS-22のカスタム機だとされているが絶対嘘だ、性能が違いすぎる。その上パイロットもヤバイ。基地司令が手練れだとは知っていたがもう一人、最近技術本部から出向してきた若い少佐殿がとんでもない技量で暴れているのだ。しかもその少佐殿が機体の開発者だという。おまけに顔も良いとか、天から一体何物与えられてるんだ?

 

 

△月※日

宇宙で問題が起こった。俺達も出撃する。初めての実戦になるかもしれない。怖い。

 

 

×月×日

趣味や習慣を持てと言った先輩の言葉を俺は漸く理解した。ここ数週間のことは詳しく書くことは出来ないが、俺はこの日記のおかげで命拾いをしたのだ。心残りがあれば人間は簡単に諦めない。だから皆、基地に作りかけのプラモデルや世話をする植物、あるいは作戦後に行くための映画やライブのチケットを準備している。

俺にとってこの日記がそれになった。これからも必ず続けていこう。

 

 

×月〆日

折角生きて帰って来たと言うのに今日死刑宣告が来た。先の作戦で機体を失ったパイロットは特別訓練だそうだ。先輩達が気の毒そうな顔をしていたので絶対に碌な事にはならないだろう。

俺は生き延びることが出来るだろうか。




特に意味の無い文字列が読者を襲う!
許して下さい、たまには毛色の違う事に挑戦してみたかったんです。
何でもしませんから。

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