ではどうぞ!ゆっくりしていってね☆
大きく育った竹が生い茂る、広大な竹林の入り口に降り立つ三人の人影。
少年を抱えた、紅い羽衣を纏った竜宮の使い、永江衣玖。
青と白を基調としたエプロンドレスのようなものに、桃の飾りのついた黒い帽子を被った天人、比那名居天子。
そして、赤い巫女装束を着た博麗の巫女、博麗霊夢。
三人がここへ来たのは、衣玖が抱えている少年を永遠亭で治療して貰うためだ。
そして、目的地である永遠亭は、今三人の目の前に広がる竹林、通称「迷いの竹林」の中にある。
「さて、さっさと永遠亭に行きましょう」
「待ちなさい、ここ、妹紅に案内して貰わないと永遠亭まで辿り着けないでしょうが」
さっさと済ませようと言わんばかりに天子が竹林に入っていくのをため息混じりに制止し、私は案内人役である藤原妹紅を探す。
「妹紅ー」
「いないの?」
「怪我人いるから永遠亭まで案内してほしいんだけどー!」
「ここにいるよ?」
入口付近の竹に背を預け、こちらを見る、もんぺを履いた銀髪赤眼の少女。
迷いの竹林に住まう蓬莱人、藤原妹紅。
「丁度竹林の外周を散歩してたらあんたらの霊力を感じてね。何事かと思って出てきたのよ」
「ところで怪我人とか言っていたけれど、どうしたの?」
背を預けていた竹を離れ、少し足早に霊夢たちに近寄る。
「えぇ、実はこの天人が.……」
少女説明中.……
少女説明中.……
「それ不味いんじゃないの!?」
「永遠亭まで案内するから早く付いてきて!」
目が覚めてすぐぶっ倒れただって?
頭を損傷してたりしたら障害が残る可能性が高い!急がないと!
そんなことを考え、早足で永遠亭に向かって歩き始める妹紅。それに置いていかれまいと急ぐ霊夢。
「ちょっ?!」
「待って妹紅!」
「案内人が急ぐと案内される側が逆に迷うわよ?」
不敵な含み笑いを浮かべながらも、若干の苛立ちを含んだ声で妹紅に言い放つ。
焦り、急ぐ霊夢に対し、なんとも正反対な反応である。
そして、その言葉にピクッ、と反応して歩を止める妹紅。振り向いたその顔に浮かんでいたのは、怒りや苦悶の表情であった。
「確かにそうだ.……」
「だが.……お前には、思い遣りや.……人を心配するという気持ちは.無いのか.……?」
辛うじて妹紅の口から吐き出された言葉からは、見ず知らずでも少年を助けてやりたいという気持ちと、天子に怒りをぶつけたい衝動が混在した、臨界ギリギリの中で絞り出したことが伺えた。
「愚問ね、これでも人の情や欲望を捨てなかった不良天人よ?心配はしているわ」
「急がば回れと言うでしょう?もう少し冷静になって行動なさいな」
特に感情が籠っている訳でもない気だるそうな声で諭す。
自分より年上の者に言うことではない。だが、それは常日頃、殆どの人々の行動に言えることであり、先程の妹紅の行動にも言えることであった。
「そう…ね」
「すまない」
「行こう、永遠亭は此方だ」
爪が掌に食い込む程拳を握り締めて怒りを堪え、波が去り落ち着いた様子で案内を始める。
少女移動中…
ー永遠亭ー
「えーりん!えーりん!?」
戸をバンバンと叩きながら妹紅が怒鳴る。
「そんなに大声出さなくたって聞こえてますって… 」
「何か師匠に用ですか?」
迷惑そうな顔をして出てきた兎耳の少女、うどんげこと鈴仙・優曇華院・イナバが、溜め息混じりに問う。
「怪我人がいるの、診てくれないかしら」
「怪我人ですか?わかりました」
「どうぞ中へ」
戸を目一杯開き、戸の後ろへ下がって三人(四人)を中へ案内する。
「じゃあ、私はこれで帰るとするよ」
妹紅はそういうと手をヒラヒラと振りながら去っていった。
「師匠に伝えますのでここで少しお待ちください」
客間に通すと、そう言って三人を客間で待たせ、鈴仙は出ていった。
少女待機中…
「お待たせしました、診察室へどうぞ」
そう言って永琳のいる部屋に三人を通す。
「お待たせしました、今日はどのようなご用件で?」
左と右で藍と赤に別れた服を着た白髪の女性、八意永琳が、営業スマイル()で迎える。
「この子を診て欲しいのだけれど」
霊夢が、衣玖に抱かれた葵を指して言う。
「そこに寝かせて下さい」
備え付けられた寝台を指して言う。
「ふむ、して病状は?」
「昨日天子がウチに運んできて、何ヵ所か縫って寝かしておいたら今日起きてきたかと思ったら、即倒して…それでここまで運んできたのよ」
簡潔に述べる霊夢。
「わかりました。診察と、必要ならば治療を行いますので皆さんはどうぞ客間にてお待ち下さい。」
「お願いするわ、永琳。」
「えぇ、私のできることは致しましょう。」
その言葉を聞き届けると、霊夢たちは客間に退散していった。
「.……さて、どうなっているのでしょうね.……」
前回の予告分まで書けませんでした、申し訳ありません.……