ファイアーエムブレム~凍土の剣~   作:whiterain

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前回出してたのはここまでかな?


4章 古びた砦

山賊を撃退し、フロリーナとウィルを仲間にしたユーリ一行。

しかし、その過程でユーリが腕に矢傷を負った。

 

ユーリ達はキアランを目指して西に向かう。

 

その途中で、古びた砦で一夜を明かすことになるのだった。

 

 

「ユーリ大丈夫?」

 

腕に包帯を巻いたユーリを心配するリン。

大きな怪我というわけでは無いが、戦うのには支障が出ていた。

それを気にさせないように明るく振る舞うユーリが余計にリンを心配させていた。

 

『大丈夫大丈夫!この程度戦ってればあることだし』

 

「無理はだめですよ、ユーリさん」

 

フロリーナからも注意されて、ユーリは肩を小さくした。

 

「フロリーナ、男性苦手じゃなかったかしら?」

 

「何故か、ユーリさんは恐いと思わないから」

 

男性恐怖症のフロリーナがユーリを恐がらない理由。

それを何となくわかっているユーリとマークは何故かしら?と悩むリンをユーリは気まずそうに、

マークはほほえましく見ていた。

 

 

「ここで良いんじゃないですか?今夜の寝床!」

 

「こんなボロ砦とは・・・あんまりじゃないかウィル!」

 

陽も落ちてきて、寝床を探していた一行は打ち棄てられた砦を見つけた。

 

「ここで十分じゃない、ちゃんとした建物より、風を感じられるくらいの方が私は好きだわ」

 

「私は、リンと一緒ならどこでも平気よ」

 

草原で風を受けて、暮らしてきたリンだからこそ風が吹き抜けるこの砦を寝床にすることに何の不安も無かった。

そうして、リンが決定すればここで一夜を明かすことが確定となる。

 

「では、護衛のためにこのセインが、女性達の横で・・・」

 

「ユーリ、見張りよろしくね」

 

『構わないが・・・・良いのか?』

 

「ユーリなら大丈夫よ」

 

信頼されているのか、男として見られていないのか疑問に感じるところだった。

もちろん襲うつもりは微塵も無いが・・・

 

「なぜ!ユーリが良くて、俺は駄目なんですか?」

 

「おまえは、私と交代で寝ずの番をするんだ」

 

「う・・・・」

 

女性と共に寝る予定が、寝ずにしかも男と共に。

天国から地獄に落とされた気分だったセインはがっくりと肩を落とした。

落ち込んだセインをケントが引っ張り、一行は打ち棄てられた砦に入っていった。

 

「あの・・・・」

 

「誰!!」

 

砦の中から聞こえた声に、いつでも臨戦できるように武器に手を当てるリン。

他の仲間も同様だった。

 

『みんな武器から手を離せ、敵じゃない』

 

中から出てきたのは、1人の女性だった。

武器も持っておらず、見た感じでは戦えるようには見えなかった。

 

「あ、ごめんなさい・・・私ナタリーって言います

 ここの近くの村の・・・きゃっ!!」

 

「おっと!」

 

近くにいたマークが彼女を受け止めて、瓦礫の無いところに座らせる。

 

「すいません・・・小さい頃からあまり足が良くなくて・・・あまり遠くにも行けないんですけど・・・」

 

『なんでこんなところに1人で居るんだ?賊だって出るだろう?』

 

山賊が横行しているこの地域で、女性が1人で居るのは無謀以外の何者でもない。

リンのように腕が立ったり、フロリーナのようにペガサスで空に逃げれるのならば、話は別だが・・・

 

「夫が村を出たきり、戻ってこなくて・・・私の足を治すためのお金を稼ぐといったまま・・・

 これあまり上手くは無いですが、夫の似顔絵です。名前はドルカスというのですが御存じありませんか?」

 

「ごめんなさい・・・ちょっと見たこと無いわね。ユーリは?」

 

『俺もないな・・・マークはどうだ?』

 

「自分も見たこと無い、ウィルは?」

 

「俺も無いかな・・・」

 

リンからユーリへ、ユーリからマークへ、マークからウィルへと知ってそうな人へ聞いていくが

答えはみんなNOだった。

 

「そうですか・・・もし会ったら伝えてくれませんか?

 ナタリーが探していたと・・・」

 

「わかりました・・・」

 

『っ!? マーク』

 

「ユーリもやっぱり気づいた?」

 

静かな砦の外から聞こえる、多くの足音。

そして大量の殺気。

賊が迫ってきてるとしか思えない状況だった。

 

『敵襲だ、おそらくこの間の奴らが追ってきているのだろう・・・』

 

「持久戦になるだろうね・・・この砦の入り口を守りながら戦うしかない」

 

セインとケントは南の入り口を、リンとフロリーナは東の小さな入り口を、ウィルは西にある壊れそうな壁を壊されないように

守りきる役割を与えられた。

 

『俺は?』

 

「ユーリ?」

 

『何でもない・・・』

 

未だ怪我が治っていないのに戦おうとするユーリに、リンの真剣な瞳が射抜いた。

 

「ユーリは最終防衛ラインだよ。そこまで行かせるつもりは無いけれど、もしもの時は頼むよ」

 

最終防衛ライン、それは今一行がいる場所への一つの入り口。

ここが突破されればナタリーの命は無いだろう。

 

『了解』

 

ユーリが怪我をしてない腕で剣を持って応えた。

 

「それじゃ、戦闘開始だ!」

 

 

東入口 リン&フロリーナの持ち場

 

「みんな大丈夫かしら?」

 

南は入り口が一番広く、敵が密集していた。

西は弓兵であるウィルが1人で対応している。

 

一番、安全な入り口は私たちが守っているここだと思う。

 

「リン・・・あの人・・・」

 

砦の西口に着いて武器を構えると、フロリーナが近くにいた敵の1人を指さした。

 

「ナタリーさんの描いた似顔絵に似てない?」

 

フロリーナに言われた人物を見ると特徴は酷似しており、この人だと思った。

ナタリーさんのことを話さなければならない!

夫が妻を怯えさせる・・・・家族を危険に晒すなんてあってはならないのだから

 

「フロリーナ!ここ少しお願いね!!」

 

リンはドルカスと思われる人物にまっすぐ駆けていった。

 

「ドルカスさん!?」

 

「・・・・なぜ、俺の名を知っている?」

 

武器を構えて警戒を崩さないドルカス。

 

「ナタリーから聞いたの、どうして賊なんてやってるの?」

 

「・・・・金のためだ。どんなに汚い仕事だろうと、俺には金がいる」

 

彼は何としてでも、奥さんの足を治したいのだろう。

瞳には確かな決意が見えた。

 

しかし、彼はここにナタリーがいることを知らないのだ。

どんな目的があっても、奥さんを・・・家族を心配させて、危険に晒して良いはずがない。

 

「お金の為なら、奥さんを傷つけても良いって言うの!?

 ナタリーはいま砦の中で震えているのよ!!」

 

「なんだと・・・・!?あいつが・・・ナタリーがここにいるのか!?」

 

驚愕・・・彼の表情は一瞬で変わった。

 

「あなたのことが心配でここまで来たのよ・・・ドルカスさんが心配だったから!!だから!!」

 

「わかっている、今を境に山賊団を抜ける。そしてナタリーを守るためにもおまえ達を助けよう・・

 俺も仲間にしてくれ」

 

「ありがとう・・・でも中にナタリーさんがいるから、まずは安心させてあげて・・・」

 

父と母が殺されたからこそ、リンは家族というものを何より大切にする。

いまは少しでも早くナタリーさんの不安を解消させてあげたかった。

 

 

中央部屋前 ユーリ&マーク

 

『ちっ・・・あんま戦況は良くないか』

 

「敵が思ったより多いね・・・」

 

全体を見回しても、敵の数はあまり変わっていない。

倒しても、倒してもやってくる。

ユーリは十全に戦えない自分の状態がもどかしかった。

 

「ユーリ・・・その腕どこまで使える?」

 

『痛みをこらえて、傷口を開く覚悟をすれば・・・5分は戦えるだろうな・・・』

 

場合によっては指揮する親玉をユーリに倒してもらう必要がある・・そうマークは考えていた。

そうすれば、敵は退くだろう、悪くても増援はいなくなると確信していた。

 

1手足りない・・・

 

ユーリを動かせば、もしここまで敵にこられたとき残るのはナタリーとマークの非戦闘要員のみ。

ユーリを簡単に動かすわけにもいかなかった。

 

『誰か・・・来る・・・』

 

リンとフロリーナの守る西口から誰かが走ってくる音がする。

走る音と大きさからリンやフロリーナでは無い。

 

突破されたか?そう考えたが、それにしてはあまりにも早すぎる。

 

「ユーリお願い」

 

『ああ・・・任せておけ』

 

腕の包帯を取り、剣を抜く。

これを見られたら、またリンのお説教だろう。

そうこう考えているうちに近づいてくる影は姿を現した。

 

『そら!』

 

それと同時に攻撃を仕掛けようとユーリは剣を振りかぶった。

 

しかし、

 

「ユーリ待って!!」

 

『な!?』

 

いきいなりのことに驚きながらもマークの声に、ユーリは振りかぶった剣を止めた。

 

「ユーリ、よく見て」

 

『あんたドルカスさんか?』

 

顔を見れば、ナタリーさんが見せてくれた似顔絵に似ている。

これを斬っていたら、ナタリーさんに会わせられる顔が無かっただろう。

 

「ああ・・・ナタリーはこの先に?」

 

『ああ、早く行ってやってくれ』

 

詳しいことは訊きはしない。

リンかフロリーナにナタリーのことを聞いて、彼はここまで全力で走ってきたのだと思う。

それなら何も言わずに早く会わせてあげた方が良い

 

「すまない・・」

 

ドルカスはそう言って、奥に走っていった。

 

『ありがとなマーク・・思わず斬るとこだったわ』

 

「ううん、これで攻める一手が揃ったからね!お礼に・・・ユーリお願い」

 

『リンへの言い訳はおまえのせいにするからな』

 

ドルカスが来たことで、ナタリーの守りはできた。

それによって、ユーリはここから離れることが出来る。

ユーリがリンに怒られることは確定事項となるため、あらかじめマークにそれを告げ、

ユーリは敵の少ない東口へと駆けていった。

 

 

「無理はしないでよ・・・ユーリ」

 

 

 

西口 ウィル

 

 

「古びた砦で良かったのか・・・悪いのかわからんな」

 

古びて穴が開いているからこそ、隙間から矢を放つことが出来る。

しかし、逆に古いからこそ壁を壊されそうになっていた。

 

「そらっ!!」

 

矢に限りがあるから、1矢1矢を確実に当てていくものの敵の数も多く、壁は壊されようとしていた。

 

 

 

東口 リン&フロリーナ

 

「リンあれ!!」

 

ペガサスでは砦内では動きにくいため、入り口から少し飛び出したところで戦っていたリンとフロリーナ。

そして、先ほど同様に指を指すフロリーナ。

 

そして、それを見るなり先ほどと同様に走り出したリン。

 

「待って、リン!!持ち場を離れたら・・・」

 

フロリーナのストップにも止まらずに、視線の先にいるここにいてはならない人を追いかける。

 

「あの馬鹿・・・・」

 

視線の先の人物。

包帯を外し、その手に納刀したままの剣を持って、敵へと駆けていったユーリだった。

 

 

 

『腕の負担を考えると、一撃で斬る』

 

この先も戦いは続いていく。

そのためにもここで傷を開かせるわけにもいかない。

そんなことなら戦うなという話ではあるのだが、おとなしくしていられる性格では無かったようだ。

 

神経を集中させて、指揮をしていると思われる人物だけを斬る。

 

「ーーーーーーーーー」

 

敵の声も耳に入らない。

この一撃で終わらせる!!

 

『ふっ!!』

 

駆けたまま剣に手をあて、一瞬で切り裂いた。

 

『く・・・・』

 

十分な手応えだった・・・

それは相手にも、自分の腕にもだった。

しかしそのことがばれれば敵の士気を上げる可能性もあったため、痛みを堪え平常心で近くの敵に剣を向ける。

 

「奴らは化け物か!! やろうども撤退だ」

 

『みんなも上手く耐えてくれたか・・・』

 

どこも突破できず、味方が減らされていき、更に指揮官も殺された賊には既に戦意は無かった。

 

『さて・・・もどっ!!』

 

敵は居なくなった・・・

なのに、背筋が冷たくなり、危険を予知させた。

 

「なんで、ここにいるのユーリ?」

 

ユーリにとっての最終ボスはリンだった。

 

『あの、いや・・・マークに頼まれて・・・』

 

「ふーん、そう・・後でお話ししなくちゃならないわね」

 

戦いの功労者であったユーリだが、雰囲気はどう見ても戦犯者だろう。

 

ユーリはリンによって首根っこを掴まれ連れて行かれた。

 

恐らくこの先が、ユーリとマークの辛い戦いとなるのだろう・・・

 

 

 

----

 

 

「ユーリ大丈夫かい?」

 

『正直さっきの戦いより辛かった・・・軍師様は?』

 

「献策を間違えた気がしてきたよ・・・」

 

1人の剣士と1人の軍師が砦の壁に寄りかかって顔を俯けていた。

先の戦闘でのユーリが行った敵指揮官への特攻。

作戦を成功させ、1人も大きな怪我をすることなく、勝利した。

しかし、そのユーリは戦い前から負傷しており、リンからも戦いを止められていた。

その結果が、今の2人の状況を作り出していた。

 

2人を叱りとばしたリンは他のみんなと楽しそうに話している。

そして夜は更けていく・・・

 

 

「まかせていい?」

 

完全に日も沈み、就寝の時間帯。

リン達女性陣が睡眠を取るには一つの不安要素があった。

いや、あったというよりは居たという方が正しいだろう。

 

「本当に大丈夫?」

 

この言葉に全員の視線が1人の人物に集まった。

その注目の的であるセインはそんな視線なんて気にすることも無く、堂々とした振る舞いを見せ

 

「勿論ですとも!!」

 

その様相からはどっちに対しての勿論なのかは判別がつかなかった。

 

「言っておくけど、夜中に忍び込んだらたたき斬るから、その覚悟をしておいてね」

 

「そ、そんな心配不要ですよ! 俺は誇り高い騎士ですよ?」

 

先ほどの堂々とした振る舞いとは一変し、挙動不審になるセイン。

明らかに動揺していた。

 

『(忍び込むつもりだったのか?)』

 

「ユーリ・・・手」

 

未だに壁に寄りかかっていた2人。

マークに言われて、自分の手を見ると゛何故か゛手に剣を手にしていた。

 

『いつの間に・・・』

 

「無意識で・・?」

 

ユーリは剣を下ろした。目線だけは鋭いままに・・・

 

「まぁ、良いわ。ユーリ見張りお願いね」

 

『それは冗談じゃなかったのか!?』

 

「ユーリだけずるいじゃないですか!!」

 

「信用の問題だろうねぇ・・・」

 

「セイン、お前は私と外の警戒に行くぞ」

 

そうして各持ち場?に散っていくのだった。

 

 

睡眠組---

 

「ねぇ、フロリーナ・・・お兄さんのこと聞いても良いかしら?」

 

「エリンお兄ちゃんのこと?」

 

フロリーナの兄を探すことを手伝うことにしたリン。

リンが聞いたのは見た目の特徴

蒼い髪に、同じ色の瞳で、槍を使うのに、腰に特徴的な刀を下げているということ。

 

「(特徴的な刀と言えばユーリのも珍しいものだったわね・・・でも、髪も瞳も全然違うわね)」

 

「エリンシアさんてどんな人なの?」

 

「お兄ちゃんは、誰とでも仲良く出来る人で人の輪の中心になる人だったんだ。私はそれが羨ましかったし、

憧れていたんだと思う・・・」

 

「・・・・・フロリーナ・・・」

 

『(気まずい・・・)』

 

2人のエリンシアについての会話が続いてるのを一切口を挟むことなく聞いているユーリ。

出来ることなら彼は今すぐにでもここを立ち去りたいだろう。

 

『・・・・れて無くて・・・良かったかな』

 

「ユーリなにか言った?」

 

『いや、明日もあるんだ、早めに寝ることだ』

 

ユーリは瞳を隠しながら早く寝るように促した。

その瞳は潤んでいたのかもしれない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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