ファイアーエムブレム~凍土の剣~   作:whiterain

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間章2 兄

間章1

 

 

戦闘が終わると、皆がユーリ達のところに集まってくる。

 

「ユーリ傷は大丈夫?」

 

『応急手当は済ませた・・・すぐに良くなるさ』

 

「リン・・・・この人は?」

 

フロリーナとリンたちが出会った時にユーリは出会っていない。

戦闘時もユーリは決着が着く前に後退していたためフロリーナには会っていない。

ウィルは先に戻ってきたためにマークの紹介を受けて挨拶を済ませている。

 

「彼はユーリって言って私たちの仲間よ」

 

『・・・・初めまして、ユーリです』

 

「あ・・・フロリーナです」

 

しーんと気まずい雰囲気が場に流れる。

 

その空気に耐えかねたリンがフロリーナに疑問に思っていたことを訪ねる。

 

「フロリーナはどうして追ってきたの?」

 

リンの親友とは言えど、わざわざリンを探して危険を冒してまで追ってきた理由。

それはユーリも気になっていた。

 

「イリア天馬騎士が、1人前になるための儀式を覚えてる?」

 

「どこかの傭兵団に所属して修行を積んでくるんだったわね?」

 

「うん・・・私も傭兵団を探す旅に出ることを、リンに話しておこうと思って

 それで、サカに行ったら、リンが見慣れない人と旅に出たって聞いたから・・・」

 

「リンのことが心配になった訳だ」

 

マークがフロリーナが追ってきたと思われる理由を口にすると、フロリーナは首を縦に振った。

 

「気持ちは有り難いけど、私はあなたの方が心配よ・・・傭兵団ていうのは普通、男ばかりなのよ?

 その中でフロリーナが1人で修行なんて無茶だわ」

 

確かに傭兵団は基本的に男ばかりだ。

例外がイリアの傭兵騎士団だ。

イリアは1年中、雪に覆われた大地であり、その地に住む人々は苦しい生活を余儀なくされている。

そのために、傭兵で金を稼ぎ故郷へ持ち帰る傭兵団が存在しており、男女問わず傭兵になる者が多いのだ。

 

しかし、イリア以外では傭兵以外にも職がある。

わざわざ傭兵になろうという女性も少ないのだろう。

 

「・・・天馬騎士になるのは小さい頃からの夢だったから、それに天馬騎士になっていろいろなところへ行けば、いつかエリンお兄ちゃんとファリナお姉ちゃん

 お姉ちゃんにもまた会えるんじゃないか?と思って必死で頑張れば、なんとかなるかと思ったんだけど・・・」

 

「フロリーナ・・・・」

 

目的が目的だけに諦めるという選択肢は選べなかった。

なんとしても行方不明な兄と、家出をした姉に会いたかった。

 

「諦める必要はありません!!俺に名案があります!」

 

ぐいっと前に出てきてフロリーナに詰め寄るセイン。

しかし、フロリーナに接近する前にユーリが近づけないようにしていた。

その後ろにいるフロリーナは男性恐怖症のはずなのに何気なくユーリの服を掴んで隠れていた。

そんなことを気にせず、セインは自分の考えを話続ける。

 

「あなたも、俺たちと一緒に旅をすれば良いのです!

 我らやウィルを加えて、今や立派な傭兵団ではないですか!!」

 

「お、俺も!?」

 

「いつの間に傭兵団になったんだか・・・」

 

気づけば傭兵団。

そのことに思わずため息を吐き、呆れる人もいた。

 

「このリンディス傭兵団で、ともに修行を積もうではありませんか!」

 

「リンディス?  ねぇ、リン・・傭兵団って?」

 

「詳しい話は、またにするわね。

 ちょっと強引な気もするけれど、一緒に来る?」

 

「リンと旅ができるの?本当に?なら私・・・すごく嬉しい!」

 

「やったー!!フロリーナさん! 俺はキアランの『そら!』ぐふ・・・・」

 

喜びからフロリーナに迫っていくセインを見逃せなかったユーリは足を引っかけた。

勢い着いて転んだセインは結構なダメージになっているようだ。

 

「傭兵団か・・・なんだか楽しくなってきたわねユーリ」

 

『ん?ああそうだな・・・・傭兵団か』

 

「ユーリ?」

 

小さくつぶやいた声はリンに聞こえていたのだろうか?

 

こうして2人の仲間が加わったのだった。

 

 

そしてその日の夜。

 

リンとフロリーナは久々に会ったということもあり、話がふくらんでいた。

そんな中、リンからの疑問だった。

 

フロリーナのお兄さんについてだ。

彼女の姉妹であるファリナ、フィオーラについてはリンも知っているし、会ったこともあった。

しかし、彼女の兄とは会ったことはないし、聞いたこともなかった。

フロリーナは表情を暗くしたが、リンには聞いてほしいと思った。

 

「エリンお兄ちゃん・・・本名はエリンシアって言うんだけど、イリアの傭兵騎士団に所属していたんだ・・・

 お兄ちゃんは強かったし、いつも傷をほとんどしないで帰ってきたんだ・・・

 でも、あるとき就いた任務でお兄ちゃんの部隊は・・・壊滅したんだ・・・」

 

「それって!!」

 

フロリーナはお兄さんは行方不明と言っていた。

しかし、今の話なら既に亡くなっているのではないか?

 

「後から・・・・派遣された部隊が確認したんだけど・・・・お兄ちゃんの死体だけ見つからなかったって・・・

 それに愛用・・・してた剣も見つからなかったから・・・・」

 

フロリーナの瞳には涙が浮かんでいた。

 

「大丈夫・・きっと、生きてるわよ!」

 

家族のもとにも故郷にも帰らないエリンシア。

死んでいると思われるのが普通だろう。

それでもフロリーナは死んだとは思っていないし、思いたくもない。

お兄ちゃんには一人前になればもう一度会えると信じて頑張っている。

 

それでも、あの日を思い出すと涙は止まらない・・・

 

「フロリーナ・・・お兄さんの特徴を教えてくれないかしら?・・・ 

 私もエリンシアさんを探すの手伝うわ」

 

「え・・・・」

 

「1人で探すより、2人。

 数は多い方が良いじゃない?」

 

「リン・・・・ありがとう」

 

 

またひとつ友情が深まった時だった。

 

 

 

一方、

ユーリは、マークと共に外を歩いていた。

 

『男と夜に散歩する趣味は無いんだがな』

 

ユーリは冗談交じりな顔でそう言った。

 

「はは、俺だって無いよ、でも聞きたいことがあったからね」

 

マークがユーリを連れ出したのは他の人には聞かせない方が良いことを聞く気だからと

配慮してのことだった。

 

『・・・・何が聞きたいんだ?』

 

ユーリも聞かれることは何となくわかっていた。

話すつもりは無いため、適当に誤魔化そう・・・そう考えていた。

 

「フロリーナを・・・知ってたよね?」

 

『・・・俺もイリア出身なんだ、知っていてもおかしくはないだろう』

 

「ただの知り合いで、あんなに取り乱すのかい?」

 

ユーリが先の戦闘で平常心を保って戦っていれば、誤魔化せたかもしれない。

フロリーナを見てからのユーリを見ればはただの知り合いだとは誰も信じないだろう。

 

『取り乱した訳じゃない・・ただの・・・・・頭痛だ』

 

苦しい言い訳だし、誰も信じないだろう。

 

「ふぅ・・・今はそういうことにしておこうかね・・・」

 

『それで、頼むわ』

 

「じゃあ、戻ろうか――」

 

マークが、Uターンして、ユーリの横を過ぎるときに耳元で呟き戻っていった。

 

『あいつは・・・何であんなに鋭いのか・・・いや、直感が優れてるからかな・・・・エリンか・・・』

 

 

ユーリもマークの後を追っていった。

 

 

 

 


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