ファイアーエムブレム~凍土の剣~   作:whiterain

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3章 異変

章 彼女と異変

 

ユーリは余計なこと言いかけたマークを無理矢理連れ出した。

そして、一目のつかないところへ行くとようやく掴んでいたマークの手を離した。

 

「あの剣は・・・」

 

『ち・・・・・お前の予想通りだろうさ』

 

「やっぱりイリアにあった剣だね」

 

『でも、なんでお前が知っているんだ?この剣は結構昔から俺が持っているから

 そんなに有名では無いと思うのだが?』

 

まだ少年だった頃に抜いた剣であり、決してマーニ・カティのようにその地域や国に伝わっているような名剣では無いはずだ。

そんな剣を知っている人がいるとは露程にも思っていなかった。

 

「昔、イリアに行ったときに話に聞いたことがあるんだよ。その時に聞いた物と特徴が酷似していたからね」

 

『なるほどな・・・マークこの剣のことは誰にも言わないでくれよ?』

 

言い方は優しく、目は真剣で脅すような目つきで頼む。

 

「構わないけど・・・どうしてさ?」

 

『この剣のことを知られたら、困る人がいるから・・・・かな』

 

何を感じ取ったのか、マークはそれ以上追求してこなかった。

しかし、このときマークに釘を刺したのは正解だった。

剣のことを知られたらユーリが困ることになる人との出会い・・・再会が近づいていたから・・・

 

 

 

 

リンたち一行はリキアを目指し西へ向かう。

サカとベルンの間のにあある山脈には、複数の山賊団が潜んでいる。

リンの敵であるタラビル山賊もだ。

どの山賊も強欲で残虐で

両国どちらにも被害は広がっている。

 

そしてリン達が立ち寄った村の集まり・・・

村と呼んでいいのか躊躇われるくらい荒れ果てていた。

壁が盛大に壊された家、そこら中にある瓦礫。

家畜の死体が転がって酷い臭いを発していた。

 

「そこら中、荒れ放題じゃないですか?ここの領主は何をやっているんだ?」

 

「・・・この山、タラビル山には領主たちでも手を出せない山賊が多く巣くっているの。

 山を挟んで、ちょうど反対側に私の住んでいた村がある・・・

 私の部族も夜襲をかけられ、生き残れたのは私も含めて10人にも満たなかった・・・

 血も涙もない奴ら・・・私は絶対許さない・・・」

 

「・・・・リンディス様」

 

「必ず戻ってくる・・・強くなって・・・みんなの仇をとってやる。 

 そのためには、なんだってするわ!」

 

『・・・・・』

 

激しい憎悪を宿した瞳。

ユーリは鏡を見たら自分も同じような瞳をしているのだろうか?

本当なら、復讐など勧められたものではない。

頭でそう思っても、そうは思えないのが心だ。

そしてユーリが同じことを考えている以上何も言えなかった

 

「その時は・・・俺も連れて行ってください」

 

「私も、お忘れなきよう」

 

「俺も一緒にいくよ」

 

「セイン・・・ケント、マークも・・」

 

復讐に協力すると言った3人。

 

『・・・・俺も一緒にいくさ』

 

「ユーリまで・・・・ありがとう」

 

村に入っていくと、何かもめているような声が聞こえた。

 

『何か騒ぎが起きているようだな・・・!!』

 

騒ぎが起きているほうを見ると目に入ったのはペガサスだった。

ペガサスはイリアにしか生息しておらず、そんなペガサスがいるということは、

高確率でイリアの人だ。

 

「・・・あれはペガサス?まさか・・・!!」

 

ペガサスを目にするとリンは顔色を変えて、走っていった。

 

リンの走っていった方へ皆が追いかけるなか、1人その場に着く直前で足を止めたものがいた。

 

『・・・なぜ・・・こんなところにいるんだ・・?』

 

「ユーリ?」

 

走るマークの呼びかけにも全く反応せず、ユーリの視線は一点を見つめたいた。

リンが走っていった方、ペガサスの側にいる色の明るい紫の髪を持つ少女だけを見ていた。

 

『(なぜこんなところにいるんだ・・・リーナ・・・)』

 

ユーリは誰が見ても不自然な様だった。

 

 

 

そうして、ユーリが戸惑いを隠せずにいたときリンは騒動の場所に着いていた。

 

「フロリーナ!あなた、こんなところでどうしたの?」

 

騒動の中心にいた少女は、リンの知己であるフロリーナという少女だった。

近くには柄の悪い男が2人いる。

 

「リン! 本当にリン? 私、私・・・・・」

 

フロリーナはリンに会えた安心からか、涙を流していた。

本当に怖かったのだろう、フロリーナは震えていた。

 

「ほら、泣かないの」

 

そこに、ユーリを除くメンバーが追いついてきた。

 

「お知り合いですか?」

 

リン以外には彼女のことを知っている者はいない。

 

 

「わたしの友達よ、イリアの天馬騎士見習いのフロリーナ。

 フロリーナ、何があったのか私に話してちょうだい」

 

フロリーナは少し躊躇いがちに、小さな声で話し始めた。

 

「・・・あの、ね。 私、リンが旅に出たって聞いたから・・・

 追いかけてきたの。それでこの村が見えたから・・・リンのことを聞こうと

 下に降りたら・・・」

 

「ペガサスで踏んづけたわけか・・」

 

マークは状況からそう予測した。

そして、フロリーナはマークのつぶやきに頷いた。

そして、それまで黙っていた男が声を出した。

 

「ほら、聞いたろ! 悪いのはその女なんだよ!!

 兄貴を踏みつけた落とし前をつけてもらわねぇといけないんだよ!!」

 

「ちゃんと謝った?フロリーナ」

 

「ごめんなさいって、何度も言ったけど、その人達は許してくれなくて」

 

一度、泣きやんだフロリーナの瞳に再び、涙が滲んできた。

 

「ちゃんと、謝ったんだから、それで良いじゃない。

 見たところ怪我もないんだし、もう許してあげて」

 

リンは、許すよう男達に言うが・・・

そんなことで許してくれるようなら話はここまで続いていなかっただろう

 

「そういうわけにはいかねぇな。力ずくでも、その女はもらうぞ

 おい、みんな出てこい!!女は傷つけるな!野郎は殺っちまえ」

 

男が周りに大声で呼びかけると村の至る所から男の仲間が出てきた。

 

 

「応戦するしかないわね・・・ユーリ・・・ユーリ?」

 

リンがユーリを呼びかけるが彼は近くにいない。

 

「ユーリなら・・・あそこだよ」

 

先ほど立ち止まった場所から、動いていないユーリ。

リンはユーリに近づき、呼びかけた。

 

「ユーリ・・・・ユーリ!!」

 

『・・・・・あぁ、リンか』

 

虚空を見つめていたユーリが、リンに揺さぶられたことでようやく我にかえった。

それでも、まだ戸惑いは隠せずにいた。

 

ユーリは心を押し殺して、周りを見て

状況を把握すると、剣を抜き取り、軍師である、マークの方を向いた。

 

『戦いか・・・マーク指示は』

 

「ユーリ大丈夫なの?」

 

先ほどの明らかにいつもと違うユーリの姿にリンは心配していた。

ここまで、彼がここまで心を乱すことはなかった。

 

「(彼女は・・・・)」

 

マークだけは、ユーリの出身がイリアだと知っているマークだけは

彼女がユーリに関係してる人であり、ユーリが心を乱している

原因だと考えていた。

 

 

『(心を殺せ・・・・平常心だ)』

 

戦いが始まってもユーリの心は揺らいだままだった。

いつも通りに戦えていない。

太刀筋も乱れており、反応も遅れている。

ユーリの戦いを見てきたリンやマークにはそれがわかった。

 

「ユーリ!!矢よ!!!」

 

リンはいち早く敵のアーチャーが放った矢に気づいた。

 

普段のユーリなら気づいていただろうし、避けられただろう。

 

しかし、今のユーリでは・・・・

 

『グゥ・・・・・』

 

カランという音がした。

 

矢はユーリの身体に当たった・・・・・

 

急所は避けているものの、運悪く当たったのはユーリの利き腕・・・

 

カランという音はユーリが倭刀を落とした音だった。

 

「ユーリ!!!」

 

「ユーリ殿お下がりを!」

 

近くにいたケントに援護され、リンに連れられ後退する。

 

『(俺もまだまだってことか・・・)』

 

幸か不幸か矢に射られたことで、ユーリはいつも通りといかないまでも冷静になれた。

 

「ユーリ大丈夫?」

 

『ああ・・・止血して無理しなければすぐ直るだろう・・・・だが・』

 

この戦闘では戦えない・・・

 

「大丈夫だよ、力を貸してくれる人もいるから」

 

マークが指した方を見ると、1人のアーチャーが自分たちが戦っていた相手と戦っていた。

 

「マーク、彼は?」

 

「彼は、ウィルって言って、そこの村にやっかいになっていたらしく

 その恩返しのために一緒に山賊を追い払うのに力を貸してくれるって」

 

『そうか・・・・、リン、俺は大丈夫だから戦ってこい』

 

負傷したユーリと、マーク

戦えない2人を置いていくのは不安なリンは彼らの側に残っていた。

 

「2人とも戦えないじゃない!!心配で置いていけないわ」

 

『心配してくれるのは嬉しいが、いざとなれば、こっちの腕でも戦える。それにフロリーナやセインもがんばってるんだ

 早めに決着つけてこい』

 

矢を受けた方と逆の腕を上げて、大丈夫だとアピールする。

 

「・・・・わかったわ」

 

戦いが終わればちゃんとユーリの治療ができる。

そう考えたリンは皆が戦っている場所へ向かって行った。

 

「ユーリ、そっちの腕で戦えるの?」

 

マークのその顔には呆れが浮かんでいた

 

『はは・・・・戦えねーよ・・・悪いな、黙っててもらって』

 

「これで、戦えない2人しかいないわけだ」

 

『敵が来たら、大変だな』

 

いざとなったら、無理矢理でも腕を動かす・・・

そう考えていたが、リン達の奮闘により山賊達は追い払われた。

 

「(なぜ、その場にいなかったユーリがフロリーナの名前を知っていたのか・・・)」

 

リンが気づかなくても、違和感に気づく人はいたのだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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