ファイアーエムブレム~凍土の剣~   作:whiterain

36 / 40
戦闘が無いシーンは楽で良いけど、書くと悩み出す・・・





間章8 リンの悩み

ユーリ達が村にてファリナの回復を待っている頃、そしてエリウッドが旅を始めた頃のキアラン。

 

「はぁ・・・」

 

1人の公女が中庭でため息を吐いていた。

 

「何なのかしら、この気持ち・・・

 前はこんなこと無かったのに」

 

フロリーナの兄の情報を掴もうにも、キアランで出来ることが限られている。

じゃあ、キアランから出て調べようにも公女という立場が邪魔をして、そう簡単に出来ない。

 

そのため、しばらくキアラン城でおじいさんと共に過ごしてきたのだが、リンは不可解な気持ちに苛まれていた。

 

「何で、お爺さまにも巡り会えた

 仲間にも囲まれているのにこんな気持ちになるのかしら」

 

リンは、自分でも何故か分かっていないが寂しいという気持ちが心を支配していた。

 

リンの周りには、リンの祖父ハウゼンに、昔からの友達のフロリーナ、そして、共に旅をしてきたケント、セイン、ウィルといった

仲間達がいる。

リンにとってもかけがえのない人たちだ、そんな大切な人たちに囲まれているのにどうしてこんな気持ちを感じるのか。

 

それを、考えてもわからず再び何度目になるか分からないため息をつく。

 

「どう思うウィル?」

 

「いや、何とも言えないっすね」

 

「お前らは何をしているんだ」

 

そのリンの様子を隠れて見ている男たち(バカ2人+真面目1人)がいた。

 

「相棒はあの、リンディス様を見てどう思うんだ!」

 

「確かに何かにお悩みに慣れているご様子・・・

 出来ることなら、解消したいものだが」

 

「だろ?あれは間違いなく恋の悩みだ!」

 

セインはリンの様子を見て、そう断言する。

 

「でも、セイン何でそんな自信満々に言えるんだ?」

 

「何を言って居るんだウィル

 あのご様子は、俺が麗しき女性のことを考えている時にそっくりだ」

 

「「・・・・・・」

 

何を言っているんだろうとこの時ばかりはウィルでさえ思っていた。

 

「お前は、何を言っているんだ・・・」

 

「俺、仮にリンディス様が恋煩いしていたとしても、セインと同じってのは

 リンディス様に失礼だと思う」

 

リンが恋をしているかは別として、少なくとも、セインの場合はただ、だらしなく悩んでいるようにしか見えないだろう。

 

「何を言う! リンディス様だって年頃の女性

 恋する人の1人や2人、10人だって」

 

「いや、そんなに居るのはお前だけだ」

 

セインの阿呆な人数にケントは冷静に突っ込みを入れるが、ウィルは一部分だけは納得していた。

 

「リンディス様もそういう年だもんな」

 

ウィル達もリンもそういう年頃で、好きな人がいたとしても何もおかしくない。

むしろ、恋に敏感な時と言ってもいいかもしれない。

 

「しかし、それが悩みだったとしたら我らには・・・」

 

「何を言っているんだ!今こそ俺らがそれを察してあげないでどうする?」

 

「といっても・・・リンディス様の好きな人がわからないんじゃどうしようも無くないか?」

 

ウィルの言うとおり、リンの好きな人もわからず、この問題は解決することはない。

そして、この時点でリンの悩みが恋煩いに決めつけられているのだが・・・今は置いておこう。

 

「普段のリンディス様から予想してみよう」

 

パターン1 セイン

 

「いや、無いだろ?」

 

「無いな」

 

2人にバッサリと切られる。

 

「何でだよ!一番の可能性だろう!?」

 

「はっ」

 

「・・・」

 

ウィルには鼻で笑われ、ケントには無言を貫かれた。

 

普段の行いを考えても、いや考えなくでも想像が着くから飛ばして良いだろう。

 

「なら、ウィルはどうなんだ?」

 

「うーん、最近のリンディス様と・・・」

 

 

 

パターン2 ウィル

 

 

 

「ウィルは家族と連絡取っているの?」

 

「あぁ・・・何と言いますか・・・」

 

リンは家族というものに、人一倍敏感だ。

それが、わかっているからこそウィルも迂闊に答えられない。

 

「どうしたの?」

 

リンの早く、答えなさいよという圧力がビンビンとウィルに伝わってくる。

 

「いやぁ、連絡取ってないと言うか・・・もう、ずっと帰って無いどころか旅立ってから連絡取ってないというか・・・」

 

「ウィル?」

 

「あはは・・リンディス様?」

 

「ウィル?」

 

ウィルが覚えているのは、ここまでだった。

最後に記憶に残っているのはリンの素晴らしい笑顔だった。

 

 

 

「そんな、感じ」

 

「お前・・・」

 

「これは無いな」

 

今度はセインがウィルのことを哀れんだ目で見ていた。

ケントは、こんなときも真面目に分析し、ウィルを候補から除外していた。

 

 

「次は相棒か・・・」

 

「私にそのような心当たりは無い」

 

リンディス様の臣下として、あふれ出る忠誠心を見せてきた。

それこそ、周りから騎士の鏡と言われるくらいだ。

 

「となると、今は居ない人物か・・・」

 

「いや、我らが知らないだけという可能性もあるのではないか?」

 

居ない人物となると、3人に浮かぶのは、ユーリ、マーク、ラス、マシュー、エルクが有力となる。

ドルカス、ワレス、ニルスは年齢等々から省かれている。

 

ルセアは男性っぽく無いので別枠になる。

 

知らない人物となってしまってはもう分かるはずがない。

 

「いや、やっぱり俺って選択肢が一番・・・」

 

「「だから無い」」

 

ただ、2人にはセインの自信だけは羨ましく感じることもある・・・

 

「でも可能性的に高いのはユーリじゃないか?」

 

ウィルから見たとき、一番リンに距離が近かったのはユーリだと思っている。

リンに距離が近かったのはユーリとマークの2人。

 

同じサカの民ということでラスという選択肢も無くは無いが、リンとそんな関係には見えなかった。

 

「マークは一歩離れたところに居るイメージだもんな」

 

「ユーリ殿も怒られているイメージしか無いが?」

 

「でも、その分打ち解けていると思う」

 

リンには怒られているが、その分リンも本音を出している。

 

これは最も、確率の高い可能性かも知れない

 

 

「あの・・・何を・・しているんですか?」

 

 

話しで盛り上がる3人に話しかけてきたのはフロリーナだった。

彼女から声をかけてくるのは珍しい。

 

そんな彼女が男性が苦手なのに無理してでも話しかけてきたのは

 

「とても・・・怪しいです」

 

この男達が草陰に隠れてリンを眺めつつ笑ったり、揉めたりしていれば怪しいことこの上ない。

いや、もう変態の所業に見えるかも知れない。

 

「いや・・そのこれは」

 

「ちょっと待って!説明させて」

 

ケントはしどろもどろに慌てて、ウィルがどうにか説明しようとした。

 

 

 

ウィル事情説明中

 

 

「リンディス様が・・・ですか?」

 

「はい!フロリーナさんはどう思いますか?」

 

セインはフロリーナに迫りつつ、聞く。

 

「あの・・・ご本人に聞いてみたら良いのではないでしょうか?」

 

そのセインから距離を取りつつ、質問に返す。

フロリーナとしても、リンが悩んでいるのなら解決あげたい。

 

でも、リンが恋している相手・・・

 

「私聞いてきます!」

 

親友が恋している相手、心当たりは無いけれど親友としてどうにかしてあげたいし、とても気になる。

フロリーナはセインを交わしンディスの元へ向かおうとした。

 

「リンディス様は?」

 

「あれ?」

 

セインがフロリーナに迫り、フロリーナが距離を取り、隠れていた場所から離れていた。

その様子を見ていたウィルとケントもリンが居なくなったことに気づいていなかった。

 

「手分けして探そう」

 

「リンディス様の悩みは私が解決します!」

 

4人はそれぞれ、別れてリンを探しに向かう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

リンは丘の上で、サカの方向を見ていた。

 

「草原が恋しいのかしら・・・」

 

「リンディス様・・・やっと見つけた」

 

「フロリーナどうしたの?」

 

リンが後ろを振り返ると、そこにフロリーナが居た。

走ってきたのか彼女は、うっすらと汗が出ている。

 

「リンディス様、悩みがあるの?」

 

フロリーナはは走ってきた勢いのままリンに質問をぶつけた。

 

「えっ?いきなりどうしたの?」

 

悩んでいないかと言えば、悩んでいるが、唐突に聞かれれば戸惑うものがある。

 

「やっぱり悩んでる」

 

「悩み事が無いわけじゃないけど・・・」

 

「・・・・・ユーリさんが好きなの!?」

 

「はい!?」

 

フロリーナの中で走っている間に色々とごっちゃになっていた。

 

3人は会話を余すことなくフロリーナに伝えた。

それを一気に聞いたフロリーナは走っている間に

 

リンが悩んでいる→リンが恋に悩んでいる→リンがユーリが好きで悩んでいる

 

女の子の想像は大きく膨らんでいくものである。

 

「一体何の事よ?」

 

「だって、リンディス様が恋の悩みで悩んでるって」

 

「別に恋で悩んでいるわけじゃないわよ」

 

「でも、リンディス様も女の子ですし、そういう悩みだってあるって」

 

いつもより、はっきりとぐいぐい迫ってくるフロリーナにリンも焦っていた。

 

「そんなことないわよ!」

 

リンはフロリーナの勢いから何とも言えない恐怖心を抱き、走って逃げる。

 

「あっ、待ってリン!」

 

フロリーナの場合は主の悩みを解決したい気持ちより、親友の恋を応援したい気持ちと好奇心が上回っていたのかも知れない。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

城に戻り、リンは城内を歩いていた。

 

「さっきのフロリーナ何だったのかしら」

 

気になるのはさっきのフロリーナの様子。

 

私がユーリを好き?

 

勿論嫌いじゃない・・でもそう言うのでもない気がする。

 

それに、悩んでいる様子に見えたのは私の失態だけど、どこからあんな話しが出てきたのかしら?

恋愛関連で考えそうな人と言えば、1人緑色の騎士がリンの頭に浮かぶ。

 

勿論、正解であるのだが・・・

 

「リンディスどうしたんじゃ?」

 

「おじいさま」

 

リンがおじいさんであるハウゼンと再会したときはベッドから動くことも出来ないくらい弱っていたが、

リン達の手厚い看病もあり、今では歩けるくらいまでは回復していた。

 

「何か悩んでいるように見える」

 

ハウゼンの目にもリンは悩んでいるように写った。

いや、リンの家族だからこそ良く気になったのだろう。

 

「実は・・・」

 

リンはハウゼンに自分の悩みについて話した。

 

「ふむ・・・リンディス草原が恋しく思うか?」

 

リンはコクリと頷く。

 

「今の生活もとても楽しいけど、草原で暮らす感覚を懐かしく思うことはあるわ」

 

ハウゼンもそれに頷き、質問を続ける。

 

「じゃあ、いつ頃から感じるようになったか覚えておるか?」

 

「それは・・・」

 

この感覚を覚えるようになったのは、ユーリとマークが旅立って少ししたくらいからだろうか。

 

「ふむ・・・リンディスにはまだ慣れておらぬようじゃな」

 

ハウゼンは笑いながら、リンにそう告げる。

 

「どういうことですか?」

 

「わしらは貴族という立場にある

 どんなに距離を近づこうと、信頼があろうと

 いざ、その地域に入れば、上に立つ者じゃ」

 

「上の者・・・」

 

「わしの推測じゃが、リンディスが寂しいと思うのはそこに心の距離を感じるからであろう

 ユーリくん達もいなくなり、旅の仲間はキアラン家中の者だけになってしまったからな」

 

そう言われれば、そうなのかもしれ無い。

リンはキアラン公女であり、ここにいる仲間のみんなはキアランに仕える人たちだ。

 

リンは自分が様付けで呼ばれることが未だに好きじゃない。

 

それが、自分とみんなの距離が離れていると思い、寂しいと感じる。

 

ユーリ達はリンがキアランに入った後も態度を変えることは無かった。

あくまでも、自分が知り合ったのはサカの草原で暮らしていたロルカ族のリンだと。

 

「こればっかりは、慣れるしかない」

 

「おじいさま・・」

 

「それとも、ユーリ君を捕まえてみるか?」

 

「な、何でユーリを?」

 

「リンディスがあれほど、楽しそうに話してくれたではないか」

 

ベッドで伏せていたハウゼンにリンは楽しそうに話してくれた。

 

旅のこと、草原のこと、仲間のこと

 

多く、話したが、その中でもユーリの登場回数は両親に次いで多かった。

 

「だからって・・・」

 

「まだ、自覚は無いかの」

 

ハウゼンは小さく呟き、

 

「良く悩み、考えてみなさい」

 

自分の部屋に向けてハウゼンは去っていった。

 

「おじいさままで・・・」

 

リンは自分の腕に着いたブレスレットを見る。

 

「でも、ユーリ何してるのかしら・・・また会いたいわね」

 

 

この寂しく感じる感情を、どうするのか?

結局、答えがわかっても解決に悩むリンだった

 

 

だが、不幸ながらも解決に近づく動乱と嬉しい再会は近くまで迫ってきているのだった。

 




これを書いておかないと、

そろそろヒロインはカアラじゃない?と言われそう・・・

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。