ファイアーエムブレム~凍土の剣~   作:whiterain

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実質、11章ですね

追記6月5日
日付間違えてました
日曜2時更新の決めが・・・


22章 動向

村に戻るまでにもう一度襲われるかとも思ったが、それは杞憂に終わった。

 

偽剣魔のことはファリナが倒したことになり、村長宅にて休養を取ることになる。

 

「良いのか?本当のことを言わなくて?」

 

『別に言う必要も無いだろ?』

 

特に何かを求めて向かった訳じゃない。

怪我をしたことに思うことはあるが、命の危険があった訳じゃないのが救いだった。

 

『それに、俺たちが倒したことにしたら彼女の貰った報酬でまた村が揉めるだろう?』

 

ユーリ達が倒したことが知れれば、元々反発していた者達が何を言い出すか分からない。

戦い、殺した訳でもない奴に何故村の金を渡さなければならないのかと反発するだろう。

 

「お優しいな」

 

『さて、どうだろうな』

 

 

「これからどうする?」

 

カアラが聞いているのは心配なら様子を見て、旅立つかと言うこと

 

『信用してないわけじゃないと言うと嘘になるからな』

 

もう、問題の種が解決した以上、ファリナが被害を受けることは無いとは思うが

それを信じ切ることは出来ない。

 

もう少し様子を見て、大丈夫だと判断できるところまでは居ようと思っていた。

 

「まぁ、彼女の傷も細かい傷は多いが、致命傷になるような傷は負っていない

 1月もせずに完治するとは思う」

 

『そうか・・・』

 

傭兵をやっている以上、傷は避けられる物では無いため、仕方ないと言えば仕方ないのだが

女の子に傷を多く残してしまったことは、悲しくなる。

 

考えれば、考えるほど、深い闇に嵌ってしまう。

 

『カアラの剣はどうするんだ?』

 

なら、違うことに意識を変えるしかないと、自分が気になっていたことへ話題を転換する。

あの戦いで、カアラの剣も限界を迎えているはずだ。

 

「あぁ、その問題は既に解決した」

 

『うわ、マジかよ』

 

カアラが手にとって見せたのは倭刀

それも、直前までカアラが使っていた物ではなく、どう見てもまだ新しい物だ。

 

「運が良かったとしか言えないな」

 

『それ、どこで手に入れたんだ?』

 

村に帰って来たときは持っていなかった。

この村に武器屋らしきものが無いから、誰かに譲って貰ったと考えるのが妥当

 

「私の剣を見た村長が、しまっていたこの剣をくれたんだ」

 

『へぇ、運が良いとしか言えないな』

 

倭刀は、刀身の細さ、斬れやすいが刃こぼれもしやすい剣ということから扱いも難しいこと

何より、東方から伝わってきたため作れる人が少ないということからそんな多く流通している剣じゃない

 

ユーリだって倭刀が折れた今こそ銀の剣を使っているが、手にはいるのであれば倭刀を使いたいと思っている。

 

「これでしばらくは武器の心配がない」

 

『武器が全然手に入らなくて木の棒で戦うとかあるもんな』

 

「・・・・」

 

『・・・どうした?』

 

「いや・・・さすがにそれは無いだろう?」

 

『え?』

 

ユーリが旅をし出してから武器が壊れたことは何回もある。

しかし、毎度のごとくそんな時ばかり手に入らず、気づけば木の棒で殴打する戦い方さえ覚えてしまった。

 

『いやいや、予備持ってなかったらそうならない?』

 

「普通に、買うとか、何かあるのではないか?」

 

『・・・・この話しやめよう』

 

きっと、木の棒で戦うのはごく少数の人間だけなんだ。

自分はそっちの人間でカアラは違う人間。

 

それで、納得するしかない。

 

「ユーリ・・・」

 

だから、カアラの哀れむような視線は気にならない・・・

 

『こ、このまま、ある程度様子を見て行くならキアランに着くのに結構かかりそうだな』

 

無理矢理話しを変えるのは逃げの一手じゃないんだ。

 

「ユーリが心配だからだろう?」

 

『まぁ・・な』

 

「ふむ・・・私は彼女の様子を見てれば良いのか?」

 

『頼む』

 

起きたときに一緒に居るのは、見たことも無い男よりは見たことのない女の方が感触は良いだろう。

 

カアラが部屋を出て行き、ユーリは椅子に座りリキアの方を見つめ、呟く

 

『さて、リキアにいるみんなは今頃何をしているのだろうか』

 

こんな期間で大きく変わるわけ無いかと思いつつ、ふとそう考えていた。

 

 

 

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「マークさんもすっかり元気になりましたね」

 

「本当、ごめんね」

 

マークはフェレ領にて行き倒れた後、村長の娘レベッカに助けられそのまま村に滞在していた。

只の行き倒れであり、親切に食事をいただいたため、回復は早かったが、恩も返さずそのままと言うのも嫌だったため

村の仕事を手伝いながら暮らしていた。

 

「(といっても、頭を使うこと以外は苦手だからなぁ)」

 

狩りの帰りに、自分の腕前を改めてそう思う。

それに比べてレベッカの弓の腕前は大した物だと思う。

 

毎日狩りをしているのは伊達じゃないのだろう。

 

「良いんですよ、マークさんが来て楽しいですから」

 

レベッカは本当に良い娘だと思う。

こんな娘を娘に持つ村長が羨ましいと思うのはこの年齢にしたらちょっとなぁと思ってしまう。

 

「ん?」

 

何か良くないものが来る、マークの軍師の勘とも言う、第六感が予感した。

 

「レベッカ、村の方に何か近づいて来てない?」

 

「えっ?」

 

マークに言われ、レベッカが目を凝らすと柄の悪い男達が複数近づいてきていた。

 

「マークさん、山賊です!!」

 

「早く、村長さん達に伝えて、どこかに逃げて!」

 

そこで、マークは考え直す。

かえって、逃げた方が危ないだろうか?

 

ベストなのは逃げてフェレ騎士に助けを求めることだが、今のフェレに騎士を派遣できるだけの戦力があるのか?

 

そもそも、この山賊達もフェレが本来の状態だったら村を襲うなんて暴挙には出なかっただろう。

それが、何故襲ってきたのか?

 

それは、間違いなく、名君として慕われていたフェレ侯爵エルバートが配下の騎士達と共に謎の失踪を遂げたからだろう。

 

一月たったいま、エルバート侯爵の命は無いのではないかと噂されていた。

 

だからこそ、山賊達が強気に攻めて来たのだろう。

 

「いや、逃げては状況が掴めなくなる

 レベッカ、村のみんなを村長宅に集めて籠城体勢を作るんだ」

 

「マークさんは!?」

 

「ちょっと、助けを呼んでくる」

 

フェレ領にそんな戦力が残っているのかは分からない。

でも、ここはあのエリウッドが居る地。

 

彼が、自分の領民を見捨てるとは思えない。

 

とりあえず、急がなければと村の入り口を避けるように走り出す。

 

「これは!」

 

「うん?」

 

少し、走ったところで声が聞こえ、聞こえた方を見れば、緑色の髪をした真面目そうな騎士風の男がいた。

 

「俺はロウエンという者ですが、これは!」

 

「見れば分かるだろ!山賊の襲撃だって

 そんなことより貴方はフェレの騎士ですか?」

 

「マークさん!」

 

今度は自分の走った方向からレベッカが走ってきていた。

 

「レベッカどうして?」

 

「マークさんだけじゃ、心配で!」

 

そういうレベッカの背には矢筒が背負われ、手には弓が握られていた。

 

「正確には、従騎士というものになるのですが

 いえ、今はそんなことを言っている場合ではありません!

 すぐにエリウッド様達に伝えなければ!」

 

「エリウッド? エリウッドが来ているの?

 なら、僕も連れて行ってくれ!」

 

状況説明と、自分が軍師であることを伝え、手伝えるはずだとロウエンに伝える。

 

「私も一緒に行きます!」

 

「今更、村に戻った方が危険・・・か」

 

もう、村には山賊は突入しただろう。

なら、いまこんなことをしている時間すら勿体ない。

 

「ロウエンさん、時間を無駄にしたくない早く」

 

「わかりました! 皆さん俺の後ろに着いてきてください」

 

「はい!」

 

レベッカと2人、ロウエンの後を追い走る。

 

しばらく、走れば2人の人影が見えた。

 

 

「エ、エリウッド様!マーカス将軍!」

 

「ロウエン! 何をそんなに慌てておるか!」

 

マーカスと呼ばれた老騎士は、慌てて駆けてきたロウエンを叱責する。

 

「騎士たるもの、いついかなる時も落ち着きを持てと・・・」

 

「村に山賊が現れました!!」

 

ロウエンはマーカスの叱責を途切り、告げる。

 

「なんじゃと!?」

 

「それは本当かいロウエン?」

 

叱責していたマーカスもその事実に叱責している場合では無いと気持ちを切り替える。

エリウッドも自分の領地で山賊が村を襲っているということは見過ごすわけにはいかない。

 

「割り込み失礼

 事情は僕から話させていただきます」

 

「君は、マークかい?」

 

「お久しぶりです、エリウッド様」

 

さすがに、フェレの公子に口うるさそうな騎士の前で呼び捨てには出来ないだろう。

だが、エリウッドも今の状態ではそんなことを気にしている暇はない。

 

「といっても、そんなに複雑な理由はありません。

 いま、流れている噂は良く知っていらっしゃると思います」

 

「それは・・・」

 

エリウッドは口ごもる。

自分の領地で山賊が出た理由が分かってしまった。

 

「それをいま、話しても仕方ないでしょう・・

 どうか、お力をお貸しいただけませんか?」

 

「私からもお願いします!私たちの村を助けてください」

 

「わかった・・・マーカス、ロウエン、村を救うぞ!」

 

エリウッドは手にレイピアを持つと、マーカス・ロウエンに声をかけ戦う準備を促した。

 

「いま、山賊達は僕たちを追いかけて人数が分散しています

 この隙に、各個撃破していくのが良いかと」

 

「なるほど・・・ではそれで行こう

 君はどこかに・・」

 

エリウッドはレベッカの方を見て言う。

しかし、レベッカは手に持っていた弓を見せ

 

「お邪魔で無ければ、私も戦わせてください

狩りで鍛えているので、弓には自信があります」

 

「無理はしないように」

 

エリウッドは彼女の瞳を見ると、真剣さが伝わったのか短く返す。

 

「村の人間に危害を加えられる前に素早く村を取り戻す!」

 

エリウッドの声を合図に、走ってきた方向へ走り出す。

 

こうして、エリウッド達の旅は始まった。

 




エリウッド達も旅に出ました

さて、わかる人なら合流の場所もわかる気がします。

2人が合流するまでは、エリウッド達の動向はダイジェストっぽくなりそうです。

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