ファイアーエムブレム~凍土の剣~   作:whiterain

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ゲーム風に章を合わせてましたけど、もう関係ないですね(汗)


19章 天馬

剣魔と呼ばれる男が潜伏していると言われる場所に1人の天馬騎士が近づいていた。

 

「さーて、[凄腕]の私がちゃちゃっと倒して報酬をもらって帰りましょ!」

 

天馬騎士ファリナはそう言うとペガサスを降下させた。

 

「にしても、あいつら態度悪かったわね・・・・

 まぁ、結構良い額の報酬だから、そんなことで目くじらたてる気も無いけど」

 

依頼を受けたとき、村長は懇願するように依頼してきた。

しかし、それは村の総意とは言えず若い人々からは煙だがられていた。

 

イリアの傭兵が煙だがられるのは珍しいことではない。

いや、イリアの傭兵に限った事ではない、傭兵と言われる存在のほとんどはあまり良い扱いを

受けてはいないだろう。

 

そう考えると今回の村人たちの態度も珍しいことではないのだが、やはり慣れていても腹立たしいことには

変わりなかった。

 

「さて、どこにいるのかな・・・」

 

村の近くの森

そこに奴らは潜んでいるとの話だ。

 

悪い奴らは森や林、山、など人に目立たない場所を好むのは何故なのか?

自分で、そういう自覚があるから見つからないところに姿を隠すのだろうか。

 

ファリナは森の木より少し上の位置から旋回を続け、今回のターゲットを探した。

 

「なかなか見つからないわね」

 

ファリナはこの位置では見づらいともう少し、高度を下げ、木々の間を凝らし、見つめる。

 

見つめていると、光る細い物体が見つめていた地上から飛んできた。

 

「矢!!」

 

ファリナは飛んできた光る物体が太陽の光に反射した矢だと気づいた瞬間に手綱を操り、矢を回避しようとした。

 

ファリナはターゲットを探す過程で、高度を下げてしまっていた。

下げる前の位置なら、ファリナは問題なく避けていただろう。

自称とは言え、凄腕と言うだけはあり、それくらいの腕前はあった。

 

「くっ!」

 

それでも、かなりの近距離で放たれた矢。

矢自体を避けることには成功したが、無理に避けたことからファリナは体勢を崩しペガサスから落ちてしまった。

 

そのまま、木の枝に引っかかりつつ、地面まで落ちていった。

 

「痛たた・・・・この私が落とされるなんて

 マーフィは無事かしら・・」

 

「さて、お嬢さんは何しにいらしたのでしょうか?」

 

そこでは落ちたファリナを囲うように男たちが配置されていた。

 

「あんた達を倒しに来たのよ」

 

「なるほど・・・しかし、貴女で剣魔と呼ばれる私を倒せますかね」

 

男は笑いを隠すように顔を覆い、そう言った。

 

 

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ユーリは村を飛び出し、剣魔の潜む森・・・ファリナが向かったとされる場所へ向かって走っていった。

カアラもユーリに追従するようにスピードを上げる。

 

ユーリはファリナのために

カアラが飛び出したのはユーリを追いかけてだが、今もスピードを上げ走っているのは彼女自身の想いも合わさっていた。

それは剣魔と名乗る男の存在を確かめること。

 

「ユーリ、森のどの辺りか分かるのか?」

 

『分からんが・・・・あいつはペガサスに乗ってるから上空を飛んで探すと思う・・・

 だから、それを見つけられれば』

 

「つまり、その天馬騎士が見つける前に私たちが見つけないと大変ということか」

 

ファリナを追って道を急ぎつつ思うことがある。

違うとは思っているが仮にもし、剣魔がカアラの兄だったら斬れるだろうか?

いや、ファリナの危機となればユーリは迷わずに、カアラが何と言おうとユーリは相手を斬るだろう。

 

そう言う意味でも、緊急事態になる前にファリナに合流または直ぐに駆けつけられる位置まで近づきたかった。

 

「ユーリ!! あれ!」

 

『見つけた!!』

 

微かに視認できる程度だが、ユーリ達は上空を旋回しているファリナを見つけた。

まだ、ターゲットを見つけていないことに安堵した。

 

「まだ、発見できていないみたいだな」

 

『カアラ的にもまだ発見されていない方が好都合だろう?

 ほら、まだ距離がある走るぞ』

 

「あぁ」

 

2人が、少し気持ちをゆるめた時だった。

安堵したのも束の間に、悲劇が起こった。

 

『何があった!?』

 

「わからない・・・だが、弓か何かだと思うが・・」

 

安定して飛行していたファリナが高度を下げてから少ししたとき、急にファリナがペガサスを慌ただしく動かした。

 

『あれじゃ落ちるぞ!?』

 

何が飛んできたかはユーリ達からは視認できなかったが、ファリナは無理に回避行動を取ったことが仇となり

ユーリの予想通り、ファリナはペガサスから落ちた。

 

「これは、予想以上にマズいな」

 

『マズいって状況じゃない!あれが弓矢にしろ何にしろ、何かに攻撃されたのは間違いないだろ!

 こんなところでいきなり攻撃するやつは少なくともまともな奴じゃないだろ!』

 

ユーリはだいたいの落ちた位置を覚え、森に突入していった。

 

 

 

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「はぁ・・・下手うったわね・・・最悪な状況」

 

ファリナは今の状況に命の危険を感じていた。

これが、まだ愛馬のマーフィが近くにいるのなら状況は変わっていただろう。

 

今回は落とされたため、あるのは槍とこの身1つ。

勿論、天馬騎士だからとはいえ、生身で戦えないと言うことは無いが、それでもペガサスが居るか居ないかでは

全然違う。

だからと言って、この状況で戦うことすら諦める訳がない。

 

「さてさて、手荒なことをしたくはありません・・・大人しく、捕まってはくれませんか?

 命までは取らないと思いますよ」

 

剣魔はそう言う。

しかし、こういう奴に限って信用は出来ない。

その証拠に剣魔自身にはあまり感じられないが、周りの男達は下卑た笑みを浮かべていた。

 

「私がそれで、頷くと思っているのかしら?」

 

ファリナは槍を強く握りしめて、剣魔に向ける。

 

「くっくっく・・・いやぁ、実に残念です・・・・

 残念で仕方ありません!あっはっは!」

 

剣魔は言葉とは裏腹に狂気的な笑いをして、実に愉快そうにしていた。

 

剣魔に最初から見逃そうという意志は感じられなかった。

 

「血に囚われた獣め・・」

 

(姉貴、フロリーナ・・・そして、バカ兄貴・・・・

ここで死んだら・・・ごめんね)

 

 

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ユーリとカアラは森に突入したが、ファリナの落下した場所がわからなくなってしまった。

 

『ヤバいな・・・・』

 

「どうする?手掛かりは無いぞ?」

 

状況は刻々と悪くなっている。

弓で射落とされたと考えると、落ちた先には敵が既に待ちかまえていると考えるべきだ。

今も、ファリナが無事とわからなければ、下手をすれば最悪な状況も考えたくはないが、考えられる。

 

『くそ・・・・辺りから音が反響してどっちから聞こえてくるのかも分からない』

 

「別れて闇雲に探してみるか?」

 

『こんな状況で別れたら、再会できる保証も無いぞ!』

 

今、現状でファリナが窮地に立たされているがユーリ達にたどり着く方法がない。

 

ぷるるる

 

と動物の鳴き声が聞こえた。

 

「今の声は・・・」

 

『ペガサスの鳴き声だ!!』

 

ユーリ達が見つけたペガサスは落ちた先が悪かったのか、羽を傷つけ、木と木に引っかかり身動きが取れなくなっていた。

 

「さっき見たペガサスだろうな・・・」

 

『こんな地域にペガサスが2体も居るとは思えないから間違いないだろう』

 

2人が近づくとペガサスは2人を敵と認識したのか口を開き威嚇してきた。

 

「傷ついてるからか、警戒心が高い・・・助けてやりたいが・・」

 

下手に近づけば、こちらだけでなくペガサスも傷つけることになる。

それに、ファリナに繋がる唯一の手掛かりを手放すわけにも行かない。

 

『ちょっと離れてて・・・♪ー』

 

ユーリは唐突に歌い出した、

すると、和やかなその歌を聞いたペガサスは少しずつだが、威嚇をやめていた。

 

先ほどより警戒心が薄くなったペガサスにユーリは歌い続けながら近づいていく。

そして、頭を撫でられる位置まで近づくと、ペガサスの瞳を見つめ、敵意が無いことを伝える。

 

このやり方はイリア時代に姉と仲間から教わった物だ。

当時は自分よりも遙かににペガサスの扱い手慣れていた仲間がいたため、使う機会が来るとは思っても居なかったが、

こんなところで使うことになるとは思っても見なかった。

 

『よしよし』

 

ユーリはペガサスが落ち着いたのを確認してから、歌うのをやめ、ペガサスに引っかかっている木を斬った。

ペガサスは自由になると、ユーリの服を噛み、引っ張る。

 

『いきなりだな! ちょっと強いって』

 

もともとこのペガサスを頼りにするしか手だては無いのだから、ペガサスの引っ張る方向にファリナが居ると信じて

あまり抵抗せずに引っ張られる。

このペガサスも、ご主人の危機をわかっているのか、引っ張る力は相当な物だった。

 

「このペガサスの引っ張る方向に居ると良いのだがな・・・」

 

カアラもこの賭のようなやり方に頼るしかないことはわかっているとはいえ、やはり一抹の不安は残る。

 

『信じるしかないな・・・それにペガサスって言うのは賢い生き物なんだぜ』

 

木々をかき分け、引っ張られた先に、ファリナはいた。

 

その周りには何人かの人間が倒れている。

 

しかし、ファリナの様子はあからさまに満身創痍だった。

 

「あれか・・・・」

 

『ちっ!! ファリナ!』

 

ユーリは、ファリナを痛めつけた奴らを只じゃ済まさないと考えながらも、まだファリナが生きていたことが嬉しかった。

そして、まだ生きている内に合流できたのなら絶対に助けてみせると自分に誓った。

 

ユーリの決意に呼応するかのようにトクンと背中に背負う剣が反応した。

ラングレンとの戦いの際に、感じたこの感覚。

 

ユーリは今なら、この剣を抜けると確信できた。

ならばと、意識を前面に戻したとき、既にペガサスはユーリを離していた。

 

ユーリは背中にある剣を手に取り、一気に引き抜いた。

 

『お前は良いペガサスだな・・・しっかりとご主人を守った

 なら、後は俺が応える番だ・・』

 

剣を手に一気にファリナのところまで距離を詰めた。

 

『ファリナをここで殺させる訳にはいかないんだよ!』

 

増援とも思えるユーリの登場に、それでも剣魔は不気味に愉しげに笑うのだった。


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