ファイアーエムブレム~凍土の剣~   作:whiterain

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18章 剣魔の噂

ユーリとカアラはリキアを目指し、国境近くまでたどり着いた。

 

『思ったより、時間かかっちまったか?』

 

「仕方ない・・・・急いでは危険が多いのだから

 それに金をあまり使いたくないと言ったのはユーリだろう?」

 

道を急ぐなら、馬を買うなり、ベルンならではのドラゴン運んでもらうことも出来た。

ただ、それを使うよりも時間はかかるが、今の行き方が最も安く済みそうだった。

前提として、必須スキルは存在するが

 

『まぁ、そうだけど・・・・狩り出来る2人だから何だかんだと・・・ね』

 

「つまり、私が出来なければこういうことにはならなかったのか?」

 

『あっははは・・・』

 

そうこうしている内に、また1つの村にたどり着いた。

 

「珍しいな・・・」

 

カアラは村を見て、呟く。

 

『何がだ?』

 

カアラとは違う方を見ていたユーリがカアラと同じ方を見た。

 

「今飛び上がったが、あれはペガサスだろう?」

 

『ん・・・あれか』

 

ペガサスということは確認できたが、誰が乗っているかまではさすがに確認することは出来なかった。

 

『ペガサスだからな・・・イリアの人間だとは思うが・・・

 まぁ、イリアの傭兵か、見習い期間のやつだろう』

 

確かに珍しいことではあるが、全くないわけでも無し。

イリア出身のユーリからしてみれば、特段珍しい光景でも無かった。

 

ユーリたちは飛んでいったペガサスから視線を外し、村の中へと歩みを進めた。

 

「思ったより、騒がしいな」

 

『あぁ、活気があると言うよりは揉めてる感じのそれだが・・・』

 

声の聞こえる方に進んでいくと、老齢の男性を中心とした集団と壮年くらいの男性を中心にした集団が言い争っていた。

 

「あんな小娘1人に何が出来るって言うんですか!?

 村の金まで渡して、これでは・・・」

 

「他に手が無かろう・・・村を危険に晒すわけにはいかないのだ」

 

ユーリは村の人2人の言い合いを少し離れたところから見ていた。

 

『さっきのペガサス、イリアの傭兵かな』

 

ユーリは今の話からそう思った。

ただ、小娘1人と言うのは気がかりだった。

 

基本的に傭兵団が1人で行動していることはあまり無い。

それこそ、そういう依頼か、部隊が壊滅したなど、特殊な理由があるだろう。

 

まぁ、自分たちには関係無い話と判断して、ユーリは立ち去ろうとする。

 

「くそ!剣魔め・・・・・」

 

「!!」

 

離れようとした2人に、いや特にカアラには聞き逃せないワードだった。

 

 

「ユーリ・・・・」

 

『まだ、本人と決まったわけじゃないし、俺は人柄も知らないから判断しようが無いけど・・・

 まぁ、良いんじゃないか? 付き合うよ』

 

こんなことしている内に魔の島からネルガルがいなくなるかも知れない。

自分が頼んだ訳じゃないから付き合う義理が無いと言えば、それまでかもしれないが、

ユーリも、まだ完全に全てを捨ててまでは割り切れていないのだろう。

 

ユーリは再び、振り返り、騒動の中心。

言い争う男たち2人のところへ近づいていった。

 

『悪いんだが、さっき言ってた剣魔について聞かせてもらえないか?』

 

「あんたたちは?」

 

「たまたま立ち寄っただけの旅人だ」

 

「なら、関わらないでくれないか!これは俺たち村の人の問題だ」

 

こう言われるのも想定はしていた。

だからと言って、ここではい、そうですねとは言えない。

 

『別に、あんたらの村の事情に干渉するつもりはない。

 何とかしてやるから金を渡せと言うつもりも無い』

 

「あくまでも、私たちが個人的に聞きたいだけだ」

 

知りたいのは剣魔の情報。

カアラの兄かも知れない人の情報だけだ。

 

非情とも言われるかも知れないが、こちらも善人ではない村がどのような道を選ぶのかは知らないが

どうなろうともあくまで相手側の話。

頼まれたならともかく、自分から善意の押しつけをしたところで仕方ない。

 

 

「だが・・・」

 

「ワシが話そう」

 

「村長!」

 

「話すだけなら、良いじゃろう・・・

 旅のお方ワシの家へ来てくだされ」

 

『感謝します』

 

村長が話の分かる方で良かったとユーリは思った。

強行手段は取れないまでも、少し卑怯なやり方も必要になるか?とも考えていた。

 

 

「さて、何から話せば良いかの・・・・」

 

「私たちは剣魔について聞きたいのだが?」

 

『あるがままに話してください』

 

村長は一息つくと、ゆっくりと口を開いた。

 

「そんなに長い話でもありませんが・・・・

 始まりはそう前のことではありません」

 

始まりは1ヶ月くらい前だったらしい。

それまでは特段何もなく平穏に過ごし、それこそ先ほどのように村の中で対立することもなく暮らしていた。

 

そこに、1人の男が仲間を率いてやってきたらしい。

そいつは剣魔と名乗り、金や食料等の物資を要求した。

 

当然、村の人はその要求に応じるわけがない。

要求を拒否された剣魔と名乗る男は断った村人を斬り捨てたらしい。

 

その際は、金を上手く隠し、少なくした上で物資を渡すと引き下がった。

それから、定期的に奴らはやってくるらしい。

 

『その剣魔っていうやつはどんなやつなんですか?』

 

今の話ではその剣魔がカアラの兄、カレルなのかわからない。

カアラの兄が、カアラの探している相手がそんなことをするとは思えないが、自分が

その人物のことを知らない以上そう判断するわけにもいかない。

 

「髪の長い若い男じゃ、それ以外はワシらには・・・」

 

『カアラどうなんだ?』

 

「私の知っている兄者は髪は長かったが・・・そんなことをする人だとは思えない・・・」

 

『結局、判断は出来ないか・・・・』

 

こうなると、直接確認しないとこれ以上はどうしようもないだろう。

 

「ユーリ、私は確かめに行きたいのだが・・・」

 

カアラがユーリに尋ねるような視線を向ける。

ユーリは少し考え、頷いた。

 

『まぁ・・・大した時間もかからないだろうし、構わないよ』

 

可能性は低いだろうが、ここまで付き合ってくれたカアラに付き合うのは吝かじゃない。

 

行くなら、もう一つ聞いておきたいことがあった。

 

『悪いんですが、もう一つ聞かせてもらってもよろしいでしょうか?』

 

「何でしょう?」

 

村長は嫌な顔をせずに、答えてくれた。

 

『多分、さっきのペガサスの、イリアの傭兵だと思うんですが?』

 

小娘と呼ばれていたが、イリアの傭兵なら何故1人でいたのか?

村長なら、少しは状況が分かるかも知れない。

 

「確かに彼女はイリアの傭兵と名乗っていましたが・・・

 天馬騎士団の第3部隊所属だとか・・・」

 

『まぁ、本当にイリアの傭兵かはわかりませんが・・・

 イリアの傭兵なら、特に天馬騎士団ならあまり単独で行動しているとは思えませんが・・・・』

 

「そんな、まさか・・・確か名前はファリナと言っていましたが」

 

『!! それは本当か!?』

 

ユーリは突如立ち上がり声を荒げた。

その様子には先ほどまでの余裕は感じられない。

 

村長とカアラもユーリの様子の変貌に驚いていた。

そのため、ユーリの質問に返すことが出来なかった村長にユーリは詰め寄るように問いかけた。

 

『その天馬騎士は本当にファリナと名乗ったのか!?』

 

「え、えぇ、確かにそう名乗っていましたが・・・」

 

「ユーリ知ってるのか・・・?」

 

ユーリはカアラの質問に返すことなく、今度は頭に手を当てて考え始めた。

 

『その・・・・天馬騎士の髪は蒼かったか?』

 

「えぇ、仰るとおりの髪色ですが・・・」

 

ユーリは、剣を手に取り、家の外の方を目指す。

 

「ユーリ!」

 

そんなユーリをカアラは急いで追った。

 

ユーリが家を出ると、先ほど村長と争っていた村人の男性が詰め寄ってきた。

 

「あんた、何を聞いたか知らない『邪魔だ』なっ!」

 

ユーリは歩みを止めることなく、前に現れた村人の男性を手で無理矢理避けると、

そのまま村の入り口の方に向かっていった。

 

カアラはユーリを追いかけ、その肩を掴む。

 

ユーリはようやく止まり、カアラの方を向いた。

 

「どうしたんだユーリ?」

 

『カアラだけじゃなく、俺にもその剣魔って男のところに行く目的が出来た』

 

ユーリは小さく、場合によっては殺すかも知れないと呟いた。

 

「そのファリナっていう天馬騎士知っているのか・・」

 

『・・・・・・・・あぁ・・・俺が知っているファリナなら・・ね』

 

カアラはユーリの態度から、深い関係の間柄なのだろうと予測した。

それは家族か、恋人だった人か・・・そんな関係の人なのだろうと。

 

 

『・・・・・・・・・・・・・ファリナ今、行くぞ』

 

ユーリは再び、歩みを進め始めた。

その歩みは普段よりもだいぶ早かった。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

ユーリの頭に浮かぶのは、まだ、ユーリが知っている頃のファリナ。

まだ、天馬騎士にはなっておらず、あまり素直な娘ではなかったが、ユーリにとっては可愛い’妹’だ。

 

天馬騎士になるのでは無いかと思っていたが、こんなところで巡り会うことになるとは・・・

自分のことは話せないが・・・何故、1人でいるのか?上手くやれているのか?

聞きたいことはたくさんあった。

 

それでも、今は・・・・

 

 

ただ、無事でいてくれ!

 

 

それだけを信じて、ユーリはいつもより早めていた足を更に早め、村長に聞いた剣魔の潜伏先に急いだ




さて、次回は剣魔と呼ばれる男と遭遇出来るのか?

ファリナはユーリの知っているファリナなのか?


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