ファイアーエムブレム~凍土の剣~   作:whiterain

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これからはユーリ編ということになります。
エリウッド達と合流出来るのはいつになるでしょうか・・・・


ユーリ編
11章 進むべき道


旅立ちから幾ばくかの時が経った。

みんなはそれぞれの道を歩みだし、ユーリも己の道を歩み出した。

 

今、ユーリはリンと出会ってから歩んできた道を戻り、交易都市ブルガルに再び訪れていた。

 

『あの時は気づかなかったけど、ここにも闘技場があるんだな』

 

闘技場

 

お金を掛けて戦い、勝てば賞金を、負ければ命すら失うかも知れない施設。

だが、ユーリ達のような戦いを生業としている人たちには良い稼ぎ場になっている。

 

『まぁ、今は他にすることあるし、後回しだな

 きっと今からやることを知ったら、リンに怒られるな。

 もはや、絶交ものか・・・』

 

ユーリは自分で言って苦笑いする。

ユーリは今から、リンとの約束を破り、1人でタラビル山賊団を討伐しようとしている。

かつて、リンの部族を滅ぼした山賊団。

リンがいつか、奴らを倒すと言ったとき、みんなで一緒に戦うこと話した。

あの時は、こんなことをする気になるとは思えなかった。

 

『想像以上に、リンを気に入ったのかね・・・』

 

今のリンを見ていると、彼女は今の自分のような人間と同じ道を歩ませてはならないと思った。

家族を蔑ろにして、何度もこんなことは間違っているのではないかと自分に囁くこともあった。

それでも、後悔しても、どんなに辛いことがあってもこの道を選んだ。

進み続けること誓ったのだから。

 

『さて、聞き込み開始しますか・・・』

 

ユーリもタラビル山賊団がタラビル山のどの辺りに潜んでいるか見当が付かない。

そのため、ここブルガルに立ち寄り、情報を集めることにした。

 

情報が集まる場所と言えば、酒場がセオリーとなる。

酒場を目指しつつ、道すがらの人に尋ねる。

 

しかし、返ってくる答えはどれも、同じような答えだった。

 

「タラビル山に巣くうならず者だね・・・場所までは・・・」

 

「情報屋じゃないと・・・詳しくは・・・」

 

「あいつらのことなんか話したくもない」

 

ほとんどが、これのどれかに分類されていた。

 

『やっぱり、情報屋くらいしか知らないか・・・だが・・・・』

 

情報屋に頼るとなると相応の金がいる。

ここに、来るまでにだいぶ金を使ってしまった。

 

ここで、情報屋に払うと、山に入る準備に使う金がなくなってしまう。

 

『後で、闘技場か・・・』

 

ユーリは頭にその予定を入れつつ酒場の扉を開けた。

 

 

 

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『思ったよりも・・・取られたか・・・』

 

だが、情報屋にタラビル山のどの辺りにいるのかを聞くことは出来た。

 

『闘技場で稼ぐか・・・・・』

 

今度は足を闘技場の方へ向ける。

全うに稼いでいては、間に合わないが、闘技場で稼いで負けて命を奪われたら意味はない。

かといって、勝っても怪我しては意味は無い。

 

『世の中、上手くは生きていけないな』

 

闘技場に着くと、闘技場は盛り上がりを見せていた。

いや、正確にはいつも以上に・・・ユーリの知っている闘技場よりも盛り上がっていた。

 

 

ユーリは受付に向かい、エントリーついでに確かめてみた。

 

『なんか、かなり盛り上がってないか?

 この辺じゃ、こんなもんなのか?』

 

「兄ちゃん、この辺に来たのは最近だろ?

 今、この闘技場には’剣姫’と呼ばれる凄腕の剣士が現れるのさ」

 

『へぇ、剣姫ね・・・聞いたこと無いな

 姫って言うくらいだから女性なのか?』

 

「あぁ、ものすごい美人だぜ」

 

『なるほどな・・・』

 

ユーリは自分にはあまり関わりの無い話と思い、剣姫に関する話をそこまでにして闘技場の控え室に向かった。

 

だが、ここで関係の無い話が関係のある話になる。

ユーリが闘技場の盛り上がりに興味を持たずにすぐにエントリーを済ませて中に入っていればこんなことにはならなかったの

かもしれない。

ユーリを見て、興味を持った人がいたのだから。

 

「今の剣士・・・・出来そうだ

 兄上のことを知っているかもしれない・・・」

 

その人物はユーリがエントリーした受付の方に向かった。

 

「すまないが・・・頼みたいことがある」

 

「あんたは・・・!?」

 

 

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『へぇ、みんなそこそこにはやっぱり出来るんだな・・・』

 

ユーリは自分の番まで、他の参加者の対戦を見ていたが、みんな結構な腕前の持ち主だった。

だが、あくまでユーリからしたらそこそこであり、無傷で勝つことも難しくない相手だ。

 

『これなら、何とかなりそうかな』

 

ユーリは内心ホッとした様子で、次に控える自分の対戦に向かった。

 

そして、ユーリのその予想は裏切られることとなる。

 

 

「西方!! この闘技場に突如現れた剣姫カアラ!今日はどんな戦いを見せてくれるのでしょうか!?」

 

紹介の声を聞き、自分の運について本気で考えさせられてしまう。

この闘技場の参加者は数多くいるはずなのに、何故自分が剣姫と呼ばれる人物の相手をしなければならないのか?

 

ユーリは、カアラが狙って挑んできたとは知らないためランダムだと思っている。

そのため、彼の不運はランダムでなったことではなく、カアラに目をつけられたことだろう。

 

 

「続いて、東方!!流れの剣士ユーリ!!剣姫カアラ相手にどう立ち向かうのでしょうか!?」

 

『どう立ち向かうか・・・・・だと?』

 

実力が高いとわかっているカアラと実力不詳のユーリなら剣姫と名高いカアラに軍配が上がると思われるだろう。

だが、そう思われることがユーリには受け入れられなかった。

そして、絶対に負けたくないって気持ちが湧いてくる。

 

『やってやろうじゃん』

 

ユーリは持つ剣に力が入る。

闘技場では公平に勝負を行うため、武器は闘技場側で用意された物で行う。

壊したところで、それは勝負の中で起きたことだから仕方ない。

 

つまり、武器のことを考えず全力で戦うことが出来る。

 

ユーリはいつも通り、剣をだらりと下げた状態のまま、ゆったりと歩くようにカアラに近づく。

対するカアラも剣を構えることはせず、だが、ユーリとは違い素早い動きでユーリに近づいてくる。

 

「お前の実力、見せてもらうぞ」

 

『上から目線が気に入らないな!』

 

初撃はカアラから放たれた上段の斬り払いだった。

それは、リンにも勝る斬撃だった。

ユーリも頭を下げてから、身体を戻す動きで斬り上げる。

カアラもそれを読んでいたかのように身体を横にズラしかわす。

 

『(こりゃ、剣姫の名は伊達じゃないか・・・)』

 

無駄の無いまるで、舞のような動きを、ユーリはそう例えた。

彼女は文句無しに強い、今も、ユーリは彼女の剣撃を受けつつ思う。

ラングレンの時は装備の差で勝利とは言い難かったが、同じ装備の相手に勝利への道筋が見えない。

だからと言って、決して負ける訳でもない。

膠着状態が、続けば剣の状態と体力の問題になる。

いつまで、集中力を保つことが出来るかも問題になってくる。

 

 

「かなりの腕だ・・・・お前なら兄上を・・・」

 

『何か言ったか!?』

 

カアラは何かを確認するように呟くと、剣をユーリの剣にぶつけ、その反動も利用してカアラは後ろへ下がった。

 

そして、剣を下ろした。

 

「私は、ここで降参する」

 

それだけを告げ、カアラは足早に去った。

勝負時間も長くは無く、体力的にもまだまだ持つはずだ。

なのに、カアラは早々に勝負を切り上げた。

流れに身を任せ、ユーリも剣を下ろしたが理由をつかめずにいた。

 

勝利を告げる声も耳に入ってこなかった。

感じたのは、あれを勝利とは思えない。

なぜ、彼女が・・・カアラが降参したのかがわからなかった。

 

 

 

 

 

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闘技場から、賞金を受け取り、出る。

カアラ戦と言うこともあり、みんながカアラが勝つと思っていたこともあり賞金は破格と言っても良い物だった。

あの一戦で、山に入るための準備に必要な金額が手に入ったのだから

それでも、残った疑問は拭えない。

 

「お前を待っていた」

 

『へぇ、俺もあんたに聞きたいことがあったんだ』

 

ユーリは物陰から出てきた人に向き直り、自分も是非話したいと言う意志を告げる。

 

『剣姫様・・・いや、カアラと呼んだ方が良いのか?』

 

「あぁ、私が名乗っている訳ではないからな」

 

『それで、俺の話は後で良い・・・カアラの話を聞かせてもらおうか?』

 

カアラは頷き、ユーリに話を進める。

 

「剣魔カレルという人物に心当たりは?」

 

『剣魔・・・・?』

 

噂で聞いたことが無くもない。

剣魔カレル・・・腕の立つ者の前に現れては戦いを挑んでくる通り魔のような男

 

ユーリが知っているのはそれくらいだ。

 

『悪いが、噂程度にしか聞いたことがないな』

 

「そう・・・・か・・」

 

それに、今まで感情表現の乏しかったカアラがあからさまに悲観の色を見せた。

 

「カレルは私の兄なんだ・・・最近はこのサカの地で現れたという話を聞いた

 だから、腕の立つ者の前に現れると思って探していたのだが・・・」

 

『それが、俺だったってことか?』

 

コクンとカアラは頷いた。

腕の立つ者と言われ、悪い気はしないが、そんな危ない存在に目を付けられるなんて迷惑極まりない。

 

『それなら、残念だったな

 俺は、会ったことないな』

 

「私も探しつつ、闘技場で名前を売ってみたが、駄目だった」

 

『なら、俺相手に降参するべきでは無かっただろう?』

 

それが、ユーリがカアラに聞きたかったこと。

何故、降参したのか?

 

「これ以上は無駄だと判断したからだ

 ユーリ、お前も見ただろう?他に腕が経つといえる者はいなかった

 だが、そんな中見つかったのはユーリただ1人だ・・・

 だから私は・・・・・」

 

そこで、カアラはとびきりの爆弾を落とす。

 

「ユーリ、お前に付いていこうと思う」

 

『・・・・・・・・・・・は?』

 

ユーリは唐突に話がわからなくなった気がした・・・




これから、ユーリとカアラの2人旅が始まります

しばらく、みんなとはお別れですね

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