ファイアーエムブレム~凍土の剣~   作:whiterain

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リン編後日談、最終話1話前までとしていますので
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10章 終幕の風

イーグラーの館を突破して、キアラン城を目指して歩みを進める。

そして、キアラン城を目前にして夜を迎えることとなった。

 

 

リンには少しでも、早く攻め込みたい気持ちもあったが、皆も

先の戦いで多少なりとも疲弊している。

 

それに夜と言うこともあり、ここは明くる日に備えて野営をすることにした。

 

「みんなはこの戦いが終わったらどうするの?」

 

リンが言い始めた話題。

この戦いが終われば、戦いの目的は終わりを告げるだろう。

そしたら、ケントやセインを除いた人間はキアランから旅立つだろう。

負けることは考えない。

勝つためのここまで来たのだから

 

「俺は妻のところへ一度戻ろうと思う

 今後のことはそれからだ・・・」

 

いち早く答えたのはドルカス。

妻を残したままで、長い間離れておけないと言うことだろう。

 

「俺も傭兵業に戻る・・」

 

次いで答えたのはラス。

 

「傭兵って結構儲かるの?」

 

「興味あるのか?だが、お前には無縁だろう」

 

傭兵業というものを詳しく知らないリンは問う

 

「そうだね、リンは合わないと思うよ」

 

「どうして?」

 

「傭兵っていうのは・・・」

 

『傭兵は基本的に良い扱いを受けることは無い』

 

ユーリはリンに傭兵について説明する。

傭兵は基本的に雇い主に恵まれない限りは良い扱いを受けることは無い。

冷遇された状況で捨て駒にされることも多い。

そのため、自分の実力だけで生き残る必要がある。

 

ユーリの故郷のイリアでは個人での傭兵ではなく、部隊として契約することが

ほとんどだ。

稀に、個人で傭兵契約しているのもいるが・・・・

 

「なんで、そんな扱いを認められるの!?」

 

ユーリの説明を聞いたリンはやはり受け入れられなかった。

 

『所詮はよそ者、雇う側からしたら死のうが関係ないし

 金をもらえば、戦う下賤な輩ってことさ』

 

「そういうことだ・・」

 

傭兵業をしているラスもそのことには詳しいのだろう。

 

『まぁ、リンが怒ったところで状況は変わらない』

 

「でも・・・・」

 

『暗い話はやめにしようぜ?

 マークはどうするんだ?』

 

ユーリは明るい話に無理矢理切り替えるべくマークに話を振る。

 

「少ししたら旅に出ようかなとは思ってるよ

 まだ修行中の身だからね

 ウィルは?」

 

「俺はどうしようか、まだ決めかねてるよ

 故郷に戻ろうかなとも考えてるけど・・・

 とりあえずは終わってから決めようかな」

 

「私も同じような感じです・・・」

 

「私はどうしようかしら?」

 

「君はいい加減、オスティアに戻ってくれないかな

 じゃないと、僕も自由の身になれないんだけど?」

 

セーラをオスティアに送り届けるのがエルクの契約である以上、

エルクは帰ってもらわねば困る。

それでなくとも、こんなとこまで、付き合わされてるのだから

 

『帰ってやれよ・・・・』

 

さすがのユーリも今のエルクを見れば早く解放してあげて欲しいと感じた。

エルクの顔がどんどんやつれていっている気がするのは気のせいなのだろうか・・・

 

「あはは・・・ルセアさんやニニアン達はどうするんですか?」

 

「わたしも巡礼に戻ろうかと考えています」

 

「僕たちも旅に戻ろうと思う」

 

3人も旅に戻るようだ。

こんな風にみんなが揃って話せる機会もほとんど無いのだろう。

 

「ユーリはどうするの?」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

ユーリ自身も決めかねていた。

なんだかんだと手がかりが無い以上

目的が無い旅に戻るのだろうか?

 

『まだ、どうするか俺も決め手はいない

 まぁ、しばらくはここにいようかな』

 

リンとの約束もある。

ここが落ち着くまでは居ようかなとユーリも考えた。

 

『どちらにせよ、明日で全てが決まるんだ

 勝とうな・・・・』

 

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夜が明けた朝。

ユーリ達の戦いが始まろうとしていた。

 

「リンディス様、山を迂回すればキアランの城が見えるはずです」

 

「おじいさま・・・もうすぐ・・」

 

リンは祖父の身を案じ祈る。

 

「全てはこの戦いで決まります」

 

「あてにしていた、近隣の諸侯からの援軍は無いけど・・・」

 

「それでも、敵の数は多い

 まともに戦えば、キツいと思う」

 

相手は多少の損害は受けていようとも、こちらに比べれば

まだまだ数は多い。

 

「どれだけ数が多かろうと突破するわ

 おじいさまにお会いする・・・そのためだけにここまで来たんだもの!」

 

『だが、まともに戦えば負けるとは言わないが

 正直、ここまで結構連戦続きだ・・・・

 疲労して、戦い続けて行けば・・・・』

 

ユーリが言わんとしていることはみんなわかった。

時間を短縮するために、ここまであまり休みを取らずに来ている。

そんな中、正面突破よろしくと突っ込めば、いつかやられる危険がある。

 

「今回は、短期決戦しかないかなぁ・・・と思ってる」

 

『短期って行ってもどうするんだ?』

 

道は山を迂回していく道しか無い。

特に隠れられるところも無ければ、山を抜けられるかと言えばそんな簡単にもいかない。

 

「リン、ユーリの2人をフロリーナに山の向こうに運んでもらう

 そして、3人で城を落としてもらう」

 

「ちょっと待って! さすがにそれは・・・」

 

距離が短くなったため、その分戦う敵も減ったとは言え

3人で城を落とすのは無理がある。

 

「勿論、君たちだけに無理をさせるつもりは無いよ

 残った僕たち全員で敵に猛攻を仕掛ける

 ラングレンは何としてでもリンを殺したいはず・・・

 なら、城から兵士を離すことになろうとも攻撃してくる・・・

 その隙に、攻め込んで欲しい・・・・いや、攻め落として欲しい」

 

『責任重大だな・・・

 俺はその作戦で良いが・・リンとフロリーナは?』

 

「私もそれで良いわ!

 迷っている時間なんて無い・・・少しでも 

 高い可能性に賭けてみたい」

 

「私も・・・それで良いです

 少しでも、助けになれるなら!」

 

3人は納得した。

そして、他のメンバーもマークの提案に同意した。

 

リンを危険な目に遭わせるのは不本意なところもある。

だが、彼女の意志を優先したいという気持ちと、選んでる状況ではないことを

考え、この作戦を採用した。

 

 

 

 

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『ついにぶつかったな・・・・』

 

「ええ・・・・」

 

『心配か?』

 

「いえ・・・みんななら大丈夫よ!」

 

リンは心配に思いながらも自分の仲間を信じることにする。

ここまで一緒に戦ってきた仲間だからこそ自分は信じなければならない。

 

「私たちはいつ頃、向かうんですか?」

 

フロリーナは焦ったようにユーリに問う。

彼女も仲間達のことが心配なのだろう・・・

 

『敵が集まりだしたら・・・かな

 それまでは俺たちは信じるしかない・・・』

 

 

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「まだまだ・・・相手も余力を残してる・・・

 みんな・・・頑張ってくれ!!」

 

マークは、戦況を見つめつつ呟く。

敵は力を温存した状態で、攻めてきている。

 

こういう時、自分自身に戦う力が無いことを歯がゆく感じる。

 

 

「ふはははは!!この程度ではこのわしに傷1つつけれぬわ!」

 

ワレスが近づくキアラン兵をなぎ払うように進む。

 

「まだこの程度では無いでしょう・・・

 もっと敵を集めないと・・」

 

「相棒、焦るなって」

 

セインは焦るケントを落ち着かせるように言う。

 

「しかし!!」

 

「俺たちがミスったら、リンディス様達が大変な目に遭うことになる!

 俺らが上手くやれば、それだけリンディス様達が楽になるんだ!」

 

「その通りよ! わしらの力でリンディス様をお救いするのだ!」

 

「わたしは・・・・すまないセイン、ワレスさん

 あなた達の言うとおりだ・・私たちに失敗は許されない

 確実な戦いを!」

 

キアランの騎士3人は自分達が信じる主のためにかつての仲間に刃を向ける。

 

「俺達も負けてられないな!」

 

「あぁ・・・そうだな」

 

「こんなところで終われないですからね」

 

3人を援護していたウィル、ラス、エルクも3人に触発されたように

奮起する。

 

敵は確実に焦ってきていた。

 

「来た!!」

 

マークは近づいてくる大部隊を見逃さなかった。

 

「みんな、ここが大一番になる!

 ここからは生き残ることを最優先に!!」

 

 

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『多分、あれが本隊になる!

 フロリーナ向こう側に向かってくれ』

 

フロリーナのペガサスに乗り、見つからぬように状況を見ていたユーリは

マーク同様、あの大部隊はほぼほぼ全員を投入してきたと判断した。

 

「わかりました!」

 

フロリーナは山を低空で越え、人目に付きにくい森にユーリを下ろす。

そして、再びリンを迎えに行った。

 

『さて・・・ここからが俺らの大勝負か・・・

 如何に早く決着をつけれるかで、マーク達の安否が決まる』

 

ユーリは剣を持つ手に力が入った。

大多数の敵が居なくなり、申し訳程度にしか居なくなったキアラン城を見ているうちに

フロリーナはリンを連れて戻ってきた。

 

ユーリはリンとフロリーナに問いかける。

 

『2人とも・・ここからが俺らの大勝負だ・・・

 最後の博打と言っても過言じゃない

 俺らの早さ如何でみんなの無事も変わってくる・・

 覚悟は出来たか?』

 

「当たり前よ!」

 

「大丈夫です!」

 

迷うこと無いその瞳に危うさを感じながらもユーリは笑って剣を抜いた。

 

『したら、駆け抜けようか!

 ラングレンのところまで!いや、リンのおじいさんのところまで!!』

 

3人はキアラン城へ向け駆け出す。

 

道すがらの敵は簡単に倒せた。

残った警備の兵は、あれだけの大舞台が出た直後に攻められるとは思っていなかったのだろう。

 

『あっさり過ぎて、逆に恐くなるな・・・』

 

何か策があってのことなのか、それともラングレンが思ったよりも阿呆なのか?

ここまでマークの策通りだと、喜びを通り越して不気味に感じるくらいだ。

 

あっさりと城の前にたどり着いてしまった。

それでも、一応敵の接近に気を使い、フロリーナに何かがあれば知らせるように頼み中に入る。

 

城の前に陣取る年食った男は、リンの方を見ると問いかける。

 

「お前がリンディスの名を語る者か!」

 

相手がリンを認めないのはわかっていたことだ。

本物か偽物かは関係ない。

自分の邪魔をする限り、リンを偽物扱いし、自分を正当化する。

 

「あくまでも、私を偽物扱いするつもりね

ラングレン!」

 

「名門キアラン家にサカ部族の血などいらぬわ!!

ここでわしが討ち取ってくれる!!」

 

『血が何だって言うんだよ、この俗物が』

 

「貴様ごときにわかってたまるか!」

 

「あなたが自分の理想のために

お爺さまや、この領地を巻き込んだこと

私は・・・私は絶対許さないわ

ラングレン!覚悟!!」

 

ユーリが斬りかかるより、早くリンがラングレンに斬りかかる。

ユーリは出鼻をくじかれたように止まった。

 

「あなたは何で!自分の家族を!!」

 

リンはラングレンに斬りかかりながら、問いかける。

 

「何故? わしが侯爵になるのに邪魔だからだ

 やっとくたばりそうなところに現れたのが貴様だ

 忌々しいにもほどがある」

 

『外道が・・・・』

 

出鼻を挫かれて、止まったユーリだったが、隙を見てラングレンに斬りかかる。

 

一騎打ちでない以上、正々堂々1対1で戦う理由もない。

 

「貴様ごときにわしの鎧が斬れる者か!」

 

『さて?やってみないとわからんだろ?』

 

ラングレンの振るう銀の槍を避け、その隙にリンが斬りかかる。

それでも、ラングレンの鎧を切り裂くには至らない。

 

ラングレンの槍を避け、ユーリ・リンが斬りかかる流れが続いているが、

お互いにダメージは与えられない。

 

いや、確実にダメージは溜まっていた。

 

『(やばいな・・・・そろそろ・・)』

 

リンのマーニ・カティは言わずとも知れた、名剣。

そんな簡単に駄目になる剣では無い。

ラングレンの銀の槍はユーリとリンがあまり武器同士を合わせて

防ぐことはしないため、傷もあまり付いていない。

 

だが、ユーリの倭刀はそういうわけにもいかない。

何度かラングレンの槍を防いだことと、ラングレンの堅い鎧に

斬りかかってたことにより確実に悲鳴をあげていた。

 

『そろそろ決めないと・・』

 

ユーリは渾身の力を入れて、ラングレンに斬りかかる。

仮にこれで倒せなくても、鎧に傷を付けることが出来れば

リンが斬ってくれる。

そう信じて、

 

『ちっ!!』

 

ユーリの刀は根本から折れた。

 

だが、ラングレンの鎧にヒビが入れることには成功した。

 

「ユーリ、下がって!!」

 

『・・任せる!』

 

リンの言葉に従い、ユーリは後ろに下がる。

 

「貴様ひとりで何が出来る!?」

 

今まで、2人で倒しきれなかった相手を1人で倒しきれるのか?

と問われれば、難しいだろう。

だけど、今なら・・・

 

「わたしは何としてでも、お爺さまに会う!

 それに、ここまでみんなの力を借りてやってきて!

 ここで私が失敗するわけにはいかない!!」

 

リンの叫びに呼応するように、マーニ・カティが光を放つ。

 

『行け! リン』

 

リンはラングレンの槍を避けると、ユーリのヒビを入れた場所に寸分狂いもなく

剣を入れる。

 

「がはっ・・・」

 

リンの剣はラングレンを斬り裂いた。

 

『決まったか?』

 

「これで・・・・」

 

リンは決まったと完全に思ったが、ユーリには若干の違和感を感じた。

 

「まだ・・・死ねん・・・!!」

 

『リン、下がれ!』

 

「!!」

 

執念の成せる技だろう。

確かにラングレンの傷は致命傷だった。

それにも関わらず、彼は身体を動かし、リンを手に持つ槍で貫こうとする。

リンは避けようとするが、安堵感から油断していた。

 

『(ここでリンを殺すわけにはいかない!

 ここまで1人の家族に会うためにここまで来たんだ

 何としても守らないと!!)』

 

ユーリが、何か手は無いか考えども、ユーリの剣は折れている。

ただ、ユーリの背中にある我が儘な剣がカタカタと震えた。

あたかも、自分を抜けと言わんばかりだ

 

リンのマーニ・カティに呼応したか?

そう考えもしたが、今は考えてる場合じゃない。

 

『リンは殺らせない!!』

 

ユーリは背中から剣を抜き、そのまま上に掲げる。

すると、ユーリの持つ剣を氷を混じらせた旋風が包む。

 

そして、今度はラングレンの足下から、先ほどより大きな旋風が起きる。

リンはラングレンの一瞬のひるみを見逃さず、ラングレンから距離を取る

発生した風はラングレンを逃がさないようにラングレンの周りを回転しており、

次の瞬間に氷結した大きな固まりを発生させた。

 

理魔法 フィンブル 

 

ユーリの持つ剣はフィンブルを宿している、魔法剣の一種だ。

 

ラングレンを包んだ氷が割れた時、完全いラングレンは息絶えていた。

 

『ふぅ・・・・・リン無事か?』

 

ユーリは掲げた剣を鞘にしまうと、疲れた身体を休めるように腰を下ろし、

リンに問いかけた。

 

「ええ・・・ありがとう

 ユーリ、今のは?」

 

『我が儘娘の気まぐれ・・・なのかな・・・

 っていや、今はそんなことはどうでも良い!』

 

自分たちの仕事は終わっても、まだマーク達は戦っている。

この戦いを終わらせるには城を掌握しなければならない。

 

『俺は、城を掌握して、マーク達のところへ行く。

 リンはおじいさんのところに行ってやれ

 多分。そこにいる人が案内してくれるだろうから・・』

 

ユーリは矢継ぎ早にそう告げると、リンの前から立ち去った。

 

そこからこの戦いが終わるまで、時間はかからなかった。

ユーリが城のラングレンに反対した人を解放し、フロリーナが

マークにこのことを伝えに行った。

 

城陥落の報はキアラン兵も入っていたようで、すぐに降伏した。

キアラン兵も戦いたくはなかったというのがほとんどらしい。

 

『お疲れさん』

 

「それは、ユーリじゃない?

 僕は戦ってないからね」

 

『ここまでの道のりも含めてだよ』

 

「・・・・・・僕たちも今後を考えないとね」

 

『あぁ・・・』

 

これで、長かった旅も終わりになる。

目的が無くなったこの傭兵団で戦うのもこれが最後だろう。

 

みんなの道もこれで分かれて行くのだろう・・・

ただ、それでも、今は、この勝利の余韻に浸ってからでも良いだろう




ようやく、リン編の本編が終わった・・・
なんだかんだとこおまで来れました!

といっても、リン編が完全に終わった訳でもないですけど(^_^;)

まだまだ頑張っていきますのでこれからも凍土の剣とwhiterainをよろしく
お願いします!!

それと、来週の更新はお休みになります・・・
申し訳ないです

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