機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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佐藤大輔氏の御冥福をお祈り申し上げます。


第六十九章 海と爆薬

かつては全てが闇に包まれていた。

 

生と死の境さえもなかった。

 

海と風があった。

 

大地の持つ熱が思念を芽生えさせた。

 

それは全ての始まり。

 

それが全ての終わり。

 

そして新しい世界は。

 

古い世界が焼き尽くされた、灰の中に芽生える。

 

 

 

──U.C. 0079 9.18──

 

 

 

『こちらピークォード。目標、接岸』

 

 打ち付ける壁の様な波を越え、遂に上陸部隊がその身を大地に乗り上げさせた。砂浜を洗う白く泡立つ波を打ち砕く、鯨の様な巨体がその動きを止め、しばし休息するかの様に横たえた。

 遥か沖合を泳ぐ鯨から遥々と、海のタクシーのお出ましだ。大型の強襲揚陸艦にすら2隻程度しか運用出来ない水陸両用貨物輸送艇(LARC)が、実に6隻。予備を1隻残しての大盤振る舞いだ。これも"アサカ"にしか出来ない芸当だろう。その後ろにやや小型の揚陸艦(LS)が展開し、更に曳航された複数の"ヴィークル"が続く。木の葉の様に並みに揺さぶられる彼らの肚には大量の陸戦隊がひしめき合っている。世界を開き、光を溢れさせる扉の開くその瞬間を、今か今かと待つ、勇敢な猛者達が。

 それはまるで旧世紀の映像にあった、"デタッチメント作戦"の様だ。地上からの大歓迎こそないが、波を被り、ずぶ濡れになりながらその時を待つ兵士達は、今も昔も変わらない。彼らの軛が解かれる時、それは敵に打撃を与える時だ。しかし、それまでは、彼らは仕事が出来ない。波飛沫を蹴散らし、直走る"ジーク"からそれを見下ろす中尉は、彼らの無事を祈りながらフットペダルを踏み込んだ。

 

 飛び上がる"ジーク"の先で、上陸部隊は続々と続き、遂にそのハッチを解放、大量の人員と物資が目を覚まし、弾かれた様に動き出し、疾走り出して行く。その動きに無駄は無く、直ぐ様防御陣を築き上げていく。その隣には軍曹の"ハンプ"が、闇を引き裂き、付き添う様に援護射撃を行なっている。中尉は軍曹と上陸隊を挟み込む様に着地し、同じく持てるだけの射撃を開始する。

 画面を睨み、引き金を引きながら独り呟く。ここからが正念場だ。このデカイお荷物を守りきらなければ、この作戦は成り立たなくなる。その為に、ある程度の援護の後、遊撃を開始し敵から眼を逸らす事になっている。しかし、今は無防備な本隊を守らなければ。

 ここで叩ける分だけでも叩き切らなければ。そして、流れをこちらに持って来なければ。相手を戦闘の筋立てとはとても気まぐれだ。今こそ圧倒しているが、敵の総戦力が我が方を上回っている可能性は捨て切れない。この火力も長くは持たない。だからこそ、相手を先制し思い切りぶん殴り、向こうがやり方を忘れているうちに、続けて殴り続けこっちに優位な流れにしなければ。殲滅しなければ追撃される心配もある。それは大変気分が良く無い事だった。

 

『は、はは……本当に来やがった……来やがったぞ!!』

『お、お前たちは……』

『モビル、スーツ……だと……?1つ目じゃない!!我が軍のか!?』

『こっちで音がしたものですから!!』

『天使の、師団か……?』

『撃ち方ぁ!!始めぇ!!』

『撃ちぃー方ぁー!始めぇー!!』

 

 通信量がまるで決壊したかの様に増え、怒涛の如く流れ込んでくる。‪それに応えるのは、迅速に周辺へと歩兵を展開させた全方位無差別射撃による飽和攻撃だ。号令と共に爆発音と閃光が辺り一面を塗り替え、光の中、その一部と化した"ジーク"はグレイズシールドを煌めかせる。‬

‪ 各員が持てるだけの火力を正面にぶつける、凄まじい爆音のシンフォニーは、衝撃波を伴い環礁全体に響き渡り、戦場音楽とも呼べるあらゆる音が、ちっぽけな砕け散った亀の甲羅を揺さぶる。砲が火を噴く音、弾が空を切り裂く音、弾頭が炸裂する音、対象が砕け散る音、音、音、音……島全体が鳴動しているのは、火山活動とサンゴ礁から出来ているこの島には空洞が多数あるからだろう。吹き荒れる鋼鉄の嵐の如きそのホットアプローチは、彼等にどう届いているのだろうか。‬

 

「──いや、俺たちは、ただの……」

《勇気の鉄槌をくだす、名も無きヒーロー!です!!》

 

 本当の事を言ってもいいものか、言葉を濁す中尉を、伍長が勇み、継いで喋る。いや、叫ぶ。興奮気味のその声に苦笑しつつ、中尉も負けじと声を張り上げた。

 

「そう、だな……よし!勢いに乗って敵を叩き潰す!!敵に立ち直る隙を与えるな!!」

 

 周りがほぼ全て敵という手前、激しい攻撃を叩きつけ、その銃声は途切れる事を知らない。大小様々な轟音が混じり合う爆音は、暗闇を暴き出すマズルフラッシュを伴い辺り一面に新しい世界を生み出していく。巻き上がる砂、千切れ舞う木の葉が視界を塞ぐ事すら無い。それさえ食い破られ、無残に自然へと再び還って逝く。

 とっくにセンサーは飽和状態で、セーフティシャッターが掛かりっぱなしだ。それはまるで合戦で、鬨の声を上げ、ドラと共に足音をふみ鳴らし法螺貝を吹くかの様なお祭り状態だ。これではまるで、これから押し入る家の、玄関の扉を大声を出しながら叩く様なものだ。しかし、既に奇襲をかけ、遊撃を行なっている以上、大規模な本隊の行動と攻撃は隠し切れない。そのため隠密性を活かすコールドアプローチは不可能であった為、この様な展開となったのである。

 

 突然スピーカーが大音量で鳴り響いた。断続的な射撃音をBGMに、カンに触る不快な音と共にマイクを取ったのは艦長だった。何故と言う言葉を噛み砕き、その言葉を引き金を引く事で頭から締め出す。関係は無い。状況は進んで行く。ならば、その波に乗り遅れない様にする努力が必要だ。スペースノイドは波乗りをしないだろうから。

 それにしてもなんなのだろうか。まぁおそらく中継したバースト通信だろう。わざわざ繋いだものだと思われる。停戦や降伏でも呼びかける気か?ムダだと思うが…。

 

 しかし、その内容は、そんな生易しい物では無かった。武者震いを続けていた自軍の兵を鼓舞し、士気を上げるにはピッタリだった。

 

──導く準備は出来ている。

──従う準備も出来ている。

──弾丸は常に薬室に。

──誉大きは少数精鋭。

──諦める事は決して無い。

──力は全て勝利の為に。

──素早く静かに徹底的に。

──平和の為に力を振るう。

地球連邦海軍。此処に集う。

 

 ややひび割れた音が空気を震わせ、戦う男達を奮い立たせる。途中からは天地を裂かんばかりの大合唱だ。結成されて半世紀以上、かつての母胎を含めればそれ以上、伝統の海軍が名乗りをあげる。相手を決して生かして返さない。逃さない。そんな決意と殺意の塊をぶつけていく。凄まじい覇気だ。

 銃声を上回らんと鬨の声があがる。しかし、それを遮るかの様に、更に口上は続いて行く。

 

──海から生まれ、狗には非ず。

──誇り高き少数精鋭。

──殴り込みにて死地へと駆ける。

──先駆者たるは地獄の魔犬。

──備えは常に此処に在り。

──彼岸の淵こそ我等が舞台。

地球連邦海兵隊。此処に推参。

 

 朗々と響く声、続く爆発と上陸部隊の射撃、展開は続いて行く。バタバタと言う羽音に、"ジーク"のセンサーが"アサシン"の姿を捉える。空海陸の入り乱れた大盤振る舞いだ。その最中、その真ん中へ飛び込む機影があった。伍長の"ダンプ"だ。敵弾を恐れず、被弾を省みず、伍長は矢面に立つ。

 傍を飛び過ぎる弾幕の前に微動だにせず、伍長も声を張り上げ名乗りを上げた。砂浜や波を蹴立て、軽やかに立つその姿は、さながら戦乙女の如く。時折装甲を叩く弾丸と、当たる度に舞い散る火花は、その戦衣装を華やかに彩る化粧でしか無く、その声は、遠く、響いて行く。

 中尉には容易く思い浮かべる事が出来た。伍長の姿を。その表情を。

 

──挑む者に勝利在り。

──不可能は無く、右に出る者も無し。

──最高を超え、最強の者が勝つ。

──自らの意思で、どこまでも。

──先駆者達が道を拓く。

──我らの行く先は知っている。

──勝利の待つ所、其処に在り。

──運命との邂逅を果たし、我ら常に此れを守る。

地球連邦地上軍。此処に見参。

 

 何時もとは全く違う、その堂々たる姿に見惚れていた中尉も、思わずペダルを踏み込んだ。唸るスラスターが吼え、中尉を空の人にする。闇を彩り、風を切るかの様に投射された機体の上で、中尉はただ叫ぶ。

 自らの出自と、翼に、誇りをかけて。己が背中を守るイーグルレイ達と共に。

 

──勇猛果敢、支離滅裂。

──攻防一体、疾風怒濤。

──空を制して戦を制す。

──我ら常に嚮導す。

──航空火力による勝利。

──高い質こそ我が強み。

──如何なる時と、如何なる場所で。

──我らが飛べば、方舟の如く。

──平和を守りて空を駆ける。

地球連邦空軍。此処に在り。

 

 星となって、瞬きで唄う。ささやかでいて、偉大な言葉の様に。俺達が主役だ。それを叫び、世界に示す為に。世界を回すのは俺達だと。覇を持って、この場を制するのは我々だと、敵に教育してやる為に。

 再び動き出す状況に、回る世界に、疾走る風に、騒ぐ海に、受け止める大地に、刻み込んで行く様に。

 

「我等は新天地への先駆け!!我等に拓けぬ道は無し!!」

 

 スピーカーとオープン回線をそのままに、叫び声を引きずる様にして敵陣に飛び込み、後退の遅れた"マゼラ・アタック"を踏みつける。踏み躙り、ひん曲がった砲身を、左手で抜刀した"ビームサーベル"で切り飛ばした。撒き散らされる金属片には目もくれず、右手の"ツインバレル"を振り上げ、真っ正面に向け威嚇する。敵の真っ正面、弾丸は残り数発。普段なら絶対にしない自殺行為だ。だが、この前を睨みつける砲口こそが、最大の抑止力となる。中尉に迷いはなかった。

 モニターを通し、敵部隊の動揺が手に取る様に感じ取れる。一切の反撃が無いのだ。そして、慌てふためく様な動きにも統率は見られない。

──恐怖と、畏怖。遅れて続く動揺が走り、漣立つ様にして伝播して行く。援護射撃すら止み、静寂が戦場に舞い降りる。その中心に、確かに"ジーク"は居た。

 

 黒煙を掻き分け、黒衣を纏った白亜の巨人。怒れる鬼神は、雨に霞むその双眸を光らせ、燻る焔の中立って居た。

 小さな巨人が、煌めく刃と黒光りする大砲を携え、この場を支配して居た。ゆっくりとした、だが隙の無い、確実な動作。まるで、大気を震わす波が渡って行くかの様だった。

 

「各員!我は常に諸氏の先頭に在り!全軍抜刀!このブレイヴ・ストライクスに続け!!」

 

 振り切った腕をそのままに、返した左手で"ビームジャベリン"を振り上げ、喉が潰れんばかりに中尉は叫ぶ。シールド裏の閃光弾を撃ち上げ、そのまま機体を疾走らせ、突撃して行く。眩ゆい光を背に、"シェルキャック"が旗の様に翻り、風を受け靡き、揺れる。視線と切っ先は、ただ前へ、前へ!前へ!!

 敵を追い散らすその背後には数百の銃口が銃列を敷き、その口を開けている。その後押しを受けて。鋼鉄の巨人が前へと進む。

 

『当たって砕けろ!!』

『ナイトストーカーズは諦めない!!』

『SARヘリ出動!SARCAP開始!』

『部下たちを乗せろここから帰るぞ!!』

負傷者(WIA )からだ!安心しろ!全員乗れる!ゆっくり落ち着いて慌てず急げ!』

『帰りの足を待っているそうだな!!来たぞ!!』

『──はい!!』

『イーグルレイ301了解!上空援護に移る!』

『"ワッパ"も出せ!全部だ!!収容を急がせろ!IFFを忘れるな!』

『パワードスーツ隊は"リジーナ"展開を補助しろ!円周防御だ!迅速にやれ!』

『弾倉をくれ!!弾切れだ!!』

『着剣せよ!!』

『こっちだ!SARヘリが必要だ!!』

『いいか、誰1人残すな!!必ず、全員、連れ帰るんだ!!』

『赤外線ストロボには近寄るな、巻き添えを喰らうぞ』

『何処もかしこも歩兵だらけだ!!まるでアリじゃねぇか!!』

『衛生兵!!衛生兵!こっちだ!!早く!!』

『14番掩蔽壕応答せよ』

『この雨の中、9マイルは遠過ぎる!』

『関係無い!誰1人置き去りにしない!』

 

 全軍が一団となって駆ける。その中心で、中尉はいつまでも前を睨みつけ、その威容を示し続けていた。

 

 偉大なる地球連邦軍の、反撃の象徴となる様に。

 

 

 

『手を貸そう。捕まれ』

『大丈夫です!歩きたいんです!』

『あぁ、俺もそうだよ。行くぞ』

 

 本隊が戦闘を開始し25分。敵を蹴散らし、追い討ちをかけたが、深追いはしなかった。崩壊した敵戦線を食い破り、蹂躙に蹂躙を重ねたが、流石に敵の動揺は治まりつつあった。

 前線を押し上げると同時に撤退し、更に補給を終えた"ブレイヴ・ストライクス"は、再びその矢面に立ち、陽動を行う為動き出していた。補給と言っても、武器弾薬だけだ。MSの装甲はモジュラー方式を取っており、機体各部もブロック化している為比較的容易な全交換が可能な様に設計してあったが、前線での交換はやはり難しいのであった。

 

 問題としては、設備側とマシン側両方に存在していた。MSは地上においては全高18mに達する巨大建造物であり、横たえても高さ3m前後かそれ以上になる。メンテナンスベッドが無い場合は横たえると整備を行うメンテナンスハッチの多くが隠れてしまう為基本直立させたまま行う必要があり、無重力下ならともかく重力下では整備を行う際はMS用の塹壕に入れたり足場を組む必要があった。つまり、前線に大型重機の動員が必要な事があるのだ。もちろん大型重機にも限界があり、MSの野戦整備や野戦修理には本格的な整備施設より遥かに手間がかかることが一つ。

 もう1つは、MSという工業製品としての側面からだ。生まれたてではあるが、MSは高度な兵器としての規格の統一、平均化を図ってはいる。しかし、それにも限界があったのだ。パーツ1つ取っても単純に交換した所、パイロットから違和感やマシンからはエラーが報告されたケースが散見され、結果MSの装甲やフィールドモーターには蓄積したあらゆる状況がそのコンディションを左右する事が発見され、機体それぞれ、各部それぞれが持つそのクセ(・・)の平均化を効率良く行うためのセンサーがパッケージングされ、そのデータを汲み取る事で高い適合率を保つシステムが導入されたのだ。フィールドモーターであれば稼働時の出力、速度、角度、負担等であり、装甲であれば被弾時のあらゆるダメージや稼働時の歪み等である。フィールドモーター1つ取ってもただ回るだけの物では無く、それは装甲も同じで、表面にセンサーやカメラが装備されあらゆる材質で層を成しているMSの装甲は単純なパーツでは無くそれ自体が1つの複雑な工業製品であるのだ。これらのセンサリング機能は本来テスト機だけの物でありいずれ簡略化最適化が図られもっと単純な物になりテストも設計開発段階で終了する予定である。しかし、連邦軍のMSは先行量産とは言え試作機でありあらゆるデータが不足している昨今『生のデータ』を手に入れる最大のチャンスであるとこれらの機能が持たされており、特に多くの稼動部を抱えるMSにとっては死活問題である、各部の擦り合わせ作業に煩雑な作業が余計に追加され、どうしても時間がかかるのである。

 例えば、腕1つを丸ごと交換する場合、全く同じ物をもう1つ用意し交換しても、その腕が持つクセまでは再現しきれず、結果パイロットがいつもの感覚で操縦すると反応速度や駆動角度に差が出てしまいその機能を最大限に発揮出来ない所か、腕側と機体側でコントロールの差がエラーを出す可能性が高いのである。そこで、前者の腕のデータを後者に移す必要があるのであるが、テスト機でもある本機はそれに莫大な時間がかかってしまうのだ。

 おやっさんはその問題に対し、稼働している機体のコンディションをリアルタイムでモニタリングし、予備パーツの設定を常に状況に合わせ流動的に変更させる事で対応しているが、それでも本来戦闘やクセの把握においては必要無い膨大なデータを抱えている分、少なくとも数十分はかかってしまう。全体の作業量や手順を考えれば破格どころか神業的早さなのだが、最前線においてそれは死を意味するのだった。

 

 結局、前線における補給は、パイロットへの差し入れから、武器弾薬、推進剤の補給のみが現実的であるのが現状である。MSのパーツの交換においては、センサーやカメラを搭載していない単純な装甲や比較的簡単なセンサースイートの極一部、つまりはセンサー保護のシールド程度やダクトのフィルター等細やかな磨耗しやすい消耗品を交換するにとどまっている。これらも継戦能力向上のため、前線における大きくパッケージングされたパーツの交換を検討していた"オリジナル"の遺した遺産あっての事だ。"オリジナル"は超高品質なパーツ選定を行う事でその誤差を限りなく少なくする事でその手順を大きく省略しているが、本機はその検品で弾かれたパーツで構成されているのである。これらの機能は今後改良が重ねられていくだろうが、現状の限界がここまでであった。

 

「ブレイヴ01よりブレイヴ02へ。評価を頼む」

《こちらブレイヴ02。ブービーにも、全部、掛かった様だ。ワザと、見える様にした物にも、だ》

 

 敵の練度を推測していた軍曹の最終判断に、中尉は独りでにうなづく。概ね自分の感覚は正しかったらしい。今後の方針は決まった。後はやるだけだ。ここを支える為の、最も確実な行動を取る。それが大見得を切った俺達の義務だ。

 

「クロか。ありがとう……よし、上等だ。ブレイヴ03は"ガンズ・ア・ゴー・ゴー"隊とともに北西の角で歩兵と軽車両を相手にしろ!友軍を巻き込むなよ!ブレイヴ02はポイントシエラ64とポイントブラボー52の陣地転換中の"物干し竿"を!俺は基地の直掩に当たる!」

《ブレイヴ02。了解》

《03りょーかい!》

 

 少なくとも、敵の抵抗は弱まりつつあった。敵MSは確認されず、組織立った攻勢も無い。統制の無い散発的な発砲に、破れかぶれな自殺に近い突撃が増えて来ている。

 恐らく、こちらもコレが最後の遊撃となるだろう。今回は敵の戦力を削ぎ、時間を稼ぐ事だけを考えればいいのであるからだ。ここは絶海の孤島。逃げ場はどこにも無いのだ。後片付けをするのは俺達では無いのだから。

 

《ここです!!爆撃お願いしまぁーす!!》

了解(ウィルコ)。きっちり吹き飛ばしてやるぜ』

『こちらイーグルレイ201。グリーンライト。ストライク/CAP部隊は充分余力があります!どんどん指示して下さい!』

『衛生兵!!』

『こちらイーグルレイ401。雷雨は避けろよ?無茶すんなよな。あー、FORCAPも余力がある!既に航空優勢は我々のものだ。合流は2分後』

 

 しかし、それは生命の保障をする物では無い。狙いこそ甘いが、今も中尉の脇を音を立て死が飛び過ぎた。"ジーク"の後方で、まるでフィクションのアリジゴク型のエイリアンの様に、砂浜に大きなクレーターを作ったのは、恐らく山の上に陣取り始めた"物干し竿"の主砲だ。再装填こそ遅く連射速度に難を抱える主砲であるが、高初速、高火力で打撃力のある"マゼラ・アタック"と同じかそれ以上の主砲を持つだろう"物干し竿"は、MSにとって十分過ぎる程の脅威だ。少なくとも175mmと言う大口径の弾頭を喰らえば、MSと雖もタダでは済まされない。当たりどころによっては一撃で撃破ないしは擱座する可能性は十分にあった。

 中尉は動きを止めず、肉薄しようとする歩兵を蹴散らしていた。"マゼラ・アタック"はこちらの射程外からアウトレンジと言う名の阻止砲撃、いやめくら撃ちを仕掛けている。擾乱を狙った撹乱砲撃、嫌がらせに近い。しかし、その効果は薄いが、当たれば絶大だ。狙ってやっているのだとしたら、向こうには余程性格の()()ヤツがいるに違いない。

 行って脅威を排除したいが、本隊を開ける訳にはいかない。そこで中尉は囮役に徹し、軍曹が既に展開、側面から強襲をかけている。戦術データリンクで判明している砲兵陣地は残り2つ。破壊も時間の問題だろう。

 

『重傷者は動かしても死ぬだけだ。"ワッパ"を待つ。安定させるぞ!手伝え!!』

『こちらアーリバード4。高価値資産戦闘空中哨戒(HAVCAP)はもう必要無い。爆撃に回れ』

『こちらイーグルレイ601。同じくTARCAPも余力あり。雲の切れ間から爆撃します?』

『こちらアーリバード4。敵航空戦力の全滅を確認。イーグルレイ全機、CAP体制を解除し、C2及びプレッツ・エル2の指示に従い機銃掃射と爆撃を開始せよ』

『『了解!!』』

 

 中尉の搭乗している"ジーク"は隊長機であるため、全ての無線が流れ込んでいる。その情報の大河の真ん中に中尉は居た。あらゆる情報が逆巻き、うねり、弾け、そして怒濤の如く押し流されて行く。機械が処理出来ても、人間にはとても無理だ。しかし、最終的に判断を下さねばならないのは人間なのである。そしてそれは、下からの報告と上からの指示に板挟みにされた人間の仕事なのだ。

 そして、勿論中尉の仕事とは情報を管理する事では無い。

 

 人差し指を軽く動かすと、中尉の目の前で、メインスクリーンに小さな爆発の花が咲く。高速で射出された"100mmマシンガン"の榴弾(MP)が信管を作動させ、樹齢を重ねた大樹をも揺さぶる様な轟音と共に炸裂したのだ。弾頭は接近を試みていた敵歩兵の一個分隊に対し、己の持ち得るあらゆるエネルギーを解放した。目標を地形ごと丸々吹き飛ばしたのだ。暗闇の中、雨のカーテンの先、高性能なFCSの能力により正確に撃ち出された弾頭は、風に多少の影響も受けるも、ほぼ計算通りの弾道を描き飛翔し、設計通りの効果を発揮、瞬く間に複数人の人生に引導を渡した。血霧や肉片が撒き散らされ、舞い上がった砂が地に落ち、雨に流され、その残滓と呼べるものも、"ツインバレル"の銃口から立ち上る水蒸気だけで、それすらもすぐに見えなくなってしまった。

 

 雨を被る"ジーク"から、約450m先にいた彼等は、何が起きたかも分からぬまま宇宙まで吹き飛ばされたに違いない。魂は宇宙に、躰は大地に、それぞれ還って行ったのだろうか。深夜の、豪雨の中だ。遮蔽物の無い地形で、少しでも姿を隠そうと、血や肉片に塗れ、泥の中を懸命に這いずり回る姿は、"ジーク"のセンサーの前に丸裸にされていた。闇夜を見通す高性能赤外線センサーは、1km先、まだ熱帯雨林の名残に紛れていた時点で既に彼等を捉えていたのだ。ただ、攻撃における脅威度と優先順位が低かった事だけが、彼等の寿命を少しばかり伸ばしたに過ぎなかった。

 掩蔽壕などに隠れ、伏せて居ない限り、"100mmマシンガン"から撃ち出される榴弾は、半径15m内のソフトターゲットを確殺し、半径40m内においても戦闘続行を不可能にする致命傷を与える威力がある。徹甲弾(AP)であっても、MSの装甲を運動エネルギーで破砕する程の有り余るパワーは、直撃せずとも衝撃波と着弾の衝撃で人程度等簡単に捻り潰す。人の命が指先1つ、判断1つですり潰されて行くのを無感動に見下ろしながら、中尉はどこか頭の隅で、何故MSに搭載されている頭部機関砲弾が60mmなのかわかった気がしていた。

 

『だんだん載せる場所が無くなって来た』

『関係無い。可能な限り詰め込もう』

「ブレイヴ02。そちらはどうだ?」

《こちら、ブレイヴ02。問題無い》

「了解した。周辺を索敵後、独自の判断で撤退しろ」

《こちらブレイヴ02、了解》

 

 遂に最大の脅威であった砲撃が止んだ為、軍曹に確認の連絡を入れる。時折装甲を叩く小口径弾の高音が煩わしい。"シェルキャック"が損耗して来ている証拠だ。または、隠れていない、浮かび上がって見えるだろう装甲を狙っているか。どちらにしろ、もうあまり長くはここに居たくは無かった。

 雨はまだ降り続いている。戦闘も継続中だ。この終わりの無い2つを、中尉はただ忌々しげに睨みつけた。

 

《こちらC2。周辺戦力を傾けているそうです。間も無く航空隊による支援爆撃を開始します。なんとか持ち堪えて下さい》

「ブレイヴ01了解」

 

 魔女のバァさんの機嫌はかなり悪いらしい。畜生。かき混ぜる大鍋の具材がまだ足りないとでも抜かすつもりか。抗う事の出来ない、疾風の如き速さで、友人ハインが死者を追い立て、西へ西へと向かわせている。畜生、畜生。彼らは人として生まれ、景気良く撒き散らされ大地の一部となり、肥料として死んだのだ。調整された無機質な匂いが恐ろしい。人はどれだけ自らの手で直接人の命を奪っているという罪悪から逃避する為の技術をこれからも追求して行くつもりなんだろうか。

 やや間延びした金属音。まただ。"ジーク"の装甲を叩く小口径弾が弾かれた高音が響く。勿論、銃弾はコクピットに届くどころか、機械的故障(マシントラブル)を起こす事すら叶わない。しかし、それは敵の意思に他ならない。向けられた殺意に、中尉は鈍感になりきる事が出来なかった。

 

「……まるで弾丸を引き寄せる磁石だ…後どれくらいです!?」

『…ザっ──すtうい!』

 

 呼びかけに応じたのは、雑音混じりの騒音。作戦自体は計画通りに進んではいるが、その最前線にその余裕は無いという事だ。

 そう考えた中尉は、自分の考えに気づかされ、苦笑しながらフッと息を吐いた。どうやら俺は()()()()()()()()()らしい。なんとも能天気な事だ。

 

「なんだ?」

『──っ5分です…っ5…』

「5分もですか。よし急いでください!」

 

 そう言い切った中尉は、雨と闇夜を通してその様子を見下ろした。走り回る彼等は可能な限り、人命を救おうと奮闘していた。しかし、中尉に出来る事は、何も無かった。

 

 

 

撃ち方止め(シーズファイア)、撃ち方止め」

「周囲に敵影なし」

 

 あれから、敵の攻撃はパッタリと止んでいた。不気味な沈黙が、深夜の島嶼を包み込んでいた。今までのやかましさから一転、静止した様な時間の中で、雨が降る音だけが続き、時間が流れている事を中尉に伝えていた。

 操縦桿から手を離し、軽く伸びをする。素早くヘルメットを外して汗を拭う中尉は、それでも油断無く周囲を警戒し、最後に時を刻む時計を見ていた。作戦開始から既に1時間近く。状況は最終段階へと進みつつあった。

 

《…おわり?ですか、ね……?》

‪「戦闘に棄権も休憩もないぞ」‬

 

‪ 正確に言えばそれは間違いだが、中尉の経験上は正しくもあった。戦争中においても、兵士の仕事の殆どは待つ事にある。また、いざという時に全力を出す為には、休憩は欠かせない。人は高い持久力を持つ生物であるが、それとハイパフォーマンスはまた別だ。‬

‪ 中尉はあくまで釘を刺しただけだ。集中し続ける、緊張し続けられる人間は少なく、それは消耗を促す。休憩し、気を抜くタイミングを違えるなと言いたかったのだ。しかし、その事を細やかに説明する余裕は、今の中尉にはまた同様に無かったのである。‬

 

『部隊の集結を急がせろ。誰一人残すな』

『SARヘリも順次帰還中です。移送不可能な重傷者も幸い出ていないそうです。

──収容は8割がた終了しました。予定では3分後には』

「了解。円周防御を継続する。各員。警戒を怠るな……」

 

 通信を聞き、応答を返した中尉は、暗視装置起動時独特の、緑掛かったメインスクリーンで眼精疲労を起こした目を閉じ、鼻柱を手で揉み、そこで一度スイッチを切り替えた。つまり、言葉とは裏腹に、休憩に入る事にしたのだった。現在、戦闘は小康状態となり膠着している。"ブレイヴ・ストライクス"全隊は集結し、部隊の撤収を待つ状況になって居た。要するに、今やる事、出来る事が終わったのである。センサーもレーダーも敵影を捉える事は無く、C2、アーリーバード4からの情報も無かった。

 勿論作戦自体は続いているし、これからも仕事はある。だが、今はその順番待ちだ。あらゆる兵科が絡み合う大規模作戦に近づけば近づく程、全部隊の作戦の進行、部隊行動の擦り合わせと言う衝撃波が、渋滞を巻き起こすものなのだ。

 

 中尉は自分を「専門家」であると思っている。だからこそ他の「専門家」の仕事には余計な口を出さない。自分はその仕事に口を出せる程精通して居ないし、その余裕も無い。意味も無い。冷たい様にも思えるが、それが結局一番円滑に物事を進められるのだ。

 自らを「無能な怠け者」と考えている中尉は、チューブゼリーの開け口を捻りながら、ゆっくりと口を開いた。

 

「それにしても、だ。本隊が上陸してから、敵の抵抗が薄いな…それになんだこの違和感は?」

《練度も、低い。捨て駒だらけ、だ》

《まぁ強いよりいいじゃ無いですかー》

『この処置が終わったら、お前たちにマルガリータを作ってやる。いつものヤツ、よくシェイクして塩無し』

《こちらC2。この任務、両軍共に裏がありそうです。投降する兵士も多く、どこかおかしいそうです。ご注意を》

「──上等兵、おやっさんに繋げますか?」

《整備班長は特別調査チームとして加わってこちらに派遣されています。直接通信を繋ぎます。どうぞ》

「ありがとうございます」

 

 誰にでも見られる事は無いのであるが、独りでにうなづいた中尉は、やや緊張した趣でマイクに息を吹き込んだ。幸い声は震えなかったが、久々の感触に舌が少しもつれた。しかし、通信には差し支えなかった。

 

「……おやっさんはどう思います?」

《いつも以上にキナ臭い、っつー印象だ。なんか嫌な予感がしてわざわざ出張って来たが、まさか、と言った所か》

「そうでしたか。判りました。お気をつけて」

《おぅ》

 

 雑音の無いクリアな無線であったが、ヘリのローター音が喧しかった。ふむ。中尉は腕を組んだ。脚を広げ、フットペダルから当たらない位置へと下ろし、爪先を動かす。

 判らん。全然判らん。結局なんとなく取ってみたポーズは何の効果も無く、頭の冴えは訪れなかった。やはり、どうやら自分に権謀術数渦巻く戦場は向かないらしい。やはり兵士と言うよりは戦士、軍人と言うよりは戦争屋なのかも知れない。それを悪いとは思わなかったが。

 

《敵、弱っちかったですねー》

「む……でも、確かに、今までが激戦過ぎた所為もあるかもな」

『──衛生兵は神に愛されてる』

《この様な僻地に大部隊を派遣する程、ジオン軍も暇では無いのでしょう。それに、その余力も無いのでは無いでしょうか》

《MSがあるだけマシ…なんですかねぇ?》

「軍曹は?」

《情報が、足りない。察しは、つくが》

「そうか」

 

 結局、今は自分で自分を納得させるしか無かった。それにどうやら、結局、俺達はどうあがいても蚊帳の外、()()()になる事は出来ないらしい。しかし、どんな事柄でもだいたいそうである事に気付いた。それは、少し寂しい現実だった。ラクであるとも言うが。関わる事柄が、単純で少なくあればある程人は幸福でいられるのかも知れない。巻き込まれるのは確かに御免だった。

 巻き込まれる、か。好き好んでこの世界に踏み入った自分のこの台詞は、なんと傲慢な事だろう。しかし、誰に赦しを請えばいいのか。

 

《アレ?わたしは!?ねぇ!!ちょっとしょういー!!》

《さぁて、撤収の準備か。仕方無ぇ。よっしゃ、いっちょ気合いいれていっか!!》

()()()()

 

 状況に関わらず、ゆっくりと時間が流れる中、ただぼんやりと忙しなく動くカウンターだけを見ていた中尉は、その表面を無意識の内に撫でていた。ほんの数十分前は高度計として機能していたそれは、めまぐるしく数字を入れ替え、その存在アピールしていた。

 雨脚が少し強まった。こんな悪天候の中皆良くやっている。ヘリの羽音が聞こえる。タンデムローターが空気を叩く音。頼もしい音だ。

 

『SARヘリ全機帰還しました。周囲にはもう敵しかいません』

『収容までは今しばらくかかります』

『航空機全機へ。全力で爆撃を続行せよ!制限解除!ここを氷河期に戻してやれ!』

「よぉし。どんどん落とせ。デッケェ駐車場にしちまえ」

 

 閃光が疾走り、轟音が響く。地響きがそれを伝え、少し遅れて島の向こう側でおおきな火の手が上がった。島嶼の陰を切り取り、山の稜線を照らし出すそれは連続して起こり、まるで夜空を染め上げるかの様だ。

 センサーが様々な音を拾い上げる。砂を巻き上げる音、岩を砕く音、木を引き裂く音、葉を焼く音、風を振り回す音、水が蒸発する音……自然が掻き混ぜられ、悲鳴を上げる音だった。そこに、微かな断末魔が混じる。世界が、血を流している様だった。

 

 中尉は自然が好きだ。小さな頃から野山を駆け巡り、自然の中で己を見つけ生きていた。コロニーの様な調整された不自然な自然で無く、太古から続く、弱肉強食の掟が支配する世界をだ。彼はその一部だった。自然は彼に十分過ぎる程のあらゆるものをもたらした。彼はそれを受け取り、別のものにしてまた自然に返していた。彼はそこで生まれ、そこで生き、そこで死ぬものだと思っていた。現実は違ったが。

 もしテレビの前に座り、この光景を見ていたら憤慨するであろう。大切な自然を、掛け替えのない環境に何て事を、と。しかし、今の中尉にその様な感情は無かった。

 ただ敵を制し、支配し、吹き飛ばす力の一部である事を誇り、感謝していた。そして、心の底から来る原始的な破壊衝動に身を任せていた。そして、その麻痺した残虐性を持って、恐ろしいまでに冷静に、次の指示を出した。

 

「……上手くやってくれてる様だ。このままここで待機して迎え撃つ。外縁の敵は爆撃機隊が排除してくれる」

《炙り出されたのを倒す、ですね》

「そうだ」

 

 "ジーク"がグレイズシールドを光らせる。新たな獲物を求め、全機能を最適化して行く。それは中尉も同じだった。無意識の内に動いた指先がコンソールを叩き、センサーの切り替え、射撃モードの切り替え、そしてマガジンを交換する。

 弾頭は焼夷榴弾、通常榴弾、サーモバリック弾、白燐弾、フレシェット弾等の対人弾をカクテルの様に混ぜ合わせてある。この小隊が設立と同時に使い続け、改良が重ねられて来た、歩兵を逃さず鏖殺する為の特別メニューだ。効果は十分過ぎる程にある。

 

七面鳥撃ち(ターキーショット)ですかね?》

《ブレイヴ02より、ブレイヴ03へ。油断は、禁物だ。手負いは、特に、だ》

「了解。そうだな」

 

 "ハンプ"、"ダンプ"も同様だ。"ツインバレル"、"180mmキャノン"、"ハイパーバズーカ"。武器こそ三者三様だが、全て榴弾や特殊弾頭を装填している。敵戦力における装甲目標が壊滅した為、おやっさんの指示で弾頭が急遽変更されたのだった。勿論通常の弾頭も予備弾として装備はされているが、何時もとその配布量が逆転していた。

 

《はい!了解です。()()()()()()って事ですね!幸い弾にも余裕はありますし、このまま守りましょう!》

《間違えてますよ?》

《あれ?》

「……コトダマが鉄の雨を散らす。ショッギョムッジョ」

《ポエット》

《?》

 

 赤外線センサーが熱帯雨林の中で蠢く熱源を捉える。目標の解析が行われ、それが野生動物で無く、武装した敵であると判断する。距離1500。凡そ2個分隊。大気状況、距離、風向等のあらゆるデータが出揃い、中尉は目標をメインスクリーンに表示されたレティクルのセンター入れ、トリガーを引いた。マズルフラッシュが視界を焼くが、焼き付きは起きない。センサーが受光量を調節し、自動でカットしたらからだ。数瞬した後、レティクルの中に火花が咲き、熱源が飛び散った。飛び散った熱源は方々に張り付いたが、急速に周囲と一体化して行った。

 作業(・・)を続ける"ジーク"のメインスクリーンに、IFFが青く表示されたヘリコプターが映った。横殴りの暴風雨の中、危なげなく着陸し、空気を切り裂き羽ばたく反駁音を少しずつ落として行く。それが、脱出の為の最後のピース、この地獄から抜け出す為の切符だった。

 

『エイハヴより全隊へ!!全部隊の収容が完了しました!!こちらピークォード全部隊、グリーンライト!!』

「よぉし、ブレイヴ03、信号弾!」

《あいさー!そーれっ!!》

 

 闇を切り裂き、2つの光が事態の進展をもたらす。赤と白。強い光は輝きを増しながら、風や雨に流され揺れ動く。きっと、ここにいる全ての将兵が見上げているだろう。この閃光を。

 

《こちらC2、信号確認。"アサカ"に打電します。全部隊へ、『フライハイト』、もう一度繰り返す、『フライハイト』》

《イェェェェェエエ!!ガァァァァァアア!!》

「伍長うるさいぞ。やはり頭を打ったか?」

 

 作戦はついに最終段階へと入る。それこそ、この作戦の真の目的だ。

 目に見えない電子の波が世界を駆け抜けて行く。多くの意思が繋がれ、1つになる。

 救援を求めていた友軍全てを収容し、被害を最小限に抑える。そして…

──脱出。離脱。移動。後退。脱走。帰投。帰還。逃避。撤退。転進。撤収。退却……。なんでもいい。ここでは無いどこかへ。それだけだ。

 最も危険な時間帯が遂に来た。中尉は唾を呑み下し、小さく深呼吸した。ここからが本当の正念場だ。

 

《やはりって何です!?》

 

 うるせえ。

 

『脱出だ!!行くぞ!!』

『アーリバード4より全航空機へ。爆撃中止。爆撃中止。周囲に敵航空戦力は確認出来ないが、油断するな。脱出部隊のFORCAPに専念せよ』

イーグルレイ101(イーグルレイリーダー)了解。これより、イーグルレイ全機はイーグルレイ101の隷下に移行せよ』

『『了解』』

 

 轟音が鳴り響く。白い波を掻き分けるがLARC先導し、その側面を"ヴィークル"が固めた。頭上では爆音と共に"フライ・マンタ"がフライパスし、大きく円を描く様に旋回した。まるで凱旋だ。歓迎する者が銃を持ち、こちらに銃口を向けなければ正にそれだっただろう。しかし、現実はそう甘くは無い。

 コンソールを叩き地図を呼び出した。同時にアップデートが行われる。さらに複雑になった地形に、中尉は眉を顰めた。

 

 これから迷路の様な廻廊を通り抜け、環礁を出なければならない。小耳に挟んだ報告によると、戦闘、主に爆撃で塞がってしまった水路もあるらしい。坐礁しやすい水深の浅い所も多々ある。そして、敵の水上戦力こそ確認されていないが、方向を限定された撤退程危険な物は無い。両岸から雨霰の様に砲火が飛んでくるだろう。

 

──くぐり抜けられるのか?

 

『最大戦速で作戦地域を抜け出す。ここが正念場となる。抜かるなよ』

『こちらアーリーバード4よりエイハヴへ。旗艦が先導せよ。上空から誘導する』

『背後を"アサカ"陸戦隊に守らせ、徒歩で交戦地域を抜けてもらいます。それから"アサカ"に』

 

 次々と流れて行く状況に、中尉は思わず口を出した。我慢ならなかったのだ。

 

「"アサカ"陸戦隊?いえ!御言葉ですが我々"ブレイヴ・ストライクス"が守ります!!交戦地帯(ホットゾーン)を抜けたら、最後のLCACに飛び乗ります!」

『了解だ。噂通りだな。任せたぞ!』

「ブレイヴ01了解。殿につく」

 

 それだけ言い切ると、頭を切り替え操縦に専念し始める。鋼鉄の脚が地面を揺らし、足跡をつける振動に揺さぶられながら、中尉は先ほどの発言を後悔し始めた。まるで子供だ。隊長として相応しくない言動だった。全く。気が抜けている。なんでこんなに感情的な態度を取ってしまったのだろうか。

 

《皆さんの後ろはわたしたちにまーかせて!!》

『出発!!』

 

 LARCが列を成し、白い航跡(ウェーキ)を青い海に混ぜて行く。押し退けられた波は砂浜を洗い、マングローブの根を撫でる。複雑な地形故速度は出せないが、これ以上は落とせない。全員が固唾を呑んで、周囲に目を光らせながらついて行く。

 膝まで水に浸かった"ジーク"が、音を立てながら黙々と歩く。後方を警戒し、後ろ歩きを続ける"ハンプ"も同じだ。"ダンプ"だけが忙しなく海岸を走り、敵を見つけようと奔走していた。

 

 艦列、右手前方で閃光が瞬く。小規模な発砲だ。恐らく小火器。装甲に当たり軽い音を立て火花と共に弾かれた。

 しかし、その瞬間に"ヴィークル"、LARC搭載火器が反撃とばかりに火を噴いた。モーターが吼え、砲口が火を噴く。毎秒100発近い機関砲弾が熱帯雨林をズタズタに引き裂き、榴弾が炸裂する。火が燃え広がり、黒い影が倒れるのが見えた。そこへ"フライ・マンタ"が間髪入れず機銃掃射を行なった。遅れる事数秒、複数箇所でも発砲が確認されたが、同じ運命を辿る事になった。

 

「抵抗が無いに等しいな…」

《散発的な、小銃弾、か。RPGすら、無いのか》

 

 中尉は思わず呻いた。圧倒的な戦力差の前に、ジオン兵は文字通り一瞬で血霧と化していた。LARCは小型のCIWSを搭載している。それ以外にも重機関銃砲座が多数備え付けられた、海を行くガンシップなのだ。今回の作戦において激しい抵抗が予想された為、装甲火力共に増強されていたが、それは杞憂だった。しかし、だからこそ、これ以上に頼もしい存在はいない。

 

「そういや、撃った"マゼラ"が炎上しなかったな。おやっさんが調べたんだが、ヤツら、燃料がライター分しか無いらしい」

《そいつはぐっどにゅーすです!……なんで?》

「銃剣と勇気だけじゃ戦えないって事だよ。特に最近はね」

 

 先頭がまたライトアップされたかの様に照らし出されている。威嚇射撃かも判らないがともかく敵がそこかしこに潜んでいる事は判った。それが脅威を与えるかどうかはまた別だが。

 警戒を続ける中尉は違和感に目を細めた。ウェーキが薄くなったのだ。速度を緩めたのか?確認しようとした中尉はその正体に顔をしかめた。()()()()()()()()()()。その所為で白が目立たなくなり始めていたのだ。いったいどれだけの血が流され、この海を染め上げているのか。中尉は身震いした。

 

《ん〜。折角のジャングルクルーズなのに》

「すまんな。ムリ言って」

《ううん。いいんです。密林航海にうってつけの日って感じですし、ね?それに、それなりにハイキングも『楽しめなきゃ』、損ってもんですよ!》

 

 ハイキング、か。気づいているのかいないのか、伍長の能天気な声に、中尉はなんとか震える声を抑え、いつも通りに返答する。伍長の"ダンプ"は今や熱帯雨林を掻き分けている。木が軋み、裂ける様にして倒れる悲鳴を聞きながら、木々を力に任せ押しのける伍長は、発砲も受けていない様だ。中尉も考えを変える事にした。ただここにいて、こちら側にいる幸運を受け止めようとした。それは少しだけ成功した。

 

《油断、するな。最も大きな危険は、勝利の瞬間にある》

「そうだな」

『アーリーバード4からエイハヴへ。左に曲がれ。左だ』

《まぁ、数だけはまだ居ますしねぇ……あー…逃げてく……追います?

──無双は好きですけど、これは弱いものいじめみたいでちょっとヤですねぇ……》

『ありえねぇな、逃げてくぞあいつら』

『走るのが好きなんだろ』

 

──逃げるって、何処にだよ?

 

『ジャングルに逃げ込んだ?』

「ゲリラ屋のやりそうな事だ。前線が明確でなかったり、交戦距離が近くなると大火力の優位が無くなる」

 

……だからこそ、こちらも正面からやり合わず、まとめて吹き飛ばすんだけどな。

 

「しかし、深追いはよせ。ここに長距離通信手段などが無い事は確認済みだ。撤退後、"アサカ"が気化弾頭を搭載した巡航ミサイルで、海中の生態系に異常が出ない程度に焼き払うそうだ。掃討も必要無い。機密は漏れないよ」

《んー。了解しました》

 

 そうだった。結局彼等の運命は俺達が通信を傍受した時点で俺達により決定されていたのだった。中尉は彼等に小さく祈った。誰の為に祈っているのか。それはついぞ判らなかった。

 

 

 

「晴れて、来たな」

 

 雨は暫くして小雨になり、ついには上がった。気づいたのは、空が微かに白み始めているのだった。闇の様に深い藍色(ブルーモーメント)。もう夜明けが近い。

 環礁の廻廊ももうすぐ終わりだ。水路も広く深くなり、外海が近い事を囁いている。もう反撃はない。"ブレイヴ・ストライス"も既に後続していたLCACに乗り込んでいた。アーリーバード4によると、何故か環礁の反対側や、彼方此方に小規模な発砲炎が確認されたらしいが、こちらは静かなものだった。

 本当に、静かだ。ただ波を破る音と機関部の出す音、両脇で木々が焼け落ちて行く音だけが単調に響く。単調な音はその内音もしなくなる。無音だ。まるで、生と死の狭間の世界にいる様だ。河、燃え上がる木、それが雨で消えて行く。雨の中の、涙の様に。

 だが、俺達の最期の瞬間は今では無い。この世の哀しみ(ソロー)を、死の哀しみを振り切り、黙々と生へと、新たな哀しみへと向かい進み続ける、哀しみの1つ達(ガンスリンガーズ)。沈黙と哀しみに満たされた(ランナーズ)は、ひょんな事から破られた。

 

 

 

こっちだよ?

 

 

 

「なんか言ったか?」

《聞こえましたけど?》

「?」

《?》

 

 会話が噛み合わん。LCACの上で2機のMSが向かい合ってコレだ。さぞかしシュールな光景だろう。如何なるハイテクも、使用者が使用者ならこんなもんである。

 その時中尉の機体が反応した。中尉が驚く暇も無く、その反応は強くなる。

 

 

 

こっちこっち

あそこ

 

 

 

「まるで機体が引っ張ってるみたいだ。C2。気にかかる事があるんです。ポイントフォックストロット92、海底のスキャン、出来ますか?」

《難しいですね。暴風雨は収まりつつありますが、この機体にソノブイは積んでいませんし──》

《女の子は度胸!!》

 

 何をトチ狂ったか伍長が乗機共々海に飛び込んだ。LCACが揺れ、大きな水飛沫が立ち、またLCACが揺れ、その巨体が海に消える。あまりの事に口を開けた中尉は、言葉を絞り出すのが精一杯だった。

 

「おいぃ!!」

《落ち着け。時化でも、海中は、まだ大丈夫だ。環礁の、中でもある。生身でも、ない。安心しろ》

 

 軍曹の言っている事は最もだ。それぐらい学の無い俺にも判る。しかし問題はそれで無いのだ。

 

「はぁ。どやされるのは俺なのに……伍長?」

《凄いです!町があります!》

「は?」

《ブレイヴ03の言っている事は本当です。情報によると、ここにはかつて、火山活動により海に沈んだ町、"ピングタウン"が存在します。ブレイヴ03の言っている町とはその事でしょう》

《うわぁーい!!ディープブルータウンへようこそ!!》

『そういや聞いた事があるぜ?ここに沈んでる遺跡には、喋る魚やセイレーンが居て、オルゴールを鳴らしてるんだとよ』

『え?俺はここら辺を荒らし回った海賊達が宝を隠したって話聞いた事があるけどそれじゃないのか?』

 

 確かに、さっきも遺跡の様な物を確認したな。そいつは凄い。凄いが……。

 ここ、まだ敵陣のど真ん中だぞ?

 

『みんな詳しいな』

『ここ守ってんの暇でさ?研究所の職員と仲良くなる奴も多くてさ』

『私はその研究員ですし。とびっきりのお魚料理、必ずご馳走しますよ!』

『ネコの声だっけ?』

『マンモスとか恐竜って聞いたよ?』

『あーつまり、なんだ?オバケが引っ張ったのか?』

 

 一気に騒がしくなった通信網に、漣の様に笑い声が広がり、それは大きな笑い声として弾けた。その声は安心しきっていた。地獄から抜け出して来た、生者のみが発する声。救出に向かった身としてはとても心地良い声。未だに戦地ではあるが、既にここは人が生きる場所へと戻りつつあった。

 ここまで破壊し尽くされた自然が、輝いて見える。なんという人間のエゴか。

 

《……ここじゃない?》

「は?」

《こっち?》

『何がいるのかな?宇宙人とか?』

『人魚の伝説もあったっけか?』

『ここは不思議な土地でした。調査も中々進まず、未解明の事が多いんです』

《こっちだって少尉!》

 

 伍長はズンズン進んで行く。笑い声がまた大きくなった。中尉も苦笑を堪えつつ、センサーを切り替えた。うわ凄い。マジで町がある。

 

「こっちだってって…誰がだ?MSが蝶の夢でも見てんのか?潜水服じゃねーんだぞ?」

《え……囁くんですよ。わたしの中のゴーストが!》

「そうかよ……毒電波受信してんのかな。それともゴーストハックでもされたんかな?」

 

 やや辛辣な態度や言葉はともかく、中尉も少し抑えようの無いワクワクに支配されつつあった。MSに乗っていなければ大興奮していただろう。中尉は自然や生物も好きだが、廃墟や遺跡なども大好きだ。都市伝説は信じないが、そのワクワクだけを取り出して笑えるタイプでもある。昔から図鑑などに親しみ、テレビもその様な物ばかり見ていた。

 しかし、今はダメだと理性が好奇心にのしかかっている。悲しいかな戦争。それでも、と、これは索敵だからと心の中で言い訳し、警戒こそ怠らないが、同時に海底や動物のスキャンを始めた。いつもおやっさんの準備や先読みには驚かされるが、今回程それが冴え渡っていた事があっただろうか?流れ込む膨大な情報の奔流に心と身体が震える。

 戦乱が過ぎ、傷つきながらも、既に再び元の姿を迎えつつある目の前の楽園に中尉は目を見張った。

 

《どこまで行くのでしょうか?》

「周りの視線が痛くなってきた。おい!!伍長!!」

『じっと、待ちましょう。明けない夜は無いのだから。ここに古くから伝わる譜の一節です。待ちますよ』

『ここのサンゴ礁よりは断然若いですが、古くから続くワイズ海洋生物研究所のスローガンです!』

 

 中尉は心の底から、人はここまで自分勝手になれるのかと自己嫌悪しながらの発言がコレである。

 

《……ここなの?》

 

 

 

そう。

 

 

 

「おい伍長…何か見つかったか?…沈没船のお宝でもあったか…?」

《イルカでも、いたのか?》

『また帰って来ましょう。次の仕事は観察より先に彼らの傷を癒す事ですね』

『なんか、マヤンの伝承にある、風の導き手みたいですね』

 

 含み笑いを隠そうとしない中尉と、いつもと変わらない様に聞こえる軍曹の声。しかし、中尉にとっては聞いた事が無いくらいの呆れが混じっている事が判っていた。

 周りも楽しいお喋りを少し休憩し、地球連邦軍が有する唯一のMSを保有する特殊精鋭部隊、その隊員の声に耳を傾けていた。忍び笑いと共に。しかしその声に嘲笑の色は感じ取れない。むしろ結果を知りながらも、面白おかしく、暖かく見守る様な声色だった。

 

《そ、そうですね。自由研究の課題にピッタリですよ》

《えぇっと……しょ!少尉!!》

 

 世にも珍しい困った様な上等兵の声が、精一杯のフォローを試みて見事に爆死している。再び口を開こうとする中尉を、伍長の声が遮った。

 

「なんだ?大ウツボでも出てきたか?」

《ちがっ!!……ちゃいま!!……ば、爆弾です!!それも大っきいの!!》

 

 

 

ありがとう。でも、わたし疲れちゃった。

 

 

 

 

「光が……」

《ウミ、ホタル……》

 

 気がつけば、あの航跡が、本来の姿を取り戻していた。

 そして、白亜の航跡は、美しい光の帯と化していた。蒼白い、幻想的な光。明滅を繰り返す、海に溶けた天の河。いつの間にか空は晴れ渡り、月が再びその姿を覗かせ、柔らかな光を投げかけていた。

 

 

 

 

 

休暇がほしいな。とびっきりのね。おやすみ。

 

 

 

 

 

 

 やがて、あれだけ破壊された森の中からも微かな光が漏れ出した。まるで、もう一度燃える様に。その火の中、灰の中からもう一度産まれる様に。光はどんどん強くなり、遂には一斉に輝き、声無き声で歌う。鮮やかな翡翠色は、環を描き広がって行く。

 海の光と、島の光。種類の違う、名前だけがつなぐ彼等が、お互いに光を出し合っている。

──真の名前とは、まさか。

 

「還ろう、ゼロへ」

 

 独り、うなづく。魂の輝き。彼等もまた、故郷に帰ろうとしているのかもしれない。

 

 誰かが、歌い出した。静かな歌声が、それでいて、美しい歌声が、響き渡る。誰かが、続く。やがて、大合唱となった歌が、広がって行く。

 

 そして、月が傾いて行く。ジルバーシュトライブ(希望の光)が厚い帳を突き破り、太陽がその闇で地上を照らし出すまで、その輝きは消える事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

『君は僕であり、僕は君でもある。そして、同時に僕らは世界全体でもあるのだ』

『大いなる意志の元へ』

 

 

 

風が群青の海にそよぐ、そのときまで………。




ハクソー・リッジ、良かったですね。
神社があって、日本語が聞こえてって言うのが心にきました。
アジア・太平洋戦争最大の地上戦、あの南の島の激戦を忘れない為にも。過去を忘れた者に未来はない。しかし、過去に囚われてもいけない。

元々から治安の不安定だったとは言え、ミンダナオ島もまだ収まる様子は無く。
日本にも対岸の火事と言っていられない状況となってきました。

コレを書くにも、色々な「戦争」「紛争」について調べてきました。「兵器」もです。
だからこそ、世に平穏あれ、そう願います。



次回 第七十章 餞

「戦争も雨天中止ですか?」

ブレイヴ01、エンゲー、ジ?

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