機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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ようやくだよ。

設定がある分は細かく解説します。無い分はある程度補完します。




登場兵器紹介 MS ジオン編

MS-05A/B "ザクI"

全高:17.5m

本体重量:50.3t

全備重量:65.0t

出力:899kw

推力:40,700kg

最高速度:75km/h

センサー有効半径:2,900m

装甲材質:超硬スチール合金

 

 前期生産型"ザクI"は、"ザクI"の初期型として27機生産された機体であり、世界初の量産型MSである。

 U.C. 0074 2月に試作機(YMS-05)が完成、翌年7月に量産化が決定し、8月には1号機がロールアウトしている。開発にはジオニック社からジオン公国軍に佐官待遇で出向したエリオット・レムが携わっていた。

 U.C. 0078 11月に、27機生産されていた本機によって教導機動大隊が編成。月面のグラナダにおいて、開戦に向けての搭乗員育成や戦技研究、各種試験などが行われ、MSという兵器体系を確立した。このデータを基に、コクピット、装甲の材質や形状などの改良を施されたB型(量産型)の本格的な量産が行われ、"ザクI"の総生産数は793機に及んだ。

 MS-05Bは、教導機動大隊のデータを基に、MS-05Aのコクピットや、ジェネレーターをZAS社のZAS-MI8BからY&M社とジオニック社の共同開発であるMYFG-M-ESに変更、メンテナンス性や冷却・再出撃性を向上させ、更に装甲の材質(発泡金属、カーボンセラミック、ボロン複合材料等が試験的に限定使用されている)・形状などに改良を施した機体である。

 "ザクI"の本格的な量産型であり、総生産数は約800機とそう多くは無い。しかし、この段階で機体各部の動力パイプを全て装甲内へと内蔵したことによる冷却性能の低下、度重なる仕様変更、修正や改良を重ねた上でも指摘されたジェネレーター出力の低さから、十分な運動性能を発揮することが出来ず、ジオン公国軍は、本機の性能と生産性を更に向上させたタイプの開発を要求した。その結果、出力向上と冷却装置の強化、それに伴い性能全般が向上したMS-06 "ザクII"が完成する。

 結果、それまではただ単に"ザク"と呼ばれていたMS-05は、"ザクII"と区別するために"ザクI"もしくは"旧ザク"と呼ばれるようになった。本機は"ザクII"の登場により、"一年戦争"開戦時には既に型落ちとなっていたものの、生産されたほぼ全ての機体が実戦参加している。"ザクII"の配備が更に進むに連れ補給作業などの任務に回されることになるが、大戦後期になっても"ザクI"を継続して愛用したベテランパイロットは多く、"一年戦争"最終決戦の舞台となった"ア・バオア・クー"でも新鋭機と共に配備されていた。また、地上戦線にも数の不利を補うべく多数の"ザクI"が投入されている。

 "ザクマシンガン"はYMS-04の"100mmマシンガン"からやや口径を大型化した"105mmマシンガン"を使用するも、対艦攻撃にはややパワー不足である事が現場のパイロットから指摘されたため簡易改造で"120mmマシンガン"に改造する事が出来るキットが配布された。

 "ヒートホーク"はやや出力が低い4型を使用する。これは"ザクII"の使用する5型と比べ耐久性、溶断能力、生産性にかける嫌いがあり後に全て5型に更新された。

 

 

MS-06J "ザクII" J型 地上戦仕様

製造 ジオニック社

生産形態 量産機

頭頂高:17.5m

本体重量:56.2t

全備重量:74.5t

出力:976kW

推力:43,300kg

最高速度:95km/h

センサー有効半径:3,000m〜3,200m (大気状況で変化)

装甲材質:超硬スチール合金 発泡金属 カーボンセラミック ボロン複合材料

 

 MS-06J 陸戦型"ザクⅡ"は、ジオン公国軍の陸戦用量産型MS。本来、MS-06F 量産型"ザクⅡ"は宇宙空間だけでなく、重力下での使用も考えられており、そのままノンオプションで地上でも運用可能と言われていた。しかしながら実際に重力下で運用した結果、地形や気候の変化に十分対応できているとは言い難かった為、ジオン公国軍は地球侵攻作戦に向け、地上での運用を前提とした陸戦用MSの開発に着手した。しかし、ジオン本国のコロニー内という環境で得られる重力は遠心力による擬似的なものであり、また、陸戦用MSの本格的な試験を行うにはあまりにも狭い空間であったため、十分なデータを収集することができず、シミュレーションを用いても純粋な局地戦用MSの開発をすることは難しいという結論に達した。

 そこで、新たなMSを開発するのではなく、"ザクⅡ"F型に改修を施し、その仕様を陸戦型としたのが本機である。陸戦型"ザクⅡ"の開発は"キャリフォルニア・ベース"で行われ、生産は"キャリフォルニア・ベース"および月面都市"グラナダ"で行われたが、第一次地球降下作戦に参加した"ザクⅡ"の殆どがF型であった為、地球攻撃軍の工作部隊の手で、配布された改造キットにより現地に於いてF型をJ型として改修した機体も多数存在していた。本機はF型をベースに推進剤搭載量の削減や宇宙用の装備の省略で軽量化が図られており、外見上は、各部の姿勢制御サブスラスターや足裏のノズルの有無、ランドセルとバーニアの燃焼室をはじめとする構造等が異なっている。また、ジェネレーターを交換し、冷却機構の空冷化がなされたJ21-M3ESJを装備、インテークの防塵対策などの手が加えられ、稼働時間や機動性が改善された。モノアイを含めるセンサー類も大気圏内に適応出来る様改良が加えられ、モノアイガードにもワイパーが装着されている。脚部も対地センサー及びハードポイントを増設し、また、地上戦では不要と判断されたAMBACシステムも省略された。

 これらの改良や実戦データは同じく"キャリフォルニア・ベース"で開発されたジオン初の対MS戦闘及び地上戦を前提に開発されたMSであるMS-07 "グフ"に活かされたという。

 "ザクⅡ"本来の気密性は維持されており、短時間であれば水中や宇宙空間でも活動できるといわれたが、実際にJ型を宇宙空間で運用すると満足な機動はできなかったという。戦場が宇宙に移行した一年戦争末期には、J型を量産する必要が無くなり、本機の融合炉や武装、モノアイなどのコンポーネントは、MP-02A "オッゴ"等に流用されることとなった。

 中尉(当時の階級は少尉)が乗った機体は隊長機の証であるマルチブレードアンテナに、足の甲部分、胸部に対人火器として連邦軍製のM-60 重機関銃が装備され、またジオン軍はつけたがらなかった"Sマイン"が装備された。"Sマイン"は改良されアクティブ防衛システムにも転用可能な機能が搭載され、対人戦闘にも主眼がおかれたマルチロール機となっている。

 

武装

ZXM-1 100mmマシンガン

ZMP-47D 105mmマシンガン

 これらは"ザクI"からの装備で、ジオニック社製である。初のMS用武器であり、宇宙空間での対艦攻撃を前提に開発されたため、発射時の反動を制御しやすい電気作動式の機関部を採用、また薬莢もボトルネック式を採用している。パン・タイプと呼ばれるドラムマガジンを採用し、本体全長をコンパクトに纏める様に、という要求から側方給弾、対面側方排莢を行う。これはマガジン及びサイトシステムとの干渉を避け、MSなら排莢時の影響が少ないと考えられた為である。装弾数は145発。"ザクI"の主兵装であり、対艦攻撃以外にもマルチロールに扱う為、様々な弾薬が用意された。

 

ZMC38III 120mm"ザクマシンガン"

M-120A1 120mm"ザクマシンガン"

ZMP-50D 120mm"ザクマシンガン"

MMP-78 120mm"ザクマシンガン"

 "ザクII"用に開発された120mm"ザクマシンガン"である。上から3つはジオニック社製のマイナーチェンジバージョンであり、最後の物はMMP社製である。対艦攻撃用からMS攻撃用に変遷するにつれ、どんどん更新が続いたため、これだけのバリエーションが産まれたが、殆どのパーツの互換性はある為現地での混乱は無かったとされる。MMP-78には伸縮式ストックにアンダーバレルグレネードが搭載され、"一年戦争"後にも使われ続けたベストセラー品となった。至近距離に置いて平均的な"サラミス"級巡洋艦の装甲を貫く能力があるが、"マゼラン"級戦艦に対する対艦戦闘においては余りにも小口径であった。しかし、宇宙空間において高度な三次元機動を行うMSならば、的確に装甲の薄い部分に攻撃を集中させる事により、多大な戦果を上げる事が出来たもののそれには高度な空間認識能力、卓越したMS操縦技術等が必要であった。結果、中距離における対艦攻撃でも、"サラミス"級巡洋艦を一撃必殺出来る武器が求められ、"ザクバズーカ"、"シュツルムファウスト"が開発されるきっかけとなった。しかし、相対速度差が大きい中、高機動戦闘中に無誘導弾を当てる事も高い技能が必要であり、どのみち格闘戦を仕掛ける結果となったのは、皮肉なMSの宿命であった。

 弾丸もZXM-1 100mmマシンガン、ZMP-47D 105mmマシンガンと互換性があり、過渡期では薬莢は一時ストレートタイプが用いられ、それには完全燃焼スカートが穿かされていた。弾丸も各種用意され、徹甲(AP)弾、成型炸薬(HEAT)弾、粘着榴(HESH)弾、焼夷榴弾、装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)、通常弾、通常榴弾、対MS用ホローポイント(HP)弾、三式対空散(Type-3)弾、徹甲焼夷(API)弾、徹甲炸裂焼夷(HEIAP)弾などが代表である。"ザク"本体とはレーザー通信でリンクしており、FCSはその様に機能する。大型のパンタイプドラムマガジンにより装弾数は120発。大容量ではあるものの使い捨て前提のマガジンは整備性の低さや複雑な機構故に故障に悩まされ、装填不良も定期的に発生していた。弾種の増加に併せてマガジン内部で多種多様な弾丸をパイロットの指示通り選択し薬室へ送り込む物も開発されたが、重量の増加、コストパフォーマンス、整備性の悪化、装弾数の低下から廃れ、後の物はその大半が単純なローダーのみを装備した物になった。マガジンのみならず銃本体の更新や現地改修も多く行われ、ロングバレルやバレルジャケット、バヨネットの追加、更には射程や威力を犠牲にした上で取り回しを優先したショートタイプであるM-120ASも開発された。特に大きな改造が加えられたM-120ASは、砲身を短縮、フォールディング・ストック化、光学サイト廃止、機関部の設計許容範囲限界までのクリアランス拡大が行われ、砂漠での長期戦闘を前提とした全面改修が行われた。これ以外にもグリップの形状やマガジンの接続箇所等多くの細やかな更新が多数行われ、そのバリエーションは多岐に渡る。

 

MMP-80 90mmマシンガン

 MMP社製の対MS戦闘を主眼に置かれ、貫通力を高めるために小口径化が図られたタイプのマシンガン。構造的に余裕が持たされていた"ザクマシンガン"と比べかなりコンパクトにまとめられ、重量も大きく低減させる事に成功している。ストックが無い、または小型化されており安定性には欠けるものの、小口径化と装薬の改良により反動は小さく、集弾性の高さから命中精度も大きく向上し、以降のMS兵装開発に大きな影響を与えた。機構も単純性を重視した結果生産性も向上しており、"ザクマシンガン"の根強い人気を跳ね返しつつその多くが実戦投入された。対空戦闘や対地掃討、対艦攻撃にも用いられ、打撃力の低さはハイレートの連射力で補う形で補う事に成功している。問題視されていたストッピングパワーもその初速の高さで解決しており、結果的に"ザクマシンガン"を上回るベストセラーになった。大きな相違点として構造を単純化させコストを削減しつつ、携行数を増やす為にタワーマガジンが採用され、装弾数は32発にまで減ったものの弾詰まりや装填不良等の故障発生率は激減した。"ザクマシンガン"の数倍のマガジンを携行出来るようになった反面マガジン交換回数も増えたが、それ以上に柔軟な対応をMSが可能としていた事もあり普及、あらゆる戦場で利用された。また光学サイトを小型化、簡略化しコストダウンを図っている。オプションでアンダーバレルグレネードを装着可能。無誘導かつ小口径ではあるが取り回しのいい小型榴弾はMSの自由度の高さとマッチしており、複合小銃のコンセプトとして面々と連なって行く事となる。

 本兵装はあらゆる点から画期的な物ではあったものの、"ザクマシンガン"を完全に代替する事は不可能だった。また、ジオン軍はパイロットの意見をかなり優先するきらいがあり、結果兵站に負担をかけ、補給の混乱に拍車をかけると言う皮肉な結果も残している。戦場における弾薬の不符合は死活問題であり、"ザクマシンガン"程の豊富な弾種も用意される事は無かった。

 

H&L-SB25K 280mm"ザクバズーカ"

280mmA-P 280mm"ザクバズーカ"

 ハニーウォール&ライセオン社で開発されたMSサイズの無反動ロケットランチャー。後にジオニック社、ツィマッド社、ブラウニー社でライセンス生産された。元は先込め式のサイロ型だったが、あまりにも現場で不評だったため急遽生産された経緯があり、"ザク"側の更新が間に合わず使用にはOSの書き換えや再設定が必要だった。後に修正されたものの、MSの汎用性を大きく落とすこの事件は後のMS開発に波紋を呼び、ジオンが一時的な内蔵式固定兵装の開発に傾倒する要因になったと言われている。核砲弾、徹甲弾、成形炸薬弾、粘着榴弾等の多種多様な自己推進式無誘導ロケット砲弾を発射可能で、弾頭は一次推進薬で射出後、安定翼を展開し二次推進を行う。比較的高価であるが、使い捨て前提かつ急造故の単純な機構が功を奏し、無重力下及び重力下でも安定した稼働率を発揮した。"ザクマシンガン"と同タイプの光学サイトを備えており、基本は対艦攻撃兵装であるが対MS戦闘にも使用された。装弾数は前期型4発、後期型はバナナマガジンを上部に増設したため8発。"ザクマシンガン"の2倍以上と言う大口径が生み出す打撃力は"マゼラン"級戦艦をも中破させる破壊力を発揮し、"サラミス"級巡洋艦であるなら一撃で撃破する事も可能だった。しかし、弾頭は無誘導かつ低速である為確実な命中には大胆な接近が必要不可欠であり、その装弾数の少なさからもパイロットを選ぶ武器だった。開戦当初は生産が間に合わなかった結果中隊に2丁しか配備されず、持ち帰る事が厳守された。しかし、その貴重なバズーカを装備する事はエースの条件かつ特権であり、尊敬の的であったとされる。

 

ZIM/M・T-K175C "マゼラ・トップ砲"

 ツィマッド社製の175mm無反動砲。現地の工夫から"マゼラ・アタック"の主砲を取り外し、簡易的なグリップを取り付け使用したものが始まりである。後に正式採用されMS用火器としてブラッシュアップが行われ配備された。大型の多目的砲として用いられ、無重力下でも発射可能。装弾数は3発であるが、簡易改良でマガジンを増設する事が出来る。"ザクII"における最も長射程かつ打撃力を持つ武器であるが、長銃身、大重量、莫大な反動と問題が多く、機体への負担が大きかった。"マゼラ・アタック"や"マゼラ・トップ"では後方へスラスターを噴射する事でその反動を打ち消して居たが、MSの腕で保持し射撃する関係上その反動を抑え込むのは機体フレームへ大きな負荷がかかり、砲自身の命中精度こそ高いが、その反動をMSで受け止めるのは困難であり、結果命中率は悪かった。稼働率は高かったものの、"マゼラ・アタック"との競合もあり配備は思う様にいかず、また、ジオン軍にはMSに中長距離支援をさせると言う思考が無く、あくまで現場単位での運用であった事も災いし、徐々に戦場から姿を消していった。

 

"ヒートホーク"5型

 ジオニック社製の対艦攻撃用近接格闘兵装。刃をプレヒートさせ、対象を溶断破砕する。元は工兵用の施設破壊用デモリッション・ツールであり、高い打撃力及び破壊力を発揮する。元は直線的な刀身を複数組み合わせた形をしていたが、耐久性の向上の為半月状になった。結果生産性はやや落ちたものの、深く斬り込める様になり威力も向上した。その分装甲に食い込み抜けなくなる事案も発生し、打撃力を落としてもピンポイントでダメージが与えられる装備の開発に着手される結果を残す。グリップエンドにもプレヒート能力こそないものの石突が装備され、ハッチをこじ開けたり砲塔等を貫く為にも使用された。刀身部の特殊合金は発熱と硬度を両立するものの使用後激しく劣化する為、数回使うとエネルギーチャージが不能になる使い捨て兵器。対MS戦闘にも使われ、敵MSの盾を一撃で破壊する等猛威を発揮する。しかしながらリーチの短さや偏重量は打撃力こそあるが斬り返しには不向きであり、初撃を外したりいなされたり避けられたりした結果、敵の反撃に撃破されるケースも散見された。

 

Zi-Me/Triple Missile Pod MK.IV "フットポッド"

 ラッツリバー社製の3連装ミサイルポッド。"ザクバズーカ"と共用の280mm弾頭を用いるが、後にツィマッド社、ブラウニー社でライセンス生産された物は地上戦用に調整された320mm及び340mmの物に変更され、重力下における航続距離の推進強化と延長、弾道安定性を強化されている。脚部に装着し使用するが、簡易改造で腰部、シールドにも装着可能だった。レーザー通信で本体とリンク、ポッドに装備されたターゲットセンサーで目標を捕捉、使用する。ミサイルであるが、ミノフスキー粒子に対応した有線式であるわけではなく、誘導性能は低い。これは対艦用半撃ちっ放し兵器として開発され、精密照準の必要が無いと判断された結果である。そのため、目標をロックオンするシーカーを搭載しているのは1発のみで、その他2発は1発目の反射炎のスペクトラム・パターンに追従する用プログラミングされており、全弾発射しか出来ない分、1発あたりのコストを下げる事に成功している。しかしこの方式は後に口径の拡大と共に改善され、弾頭1つ1つにシーカーが装備された。

 

MIP-B6 "クラッカー"

 MIP社製の多段頭手榴弾。投合後分離し、広範囲へ被害を与える手榴弾。対戦車戦闘を前提に開発されるも、MSに対しても目くらましやセンサー系へダメージが与えられるため使用された。MSの汎用性の高さを示す兵装であり、通常型のハンドグレネードも用意され個人や戦術において柔軟な使い分けがなされた。

 

シュツルム・ファウスト

 ブラウニー社製の使い捨てロケットランチャー。小型で取り回しが良く、大口径なため威力も高い。簡単な構造のためコストも安く、コピーも簡単なため大量の模造品が出回った。しかし光学機器は一切装備されていないため、命中率は低く、大胆な接近が必要だった。

 

 

 

MS-06M(MSM-01) ザク・マリンタイプ

製造 ジオニック社

生産形態 量産機

全高:18.2m

頭頂高:17.5m

本体重量:43.3t

全備重量:60.8t

出力:951kw

最高速度::55km/h

推力:66,000kg(ハイドロジェット)

センサー有効半径:3,200m

装甲材質:超硬スチール合金 ボロン複合材料

 

 ジオン公国では地球侵攻にあたり、地球表面積の70%を占める海での作戦の必要性を重要視し、また地球連邦軍本部"ジャブロー"が南米アマゾン河流域にあることから、早期より"ザクII"の水中戦用化計画をスタートさせていた。これにより開発されたのが"ザク・マリンタイプ"である。

 気密性の高い"ザクⅡ"F型をベースに、ランドセルが水流エンジン付きのものに換装され、腕部には補助推進用のハイドロジェットが設けられている他、太腿とふくらはぎには浮沈のためのバラストタンクが内蔵されており、関節部には防水シーリングが施されていた。しかし、宇宙用のF型とは言え気密区画は限定されており、間接部を中心に大規模な防水加工が必要ではあったが、既存の装甲を利用しつつ改修された。また、頭部に予備動力パイプが配され、エアダクトと短距離通信アンテナが設置されている。

 固定武装としては頭部60mm機関砲を2門、オプションとしてブラウニーM8型4連装180mmロケットポッドを胸部に設置可能。携行武装としてはM6-G型4連装240mm"サブロックガン"が用意されていた。

 このように機体各部の動力パイプに頭部形状など"ザクII"のシルエットを色濃く残しているが、外装を始め水中での運用に対応するため全面的な改装が行われている。しかし、宇宙空間で活動する為気密性に優れていた"ザク"も、真空と水中と言う似て非なる環境、海水や水圧、防水の問題を解決する事が出来ず、開発は難航。"ザク"を水中戦用化するというプランは中止され、新設計の水陸両用MSの開発を前提としたデータ収集機の開発という方向へシフトした。

 計画こそ難航したものの水流エンジンのテストは順調に進み、多種の推定データを算出し目的を果たすが、水中での出力の低下が激しく、肩部シールド、スパイクアーマーの簡略化、胴体のフラット化、間接部を中心とした防水シールドの設置などにより機体形状も変更されたものの人型のシルエットが残っており、機体各部の露出したパイプに防水加工の不徹底さが水の抵抗を増大させたため、運動性が極めて低いことから、2機が増加試作された後、開発が打ち切られ、その後もごく少数のみの生産に留まった。しかし、後に水中作業機として再開発、増産されたとも言われており、結果やむなく戦闘にも投入されたとも言われている。

 このデータを基にツィマッド社主管のもとMSM-02水中実験機とMSM-03"ゴッグ"が建造され、"ゴッグ"が制式量産化された段階で、本機はデータ収集機としての役目を終え、倉庫に眠る事になった。

 当初の型式番号はMS-06Mであったが、水陸両用MSの型式がMSMに決定した後には、MSM-01の形式番号が与えられている。水陸両用MSの先駆けであり、開発の難航、様々な仕様変更に、慣れない地上という現場の混乱もあり、多数の名前を持つ結果となった。"水中型ザク"も本機を示す名の1つとされる。

 

 

 

MS-06K ザクキャノン

頭頂高:17.7m

本体重量:59.1t

全備重量:83.2t

出力:976kw

推力:41,000kg

センサー有効半径:4,400m

装甲材質:超硬スチール合金

武装

180mmキャノン砲

2連装スモークディスチャージャー

2連ロケット弾ポッド"ビッグガン"

120mmガトリング砲

120mmザク・マシンガン

クラッカー

 

 MS-06K"ザクキャノン"は、"ザクII"の右肩に対空砲を装備した機体である。もとは、地球連邦軍の航空機に対するために開発された対空用MSであるが、対地支援にも有効であったため、中・長距離支援用MSとしても運用された。宇宙でこそ無敵を誇ったMSであったが、地球上では敵航空戦力に苦戦する事も少なくなく、また"一年戦争"当時は飛行能力を持つMSは殆ど皆無であり、MS用の携行火器が必ずしも対空攻撃に適して無かった事も原因であった。"ドップ"制空戦闘機も航続距離、配備数、継戦能力にも限界があり、常に航空機の支援を受けらるわけでない以上、迅速な部隊展開のためにも対空迎撃能力を持ったMSが求められたのだ。

 そこで本機は"ザクII"をベースに当初はMS-06J-12として開発が進められていたが、対空砲搭載型バックパックの重量バランスの問題がクリア出来ず、使用目的も二転三転するなど開発は難航、一度計画は頓挫してしまうが、後に連邦軍のV作戦によって開発された"ガンキャノン"の情報がキャッチされ、それに対抗する形で中距離支援MSとして開発が再開、それまでに開発されたMSのデータをフィードバックする事により問題をクリアし、MS-06Kとして正式採用された。"ザクII"J型をベースとしながらも、中距離支援用への仕様変更や大重量化に伴い機体そのものにも大規模な改修が加えられており、長射程大火力を誇る右肩の180mmキャノン砲、増加装甲アタッチメント、バックパック左部に2連装スモークディスチャージャー、腰部の2連ロケット弾ポッド"ビッグガン"などにより形状は大きく変化した。頭部もモノアイは走査レールを全周囲型に改良され、それと同時に冷却系が強化され動力パイプは内蔵された。頭頂部にはサブカメラとマルチブレード・アンテナも装備し、監視システムにFCSも更新された本機は中距離支援のみでなく当初想定された対空迎撃においても優れた性能を獲得するに至り、ビーム砲搭載型の開発をも検討されるほどであった。パイロットの意見に添い、180mmキャノン砲を120mmガトリング砲に換装した機体も存在したとされているが、戦線では確認はされていない。

 また本機の特徴として、胴体部分に地球連邦軍系MSの意匠が取り入れられており、胸部には大型インテークが設置され、それに伴いコクピット前面のパネルと動力パイプの配置が変更され、照準システムとのリンケージが確保された設計となっている。また、"ザクキャノン"は右肩にキャノン砲を配置する都合上右側の視界が悪く、右側面はの対応は必然的に遅くなってしまう欠点があった。そのため右側のシールドは大型化されている。それに伴うトップヘビー化へのカウンターウェイトも兼ね、低下した機動性を補うため"グフ"を参考に補助推進器が脚部に搭載された。

 砲撃武装及び弾倉、給弾機構、管制システムがランドセルに集約されパッケージングされており、弾丸補充にはほかのMSの手を借りなければならず、運用に不便な点があった。バックパックは武装のアタッチメントにスモークディスチャージャーも集約搭載され、撃ち切った"ビッグガン"は任意でパージが可能であった。支援機故に携帯武器は通常携行しないが、"ザクマシンガン"ほか、ザク用の各種携行火器は流用可能である。

 運用は主に遮蔽物を利用した間接照準射撃だが、場合によっては直接照準射撃も行う。支援用としては極めて優秀な機体であり、本機のコンセプトは後にMS-12"ギガン"へ受け継がれている。

 "ザクキャノン"は試作された9機全機が北米で実戦参加したとされており、主に"キャリフォルニア・ベース"に配置されたと記録されている。しかし、アフリカ戦線や東南アジア戦線など、地球上の各地域での投入が確認されており、現地改修などを含めて、多くの"ザクキャノン"が生産されていたという。現地改修の代表として、砲撃武装をバックパックに集約していた事で実現したMS-06JK "ザクハーフキャノン"がある。"ザクハーフキャノン"は、"ザクキャノン"の180mmキャノン砲、ランドセル、右肩シールド等をオプション化し、MS-06J "ザクⅡ"に換装した機体。オプションは初期生産分の24セットの生産が決定され、セットの中には180mmキャノン砲と交換して装着する120mmガトリング砲も用意されていた。このガトリング砲を装備する際には、右腰のビッグガンが弾倉帯と干渉するため、左腰のビッグガンのみ装備される。この改造キットは現地で絶大な評価を受け追加生産が間に合わない程であったとされ、苦しい戦いを強いられるジオン地上軍を支えていた。

 東南アジア戦線では、地球連邦軍コジマ大隊に所属する第08MS小隊が、下半身を土中に埋めて砲台化した"ザクキャノン"と交戦したという記録が残されている。また、"オデッサ"では"サムソン"トレーラーに大破した"ザクキャノン"の上半身のみを固定した移動砲台も確認されている。

 

 

 

 

 

YMS-07B グフ

所属 ジオン公国軍

開発 ジオニック社

生産形態 量産機

全高:18.7m

頭頂高:18.2m

本体重量:58.5t

全備重量:75.4t

出力:1,034kw

推力:40,700kg

最高速度:99km/h(地上最大走行速度)

装甲材質:超硬スチール合金 発泡金属 カーボンセラミック ボロン複合材料

 

 ジオン軍初の地球環境、1G下における、より高度な陸戦運用能力及び局地戦に特化した対MS白兵戦用MS。ジオン地上軍は地球侵攻に向けてMS-06F "ザクII"を地上用に改修したMS-06J "ザクII"を投入することで対処した。しかし宇宙空間での運用を念頭に開発された機体の改修には限界があり、新たに陸戦専用のMSの開発が求められて完成したのが"グフ"である。

 "グフ"のプランは地球侵攻作戦によって制圧した北米"キャリフォルニア・ベース"で設計・開発が進められ、ジオニック社によって"ザクII"J型をベースにより地上戦に特化させたYMS-07 "プロトタイプグフ"が完成した。6割に近い部品の流用もあり、比較的短期間で開発に成功し、当初はMS-07 "グフ"とMS-08の二つのプランが平行して進められたが、MS-08プランはYMS-08A 高機動型試験機の5機をもってYMS-07A "グフ"のプランへ統合された。ただし、後にMS-08の型式番号を継承したMS-08TX "イフリート"が製作されている。

 実際の開発にあたってのコンセプトは、『"ザクII"J型以上の陸戦運用能力と、連邦軍のMS開発、及び鹵獲された"ザクII"との戦闘を前提とした格闘戦能力の充実』である。そのため冷却系を強化、脚部動力パイプを収納式とする事で被弾面積を小さくする事をはじめとし、胸部装甲の強化、"ザクII"では右肩に固定されていたシールドを取り回しの良い左腕部の外装式に変更、より格闘戦に適した装備形態となった。更に、機体本体への固定武装の追加、両肩に敵への示威効果だけでなく、敵MSの懐に潜り込み下から突き上げる様なタックル攻撃を想定し大型化したスパイクアーマーを備える等の改良がなされた。

 "ザクII"で問題となっていた装甲強度や運動性の向上を、装甲材質、フレーム、駆動系のパルスモーターから改良した事により、"ザクII"と40%のパーツを共通化しつつも文字通り"ザクII"とは違う機体となった。特に装甲は"ザクII"に比べて厚く、量産型でも、後に実戦投入された連邦軍のMSに標準的に搭載されている60㎜頭部機関砲の直撃に十分耐える装甲を持つ。また、後にジオン製のMSのスタンダードとなる着色層一体型傾斜機能複合材を初採用した事も大きい。これは旧世紀に一般化した技術であるアルミニウム着色技術に発想を得たもので、これにより装甲、塗料が一体化し、更に防蝕機能、電磁波遮断機能など多機能性を持たせ、機体の軽量化に貢献している。

 機動力の面では、陸上における運用のためラジエーターの大型化とともに機体の軽量化が図られ、強化された脚部は新型の二足歩行システムをはじめとし陸戦を徹底的に追及し、ジャンプ補助兼格闘戦用のサブスラスターも採用された。また、新型バックパックはYMS-08A 高機動型試験機のデータを基に製作され、短距離ダッシュ能力は大幅に強化された。これによって"グフ"は"ザクII"より20%以上の性能向上を果たした。これらにより総合的な機動性能そのものを向上させるだけでなく、突発的な事態に伴う機動性低下へも対処されている。

 量産化にあたり試作型からの主な変更点はモノアイスリットを前方のみとしたこと、脚部の動力パイプを内装式としたこと、脛部にスラスターを追加したことなどである。本体は予定されていた固定武装の開発よりも先行して製造されたため、通常のマニピュレーターを装備した試験型テストタイプ のYMS-07AがドダイYSとの連動テストや局地での可動データ収集をおこなった。この機体のテストデータを基に初期生産型であるMS-07Aが32機が先行生産されている。両腕の固定武装は試作型であったYMS-07Bで標準化され、その後に標準装備型のMS-07Bとして本格的に量産化されている。試作型は標準装備型と基本的に同一の仕様だが、ファインチューニングを施されていたため好成績を挙げている。本機は開発当初からMSの行動可能半径の増大が課題とされていたため、重爆撃機"ド・ダイ"YSとの連携攻撃を考慮されていたおり従来指揮官機用だった頭部通信アンテナ(ブレードアンテナ)を標準装備としているのが特徴である。

 YMS-07Bは対MS戦用の左腕部内蔵式5連装機関砲、右腕部に"ヒートロッド"をはじめとする固定武装を追加装備したYMS-07の3号機以降の機体を実戦投入したもので、この機体の仕様が本格量産型の基となった。"ザクII"の生産ラインに替わって量産化された"グフ"は、"ザクII"の後継機として量産が進められ、"ドム"が開発された後も"オデッサ"や"ジャブロー"での戦闘に大量に投入された。白兵戦を重視した本機は高性能で、熟練パイロットに特に好まれたが、一般パイロットには扱いづらく、操縦性に難点があった。また、多くの内蔵式固定武装は白兵戦時の取り回し及び機体の前面投影面積を大幅に減少させる事に成功はしたものの、接近戦用に特化し過ぎた結果汎用性や整備性に欠けたため、改良型のMS-07B-3では通常型マニピュレーターに戻されている。

 本機を母体にMSを飛行させる計画が進められていたが、計画は芳しい結果を出さずに終わった。しかし、副産物としてMSのホバー走行にめどが立ち、ツィマッド社の"ドム"でMSの行動半径拡大という目的は達成されることになる。以後陸戦用MSの生産の主体は"ドム"に移ったが、一部の熟練パイロットはその後も、垂直方向への機動力が高く、より立体的な3次元機動を可能とする"グフ"を好んでいたようである。

 右腕部に装備された"ヒートロッド"は対MS戦闘用に開発された特殊兵装で、全長18mにも及ぶ伸縮する特殊金属による多節鞭である。鞭自体の発する熱によるダメージに加えて、電撃を送り込むことによって敵MSの電装系をショートさせるか、パイロットを感電させる事で行動不能に追い込み、鹵獲するための兵器である。また、打撃武器としての性能も併せ持っており、車輌やMSの装甲も破壊出来る他、不規則な軌道を描くため回避が困難であるという特性もあった。この"ヒートロッド"に端を発する装備は現地で高い評価を得、改良型としてロッド部分をワイヤーに変更、先端に電磁石を取り付けた物や、爆薬を取り付け地雷除去専用にしたものなど多くが開発された。

 左腕部内蔵式5連装75mm機関砲も同じく対MS戦闘及び、MSが苦手とされる対空戦闘を前提に装備されたものである。手持ちの大型の武器は前面投影面積を増加させ、また白兵戦時の取り回しには難があった。更に、格闘を仕掛ける際、武器を格納、投棄、持ち変える事なく格闘兵装を構えつつ、牽制を始めとする射撃や対地掃討に使用可能にする為である。つまり、右腕部、左腕部を完全に作業を分担させる事により、より有利な状況に立とうと装備されたのである。口径の75mmは、対航空機、対車輌及び近距離における高初速と装甲への貫徹能力を考慮した結果であり、"ザクマシンガン"ではオーバーキルであった対車輌戦闘においては概ね高評価であった。対MS戦にはストッピングパワー不足が指摘され事があったが、単発での火力や継戦能力には劣るものの、砲身数と連射性能による瞬発火力及び面牽制制圧効果は高く、集弾効果によりスペック以上の火力が発揮出来た。またその特性はMSが苦手とされる対航空機戦において最も発揮され、その対空性能を買われ"ド・ダイ"YSとの連携運用が考案され、実際に戦線に投入された。

 問題としては操縦系統が煩雑かつ複雑になってしまった事、内蔵式かつ左右非対称の設計は生産性、整備性を低下させ、複雑かつ短小なマニピュレーター自体を砲身とした事で汎用性、装弾数、命中率、射程距離などあらゆる性能が犠牲となってしまった事である。戦闘中に弾切れを起こしても迅速な補給は不可能であり、基地に帰還し補給する必要があるもあるのも問題であり、デッドウェイトの増加にも繋がってしまっていた。命中率に関しては、マニピュレーターの親指に当たる部分を射撃用センサーとし命中率を底上げしたバージョンも開発されたものの、後にオミットされ、別ユニット化される結果となった。しかし、後のMSを見ると腕部に内蔵火器を搭載したものは多く、"ヒートロッド"と合わせ、MSという汎用性を重視した兵器において特化型を開発すると言う大きなブレイクスルーをもたらした設計であると言える。これらの兵装は、MSに関しては先見の利があるジオンであるが、そのジオンにおいても対MS戦はトライアンドエラー、試行錯誤の連続であり、この様な兵装が試験的に装備され、実戦に投入されている。

 マニピュレーター部は"ザクII"と共通であり、"ザクII"と同じ装備が使用可能。それに加え、"グフ"には専用の格闘兵装として"ヒートソード"が用意され、対MS戦闘において猛威を振るったとされる。

 "ヒートソード"はシールド裏または腰部背面に装備されている格闘武器。多数の種類があり、最初機型は"ビームサーベル"のテスト型であり、収納時は柄のみの状態だが、形成された刀身により相手を溶断することが可能。しかし、ジェネレーターの出力不足にIフィールドを投影しメガ粒子を安定させる事が出来ず、代用として特殊な形状記憶型の高分子化合物の発熱体を使用したがそれでも安定させる事が出来なかった。そのためごく一部のみの配備にとどまった。

 その後"ヒートホーク"を強化発展させた形で、セラミック系赤熱体の刀身をプレヒートする事により対象を溶断する量産型の"ヒートソード"が開発されたが、ベテランパイロットには依然として"ヒートホーク"を装備する者も多かった。しかしながら"ヒートソード"は限定的ではあるがエネルギーの再チャージが可能であり、またプレヒートしなくてもある程度の斬撃能力があった。重量配分や重心の位置の関係上純粋な打撃力こそ"ヒートホーク"に劣るが、斬撃や切り返しの速さ、リーチの長さにはこちらが長けており、現地での評価は高く約2倍のサイズを持つ試作型"エクスキャリバー"も開発されたが、"ビームサーベル"の開発の目処が立ちごく少数の生産に留まった。

 シールドはマウントを介し接続するかマニピュレーター対応ハンドルを用いるかが選択可能であり、これは防御面を自由に変更出来る上、不要になった際は投棄が可能であると、"ザクII"の肩部接続式より運用柔軟性に秀でていた。

 "グフ"は、鮮烈なMS開発競争の発端を飾り、その過渡期を戦ったMSではあるが、その速さ故、十分な性能を持ちながらすぐに主力の座を奪われてしまった悲劇のMSである。しかし、その設計思想が与えた影響はかなり大きく無視出来ないものであり、まさに"一年戦争"におけるMS開発の背景を埋める"喪われた環"(ミッシング・リンク)であると言えるだろう。

 

 

 

MSM-03 "ゴッグ"

頭頂高:18.3m

本体重量:82.4t

全備重量:159.4t

出力:1,740kw

推力:121,000kg

最高速度:25km/h

装甲材質:超硬スチール合金 チタン・セラミック複合材

武装

キアM-23型メガ粒子砲×2

魚雷発射管×2

アイアンネイル×2

フリージーヤード

 

 "ゴッグ"はツィマッド社が開発した、ジオン公国軍の量産型水陸両用重MS。MSM-03-1"プロトタイプゴッグ"を経て、水陸両用MSとして初めて量産化された機体である。ジオン軍水陸両用MS後発機が全て通常の人型フォルムからかけ離れているのは水中航行の水の抵抗を考慮し、武装の全てを内装・固定式とし、汎用性よりも火力と攻撃力、及びステルス性を重視し、水中での稼動率を向上させることが優先されたためである。また、水中での一般作業は"ザク・マリンタイプ"に任せ、海上でのシーレーン確保や沿岸でのゲリラ戦、及び破壊活動ではもっぱら"ゴッグ"をはじめとする水中戦闘に特化した専用機に任せるという方法がジオン軍内部で広まりつつあったのも、水陸両用MSが"ザク"系をはじめとする汎用型MSとは別の進化の道を辿った一因でもあった。

 水中での最高速は70ノットで、機体各部に設けられたインテークから取り入れた海水を利用する熱核水流ジェットによって航行する。この熱核ジェットはハイパフォーマンスを発揮したため、後に"ドム"へと改良され取り付けられた。

 腕部にはフレキシブル・ベロウズ・リムと呼ばれる多重関節機構が採用されており、水中航行時は伸縮し、脚部と共に胴体内に引き込むことで抵抗を軽減する。また、一つ一つをブロック化する事で高い守備力、対水圧性能を持つに至り、後々ほぼ全ての水陸両用MSに採用されるに至った、

膨大な水圧に耐えるため装甲は厚く、機体構造自体も頑強であり、本機体の特徴はツィマッド社の装甲技術が生かされた重装甲と言えるだろう。

 材質は超硬スチール合金とチタン・セラミック複合材であり深度200mの水圧にも耐えるその装甲はバルカンやミサイル程度の実弾兵器を受け付けない強度を誇る。 が、その反面ビーム兵器の前では無力であり重装甲故に動きが鈍る陸上ではビーム兵器のいい的であった。この重装甲に加え、大量の冷却水を積載するため地上での動きは鈍く、冷却システムの構造上、地上における作戦時間は1~2時間程度であったと言われている。このため、"ゴッグ"は上陸侵攻作戦などで多くの戦果をもたらしたものの、MIP社が開発したMSM-07"ズゴック"が水陸ともに高い性能を示したため、急速に主力の座を譲ることとなった。

 後に統合整備計画によって再設計され、装甲を犠牲にする事によって機動性を大幅に改良し、元の機体コンセプトから全く別の機体となった"ハイゴッグ"が登場している。"ゴッグ"の武装は全て固定武装となっており、腹部には"プロトタイプゴッグ"と同様のキア社製のキアM-23型メガ粒子砲と魚雷発射管が内蔵されている。また、"ゴッグ"はビーム兵器を搭載、運用するために高い出力を引き出すジェネレーターと、それに見合った冷却システムを持つ必要があった。しかし、ビーム兵器のMSへの携行がまだ実験段階にあったジオン軍ではエネルギーCAP技術が連邦軍よりも遅れており、実用化に手間取っていたが、"ゴッグ"においては活動の場所となる水中に天然の冷却材が豊富に存在する特異な環境を逆手に取り、冷却システムに水冷式ラジエーターを採用し、高い冷却能力を持たせることでジェネレーターの出力を高め、ビーム兵器を充分に稼動させる程の出力を得ることに成功したのである。上陸時に冷却水を貯めるためのバラストタンクを内装するためのレイアウト変更もあり、人型から離れた特異なフォルムを持つ一因ともなった。しかし胴体内蔵式の武装は使い勝手に欠け、攻撃の為には胴体ごと向き直る必要があり、後の水陸両用MSには腕部に武器が搭載された。

 こうして、安定した高出力と高い冷却能力を持つ"ゴッグ"はジオン軍MSとしては初めて、ビーム兵器の搭載に成功した。後に普及するエネルギーCAP式と違い、ジェネレーター直結型式のメガ粒子砲を腹部に二門装備する。連射は不可能だが、MS単体に高い火力を持たせることが可能となったのである。しかしこのメガ粒子砲は収束リング、加速器、チャンバーに問題があり、高出力射撃や収束したビームを撃ち出せず、結果広範囲に打撃を与える拡散ビームとなった。メガ粒子砲は上陸時において前面の敵部隊や軍事施設の破壊に使用され、新装備"アイアンネイル"と共にその威力が期待されていた。

 腕部は従来のマニュピレーター式から、斬撃武装として使用可能な"アイアンネイル"を初めて採用した。"アイアンネイル"はチタン合金で形成された爪型マニュピレーターで、奇襲作戦時において敵水上艦艇や湾岸に点在する軍事施設の破壊にその威力を発揮し、実態弾武器やビーム砲と異なり、出力や複雑な射出装置を必要としないローテク兵装でもある。"アイアンネイル"は水中におけるマニュピレーター方式の抵抗の大きさ、繊細さに対する反省から生み出された水中用MS特有のもので、MSの売りの一つであった作業性は失われたが、単体での格闘戦能力は大幅に向上した。大戦後期に連邦軍がMS配備を開始し、MS同士による戦闘が頻発した後も対MS用格闘武装として使用することも可能だったため、パイロットからは概ね好評であった。"アイアンネイル"は水上艦の船底を破壊して魚雷を使わずに破壊・撃沈させることや、航行中の敵潜水艦の外殻に穴を穿つ、といった芸当から上陸した湾岸での港湾施設やコンビナートでの破壊活動にも使える装備であり、ルナ・チタニウム装甲に穴を開けるほどの鋭さと強度を持っていた。魚雷などの装備に限界のある"ゴッグ"にとっては最大の武器、といっても過言ではないだろう。

 また、武器としてだけではなく、その硬度と強度から両腕の"アイアン・ネイル"を重ねることで簡易シールドとすることも可能であった。

 頭頂部には"フリージーヤード"というカプセルに収納されたゲル状の物質が搭載されている。これは航行時に頭頂部から発射して機体を覆うことで、機雷や爆雷を無効化することができる、一種のゲル化装甲である。元々は脱ぎ捨て可能な"イルカ肌"として開発されたものであるが、副産物として"フリージーヤード"には、ソナーによる探知を低減する効果もあった。

 海上や海中に敷設、浮遊して"ゴッグ"潜水部隊の行く手を阻む磁気機雷は全てこのゲルに絡め取られ、無力化される。微小な衝撃で機雷が爆発したとしてもゲルで衝撃が半減され、"ゴッグ"本体にはダメージを及ばせないなどの効果もあり、ゲル装甲としての役割を果たした。また、機雷を無力化するだけではなく、ゲル化剤にはステルス材が混入されており、これによってソナーに映りにくくなるなど上陸用の特殊兵器としてその威力が期待されていた。だが、"フリージヤード"展開時にはウォーターインテーク閉塞の危険性があるため長時間は使用できず、使用後は速やかに排除する必要があった。またゲルを取り込まないためにハイドロジェット・エンジンを停止させる必要があり、あくまで歩行が可能な水深の低い海岸や湾内での上陸準備における機雷の排除や軍港の湾内に張り巡らされたソナー類の無力化などに重点を置いた兵器であった。従って、"フリージーヤード"展開時は海底を歩いて移動するという形が取られる。上陸時には機雷が絡んだゲル装甲を除去剤で取り除かなければならないなどの煩雑な面もあったが、ステルス性を向上させ、"ゴッグ"潜水部隊の後に続く友軍上陸艇や潜水艦の安全確保におおいに役立ったと言えるだろう。"ゴッグ"には"フリージヤード"を除去するための除去薬剤も搭載され、上陸時に機体頭部に設置された噴出口から薬剤を流して"フリージーヤード"を化学的に分解させる。粘度は保たれているため、絡まった機雷を反応させることなく除去することが可能である。




順次更新して行きます。

案外少ないですね。

旧ザクでもだしゃ良かったな。

↑旧ザク始めました。

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