機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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色々忙しかったのと、ケータイの故障でものすごく更新が遅れてしまいました。申し訳ございません。

飽きちゃったお方もぜひ。久しぶりなんで出来は今ひとつかもしれませんが………

てゆーかまだケータイ調子悪い………。


第五十八章 ターゲット・イン・サイト

激戦を経た地は、何かが違う。

 

地理的に、戦略的に重要なだけでない。

 

何かが、違うのだ。

 

幾度も数多の血を吸い、肉片を喰らい、魂を縛る。

 

戦場跡は、決して戦場跡では終わらない。

 

 

 

U.C. 0079 8.31

 

 

 

見事に晴れ渡り、雲一つ無く真っ青な空がどこまでも広がる。

 

太陽は照り、辺りを輝かせ、その放射する熱が陽炎を揺らめかせる。

 

草木は青々と茂り、久しぶりの太陽に挨拶をしているようだ。

 

《作戦開始時刻です》

「よぉし!!"ブレイヴ・ストライクス"出撃だ!!各員!遅れるな!!」

《りょーかい!!》

《ブレイヴ02了解……出撃する……》

 

その木陰で、草木を踏み倒し、大きな足跡をつけつつ立ち上がるMSがあった。

 

《ウィザード01より各機へ。現在のミノフスキー粒子濃度は58。レーダーは使用不可能です。しかし、敵基地は高い警戒レベルを維持している上、この天気です…

ここが正念場となります!!各員、気を緩めないようにして下さい!》

「ブレイヴ01了解!!」

《ブレイヴ03りょっかい!!》

《ブレイヴ03了解……》

 

上等兵の言う通り、この戦いが"オペレーション・ターゲット・イン・サイト"、最後かつ最大の戦いになるだろう。

 

今までこちらに味方し、姿を隠してくれていた霧はもう無い。

 

真っ正面からの激突だ。

 

敵も全戦力を投入して来るだろう。先日の威力偵察により多少の戦力は減らしたが、予備機、増援が無いと考える方が不自然だ。

現に、"バンジャルマシン・ベース"沖合にて所属不明の輸送艦が発見されている。おそらくジオンの輸送船で、水陸両用MSの増援だろう。

 

「ブレイヴ01より各機へ!アローフォーメーション!このブレイヴ01に続け!!」

《ブレイヴ02了解……ライトウィングに着く……》

《ブレイヴ03オーキードーキー!!レフトウィングに着きまーす!!》

《こちらウィザード01。距離420にて追従します》

 

地を踏み、木を蹴り砕き進む。

"100mmマシンガン"、グレネード、"スローイングナイフ"にシールド、さらには腰背部ラックに"ロケットランチャー"を装備した中尉の"陸戦型ガンダム"は決戦仕様だ。結局修理の間に合わなかった頭部デュアル・センサーの片方は応急処置として装甲で蓋をする様にシールドされ、まるで眼帯をした様になっている。

それに加え左肩のマントだ。合わせてまるで海賊の船長に見える。

 

照準用であるデュアル・センサーの故障により落ちた命中率は、以前の戦闘でその命中率の低下が指摘されたため"アイリス"及びその他2機の"陸戦型GM"とのデータリンクによる情報支援を最大限に受ける事で補う事となり、現に行ってはいるが……。そのデータリンクが途絶えてしまえばそこまでで、尚且つ各機に負担が掛かり、更には"陸戦型ガンダム"自身の情報処理能力の限界も合間って、命中率は平常時の75%程度になってしまった。

 

中尉機の左手後方には、右手に"ハイパーバズーカ"、左手に"ミサイルランチャー"にシールド、腰背部に"100mmマシンガン"、背中のウェポンラックに"ロケットランチャー"という重装備を施した伍長の"陸戦型GM"。

 

右手後方の軍曹機は"180mmキャノン"にシールド、腰背部ラックに"100mmマシンガン"、グレネードに"スローイングナイフ"とこちらも重装備だ。

 

既に中尉達にはこれ以上の装備は存在しない。残弾も装備していない分は"100mmマシンガン"の物しか残っていない。

 

まるで在庫処分だ。しかし、コレでも足りない可能性もある。仮にそうならば自分たちは終わりだ。

 

"Xデイ"まで後一日。俺たちに後退も、失敗も許されない。

 

《アンダーグラウンドソナーに感あり!!12時方向(ヘッド・オン)、距離3250!"アオツノ"に1機"ザクII"2機です!それぞれU1、A1、A2と呼称、編隊を組みつつ接近して来ます!会敵までおよそ40秒!!》

 

敵もこちらを捕捉した様だ。それにしても、新型を惜しげも無く投入して来たか……。

 

キツくなりそうだ。かなり。

 

「…おいでなすったか……各機、進軍速度そのまま!各員の判断で発砲を許可する!ブレイヴ03はやや距離を置け!ブレイヴ02!援護を頼む!!」

《ブレイヴ02了解……》

《!? ぶ、ブレイヴ03了解!

………いいんですか?》

「俺を信じろ!!」

《はっ、はい!》

《U1に動きあり!A1、A2を置いて突出して来ました!》

 

操縦桿についているをセーフティ解除しマスターアームオン、FCS起動。セレクターは"レ"(フルオート)に。

 

『メインアーム レディ コンバットマニューバ オン』

 

おそらく隊長機なのだろう。余程腕に自信がある様だ。

加えて"アイリス"から送られて来たデータには、U1の通信量が最も多いというデータがある。恐らく2機に援護させ、一番槍を上げようという魂胆か?

 

《こちらブレイヴ02。U1を捕捉。狙撃する……》

「了解した!俺は突っ込み掻き回す!必ず一撃で仕留めろ!」

《了解……任せて欲しい……》

 

軍曹の返しに安心を覚えつつ、中尉は相手の出方を伺う。

 

《アンダーグラウンドソナーに感あり!11時方向に音紋多数!敵増援多数接近中!"ザクII"に"キャノン付き"が紛れている様です!ご注意を!!》

 

『エンゲージ アラート U1接近中 会敵までおよそ25秒』

 

"陸戦型ガンダム"のセンサーがU1を捉える。天候状況は最高に近いが、このミノフスキー粒子濃度だ。最大限の性能を発揮し切れていない。

 

「……信頼してるぞ………!!」

 

中尉がフットペダルを踏み込み、機体はスラスター噴射を行い加速する。

 

ビーッとコクピット内にアラートが鳴り響く。こちらにレーザー照射がなされたのを機体が感知したのだ。

 

……ロックオンされたか。しかし気にせず突っ込む。今は注意を引く事が最優先だ。

 

U1がこちらを捉え、明確な殺意をこちらに向けてくる。左腕を振り上げ、例の機関砲で牽制を仕掛ける気の様だ。

 

だがその前に走るU1の上半身が消し飛ばされる。

軍曹の狙撃だ。

 

《 ! 敵の動きが乱れました!やはり、U1は部隊長であった様ですね》

 

隊長機を()られ、敵部隊に動揺が走る。統率の取れていたA1、A2もその場で足を止め、散開し始めた。

 

戦力的に劣勢であるのに、その戦力を2分するとは……余程の自信があるのかただバカなだけか……。

 

《………生死の去来するは

棚頭(ほうとう)傀儡(かいらい)たり……一線断ゆる時、落々磊々(らくらくらいらい)……》

 

その様子を見た軍曹がボソりと呟く。

 

それと同時にトリガーを引く。機関部が唸りをあげ、薬室(チャンバー)内に装填された弾丸の雷管(プライマー)が作動、発射薬(ガンパウダー)を燃焼させ、"180mmキャノン"が火を吹く。

 

轟音と共に撃ち出された砲弾は第二の目標であるA1を貫き、真っ二つにし撃破する。

 

追い詰められたA2が、スラスター移動しつつ突出した中尉の"陸戦型ガンダム"へと散発的な射撃を加える。

しかしそれでは有効打にはなり得ない。対弾マントに、ルナ・チタニウム製のシールド、装甲の前では絶対的なストッピング・パワーが足りていない。

 

『シールドに被弾 損害報告 損傷度クラスD 戦闘に支障無し』

 

《……ど、どーゆー意味です……?》

「……その思念の総計(かず)はいかに多きかな…我これを(かぞ)えんとすれども、その数は(すな)よりも多し……」

 

中尉はその問いに答えず呟き、機体を操作、メインベクタードノズルの向きを変更、強烈なGを受けつつ飛び上がる。

急激なGによりG-LOCが発生、視野が狭く暗くなるも気にしない。

 

慣性に任せ上空から"100mmマシンガン"を牽制としてフルオート射撃しつつ空中で半回転、敵を飛び越え背後に降下する。左手で抜刀し着地と同時にA2に対し"ビームサーベル"を袈裟懸けに叩きつける。

 

隊長機を潰され混乱していたところに三次元機動を用いたMSの強襲だ。対応し切れず、残る最後の"ザクII"(A2)はその身に圧縮されたミノフスキー粒子の光刃を受け、高熱により溶断破砕され、グチャグチャになった破片を撒き散らしながら斬り飛ばされる。

 

切断された断面からは流体ポリマーがまるで血の様に噴き出し、"陸戦型ガンダム"を染め上げる。

 

倒したが……やはり弾丸はあまり当たってはいないな……。基本的にフルオートでばら撒くか、3点バーストしか無いか……。

 

"ビームサーベル"を格納し"100mmマシンガン"を取り出した後、フォールディングストックを起こしフォアグリップを展開させ両手で保持する。少しでも銃身を安定させ、命中率を上げようと考えたからだ。また、しっかりとストックを肩に当てる。ちょっと窮屈だが、これなら"100mmマシンガン"に装備されたバックアップのアイアンサイトも使える。少しでも命中率を底上げ出来ればいい。この兵器の信頼性はまだまだ低い、そう思う中尉だった。

 

《ウィザード01より各機へ。敵第一群を撃破…! アンダーグラウンドソナーに感あり!敵機識別完了、敵機判明しました!基地守備隊は"ザクII"2機、"キャノン付き"3機、"ゴッグ"1機と確認!それぞれA3、A4、C1、C2、C3、G1と呼称!ご注意を!》

「了解した!進軍する!フォーメーションA 3-2!!最優先目標は"キャノン付き"(C1、C2、C3)だ!」

《ブレイヴ02了解…射点確保に移る……》

《こちらブレイヴ03!了解しました!!わたしたちのコンビネーションを見せつけてやりましょー!!》

 

軍曹の"陸戦型GM"のみが散開、姿を隠しつつ射点確保に動き始める。

 

それを見届けた中尉は改めて武器を構え直し、伍長と連携、2機一組(ツーマンセル)で警戒音が鳴り響き回転灯が騒ぐ基地へと深く切り込んで行く。

 

『アラート コンタクト A3、A4、C3、G1 最優先目標をC3、次期目標をG1に設定 戦力的に不利 撤退を推奨』

 

接近した事で本格的にセンサーがMS反応を捉える。5機、いや、6機?かなり多い!!

"アイリス"とのデータ相違からデコイの可能性も捨て切れないが……

 

「ブレイヴ01よりブレイヴ03へ!援護する!オールウェポンフリー!!面制圧を開始しろ!!反撃を許すな!」

《いよっしゃー!!全砲門ファイヤー!!》

《2時方向海岸方面に敵影確認!新手です!雑音により機種識別不能!ブレイヴ02、対応を!》

《ブレイヴ02了解。迎撃に移る……》

 

伍長の"陸戦型GM"が"ミサイルランチャー"を全弾次々と発射して行く。撃ち放たれた6発のミサイルが白煙を引き飛翔、敵基地にバラバラと降り注ぐ。

着弾地点から爆炎が上がり、炙り出されたMSに対し伍長は"ハイパーバズーカ"を撃ち込み始める。

 

中尉は伍長の"陸戦型GM"の直掩につき、周囲のAPC、"マゼラ・アタック"へ攻撃を加える。これは"100mmマシンガン"、グレネードを装備した中尉の仕事だ。

 

その中尉の機体周辺に砲弾が着弾し土煙を噴き上げる。おそらく"キャノン付き"の攻撃だ。今は小刻みな乱数機動により命中弾はないが、当たるのは時間の問題だ。

 

時間は、限られている。

 

《うへぇっ!!撃ってきたぁ!!早くおかわり下さい!!》

「了解した!!そのまま撃ち続けろ!!」

 

"100mmマシンガンをばら撒き牽制射撃としつつ伍長機に近づき、弾が切れパージされたミサイルコンテナを避け、新しいコンテナを取り付けて行く。MSにしか出来ない、柔軟な対応である。

 

……それは、同時に敵の目の前でリロードすると言うとんでもない行動であるが……。

 

《ウィザード01よりブレイヴ03へ。基地施設への被害は最小限に抑えて下さい。しかし、トーチカは必ず破壊して下さい》

《むむ……難しいんですけど……》

「おかわりどーぞ!!」

 

伍長機が装備している"ミサイルランチャー"のリロードを終え、散開しつつ準備射撃を加える。

 

「!!……ッ!」

 

攻撃が中尉の"陸戦型ガンダム"へと集中する。敵にも通信量の多さを見破られたか!?

 

"100mmマシンガン"をばら撒きつつスライディング、かまぼこ型の倉庫だと思われる建造物の裏へ隠れる。伍長もしゃがみ込み塹壕へと身を隠している様だ。

 

「敵さんも必死だな……クソッ!」

 

身を乗りだした瞬間に至近弾。慌てて引っ込み舌打ちする。全く、コレだ!ロクでもない!!七面倒な!!

 

シュノーケルカメラを伸ばし、"100mmマシンガン"だけを突き出し射撃する。

ただでさえ低い命中率だ。擦りもしない。しかし牽制にはなっているようだ。攻撃の激しさがやや弱まる。

 

「…しかし……」

《隊長、無理は禁物です》

《そうですよ!ってたたたたたっ!?このっ!!》

「分かってい。分かってはいるんだが……」

 

伍長の"陸戦型GM"はウェポンコンテナを抱えている。機動戦はムリだ。伍長機に敵を近づけさせるワケにはいかない。ただでさえ多い被弾が増えているし………。

 

コクピット内の残弾表示がみるみると減って行くも、敵に有効打は与えられないままだ。

"100mmマシンガン"が曳光弾を吐き出した。弾切れだ。

 

『メインアーム 残弾ゼロ 至急安全地帯にて再装填を推奨』

 

倉庫裏へと引っ込み、裏で"100mmマシンガン"をマグチェンジ、再びばら撒きつつ機を伺う。

 

《分かりました。HSL起動、回線B開通確認。システムチェック……リンク開始……》

「伍長!全弾撃ち切ったら後方支援!」

《りょ、了解ぃ!!あれ?FCSが……ええぃ!!あったれーっ!!》

 

もう一度伍長の"陸戦型GM"が"ミサイルランチャー"を撃ち放った。

 

待て……まだ慌てる時間じゃない……。

 

「……スタンバーイ…スタンバーイ……」

 

まだだ……まだ……。

 

白煙を引く"ミサイルランチャー"弾頭が敵基地へと殺到、炸裂する。

伍長は弾の切れた"ミサイルランチャー"を投棄、"ハイパーバズーカ"を1発撃つも弾切れ、それも投棄し"100mmマシンガン"を構え下がりつつ撃ち始める。おそらく背部ウェポンコンテナの"ロケットランチャー"を用意するためだろう。

 

「………ゴゥッ!!」

 

今だ!!爆炎が止み、煙が晴れかけた時点で中尉は"100mmマシンガン"を左手へ持ち替え、腰背部の"ロケットランチャー"を右肩に担ぐ。

 

『"ロケットランチャー" レディ FCS同調』

 

そのまま倉庫の裏から踊り出し、スラスターを噴かし跳躍。敵部隊へと接近戦を仕掛ける。

 

《ウィザード01より各機へ!敵航空戦力接近!他の部隊で確認されていた"ド・ダイ"タイプの爆撃機だと思われます!!4機確認!B1、B2、B3、B4と呼称!!》

「また新手か!!」

《うひぃ〜!コレ!危険手当出ますかねぇ!?》

「死んだら元も子もねぇだろ!目の前の敵に集中しろ!!」

 

伍長がばら撒いた"ミサイルランチャー"により、敵機は殆どがどこかしら損傷していたが、大破はゼロだ。

 

…………どこ撃ってんだ!?いくら命中率が低いと言っても一発くらい当てろや!!ミサイル弾頭はシーカーにも寄るがかなり高いんだぞ!!

 

「無駄弾が多すぎるぞ!ブレイヴ03!!」

「そ…そんなこと言ったって!」

「無駄口もだ!クソッ!!ブレイヴ03!残るトーチカを()れ!その後は"ド・ダイ"だ!!ブレイヴ02!!無事か!?」

《こちらブレイヴ02…海岸方面の増援と交戦中……》

「クッ!援護は!?」

《必要無い…新型か……?データ収集後撃破する……》

 

………さらっと……しかし、こちらとて手一杯だ。

 

《軍曹!戦力差は5対1ですよ!!新型機の性能も未知数です!!ブレイヴ02!危険です!!せめて援護だけでも……!》

《必要無い……》

《しかし!!》

「上等兵!!」

《!!》

「…軍曹……任せたぞ!!」

《了解……》

 

軍曹の主兵装は遠距離射撃武器の"180mmキャノン"だ。それに加え、軍曹はスナイパーだ。

…ここは軍曹を信じよう。

 

かつて、たった1人で一個師団を相手取り、数ヶ月に渡り足止めし続けたという軍曹を。

 

アウトレンジからの攻撃は脅威の一言に尽きる。軍曹がそれを一番理解しているはずだ。

 

《ウィザード01より各機へ。"ド・ダイ"編隊はお任せを。MSを効果的に倒せるのは、MSだけですから》

「と、言っても!どうする気です!?」

《遂に!"ナナヨン"の上のアレですか!?》

《いえ、こうです!》

 

上等兵の声と同時に、ジオン軍基地に多数備えられた37mm4連装旋回式対空機銃が一斉に起動、マンタの様に巨大で薄べったい"ド・ダイ"をハエかカトンボの様に叩き落とし始めた。

 

《ど、同士討ち!?》

「いや、アレは……」

《連邦軍の装備のまま、尚且つ自動化されていたのなら使わない手はありません。クラッキングをかけ掌握しました。少々手こずりましたが》

 

すげ……。ジオンの皆さんも驚きだろうな……。この短時間かつ同時進行で……流石天才。

 

《援護します。制圧を急いで下さい!》

「っ! 了解!いくぞ!」

「アイサー!!」

 

上等兵が操る対空砲の支援を受け、中尉機が吶喊する。

中尉はセレクターを変更、"3"に変更した"100mmマシンガン"で牽制をかけつつ移動、動きを止めた敵機から"ロケットランチャー"を叩き込んで行く。

 

低下した命中率は、敵へと大胆に接近する事で補う。当然危険を伴うが、今はこれしかない。

 

至近弾が掠め、足元では砂煙が立つ。正直捌ききれない。

 

「…んぐっ!クッ!」

 

右腕部、右左脚部に機銃弾が着弾する。機体が衝撃で激しく揺すぶられるもダメージリポートでは問題無しだ。

敵も自軍基地内では発砲し辛いのだろう。そのアドバンテージがなければ今頃はハチの巣だ。

 

《く、来るなくるなー!!》

「落ち着け伍長!無理なら離脱しろ!」

《援護します!ブレイヴ03!下がって下さい!》

 

"ド・ダイ"を全滅させた対空砲が本格的にMSを狙い始める。結構効いている様だ。火力不足とはいえかなり効果的に足を止めている。侮りがたいな。本当に。

 

()ちろ!!」

 

敵機をモニターが鮮明に捉えた。

基地の最終防衛ラインを固める"キャノン付き"に"ザクII"達だ。

敵機は伍長の射撃でどこかしら損傷した機体ばかりだ。損傷し機動力の低下した兵器ほど戦場で的になる存在はいない。

 

特にただでさえ地上機動力が低い"ゴッグ"など悲惨の一言だ。いくら装甲が厚かろうと大口径の榴弾である"ロケットランチャー"には耐えられない。

中尉の攻撃を受けた"ゴッグ"は自慢の高出力から来るパワーもメガ粒子砲も、活かす間も無く火に包まれ崩れ落ちた。

 

呆気ないほどの手応えで敵機は"ロケットランチャー"の弾頭をその身体で受け止め爆散する。その勢いに押されてか反撃も散発的だ。既に組織的な部隊行動も取れていない。

 

「ブレイヴ02!生きてるか!」

《ブレイヴ02よりブレイヴ01……返答の要を、認めず…》

「……ムリはしないでくれよ!!」

《ブレイヴ02了解……》

 

主兵装でありその機体の存在価値(レゾンデートル)であるキャノンを歪に曲げられ、遅い脚で必死に回避しようとする最後の"キャノン付き"を撃破する。直撃した360mmHEAT弾はMSに対しオーバーキルに近い威力を発揮、胴を抉り炸裂、四肢をバラバラに吹き飛ばした。

 

くるくると回り、折れ飛んだキャノンが地面へと叩きつけられ、突き刺さらずゴロゴロと砂煙を上げながら激しく転がる。

それは、兵器という物の哀れな末路を示している様だった。

 

中尉は大胆に接近し、的確な射撃で敵を次々と葬り去って行く。それでも低下した命中率の低さは補い切れず、FCSも不安定だ。動きの重くかつ危険度が高い敵から狙ってはいるものの……クソッ!FCSに頼り過ぎた!

 

『"ロケットランチャー" 残弾ゼロ』

 

弾の切れた"ロケットランチャー"を再び腰背部のラックに懸架し、空いた右手で"100mmマシンガン"をリロードする。

 

コレが最後のクリップだ。いよいよ追い詰められてるな……。被弾も増えてる。そろそろマズい。

 

「ブレイヴ01よりブレイヴ03へ!残るは2機だ!一気に行くぞ!!俺がA3を()る!ブレイヴ03はA4を足止めしろ!!」

《アイサー!!いっくぞー!!》

 

リロード完了とともに"スローイングナイフ"を4本引き抜き、残る2機の"ザクII"に向かって飛び出しながら放射状に投擲する。

 

低下した命中率を補うための苦肉の策であったが、功を奏したようだ。投げた4本のうち2本が、先頭のA3のシールドに突き刺さり次々と炸裂する。

 

シールドごと右腕を吹っ飛ばされたA3がよろめき、膝を着く。

中尉はここぞとばかりに"ビームサーベル"を抜刀、"ビームジャベリン"へと変更、疾風の様に斬りかかる。

 

A4がA3をカバーに回ろうとするがもう遅い。更にそのA4に対し伍長が牽制射撃を行う。動きを封じられたA4は苦し紛れに伍長機へと撃ち返す事しか出来ない。

 

「ッ ふっ!!」

 

左手で何とか"ヒートホーク"を抜いたA3だが、接近し"ビームジャベリン"を薙ぎ払った中尉の"陸戦型ガンダム"にその左手を斬り飛ばされ、返す一撃が胸部に突き刺さった。

 

胸部装甲をグシャグシャに歪められ、コクピットを貫かれたA3はガクガクと痙攣する様に震え、モノアイがブラックアウトし膝から崩れ落ちる。

 

《あ〜、しょーい〜どいてぇ〜》

 

は?

 

「! ングッ!!」

 

『アラート ブレイヴ03からのレーザー照射を確認 至急回避運動を』

 

 

 

どうして?

 

 

 

コクピット内に鳴り響くアラート音。至近距離からの射撃管制用レーザーの照射だ。

 

 

 

どうして?あれは……敵?

 

 

 

『高脅威目標発生 IFF上では友軍機 IFFデータの再設定開始』

 

その主は()()()"()()()G()M()"()

 

"ビームジャベリン"を投棄。目の前の"ザクII"を脚の裏で蹴っ飛ばし、その反動で後ろに転がる。回避運動を行った中尉機のすぐ傍を"ロケットランチャー"の弾頭が通過、A4に吸い込まれる様に直撃しその機体を爆散させる。いや、まだ耐えてる!?両腕を犠牲にしたか!?

しかし、そこへ機関砲弾が降り注いだ。その鋼鉄の嵐が過ぎ去った後には、穴だらけで煙を上げる残骸が残されているだけだった。

 

「ばっ!バーロー!!どこ狙ってんだぁ!?殺す気か!?」

《えぇっ!?どいて下さいって頼んだじゃないですか!!》

「ならもっとテンション上げて言えやぁ!!」

 

思わず伍長を怒鳴り飛ばす。いや、いくらなんでも今のは酷いって!!

 

《論点がズレているぞ……?しかし、今のは危険過ぎる……》

《伍長!!何をやっているんですか!!味方に向けて撃つなんて!!どう言う神経ですか!!軍法会議ものですよ!!》

《えぇっ!?ご、ごめんなさい!!でも、しょーいならって……》

《確かに…!現に!中尉は避けて見せました!しかし!それとこれとは話が別です!!》

《ひ、ひええぇぇぇぇぇええ………》

 

上等兵が伍長へ凄い剣幕で怒っている……うわー、あんな顔もするんだなぁ……初めて見た……。

 

 

 

ならば、戦わなければ。

 

 

 

『I have control』

 

何時も無表情に近いから……ものっそい怖い……。

伍長マジ泣きだよ……。

 

『エンゲージ マスターアーム オン メインアーム レディ』

 

 

 

わたしが、まもる。

 

 

 

「? …!!」

 

突如動き出した"陸戦型ガンダム"のFCSが起動、伍長の"陸戦型GM"を照準に捉えようとする。

慌ててそれを解除するも、またも"陸戦型ガンダム"は勝手に伍長機を照準しようとする。

ジェネレーター出力も上がり始め、機体が細かく振動する。コクピットを震わすその湧き上がる様な鼓動に、中尉は一人戦慄する。

 

「ど、どうした、んだ…"ジーク"……」

 

コントロールの主導権をなんとか取り戻すも、何度も何度も伍長機へとロックオンしようとする"陸戦型ガンダム"をなんとか操作する。

 

これは……まるで喧嘩だ。

 

そもそもIFFが…………!!…書き直されている!?それに、今……"所属不明機"(アンノウン)扱いだった伍長機が"敵機"(ボギー)に!?

 

 

 

どうして?あれは、あなたを。

 

 

 

一体これは!?何なんだ!?システムエラー!?それともクラッキングか!?バグか!?それにしては潜伏や発生が謎過ぎる!!

 

とにかく……今は!!

 

早くここを離れるしか……それに、まだ軍曹は戦闘中だ!遊んでいる暇は無い!!

 

「こちらブレイヴ01!ブレイヴ02の援護に移る!!敵基地守備隊であるMSは壊滅した模様!!アサシンの手配を!」

《了解しました。ミッションアップデート。伍長、貴方はここで対地掃討に移行しなさい。今すぐに!!》

《うぅ……えっ?援護h…》

《復唱は!!》

《はっ、はっ!!ブレイヴ03はこれより敵基地の対地掃討に移行しますぅー!》

 

"アイリス"から青の信号弾が打ち上げられ、そのまま青い空へととけて行く。

それを横目に、中尉は奮闘していた。

 

なんとか"陸戦型ガンダム"の主導権を握り、伍長機から引き剥がそうと四苦八苦する中尉と、その手から逃れようと暴れる"陸戦型ガンダム"の攻防は、中尉にはかなり長く感じられた。

 

 

 

そう、なのですね。判りました。

 

 

 

『You have control』

 

突然制御が戻る。そのまま伍長に背を向け、"陸戦型ガンダム"が走り出す。伍長機があちらへ向き直ったと同時に抵抗が収まるが、IFFは依然"アンノウン"のままだ。

 

中尉は移動しつつ"陸戦型ガンダム"の自己診断プログラムを走らせる。

 

システム・オールグリーン。

 

「…………」

 

無言で再施行しかし、結果は変わらずオールグリーン。異常は一切見つからない。

 

「……なんだったんだ………いったい…………?」

 

疑問は渦巻くばかりで、解決の……いや、問題の証拠すら……。

 

まるで怒り出し、癇癪を起こした様な行動……己が身の危険を?機械が?

 

《こちらブレイヴ02。目標を殲滅した……索敵を開始する………》

 

は?

 

《え?》

《今、何と……》

 

突然の軍曹の通信に、誰もが耳を疑った。というか、理解が出来なかった。

 

《復唱する。こちらブレイヴ02。目標を殲滅した……》

《ご…5機を相手に……!!?》

「ま、マジかよ!!」

《周囲に敵MSの反応、認められず……です》

「…………」

《…………》

 

わ、わけがわからないよ!!

 

沈黙に沈む"ブレイヴ・ストライクス"を、"キング・ホーク隊隊長"(アサシン・リーダー)が呼び覚ます。

 

《こちらアサシン01!"バンジャルマシン・ベース"管制塔を制圧、基地司令長官と思しき人物を拘束した!繰り返す!!こちらアサシン01!"バンジャルマシン・ベース"管制塔を制圧、基地司令長官と思しき人物を拘束した!この戦い、我々の勝利だ!!》

 

CMPL(コンプリートミッション) RTB』

 

一陣の風が吹き、立ち竦む中尉の"陸戦型ガンダム"のマントを揺らし、脚元で砂埃を立てる。

 

何か、こう……釈然としない事ばかりだ。

 

本当に。

 

《か、帰りましょうよ、ね?少尉?》

「あ、あぁ……」

《"オペレーション・ターゲット・イン・サイト"、ミッション・コンプリート。お疲れ様でした》

《時代は、MSを主役に選んだな……》

 

選んで、いいのだろうか?

 

今の中尉には、この頼もしく、力と勝利の象徴だった"陸戦型ガンダム"がとても異質で、得体の知れない物に見えていた。

 

「お前は……一体…………」

 

"陸戦型ガンダム"は、答えない。

 

 

 

『そのマシンの性能を引き出せ!!』

 

 

変わるのは、人だけではない………………………




久振りに書けたので、書いて見ましたが……何か違和感だらけです。

どうも淡白になっているというか、何と言うか……。見直して見たら誤字脱字も凄く多かったし……。

まぁ、何はともあれがんばりますので、応援よろしくお願いします。まだケータイの調子悪いので、また更新遅れるかもしれませんけど……。

トランスフォーマーでも見に行こうと思います。ダイノボットとか地雷でしかなさそうだけど……。

次回 第五十九章 ザ・ライトスタッフ

「かっけぇ、そんな事サラッと言える男になりたい……」

お楽しみに!!

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