機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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祝!!五十章到達!!

そして新編突入!!

やっと兵器がかけるぜぇ!!

皆さん!!お楽しみの母艦です!!

「なんだそりゃ?ありえねぇw」と思いながら楽しんでいただけたら幸いです。


最近、短くコンパクトに纏めるのがムズイ………………。


第五十章 鋼鉄の咆哮

帰る。

 

人が元居た場所へ戻る時に使う言葉だ。

 

特にその言葉は、その地に長く居た者が使う。

 

その地に思う事がある者も。

 

だから中尉は帰る。

 

硝煙が立ち込め、火花舞い散る戦場へと。

 

 

 

U.C. 0079 8.18

 

 

 

「……………よぅ、久振りだな小隊長。休暇は満喫したか?」

「あa………!?何!?その"不運"(ハードラック)"踊"(ダンス)っちまった見てーな顔!?」

「なんかしょーい変わった?背中が煤けてるよ?こっからじゃ見えないけど」

「一回り痩せましたね」

「……頬が痩けてる……」

『ハロ!』

「………なんか……楽しいゲーム貸してくれないか?とびっきりスカッとするやつ………」

「『ドラッグオンドラグーン』なんてどうだ?スカッとするよ?うん」

「…………もう1回言う。楽しいゲーム貸してくれないか?た・の・し・い・ゲ・エ・ムだ!!」

「あれ面白いぞ」

「落ち込んでるときにやるゲームじゃねーだろ!」

「じゃあ『ゼノギアス』か……『R-TYPE』を……」

「何?なんなのこの仕打ち………他には……」

「『リンダキューブ』は?」

「……………すべて政治が悪い……」

 

"クレ・ドッグ"の最も大きいドッグの前に待って居たのは、恨みがましさに光らせた目の下に巨大な隈を作った少尉だった。

 

正直怖い。少尉の周りだけカモメもウミネコも寄り付かないあたり更に。

きっと背中に謎のダークネスなオーラを抱えているからだ。そのオーラにはどこぞの王女様の料理の如く飛ぶ鳥を落とす勢いがあるらしい。

 

「………あぁ……少尉も、おやっさんの代わりお疲れ様………」

「………同情するなら、お土産をくれ……おみやげみっつ、たこみっつ〜♪」

「お土産は強請るもんじゃねぇよ……」

「微粒子レベルでも同情出来ませんね」

「……………」

 

地の底から響く様な声で唄い始めた少尉が更に凹む。なんだコイツ?

まぁいいか。よし!ここで上手く機嫌をとって……いけ!ボーキー!君に決めた!!

 

「はい。ボーキサイト」

「遠征か!!誰がボーキーだ!!ミンチか!!油もいらねぇよ!!」

「やっぱ建造には鋼材か………」

「今更いらねーよ!つーかいらねーよ!!アンタって人はぁ!!」

 

少尉が手に持ったボーキサイト(純度低い。日本だもの)を床に叩きつける。いくらなんでもそれは酷かないか?

 

ふむ、ご満足いただけない……なら!

 

「伍長、例のアレを」

「はっ!直ちに…」

 

パチンと指を鳴らし、それに伍長が反応する。

 

行け!伍長!!ヤツの頑ななハートをへし折ってやれ!!物理で!!

 

「ならはい!木刀です!」

「中学生か!!しかもなんか染みてるよコレ!?自分のお土産にしろよ!!」

「安心してください!!木刀はわたしの分もあるので!!」

「ならせめて使ってねぇのくれよぉ!!いやどっちみちいらねぇけどよぉ!!」

 

ダメか……しかし、こっちには軍曹がいる!!

 

「……受け取れ…」

「わーい!!高速道路のサービスエリアの隅っこでよく売ってる金の剣のキーホルダーひっさしぶりだぁ!!」

「……中尉に勧められてな……」

「うぉい!!何やってんの!?何がしたいの!?ひでぇ事しやがる!!あなたって本当に最低のクズねっつ!!」

「俺はコンドラチェフの方が好きです!!」

「うるせーよ黙っててくれよ頼むから……」

 

どんだけダメージ受けてんだよ。笑える。

 

「はいどうぞ?珍しいカンヅメです」

 

そう言って上等兵がだしたのはエメラルドグリーンが眩しいカンヅメ。

中身はご察し。

 

「! やっ……おぅ…"ソイレントグリーン"………。

チョイスが……吐き気を催すじゃーくだよ………」

「それも私だ」

「お前かよ!!つーかふざけんな!!何様だ貴様ァ!!人間がいっぱいだろーが!!」

「俺は帝国軍人の次男で、連邦の士官だ!帝国軍人の次男たるもの…」

「もはや話す舌など持たん!!

……………チクショウが…………………」

「退屈してきました。カオスの欠片が必要ですね」

「知恵の泉が語りかけてきますね。船の名前は"クイーンベリー"にしましょー!!それか"ゼノビア"か"セミラミス"か…」

「あり得ない程縁起が悪いからそれはやめようか」

「じゃあ"スターライト"か"リバティ"で!」

「さっきからのバイオハザード推し何!?先行きが不安になるわ!!いや、少尉の顔?」

「………うぅ………」

 

そーいや"ゼノビア"、"セミラミス"、あと一隻なんだっけ?つーか一隻違う。野うさぎじゃねーか。結局どれも"タイタニック"も真っ青な沈没オチだけどさ。

 

ここは少しでも慰めの言葉を……………

………………とでも言うと思ったかァー!そんなもん気にせんわー!!

 

「まぁ落ち着けって。憐れみを込めた目でみながらジュースを奢ってやるから」

「なんでだよ!?」

「お金でしか買えない価値がある……プライス!!」

「うるせーよ!!」

 

顔色をグリーンにする少尉。器用だなコイツ。さっきのゼノギアスはこの為の布石だったか。因みに中身は緑色のクッキーです。材料はご察し。

ま、いっか少尉だし。

うん。少尉だし。

これからユーグレナと呼ぼう。

 

「ちょっと黙ってて」

「ちゃんと黙ってたよな……何お前?ジオン・ズム・ダイクンの言ってたニュータイプってヤツ?」

「ええっと、こーゆーのを"口元過ぎれば災い忘れる"って言うんでしたっけ?」

「違いますよ伍長。森羅万象間違っています」

「……夏休みの友(例のアレ)でも、やらせるか……?」

「かんべんしてください!!あんなの敵です!!エネミーです!!」

 

お土産を詰め込んでカオスになったパンドラの箱(希望は同封されていません。別途お求め下さい)を少尉に押し付ける。少尉の顔は液状化仕掛けのニンジンみたくなっている。

 

「…………………がっ!!

見てくれコイツを!!」

 

突然元気を取り戻し、振り返った少尉が目の前の大扉を大きく開け放つ。どこにそんな力が……。

 

今までの"ミルウォーキー"のゾンビばりの窶れ具合が嘘のように血色が良くなり、まるで別人のようになった少尉が笑顔で振り向く。

 

因みにお土産と言う名の廃棄物13号はドアに吹っ飛ばされた。ナム。

 

「コイツは………最高だぜ!!

見ろよ小隊長!!おやっさんは!やはり只者じゃ無かった!!

コイツは!!最高の"オモチャ箱"だ!!やっぱ潜水艦は最高だぜ!!」

 

ライトが点灯され、大空間が照らし出される。

 

「なっ………!!」

 

思わず駆け寄り、手摺に手を着き身を乗り出す。眼下には超巨大なドライドッグが広がっていた。

 

そした、そのドライドッグを埋め尽くさんばかりの巨大な船体を晒し、"母艦"がその雄大な姿を見せた。

 

細長い流線型の、優雅で有機的な曲線を描く、まるで戦闘機のような船体。

 

クジラやイルカ、マンタを連想させるような大型の潜舵(フィン)

 

いや、もはやその外観は「潜舵」と言うより「翼」に近い。

 

超大型の天蓋を左右にスライドさせ、開いたカーゴベイ内の長く巨大な、100mをゆうに超す大型の飛行甲板。

 

天を突くような艦橋。

 

空を睨む巨大な砲。

 

周りを走り回る人がゴミ以下のサイズに見えるソレ(・・)は、規格外と言う言葉が正に当てはまる規模の物だった。

 

「すっごぉ~い!!コレがわたしたちの本拠地になるんですね!!」

「……見た事の、無いタイプだな……」

 

「私もです。これは驚きました」

「……まるで、"動く火薬庫"(アーセナル・シップ)だ…………これが………」

 

中尉の眼下のソレは、正に火薬庫だった。

 

「説明s…」

「お馴染みの『説明しよう!』から始まるありえないスーパーロボ解説!」

「……言うなれば、強襲揚陸攻撃潜水艦とでも言うべきか?中尉の言う通り、"アーセナル・シップ"の思想を受け継いだ、MS運用能力に重点を置いたミサイル攻撃潜水艦だ。

全長340m、全幅62m。全高48m。

水上排水量395000t。

水中排水量568000t。

武装は主なものとして880mm連装砲が1基。

600mm3連装主砲が2基。

540mm連装レールガンが4基。

2連装メガ粒子砲が3基。

8連装大型対艦ミサイルランチャー12基。

4連装固定式魚雷発射管が2基。

8連装旋回式魚雷発射管が2基。

2連装195mm速射砲が16基。

2連装40mm高角砲が18基。

2連装25mm対空砲が28基。

20mmCIWSが20基。

砲塔のある武装は全て収納展開式だから潜水航行の妨げにもならないしな。

それに多目的垂直ミサイル発射管が82基。

弾道ミサイル発射管18基を始めとして、まだある。後でおいおい紹介して行くさ。

おやっさんが"イージス"や"ジーク"に積んだ特殊なスパコンを更に発展させた大規模艦制御管制装置機構として量子演算素子型光ニューロAIを搭載し、この大きさの割りにはかなり少ない人数で……いや、最悪1人でも運用出来る。

しかもそれらはオマケに過ぎないんだぜ?

その最大の特徴は、今開いている天蓋、アレだ。その上部船殻を展開し、飛行甲板を露出させる事で"ミデア"輸送機から"ドン・エスカルゴ"のようなVTOL機、"フラット・マウス"などの艦載機の運用能力に加え、YHIからの技術提供があってな、なんと最新型のMS加速用電磁カタパルト、XC-MS1が2基搭載されてるんだぜ!!

つまり、現時点で連邦軍唯一のミノフスキー粒子散布下におけるMS戦術運用を前提にした特殊潜水艦だな!!」

「これなんて鋼鉄の咆哮?いやー。船台で作らんでよかったな。進水したら大津波になるとこだった……」

「どうせなら飛行甲板追加しましょう!!あと8段くらい!!それと第3艦橋!!」

「……トップヘビーは、良く無い……」

「ミルフィーユみたいになりそうですねそれは」

「くれぐれも悪用するんじゃねーぞ?」

「つーか取ってつけたような第3艦橋はイヤだ」

 

バケモンかよ。世界の主要都市を一瞬で灰燼に帰してもお釣りが来るわ。…………ミノフスキー粒子が無かったら。

それにMS用カタパルト!?聞き間違いであってくれ!!

 

「……動力炉に、推進方式は?」

「超大型のPS方式ミノフスキー・イヨネスコ型熱核融合反応炉3基による、総出力750000hpという大電力で駆動させる熱核水流ジェット、それに超電導ハイドロジェット推進と電磁流体誘導推進ユニットのハイブリッド方式だ。カタパルトもこの反応炉の恩恵だな」

「まるで"レッド・オクトーバー"だな。いや、伊400?」

「チョットナニイッテルカワカラナイデス…」

「……規格外過ぎる……」

「熱核水流ジェットの発展型…完成していたのですね。しかし、これ程の巨体ですよ?速度はどうなのですか?」

 

スペックが異常過ぎる。なまじ普通(・・)の潜水艦のスペックを知っている中尉、軍曹、上等兵は3人そろってポカーン状態だ。これがホントの人類ポカン計画。伍長は取り敢えず凄いと分かったのかハロを抱えてニコニコしているが。

 

「そいつが、違うんだな!!

………コイツ、おやっさんが手に入れた連邦軍の最重要機密、極秘裏に建造された新鋭艦に搭載された次世代型推進システムの試作機を元に開発された特殊機関を積んでるんだ……」

「なんだ?ソレは?」

「それって……あの"ジャブロー"のウワサですかね?」

『ハロー』

 

ポンと手を打ちながら、伍長が会話に加わる。

おいハロ落っこちたぞいいのか?

しかも、戦場には噂が付き物だしな………。

 

「……おかしな"新造艦"、とやらか………?」

噂程度(SCV-X計画)なら私も聞いています。なにも、現場では"スフィンクス"と呼ばれていたそうですね」

「そうなんですか……"スフィンクス"、ねぇ……」

「そう言えば日本にも諺がありましたね……『ミイラ取りが……スヒィンクスになる』でしたっけ?」

「ミイラ取りに何があったんだよ。超絶進化を遂げてんじゃねぇかGウィルスかバイドでも吸ったのか?」

「なぞなぞに目覚めたんだろ」

「そんなんでなれたら苦労しねーよ!!」

「苦労!?お前、何?スフィンクス目指してんの!?逆に聞くけどどんな苦労してんの!?」

 

因みにス"フ"ィンクスな?

ス"ヒ"ィンクスじゃねぇからな?

なんだよキモイスヒィンクスって……。

 

ゴホン、と少尉が咳払いをして続きを始める。

その後ろを魚雷運搬車が通り過ぎ、砂埃を上げている。

その魚雷を捧げるように搭載した姿は古代エジプトの壁画に似ていなくも無い様な気がしてきた。

 

「……つまり、ミノフスキー・エフェクトを利用した新機軸の推進方式だ。これにはA.Eも一枚噛んでるんだ。名前は、"ミノフスキー・クラフト"。それを改造した特殊潜行推進器、"ミノフスキー・クルーザー"だ」

「……ミノフスキー・クラフト?」

「…クルーザー……?」

 

聞いた事も無い。確かにミノフスキー粒子はメガ粒子砲などかなり軍事転用されているが……それを推進に?粒子でも噴射するのか?んなバカな………。

 

「……聞いた事もないな……」

「どういう推進方式なんでしょう?」

「……詳しくは俺もまだ分からんが……なんでもミノフスキー粒子を船体周辺に常時高濃度散布することで、Iフィールドによる特殊電磁立体格子力場を形成し、イオン化した海水を機体の保護膜とし、またイオン化した水の流れを制御することで潜航時の抵抗を大幅に低減、超静粛にして驚異的な機動力を獲得する、だとさ。ま、テストで400ノット……いや、理論上、加速する海さえあればその速さに制限は無いとの事だが……どうだか?まあ実際運用する時は195ノット程度に抑えろとも言われたが……。なぁ?

研究者の言う事はどうも……」

 

お前もそうだろ。鏡見て来い鏡。

でも195ノットって………。はぁっ!?195ノットだと!?

 

※時速361km。速いなんてもんじゃない。

 

「つまりだな……その………謎の何か……磁場かなんかで……その…アレだ……なんやかんやで……なんかこううまい具合にな………つー事だな!……やったぜ!!」

「……あなたみたいなのばかりですから若い力が育たないんですよ」

「根が腐ってる芽は水やっても育たねぇからな」

「しょーいは第3艦橋勤務決定ですね」

 

やったぜ!じゃねーよ!!フワッフワだなおい!!

 

「なんやかんやとはなんでしょうね?」

「なんやかんやは、なんやかんやですよ!!」

 

なんでそんな嬉しそうな顔をしているのか、今の僕には理解出来ない。アンインストール(笑)。

 

「……"ゴッグ"の"フリージーヤード"システムみたいなもんか?」

「…………そいつの影響は大きいってさ。あれは『脱ぎ捨てる賢いイルカ肌』だが、こっちはその一歩、いや数歩先に行った技術だ。これは中尉、あんたが"ゴッグ"を倒したからだ」

「お手柄ですね少尉!!」

 

にしても実装早過ぎだろ。おやっさんはあの短時間で解析を終了し応用したのか?あんなに忙しく働いてたのに?

 

「コイツはその試作機が使われていて、その"新造艦"とやらは、その"ミノフスキー・クラフト"を使って大気圏内を自由自在に飛ぶんだとさ」

「……SFか?いや、SFでもそんな設定はウケんわな」

「……俄かに信じがたいな……」

「自由自在に、ですか……」

「コレも飛べるの!?」

「コイツは無理だが、有る程度の短時間なら陸上行動も可能らしいぞ?だから極論を言えばコイツ自体が揚陸艇になれるってさ………。

………合わせたい人と、見てもらいたい物がある。ついて来てくれ」

「誰ですかね?気になります」

「……と言うよりコレ、人員ものっそい増えるだろ…………」

「……これ程の艦だから、な…」

「また新しい出会いですね。世界が広がるのは歓迎です。高揚しますね」

『ハロ!』

「さっきから気になってたんだがコイツはなんなんだ?」

『ハロ!』

「…う、うん……そうか……」

『ハロ!!』

「えぇ〜……あ、そ……そうなの……」

 

短時間ではあるが丘の上すら行く潜水艦…………ナンセンス過ぎる。

何?山越えでもすんの?

そしてハロと必死に対話を試みようとする少尉もナンセンスだが。

 

売れてなかったらしいし、知らないだろうなぁ……。

 

「そういや腰のソレ、どうしたんだ?」

「……許可は出ているぞ?」

「そうじゃなくて。イイ業物じゃん?」

「似合っててカッコイイですよ少尉!!ふふふっ!」

「はい。前持ってそこにあったかのような調和です」

「…言ってもらえて嬉しいよ」

「……"カタナ"、か……」

 

中尉の腰には、父から"貸して"貰った刀が下がっている。銘は確認していない物の、元の鞘に収ったのかのように手に馴染むそれは、サイズ、重量、強度、剛性、斬れ味、見た目ともに最高だった。

腰に下げてとせがんだのは伍長である。かなりしつこくせがまれ折れた中尉を見て、伍長は意見が通ってご満足の様子である。

 

歩きながら引き続き説明を受ける。階段を降りて行くが、全然近づけない。それに反して、目の前の船体はどんどん大きくなっていく。

 

「追加の装備は、移動、展開用の"ミデア"が8機。支援用の高機動可変ティルトウィング機、"キング・ホーク"が4機。MS用"LCAC"が5機、航空戦力として……」

「大盤振る舞いだな。だが、流石にMSは無いか……」

「残念です。もっとシャキーン!!としたのを期待してたんですけど…」

「どんなのを期待したんだ?」

「空を飛べる奴です!!」

「…………」

 

ムリだろ。つーかなんで空が飛びたい病に罹患してんの?今の俺たちはソラじゃなくてリクとカイリです。

 

「……裏が、ありそうだな……」

「それ程期待されているのではないでしょうか?」

「……と言うより、"コイツ"は何を……」

「……そいつぁ、俺から説明させてもらおうか!!

あんたが中尉さんかい?なるほど……噂通り、いい目をしているな…」

 

大きな声に振り向くと、目の前には、陽気な笑みを浮かべた"ザ・海の漢"みたいな大柄で浅黒い肌をした男が立っていた。

制服の前を開け放ち、袖はギザギザに肩口から千切られ、筋骨隆々な二の腕が覗いているというか自己主張している。帽子も斜めにかぶっており、口にはパイプを咥えているが、階級は少佐だ。だが勲章はかなり多い。

きっとあだ名は"鯱"だったに違いない。肩のギザギザはやっぱ自分でやったのかな?気になるわー。

 

「おじさん誰ですか?ポパイ?わっ!その銛の先!カッコいいです!!」

「おっ!分かるか嬢ちゃん!こいつぁ俺のオヤジの形見でな…因みに俺もオヤジもほうれん草はニガテでなぁ……」

 

少佐をおじさん呼ばわりした伍長を咎めもせず、その男の漁師だったというオヤジさんの武勇伝に目を輝かせる伍長。俺の周りはなんでこんな人ばっか集まるのか。

後ろで超巨大なクレーンが横切るが気にも止めず、そのまま話は続く。

 

「あの、少佐……?」

「おう、すまんな。俺がこの艦の艦長を務める、元地球連邦海軍太平洋艦隊潜水艦隊潜水戦隊所属の少佐だ。

よろしくな!ボウズども!!俺の艦に乗ってりゃ、絶対に死なねぇから安心しろよ!!」

「申し遅れました!!私は地球連邦軍地球総軍地球連邦軍総司令部"ジャブロー"直属 極秘特務遊撃部隊及び実験部t……」

「あぁ~良い良い!!そんなのは!カタッ苦しいのは無しにしようや、なっ!」

 

いつからか連邦軍の規律はこんなにも崩れていたのか……。

前会った中佐は正に、海軍!ビシッ!バシッ!シャキーン!!みたいな御人だったのに……。

 

「……分かりました。陸戦ユニット、特務遊撃MS隊"ブレイヴ・ストライクス"隊長の中尉です。よろしくお願いします」

「同じく伍長です!よろしくです!」

「……軍曹だ。よろしく頼む…」

「戦術オペレーターの上等兵です。よろしくお願い申し上げます。」

「うむ、よろしくな!若人達よ!!我が艦……え~っ………ゴホンッ!へようこそ!!」

 

あり、そう言えば名前聞いてないな。

 

「…この艦の名前は何というのですか?」

「……実はまだ決まっていねぇんだよなぁ……。コイツは、次期主力潜水艦のコンペティションにⅧ型潜水艦(U型潜水艦)に敗れたヤツでな……テストにこのベースになった一艦が造られただけだったんだが……そこで廃艦寸前に拾われ、大規模改修された……というかほぼ一から造り直したんだが…」

 

艦長が船体表面を撫でながら言う。成る程、まぁそうなるわなこりゃ。

コストとかヤバそうだもの。

 

「そうだったのですか……」

「……あの"コンボイ"と言い……縁があるな……」

「どうして敗れてしまったのですか?」

「……次期主力潜水艦へ必要とされたのは、原子力炉または核融合炉を動力とし、ミサイル攻撃能力、多目的大型コンテナハンガーと艦載機の運用が可能な海上プラットフォームとしての機能と、55ノット以上での高速潜水航行が可能……と言う物で、全てを満たしなお上回る性能があったんだが……何せコストがなぁ……」

 

やっぱりかい!!

軍という組織の永遠の敵は、やはり予算だなぁ……。

建造段階で気づけん物なのか……。

 

「いつ出られます?」

「進水に訓練航海は済んでる。あとは艤装を施すのみだな」

「名前!!潜りんマリンの名前どうしましょう!!私は"トゥアハー・デ・ダナン"か"青の6号"がイイです!!それか……"頭脳戦艦ガル"で!!」

『ハロ!』

 

おーいそこー。アホの6号はだまってなさい。

 

「ヤメろ!!そこはTDD-1か"トイ・ボックス"の2択だろうが!!」

「同じじゃねぇか!!お前らアニメから離れろ!!」

 

何故地名とか海流の前にそれなんだよ!!

 

「じゃあ"ローレライ"か"やまと"で!いや!!やっぱ"アウター・ヘイブン"か"アーセナル・ギア"!」

「いいや!"シービュー"か"ノーチラス"!!」

「……伊号は、どうだ……?」

三式潜行輸送艇("まるゆ")とかどうでしょう?私達陸軍ですし」

 

表記を考えてくださいお2人とも。

特に"まるゆ"。

 

「ジャパン製なんだからジャパンにちなまないか?俺はジャパンが好きでなぁ……"フジヤマ"とかどうだ?」

 

この人もダメだ。うん。ダメだ。

俺なら……"イヅモ"、とかどうだろうか?

 

「……と、取り敢えず後にしませんか?ほら、新しい装備の事とかありますし……ねっ?」

「そうでした!!ねぇねぇ!!MSの武器は!?"バズーカ"は!?」

「なら任したぞ?まだやる事があるんでな!そんで俺は"フジヤマ"を推すぞ!!」

「はい。また後で……」

「ハンガーならこっちだ。あっ!そうだ!おやっさんからデータが送られて来てな、スラスターノズルを改良したんだった。最大噴射耐久時間が15%増した。それに推力も8%上昇したぞ?後でチェックして置いてくれ」

「了解。ありがたいな」

「飛べます!?飛べますか!?」

「飛べませんよ」

「ん~。まだですかねぇ…」

 

来ないだろ。人型兵器って時点でかなりナンセン……ゴホン。

それを飛ばそうなんぞ……いや!!この艦カタパルトついてんじゃん!!飛ばすんかい!!

 

「バズ~バズ~カ宇宙の彼方までラピュタ~♪」

『ハロ!』

「そんなに楽しみなのですか?」

「はい!なんたって芸術は爆発ですよ!!」

『ハロ!』

 

伍長のテンションが爆発している。つーか後ろのはパズーだ。

ハロは器用にもコロコロ転がってついて来ている。確かにその様子は愛らしい。

 

「……コレで、"ランチャー"も退役、か……」

「ちと早いが、これ以上整備兵の皆さんに負担はかけられませんからね」

「あの子にはお世話になりました!!でも、少し残して置いて欲しいですね!」

「着いたぞ!この3つだ!テストも兼ねてるから、はじめこそ不具合もあるだろうが、そこはどんどん直していくから安心して使ってくれ。使う事で進化するからな」

「わっ!いっぱいありますね!!やった!!」

「……だいぶ系統が違うな……」

「この2つは何で分かれているのでしょうか?1つは明確に違いますが」

 

確かに。一つが一番長く、弾倉が下に着いていて、丸いスコープにグリップにはカウンターウェイトが着いている。もう一つはやや短く、バナナ型の弾倉とボックスセンサー、大きめのマズルブレーキが特徴的だ。

もう一つは完全に別物で、見た目がこれだけ細長い箱を束ねたかのようだ。ミサイルポッドか?

 

「一番手前のヤツが、ブラッシュ社の"ハイパーバズーカ"。口径380mm。装弾数5発。宇宙含めあらゆる状況下で運用する事を前提に開発されたMS携行用無反動砲だ。

その奥のがYHIの"ロケットランチャー"。口径は同じく380mm。装弾数はバナナマガジンから8発。環境の過酷な重力下での確実な作動と信頼性を第一に開発されたものだ。

そして束ねた丸太みたいなヤツが"ミサイルランチャー"。

ミサイルサイロの交換で多目的弾が発射可能な、ミノフスキー粒子下でもレーザー回線により有る程度の誘導が可能な中距離面制圧兵器だ。弾倉を交換する事で多目的弾を発射出来る」

「へぇ……その"ミサイルランチャー"の誘導はどんなもんだ?」

「………オマケ程度…ほぼ誘導しないと考えてくれていいレベルだな」

 

おい

 

 

 

 

 

 

 

おい。

 

「…………名前負け…」

「何故ミサイルと銘打ってんのコレ?」

「厄介ですね。ミノフスキー粒子と言う物は」

「つまりどーゆーことです?全部ロケットランチャー?でも楽しみー!」

「そんな感じになるな」

「あっ!上等兵?この後久しぶりにご飯でも行かない?奢るよー?」

「いえ、遠慮しておきます。この後、ご飯を食べに行く予定なので」

「……………」

「……………」

「……………?」

「……情けないな……」

 

コイツ、ご飯に誘ったのに、ご飯を理由に断られてる…………。

 

「………お前そんなんで本当にあんな大口叩いてたの?」

「そういえば、上等兵って俺のどこが好きなんだろう?俺は上等兵のすべてが好きなんだけどなぁ」

「少尉はわたしの………ふふっ」

「……ポジティブだな……」

「はぁ……あ、あの………軍曹、この後ご飯を御一緒していただけませんか?出来ればで構わないのですが」

「……構わない…」

 

少尉の、いいところ………いや、その前に上等兵軍曹と約束してんだけど……。

うーーーん………………。

 

「髪型?」

「髪の毛の色とかじゃ無いですか?」

「髪の毛だけじゃねーか!もっと性格とかいろいろあるじゃん!」

『総員に告ぐ!!現在作業を行っている者は作業を中断し聞くべし!

出港は明後日、マルフタマルマルだ。この艦の初出撃、処女航海となる。総員準備を怠るな!!

行き先は東南アジア、ボルネオ島(カリマンタン)だ!!』

 

スピーカーが鳴り響き、全員が作業を中断しスピーカーを見上げる。

 

「出港か…"マドラス・ベース"じゃ無いのか…」

「……調整も、ままならず、か……」

「こーゆー時、なんでみんなスピーカー見ちゃうんでしょうかね?」

「また、戦場へ向かうのですね。私達は」

「さぁて、コイツらの初陣、しっかり飾らせてやらんと……で、上等兵?」

「却下です」

「……………」

「ダメだコリャ」

「コリャ」

「………………」

 

結局、何?

 

………………髪?髪のみぞ知る?

 

 

 

 

『いいこと?暁の水平線に勝利を刻みなさいっ!』

 

 

波を掻き分け、艦は行く………………

 




母艦を手に入れ、新しい武器も手に入れた中尉たち、戦場へ!!

時は8月も半ば、ガンダムが大地に立つまであと一ヶ月!!

まだまだ名前大募集です!!

イメージは劇中で述べられた通り。トンデモ潜水艦進水!!

機能はまだあったり、追加されたりするかも。

そのため性能の下方修正あるかもなぁ……。

次回 第五十一章 騒ぐイン・トゥ・ザ・ブルー

「お前明日から第3艦橋勤務な」

お楽しみに!!

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