機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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登場兵器紹介 MS 地球連邦軍編

RX-77-1 "プロトタイプ・ガンキャノン"

製造 地球連邦軍

生産形態 試作機

全高:17.5m

重量:72.0t

出力:1,380kw

推力:51,800kg

最高速度:75km/h

センサー有効半径 :6,000m

装甲材質:ルナ・チタニウム合金

 

 RX-75 "ガンタンク"、RX-78 "ガンダム"と共に連邦軍のRX計画において開発された中距離支援型MS。戦車然としていたRX-75と同様、両肩に二門のキャノン砲を持ち、砲撃戦能力を付加されたMSだが完全な人型となり、白兵戦用MSである"ガンダム"やその量産機を、後方から砲撃によって火力支援を行い、あるいは防空戦を想定して開発された機体である。

 RX-75、RX-78同様、RX-77にもコア・ブロックシステムを採用し、腹部にはFF-X7 "コア・ファイター"が内蔵されている。緊急時には脱出カプセルとして機能するが、RX-77系MSの場合、コア・ブロック・システムの存在が機体内部の弾薬搭載を妨げる大きな壁になっていた。後述の方法で弾薬搭載スペースを確保したが、瞬発火力出なく継続火力が求められる砲撃支援機としては心許ない弾薬数であった事には変わりなく、これを解決するためにコア・ブロック・システムをオミットした量産型としてRX-77-3/4、及びD型が開発された。

 完全な汎用型となったRX-78シリーズやその量産型、RGM-79シリーズと違い、砲撃時の防御力強化のために厚い装甲を持ち、陸戦を重視した設計となっているが、これは当時の連邦軍が戦車などの旧来型兵器から発想が離れられなかったためであるという。

 "ジャブロー"の試験場で砲撃試験や"ビームライフル"の試射、砲撃用の各種センサー調整やバランス修正がこの機体で行われ、後に"ホワイトベース隊"や"サラブレッド隊"に配備されるRX-77-2開発の基礎となっている。

 RX-77系は、RX-75を経て発展した機体だが、最大の違いは二足歩行用及びAMBAC用の脚部ユニットを持つ点で、連邦軍初の二足歩行型MSであった。RX-77-1のロールアウト時期は汎用型となるRX-78-1 "プロトタイプ・ガンダム"とほぼ同時期だが、設計段階より二足歩行型MSとなっていた点ではRX-77が先んじていた。開発スタッフはMSとしては中途半端なRX-75シリーズの欠点を改め、次の機体では連邦軍初の汎用型MSの橋渡し的なMSとして、歩行用及びAMBAC用の脚部を採用することを決定した。この時点でようやく旧来の兵器思想から離れることができたわけだが、それでも初の二足歩行型MSとなるRX-77では陸上戦車から発展したRX-75の名残のように両肩に実体弾キャノン砲を二門装備していた。

 これは元々、RX-77では汎用型MSとなる予定であるRX-78系MSとの連携戦を想定し、砲撃による火力支援によって汎用型MSを援護する戦法を取るためのものである。MSの運用ノウハウを一から構築しなければならなかった地球連邦軍では白兵戦が可能な汎用型MSと、火力の高い砲撃型MSとの連携作戦でMSの運用において一歩先んじているジオン公国軍に差をつけようと試行錯誤していた点が見て取れる。この設計思想、運用思想は功を奏し、大戦後期には汎用型MSと砲撃型MSの混成による運用方法がヒット、ジオン軍にも多大な影響を与えた程である。また連邦軍ではMSと戦車、航空機などの在来兵器、MS支援メカなどによる複合的な戦術研究が盛んに行われ、これが後のオデッサ作戦や北アフリカ奪還作戦「オペレーション・サンダーボルト」においてジオン軍を敗走させた要因にもなっている。

 V作戦が発動した0079年8月には試作機である同機がロールアウトし、"ジャブロー"基地内にてテストが開始された。後のカイ・シデン曹長搭乗のRX-77-2と異なり、腰部中央に砲撃補助レーダー・サイトが装備されておらず、RX-78 "ガンダム"と同様の連邦宇宙軍の略章がつけられいるためセンサー範囲能力とジェネレーター出力ではRX-77-2以降に劣るが、弾薬搭載量、防御力は同一である。RX-77-2の腰部の円形の補助レーダーは、このプロトタイプから得られたデータを元に設置され、対空砲撃時において射撃能率を向上させることに成功している。

 "ジャブロー"の兵器試験場で砲撃試験や"ビームライフル"の試射、砲撃用の各種センサー調整やバランス修正がこの機体で行われ、後の増加試作機開発の基礎となった。

 頭部センサー・カメラ複合機材は射撃管制用に大型化されており、その表面積は広いバイザー型となっている。バイザー型メインカメラの利点は頭部ユニットの構造を簡略化させることが可能であり、後のRGM-79にも内部は"ガンダム"系に近い別物だが方式のみ採用され、後の連邦軍の"ガンダム"系量産機の特徴となった。頭部ユニットはほぼRX-77-2と同一だが、砲撃時にはバイザーがカバーに覆われる機能が付加されていた。この機能はRX-77-2では機構の簡易化のために一旦は省略されたが、後のRX-77Dにおいて再び採用されている。

 主力武装である両肩の240mmキャノンはRX-77-2と同一のものである。旧来の技術を援用した実弾式で弾薬スペースを機体内部に割り当てるのにかなり苦心している。対策として装薬を液体式にして、Aパーツに砲弾、Bパーツに液体装薬を分散配置して砲撃時に供給するシステムとした。そのため被弾時の暴発を防ぐため装甲が厚くなり、防御力ではRX-78よりも高くなった。しかし、結果として高い装弾数を獲得したが、複雑な装填方式は整備性の低下、補給作業の煩雑さ、戦線復帰能力の低下を招き、信頼性もビーム兵器と比べたら高いが、実態弾兵器としては及第点ギリギリと言ったところであり、コストも上昇したため、本機で打ち切らている。続く量産型はコア・ブロック・システムの廃止に伴い、スペースに余裕が出来た為、従来の薬莢方式に改められている。

 砲身は履帯を持ち、接地性が安定しているRX-75に比較し短くなり、射程も大幅に低下している。しかし、機体から大きく突き出さないサイズの砲身は取り回しがかなり良くなり中距離から近距離における対MS戦においても有効な兵器となった。肉厚な砲身は冷却ジャケットで砲身全体を包み込んで強制冷却を行うため、キャノン砲であり限定的な短時間ではあるがMS-06 "ザクII"の"ザク・マシンガン"並みの連続射撃を実現させた。

 これは後方の砲撃支援機が敵MSに迫られた場合のための処置で、砲身のダメージを考慮しない緊急使用の場合、格闘に代わる主力武装としても使用が可能だった。しかし、もう一つの主力装備である"ビームライフル"は、本体の出力が低く、試射においては満足な結果を得られていない。そのためこの点を踏まえてRX-77-2では反応炉の換装工事が行われ、高い火力を持つ"ビームライフル"の装備化が実現し、そのデータ収集の後、RX-77-1の全機がRX-77-2仕様に改装された。

 機体開発における監修には砲撃戦のエキスパートとして名を馳せているエイガー少尉が深く関わっており、中尉の実戦データも反映されている。その最たる例としては240mmキャノンの撃ち別機能である。発射方式を弾速と射程に優れるが高反動となる通常モードと、発射ガスを背面のダクトから噴出させる事で反動を相殺する低反動モードを実装しており、状況により柔軟に使い分ける事が出来た。低反動モードは機体への負担が大きく軽減されるも、足元や後方の部隊に爆風を叩きつけてしまい危険であり、また砂煙で自機の位置を暴露してしまったり味方の視界を遮ってしまったりと問題も多かったが、速射能力には優れており敵MSとの白兵戦にもつれこみがちな前線では好んで多用された。

 

 

RX-77-2 "ガンキャノン"

製造 地球連邦軍

生産形態 試作機

全高:17.5m

本体重量:70.0t

全備重量:144.8t

出力:1,380kw

推力:51,800kg

最高速度:75km/h

センサー有効半径:6,000m

装甲材質:ルナ・チタニウム合金

動力源 タキムNC-3M核融合炉

 

 "ガンキャノン"は、"V作戦"により開発されたRXシリーズMSの一つで、"ガンダム"や"ガンタンク"と同様にコア・ブロック・システムが採用されている。プロトタイプであるRX-77-1によるテスト後、設計を整理した増加試作型がRX-77-2である。腰部中央に射撃用レーダーサイトの追加装備が施された他、反応炉が強化型に換装され、射撃性能が強化された以外はRX-77-1とほぼ同仕様である。本機の特徴として、世界初の実戦的な"ビームライフル"を装備した革命的MSである事が挙げられる。また"ビームライフル"自体の出力も支援戦闘を意識してか、RX-78よりも高く設定され狙撃に優れたタイプである。先発のRX-77-1ではジェネレーターの出力が低く、試射がうまくいかなかったが、"ルナツー"で行われた反応炉の換装によって"ビームライフル"に充分な電力供給が可能となった。この報告は"ジャブロー"にも届けられ、逆輸入する形で装備される流れとなる。また、"ルナツー"に引き渡された機体は"ビームライフル"試射と並行し空間機動テストが実施された。この結果を踏まえて機動性を強化したRX-77-3、更にRX-77Dが生み出されている。

 ちなみに後のRGM-79SC "ジム・スナイパーカスタム"用の"狙撃型ロング・レンジビームライフル"は、このRX-77用"ビームライフル"を発展させたものとして知られている。

 RX-75、RX-78同様、RX-77にもプロトタイプに引き続きコア・ブロックシステムを採用し、腹部にはFF-X7 "コア・ファイター"が内蔵されている。しかし、搭載できる弾薬数が大きく制限されるなどのデメリットも多く、設計段階でバックパックに弾薬を移すという試みがなされ、さらにRX-77-4ではビーム砲式にして弾薬そのものを無くし、RX-77Dでは量産も考慮してコア・ブロックシステムそのものが廃止された。しかし、本機にはコア・ブロック・システムが残されていた。その理由として、緊急時には脱出カプセルとして機能する事は、MSの戦力化が完了していなかった連邦軍において貴重なMSパイロットと試作機の教育型コンピュータに蓄積されたデータ類を失う確率を大きく減らすと考えられていたためであり、脱出可能な手段を残しておきたかった為でもあった。そのため、RX-77系ではRX-77-4までコア・ブロック・システムが残されることになる。

 "ジャブロー"で6機が製作され、そのうち3機がテストのためにサイド7へ送られた。その後、サイド7がジオン公国軍特務部隊の強襲を受け、2機が破壊もしくは機密保持のために焼却され、残った1機が"ホワイトベース"で運用されることとなる。

 白兵戦用のRX-78、長距離支援用のRX-75と連携して、中距離からの援護砲撃や狙撃を行う運用を前提とした為、両肩に240mm低反動キャノン砲を装備し、"ビームライフル"を携行しているが、"ビームサーベル"等の格闘戦装備は持っていない。近接戦闘用の装備は頭部の60mm機関砲2門と、グレネードのみであった。このグレネード は脚部外側、細長い開閉式のウェポン・ハッチに装備されている。RX-77は厚い装甲を持つが、MSの構造上どうしても関節部や背面等装甲の薄い部分が出て来る問題があり、他のMSはその弱点を機動性で補っていたが、本機の機動性は低く、また射撃のため動きを止める時間が長くなってしまい、設計段階から歩兵による接近攻撃への対応が指摘されていた。そのためこの特殊な焼夷手榴弾、通称"ファイア・ナッツ"の装備がなされている。これは後のRX-77-3/4でも標準化され、RX-77系MS特有の装備として知られている。グレネードの弾殻自体は共通であるため、通常タイプのグレネード等との互換性もあり、他のMSが敵MSを撃破、あるいはセンサーを潰すため利用するパターンもあった。

 RX-77系は無防備となる砲撃支援時の防御力強化と、機体全体に配置された液体炸薬タンク防護のため、装甲材は"ガンダム"と同じルナ・チタニウム合金が採用されている。MSの機動戦による目まぐるしいい戦線の変化に追従する為の機動力の確保、更に低い運動性を補う為、デッドウェイトとなりかねないシールドを装備しない前提で運用されるため、装甲厚がMSとしては破格のレベルで施されている。特に弾薬や反応炉、コクピットが収まる胴体部分は240mm低反動キャノン砲の接射による爆風や"ジャイアント・バズ"の直撃に耐えられるほど装甲が厚い。

 兄弟機であるRX-78も"ルナ・チタニウム"合金を利用し高い防御力を持つが、RX-77はそれ以上の耐久力を持つ。白兵戦における運動能力を重視した結果複雑な形状を持つRX-78と比べ、見ようによっては不格好にも見える装甲は生産が簡単であり、全汎用型を目指したRX-78シリーズに比べて生産コストも比較的安く、コストパフォーマンスが高いため、準生産に移されることも決定していた。後のRX-77Dである。

 しかし、その分RX-77と比べて歩行速度、ジャンプ性能などの運動性・機動性は著しく低下している。しかし、MSの機動戦に追従する程度の機動力は確保され、常に有利な位置から援護をする事が可能な程度の絶妙な装甲と機動力の黄金比は後のMS開発に大きな影響を与えた。

 連邦軍のMS開発は元々、従来の陸戦兵器である戦車から発想が離れられず、その名残がRX-77まで残っていたのだが、旧世紀から陸上戦車の運用ノウハウを持っていた連邦軍だからこそ、汎用型MSと砲撃用MSによる連携作戦という新しい発想へ辿りついたとも言える。

 ジオン軍はMSを作業用ポッドや宇宙用重機のノウハウを元に作りだして独自に運用ノウハウを蓄積していったが、対する連邦軍は従来兵器の運用思想を転用することで、ジオン軍との戦術的な差を埋めたのだ。

 これはMSで一歩先んじていたジオン軍でも着目され、防空用MSとして配備していたMS-06K "ザクキャノン"を急遽、中距離支援戦闘に投入するなどの運用を行ったことからみても、ジオン軍も連邦軍のMS運用思想が正しかった事を認めていた。

 "ホワイトベース"に回収された"ガンキャノン"は、正規乗組員のほとんどが死傷していたため民間人のカイ・シデンが搭乗することとなり、数々の戦場を戦い抜く。

 その後、"ジャブロー"にてもう1機の"ガンキャノン"が配備され、カイ・シデンの機体には「C-108」、もう1機には「C-109」とマーキングが施された。「C-109」にはハヤト・コバヤシが搭乗し、2機共に"ホワイトベース"の主戦力として戦い抜くが、"ア・バオア・クー"戦にて大破、放棄されている。

 また、"サラミス"級の搭載機として「201」「202」「203」の3機が配備され、「203」はジオン公国軍のエリク・ブランケ少佐が搭乗する"ゲルググ"と互角以上に戦う姿が目撃された。

 更に、"サラブレット隊"にも3機が配備された他、地上ではゴビ砂漠や"ジャブロー"等に配備され、ジオン公国軍の"ウルフ・ガー隊"、"闇夜のフェンリル隊"などと交戦している。

 試作機ではあるが、高い砲撃戦能力とコストパフォーマンスが評価され、RX-77-2が増加試作名目で準生産に移された他、D型などの量産検討モデルも開発された。

 これらの増加試作機群は、大戦中期よりMSの運用を検討する試験部隊や、東南・中央アジアなどの部隊を中心に配備が開始された。RRf-06"ザニー"と共に、"ガンキャノン"は連邦軍初のMSとしてRGM-79の普及型に先駆けて実戦配備されたMSでもあった。

 大戦後期から量産検討モデルのD型、RGM-79系との中庸型であるRCG-80も量産に移され、連邦軍の中距離支援MSとして確固たる地位を築くに至ったMSである。

 戦争が終結すると、RX-77はすでに量産体制に移り、RGC-79の生産が開始され、戦後のジオン残党討伐戦において活躍した。RX-77-2の残存機のうち、0085年まで現役だったがその後、連邦軍内で強い発言力を持つようになった"ティターンズ"の台頭によって中距離支援MSの運命は大きく変わることになる。

 MSの性能が向上して推力の強化と、"ビームライフル"の標準装備化と相俟って、少数精鋭の対テロ部隊であり、大規模な戦線を構築しない為中距離支援MSは必要ではないとする"ティターンズ"MS部隊のドクトリンによって、連邦軍における中距離支援MSは序々に廃れていったのである。しかし、このコンセプトの研究は細々と続けられ、キャノンの系譜は確かに引き継がれていくのである。

 

 

武装

 

XBR-M79-a "ビームライフル"

出力:2.1MW

 世界初の実用化が成された"ビームライフル"であり、当初はボウワ社により量産型の"ビームライフル"として開発が進められていた。しかし、当初の課題であったエネルギーCAPの開発はスムーズに進んだものの、メガ粒子の励起時における省電力化が難航、開発が遅れ、結果高出力のジェネレーターを持つ機体でないと運用出来無いという問題があった。

 また、同時期に別系統として開発が進んだRX-78系列が装備するXBR-Mタイプとは別設計のXBR-Lタイプのデバイスを試験的に搭載していた。XBR-Lタイプは銃身と一体化したビームドライブユニットが特徴的であり、安定性は高かったがその分長大でありMタイプよりも取り回しに難があった。

 当時のビーム兵器は信頼性と安定性が低く、被弾のリスクを抑える為にも小型化は急務であった。また、中距離支援機とは言っても突発的な白兵戦は避けられ無いと判断され、その際の取り回しの悪さは致命的とされ、本兵器はこの時点で採用は見送られる予定であった。

 しかし、XBR-Mの開発の遅延に加え、大型化かつ高出力化に主眼を置かれた設計はビームの収束率を上げ、結果として高い命中精度と破壊力に加え大気状況の影響を受け辛く長射程であると言う特性を獲得し、急遽長距離狙撃用と銘打たれ開発は続行した。そのため最終的には仕様を変更、"ガンキャノン"専用"ビームライフル"として生産が開始された。

 試作兵器故の扱い辛さはあったが、大型のセンサーを2つ搭載し、長い銃身を持った本兵器は正に狙撃仕様の名の通りであり、RX-77の持つ高い射撃能力と相まって高い戦果を上げた。

 

 

 

 

RX-79[G] "試作先行量産陸戦特化型ガンダム"

製造 地球連邦軍

生産形態 試作先行量産機

全高:18.2m

本体重量:52.8t

全備重量:73.0t

出力:1,350kw

推力:52,000kg

最高速度:115km/h

センサー有効半径:5,900m

装甲材質:ルナ・チタニウム合金

 

 "一年戦争"時、地球連邦軍は"V作戦"において"プロトタイプガンダム"がロールアウトが可能と判断された段階で、すぐさまRX-79計画に着手した。

 試作機であるRX-78系は生産性を度外視した非常に高性能な機体であったため、各パーツの品質管理は厳しいものとなり、要求スペックに満たない規格落ち部品が大量に発生する事となった。この余剰パーツを流用して先行量産型(FSD)として製造されたのが"量産型ガンダム"ともよばれる本機である。

 しかし、"オリジナル"であるRX-78タイプと全体的には似ているものの、実際にRX-78タイプの規格落ち部品が流用されていたのは熱核融合炉(リアクター)等の内蔵動力及び個々の回路やアクチュエーター等の機体を構成する最小単位のパーツであって、装甲材や機体フレームといった機体の外観・デザインを決定する要素は陸戦型シリーズ専用ラインで製造されていた。これは当初から陸戦専用、及び少数ながらも量産を前提としたためであり、量産をまるで考慮していなかったRX-78タイプを無理に増産するよりは、多少の手間をかけてでも新規設計した方が少しでもコストと期間の短縮になると判断された結果である。そのため、RX-78タイプに採用されていた加工が難しい新素材ルナ・チタニウム製の優雅な曲面を多用していた装甲板は、殆どが生産性を重視した直線主体のものに改められた。このため防弾性能も"オリジナル"であるRX-78タイプと比べやや劣る事になった。

 連邦軍にとって慣れないMSを地上で運用する必要から、整備性や運用面なども強く意識した設計となっている。 MSは地上に立てば高さ18mの巨大建造物でもあり、無重力の宇宙と違って日々の整備からパイロットの搭乗まで非常に負担の大きいものであった。又、数で劣る事が既に予想されており、数の優位を崩すゲリラ戦術を行う為、冗長性や少人数で整備運用が可能である事が求められた。これらが考慮され、後述する地上運用に必要な各種装備や整備のための無数のアクセスハッチ、内部空間などを設計に盛り込んだ結果、体形もRX-78タイプやRGM-79タイプのスマートなラインとは似ていない、がっしりとした印象を持つ物となった。

 本機の廉価版であるRGM-79[G] "陸戦型GM"も、デザインが簡略されていながらも本機とほぼ同じ意匠のパーツが複数見受けられ、マッシブな体型も共通している。 このことから、純粋なRX-78 "ガンダム"の量産型と呼べるものはあくまでRGM-79 "GM"であり、RX-79[G] "陸戦型ガンダム"は一部パーツ流用によるRX-78の亜種、さらにそこから派生した量産機がRGM-79[G] "陸戦型GM"であると言える。

 本機はコスト削減のためコア・ブロック・システムはオミットされ、宇宙戦闘用の装備も取り除き、完全な地上戦に特化した設計にする事が決定、陸戦用として再設計された。そのため姿勢制御バーニア等の宇宙戦闘用の装備やコア・ブロック・システムは撤去されている。また、同様の理由からシュノーケルダクトやサーチライト、昇降用リフト等の地上での運用に必要な装備が追加されている他、レーダー、光学機器も地上用のチェーンがなされた物になっている。長期作戦行動用のウェポンコンテナや空挺降下用のパラシュートパックが用意されている。

 "オリジナル"のものとほぼ同等の高出力ジェネレーターを持ち、装甲もルナ・チタニウム合金で作られるなど、極めて高い性能を有するが、規格落ちした余剰パーツにより生産された点を考慮し、機体性能にばらつきを出さぬよう、リミッターを設置することにより各機の均一化が図られている。そのため一部のパイロットはそのリミッターを意図的に外し、短時間だけ運動性能を高める事も行っていたとされる。

 ただし、本機はその性質上、補修用の部品が慢性的に不足しがちな機体である。このため修復の際には共食い整備や"陸戦型GM"や撃破した"ザク"の部品等も利用しての現地改修がされることもあり、五体満足な状態で"一年戦争"終結を迎えた機体は一機もないと言われる。

 戦時急造された本機だが、外観は新たにデザインされており、RX-78の意匠を残しているのは一部カラーリングと頭部のみで、その頭部すらも完全に新規設計されていた。主な変更点として頭部60mm機関砲の内蔵を廃止し、胸部へと新たに12.7mm旋回式機銃を装備し、また胸部はコア・ブロック・システムの廃止からやや余裕があったため"マルチランチャー"ユニットを新たに増設した事である。対MS戦闘において威嚇射撃、牽制射撃及びミサイル迎撃のために装備された頭部機関砲であるが、自由度こそ高くはあったが装弾数や対人、対施設攻撃にはオーバーキル気味であった事から、テストパイロットからの評価は今一であった。そのため、重力下における戦闘に特化された本機では機銃はMS戦闘には使われず対地掃討戦にのみ絞り、対施設、対MS戦闘では"マルチランチャー"ユニットを用いる様にと分担させる事に決定、結果この様な変更がなされた。

それに加え、地上ではバックパックにむき出しで接続された"ビームサーベル"は損耗率が高くなると予想されたため、"ビームサーベル"の防塵対策も兼ねた保護及び接続位置を下げ整備性を上げるためにふくらはぎ側部に移され内蔵式に変更され、使用時にはハッチの解放により内部からジャッキアップされた"ビームサーベル"を掴む方式となった。これにより比較的簡単な整備で済むことになったが、その構造上"ビームサーベル"を取り出すには膝を曲げる必要があるため、即戦対応能力は低下した。

 また、"ザクII"のショルダースパイクを参考に緊急近接格闘装備として膝部にスパイクを装備した事が挙げられる。しかしこれが実戦で役に立ったという報告は聞かず、主に膝立て時の姿勢保持に役立つのみであったという。そのため"陸戦型GM"にも装備されたが、後期生産型には装備されない例もあったようだ。

 また、連邦陸軍省は密林や山岳地帯など、これまでの戦闘車両や航空機の運用が難しい地形においてMSの優位性を示すことができると考えており、急遽量産された20機の陸戦型ガンダムは、主に地球上での激戦区のひとつであるイーサン・ライヤー配下の東南アジア方面軍機械化混成大隊に配備されることとなった。

 本機はその運用目的から陸戦、特に密林、山岳地帯や砂漠での使用に特化した数々の装備が存在する。RX-78では頭部両側面に頭部機関砲が装備されていたが本機では廃され、代わりに頭部左側に潜望鏡を内蔵したシュノーケルダクト、右側には通信用アンテナを装備する。また、オプションとして機関砲増設ユニット、強化通信アンテナが用意されていた。

 しかし、機関砲は胸部に移され、装弾数が増加したものの、自由度の低い胴体への移設は地上を走り回る軽車両などへの追従性を低下させ、またコクピット周辺に機関砲ユニット及び"マルチランチャー"ユニットが移ったために誘爆の危険性やそれがパイロットへのプレッシャーとなる事に加え、左右非対称の機体が整備性を低下させるなどの問題も出た。

 コア・ブロック・システムの廃止のためコクピットは腹部から胸部に移され、河川での運用や緊急脱出装置(インジェクション・シート)も考慮されてコクピットハッチは上面に配された。この方式は現地では高い評価を得たが、コクピット周辺の装甲を増加させ耐弾性を向上させる事などが困難であり、後に量産されスタンダードとなったRGM-79タイプでは採用されず、RX-78タイプと同方式の腹部内蔵型に差し戻され、コクピットブロックその物を強固なサバイバルセルとして機体に組み込む方式が主流となり、それは後コア・ブロック方式の技術を援用した脱出コクピットへと繋がる事となる。

 本機は運用が重力下に限定されているため、パイロットの搭乗用に昇降ワイヤーリフトを設置し、純粋に重機としての運用も考慮されバックパックにサーチライトが設置されている。原型機から空間機動用の装備は取り外されているものの、これらの陸上および実戦部隊向けの装備や改修を施した結果、純粋な試験機であるRX-78タイプに比べ、10t近く重量は増加している。

 砂漠地帯での戦闘も十分考えられたため、胸部エアインテーク用防塵フィルター等のオプションパーツが用意され、関節部やマニピュレーターに防護カバーを装着させ防塵化された仕様もあった。各種オプション装着のため、機体各部に取り付けアタッチメント及び、取り付け作業用の足場なども装備されている。

 他にも、MSによる実戦でのデータ収集を目的とした特殊部隊などに配備され、"陸戦型ガンダム"は各戦場の最前線で活躍している。

 掌部には手持ち武器と確実な連動のためコネクターが装備され、通常通信、レーザー通信、コネクターを介しての通信という数多くの保険がかけられており、その結果FCSとの連動性能は極めて高く、引き金は最終手段となり、人差し指にあたる部分が戦闘などで破壊されても、武器を握ることさえ出来れば射撃が可能である。この様な多くの機能や保険が大量に導入されており、無駄こそ多かったが、その結果、その取捨選択が今後のMS開発の礎となった。

 

 

 

RX-79[G] "試作先行量産陸戦特化型ガンダム"中尉機

製造 地球連邦軍

生産形態 試作先行量産機 初期生産型 現地改良型

全高:18.6m

本体重量:52.8t

全備重量:74.7t

出力:1,420kw

推力:52,000kg

最高速度:120km/h

センサー有効半径:5,900m

装甲材質:ルナ・チタニウム合金

 

 "陸戦型ガンダム"最初期ロット(アーリー・バリアント)である0号機を、中尉の意見を参考に改良を加えた機体。機体番号が存在しない為、便宜上"00号機"(ツイン・ナッツ)と呼ばれていたが、後に愛称が"ジーク"に統一された。

 主な変更点として、頭部に"オリジナル"への先祖返りのようにM-60 13.2mm機銃ユニットが追加された事と、通信性能を強化するために収納式の小型ロッドアンテナを廃止、半収納式大型のロッドアンテナへと変更した。胸部は12.7mm旋回式機銃ユニット、"マルチランチャー"ユニットのオミットを行い、装甲の追加、ダクト位置の変更がなされた。

 自由度の高くない胸部機銃は敵軽車両への追従性が低く、また左右非対称の設計は整備が煩雑になると判断したためこれらの改修が加えられ、汎用性が増している。しかし機銃は頭部に移した弊害から装弾数は低下し、最初期こそ機銃の振動やマズルフラッシュがセンサーに悪影響を及ぼすデメリットもあったが、後に改良され異常は無くなった。頭部機関銃ユニットは中尉の要望と弾丸の共通のため従来型の12.7mmから口径のアップが施され、"ロクイチ"に搭載されている高い信頼性を持つM-60重機関銃をそのまま簡易改造し搭載している。

 またオミットしその空いた胸部スペースを利用、右側に集中していたダクトを左右に分割し横向きに再設置する事で、前面には装甲を追加しサバイバビリティ能力が向上。また、来るべき計画されている"ビームライフル"の配備に備えサブ・ジェネレーターの追加に冷却機の強化も行っている。

 それ以外にも、脚部ニークラッシャーを大型化、スパイクを取り外し内部に"スローイングナイフ"を装備する。その状況で展開、膝蹴りを繰り出し"ニーカッター"として使用可能。

 メインコンピューターには、AI技術などを応用した特殊な教育学習型コンピュータを試験的に複数搭載しており、ソフト面の性能は未知数となっている。

 それらの改修に加えデフォルトでリミッターが解除されている機体であるため、ジェネレーター出力は"オリジナル"以上であり、機動性能も"オリジナル"に近い数値となった。

 初期はOSが発達しておらず、操縦を殆ど手動で行う必要があったため、武装変換時に取り落としてしまう問題が多発したため、掌部は表面を合成樹脂で覆い圧力と摩擦力を強化し、武装側には電磁石を装着、また予備機構としてヤモリを参考に電気的に中性な分子間に働く相互作用であるファンデルワールス力を利用した吸着機構が搭載され、グリップ力の強化が行われた。

 カラーも変更され、敵味方の識別及び試作機の色合いを濃く残していたカラーは少数の特殊部隊小隊である事を前提に変更、ブルーだった胸部は黒に近いミッドナイトブルーに変更、マルチブレードアンテナのカラーもイエローオレンジからグレーへ、爪先から足の裏、踵にかけても胸部と同じ色に変更された。安易に大きく色相を変えなかった理由としては、MSの塗料は電磁波遮断や排熱、耐熱等様々な効果を持つ特殊塗料であり、カラーバリエーションに乏しい新型である事がある。またミノフスキー・エフェクトにより目視による判断も大切な上、可視光もその色味が変わって見える場合がある為下手なカラーリングの変更は誤射の可能性を孕んでおり、ベース色からかけ離れた塗装は避けられている。しかし、今後MSの大量投入が考えられるている事から、テストベッドとしての迷彩も順次試して行く予定である。

 

 

 

RGM-79[G] "試作先行量産陸戦特化型GM"

製造 地球連邦軍

生産形態 試作先行量産機

全高:18.0m

本体重量:53.8t

全備重量:66.0t

出力:1,150kw

推力:49,000kg

最高速度:110km/h

センサー有効半径:6,000m

装甲材質:ルナ・チタニウム合金

 

 "陸戦型GM"は、地球連邦軍におけるMSの量産化計画では最初期に開発された、RX-78-2"ガンダム"の実働データが入手できる以前に地球連邦軍が開発した先行試作量産型MSで、そのため実質地球連邦軍MS開発計画であるV作戦とは別に進められて開発されたと言っても過言ではない機体である。後にRX-78-2"ガンダム"の稼働データが入手できてから開発・量産されたRGM-79 "GM"とは、事実上違う機体である。

 そのため、V作戦によって開発されたRX-78の実働データの恩恵を受けておらず、ある程度限られた環境でしか稼動できないこととなった。しかしながら、重力下におけるスペックはRX-78にも匹敵すると言われるほど高性能なものに仕上がっている。

 RX-79(G) "陸戦用先行試作量産型ガンダム"の生産ラインを利用されたため、後の制式量産機RGM-79 "GM"との互換性は低い。しかし内装部品などは地上用にチューンされているため、その分RGM-79 "GM"よりも機動性・運動性が高く、装甲にもルナ・チタニウムが使われている。武装も多くが用意され充実しており、MSと言う革新的な兵器でありながら、旧来の技術が多く使われ、稼働率も高く信頼性の高い機体である。

 反面、連邦が実際にMSを量産する前に試験的に量産されたMSだけありコストは高い。そのため、二次生産の増産を皮切りに製造ラインは停止され、以後の主力にはRGM-79が採用されている。

 因みに機体名である"GM"とは、"Gundam type Mass-production model"("ガンダム"簡易量産型モデル)"General Mobile-suit"(一般的なモビルスーツ)、あるいは、RX-78型の直系としての"Gundam Model"(ガンダム型)など様々な意味合いが持たされ、後に連邦軍MSの基礎となる事が運命付けられた妥当な名前だと言えよう。

 本機の量産ラインはRX-79[G] "陸戦型ガンダム"のものを流用しており、各所に類似点が見られる。装甲材も"陸戦型ガンダム"と同じ高価なルナ・チタニウム合金が採用されていた。また、RX-79[G]型落ち部品や弾かれた装甲などを使用している個体もある。

 "陸戦型ガンダム"との主な相違点は、"陸戦型ガンダム"の胸部の左右非対称の設計がもたらした整備性の低下の反省を踏まえコスト削減を兼ね胸部機関砲と"マルチランチャー"のオミットをした事。さらにウェポンコンテナ用バックパックのオミットである。しかし互換性はあり、簡単な改造で装備可能である。

 また頭部も大幅な変更が加えられ、"ガンダム"タイプの代名詞と呼べるようなマルチ・ブレード・アンテナを廃止、デュアル・アイ・カメラ・センサー複合機器も、簡略化とコスト削減が行われ外見は"ガンキャノン"などと同タイプのゴーグル方式へ切り替えられた。オプションの機関砲ユニットや強化通信アンテナユニットも廃止された。

 更にジェネレーターも低出力のものに変更されているが、"ビームライフル"の使用は可能である。しかし出力を下げた射撃でも"ガンダム"タイプと比べてエネルギーの再チャージには時間がかかり、その間排熱が必要なため機体の運動性能も低下してしまうという弱点もあった。しかしながら、後期生産型はその廃熱問題も解決され、ジェネレーターを交換、出力を底上げした機体も存在した。そのため、"ロングレンジ・ビームライフル"を装備し、限定的ながらも高火力な援護射撃も可能だった。

 "陸戦型GM"はジオン公国軍の勢力圏拡大が懸念される戦線、戦略上重要な東南アジアにいち早く配備され、設立当初から第11独立機械化混成部隊に配備されていたMSである。また、同様の理由で東南アジア方面の部隊にも配備されていたことが確認されている。

 また、MSによる実戦でのデータ収集を目的とした特殊部隊などにも優先的に配備されている。

 戦争終盤には地上での大規模な決戦の舞台となった"オデッサ"作戦にも投入された。"オデッサ"作戦に参加した独立混成第44旅団に所属する機体は、連邦軍MSの標準的な菱型シールドを装備していた。

 特殊部隊第三小隊のマット・ヒーリィ中尉は本機に搭乗し、ジオン公国軍の"グフ"や"ドム"等を撃破する活躍をみせていたが、東南アジアや"オデッサ"作戦に配備された機体は、上層部の意向から後方に配置された事に加え、運用面でのノウハウが確立してない事もあり、特に目立った戦果を残していない。

 本機は地球連邦軍初の本格的に量産されたMSであり、予備パーツもそこそこ豊富にあった。

 そのため、パーツのストックが少ない"陸戦型ガンダム"に、同じ生産ラインから誕生した本機の部品を流用することも可能である。実際に東南アジア方面軍機械化混成大隊では、戦闘で頭部を破壊されたカレン・ジョシュワ曹長の搭乗する"陸戦型ガンダム"に、"陸戦型GM"の頭部をそのまま流用した、通称"GMヘッド"があり、またMS特殊部隊第三小隊のマット・ヒーリィ中尉の搭乗するRX-79[G]の左腕にもそのまま使われていた。しかしこれもRGM-79の本格生産の開始と共にパーツ生産数は激減し、最終的には共食い整備が当たり前となってしまった。

 しかしそのため掌部も共通であり、"陸戦型ガンダム"と同じ武器を運用出来た。ハードポイントも共通である。

 ちなみに、この機体をベースに地上戦用装備を全廃し宇宙戦の装備を施した機体も存在し、RGM-79(E)と表記される。"ルナII"において試験的に少数が配備されていたようで、若干の戦闘記録も残されているが、元々完全な陸戦用として開発されたMSであり、また、RX-79[G]と比べ機体出力の差やキャパシティなども余裕も無く、いくら装備を換装しようともその設計自体に限界が生じており、パイロットの腕や経験も足りず戦果の方は芳しいものではなかったらしい。

 

軍曹機

 プロトタイプ。そのため初期不良かジェネレーター出力が安定せず、戦闘機動中に不安定になる問題を抱えている。頭部、胸部上面に通信機能強化のためのロッドアンテナが追加された他、対地歩兵掃討用の"Sマイン"が追加された。

 またバックパックが"陸戦型ガンダム"と同タイプのものと交換され機動力が増加、空挺ユニットやコンテナユニットが装備可能となっている。因みに機体のカラーは3機統一してある。

 

伍長機

 外観上の変更点は小隊として運用を統一する為のバックパックの換装のみである。一番オーソドックスな機体に近いが、軍曹機と合わせ納期が繰り上げられ納品された機体であるため、頭部、胸部を除き"陸戦型ガンダム"と同じパーツを使用しているため運動性能などが高まっている。

 しかしその分バランスが崩れており、伍長機はリミッターが強めに設定されクセを減らしてある。FCSの調子が悪く、照準がややランダムにブレてしまう不良がある。この問題はソフト及びハードの不良であり修正こそ可能であるがイタチごっこに近い。また、損傷したパーツは順次純正の"陸戦型ジム"の物と交換されており、パーツの共有や擦り合わせの実験機としての実態を持つ。

 

 

 

武装

 

YHI YF-MG100 量産試作型"100mm マシンガン"

口径:100mm

装弾数:28+1発

 ヤシマ重工(YHI)製の1G下の運用を前提に開発されたMS携行用100mm実体弾射出試作火器。本機の基本携行火器として位置付けられており、腰部側面に予備マガジンを装備する。

 ボディにはボックス型マガジンにフォールディングストックを装備しコンパクトに纏められており、メインアームでありながらその実態はMSサイズのSMGと言ったような物で、想定敵である"ザクII"が装備する"ザクマシンガン"より小型で取り回しが良く、連射性に優れた使い勝手の良い火器として普及した。最大の特徴はYHIの当時提唱していた可搬型兵器構想に基づき、マシンガン本体を分解してコンテナへ内蔵する事を可能にした点である。MSを歩兵として捉え、手先の器用さを生かした柔軟な運用と言う設計思想から取り入れられた本機能は確かに革新的であったが、戦場においては無駄な機構として後の兵器には採用されなかった。

 砲身はライフリングを持たない滑空砲方式で発射され、弾丸はやや独特の軌道を描くが、それはFCSの調整で高い命中率を維持する事が出来た。砲身は3000発毎の砲身交換が義務付けられていたが、最前線ではその規定が守られない場合があり、命中率の低下や作動不良を招いていたとされる。

 使用可能弾頭は成形炸薬(HEAT)弾、装弾筒付き翼安定徹甲弾(APFSDS)弾、粘着榴弾(HESH)弾、通常榴弾(MP)徹甲焼夷弾(API)徹甲炸裂焼夷弾(HEIAP)等、作戦に合わせ適宜使用された。弾倉は本体下部に装備されるコンパクトなサイズであり、装弾数もそう多くない。理由として、薬莢式である事、内部に強制給弾を行うローダーが装備されており確実な給弾を主眼に置かれた設計であるのが1つ、もう1つは想定敵である"ザクII"の正面装甲であるなら、直径3m以内の円に3発直撃させる事が出来れば装甲を貫通し内部構造を破壊、機能停止に追い込めると判断されたからである。本機の高い性能を持つFCSと合わせその効果を見込まれたが、あらゆる電子機器の性能を落とすミノフスキー粒子の散布された実戦においてはパイロットの練度不足と合わせ命中率は大きく低下し、その理想論は儚く崩れ去る事になる。

 先行量産された"陸戦型GM"の生産完了に伴い一時は生産が停止されたものの、砂塵舞う砂漠地帯や高温多湿の密林地帯など、環境を問わず運用できる抜群の信頼性能の高さと100mm口径というストッピングパワーは現場からの絶大な支持を受けており、またノーフォーク産業によるライセンス生産もあり、その後も地上専用装備として供給され続けた。また、強化型としてマズルと機関部を改造したものや、前線からの要望が最も多かった大型の48発入りマガジンも開発、パッケージング化され順次戦線に投入された。

 "一年戦争"時代こそ対MS戦において十分な威力を発揮したが、同じく初期の連邦製MS用火器である宇宙大気圏内両用の90mmブルバップ "ジム・マシンガン"("ジム・ライフル"と機関部を共用する。"100mm マシンガン"と比べ連射性能と装甲貫通力を求めた兵器)とは異なり、戦後は一部地域を除き殆ど使用こそされるも生産はされていない。

 

 

YHI FH-X 180 可搬型試製"180mm長距離砲"

NFHI GMCa-type.09/180mm 可搬型試製"180mm長距離砲"

口径:180mm

装弾数:6+1発

 YHI社製の1G環境下用に開発した長距離砲。通称"180mmキャノン"。設計にはツィマッド社のZIM/M・T-K175C "マゼラ・トップ砲"を参考にしたと言われている。そのため大型で、また反動を抑え込むためかなりの重量があり、取り回しも悪い。そのまま持ち運ぶ事は機体のフレーム、駆動系に多くの負担がかかるため、後述の機能を活かし分解して運ぶ事が推奨されている。

 給弾は機関部上部に挿入されるカートリッジ式6連ボックスマガジンにより行う。使用弾薬は成形炸薬(HEAT)弾、徹甲(AP)弾、焼夷榴弾、通常榴弾(MP)徹甲焼夷弾(API)徹甲炸裂焼夷弾(HEIAP)等。

 最大の特徴は構成ユニットをコンパクトに分解し、MSが装備する専用コンテナへの搭載が可能だった事だろう。

 この構造はYHIが提唱するMS用可搬型兵器構想に基づくもので、この砲の組み立ては全てのMSの手によって行えるように設計してあった上、同じくMS用可搬型兵器構想で設計された武装と一部パーツが共用であり、整備性も高かった。しかし、戦況が長引くにつれ、前線ではMSの機動力を利用した奇襲対策に即応性が求められ、分解せずに本武器を肩にかけて運搬するシーンも多く見られた。銃身やフレーム、装甲に負担をかける為推奨されていない運用であったがパイロットには関係無かったのだ。その結果MS用可搬型兵器構想は絵に描いた餅となり、後の兵器には受け継がれなかった一因であるとされている。

 地上専用であるため複数のフックが設けてあり運搬し易い設計となっているが、同時に対要塞戦用の多目的榴弾砲(デモリッション・ガン)に近い武器であったため用途が限定されており、戦争後期には要塞戦自体が少なくなった事も手伝い配備されたのはアジア地区に留まり、その他は後方の重要度の低い基地防衛用に回された。しかし後に戦線に不足しがちであった中距離及び長距離砲撃支援に用いられ、再び戦場に返り咲く事となる。MSを機動兵器として捕らえた場合少々『役不足』な運用方法ではあったが、現場の要望とそれに対応するMSの汎用性を表していた一例と呼べるだろう。

 高初速で撃ち出される弾頭の威力は絶大であるが、反動は大きいため両手でしっかり保持し、出来れば膝をつき、シールドを銃架とする事が推奨されていた。しかし、MSのパワーでは命中率こそ著しく低下するものの、立ったまま片手で撃つ事も可能ではあった。

 型式番号が2つあるのはノーフォーク産業でライセンス生産が行われた為である。この頃のヤシマ重工は"ビンソン計画"による、宇宙戦艦の増産に力を入れており、重要度が低下しつつあった本兵器へ割ける生産ラインが無かったのだ。その為余剰を生産し、艦砲として装備する計画もあったが却下され、更には対MS戦闘には不向きと判断され、小口径化、高初速化を図るプランも浮上したがそれも戦争終結と共に凍結された。

 

"ランチャー" 試製対MS用使い捨て榴弾発射筒

口径:240mm

装弾数:1発撃ち切り方式

 "ブレイヴ・ストライクス"兵站、補給、整備隊が共同で旧世紀の米軍をはじめとしてあらゆる軍隊、ゲリラが使っていたとされるM72 LAW、通称"ロウ・バズーカ"を参考にし開発したMS携行用の小型ランチャー。

 "ザクバズーカ"からMSの"バズーカ"の有用性は認められており最優先にて開発された物の一つ。見た目はほぼただの筒だが、その筒を引き延ばし、サイトを展開する事で射撃可能になる。筒を引き伸ばし発射態勢を取る事でセーフティが解除される仕組みとなっており、比較的小型な発射筒であるため取り出して展開してからの比較的素早いエイミング、射撃が可能。展開方法はMSに登録してあるため展開に手間取る事や前後を逆に構える事はない。しかし説明書は用意してあるため読む事が推奨されている。

 自己推進弾頭を撃ち出す無反動砲であり、そのため後方およそ30°の角度で約800°にも達する発射ガスを数百mに渡って噴射するため後方の安全が必須。しかし燃焼ガスの組成を変更する事でバックブラストはまだ抑えられているほうではあるがやはり目立つため、射撃後の射点移動が推奨されている。

 単純な仕組みで製作も比較的簡単、コストも安いが、MS相手には口径と炸薬量の不足から威力不足は否めず、また本体を非電装方式の使い捨て方式にしたため光学サイトを装備しておらず、本体とのFCSリンクも不可、射撃時にはトリガーを直接引く必要があり、その上照準はMS本体のFCSに依存しているため命中率に難があった。

 収納形態時は防水性があるが、1度展開すると失われてしまうため雨天時は展開後30秒以内に射撃しなければならない。

 しかしその真価は小型である事からくる収納性の高さにあり、腰部背面に2本、"マルチプルシールド"の裏に2本、ウェポンコンテナ内に最大8本収納可能。この本体のサイズ、重量から携行性に優れ、複数本を携行し作戦行動を行っても支障が出ないため、MSの火力の増大に繋がった。

使用弾頭は徹甲弾(AP)成形炸薬弾(HEAT)粘着榴弾(HERH)通常榴弾(MP)等多数が用意されたが、主にHEAT、MPが使用された。弾頭は射出後自己推進する二次加速式であり、多少なりとも銃身がある為"シュツルム・ファウスト"等よりは射程及び命中精度に優る。しかし、それも誤差程度であり、対MS戦闘には不向きであり、速度の遅い車輌や移動しないトーチカ等への攻撃が推奨されている。

 試作兵器であり正式採用品ではない現地開発モデルである為、その製作はオーダーメイドとなった。4連装に束ねる、下腕部に懸架する、バックパックに並べて括りつける等運用例も多くが考案、試行された。しかし、その数は常に不足し、またその製造全てを現地で行える利点は品質にばらつきを生じさせ、整備班の負担も増大した。結局は正式採用品が来るまでの繋ぎであり、段階的にその姿は見られなくなった。

 

 

BLASH HB-L-03/N-STD 試作先行量産型"ハイパーバズーカ"

BLASH HB-L-03/N-STD-10 "ハイパーバズーカ"改

口径:380mm/270mm/75mm

装弾数:5発

 MS専用の対艦攻撃及び多目的火力支援兵器としてブラッシュ社に開発された肩掛け式の噴進弾射出筒、無反動ロケット兵器プラットフォームである。最大口径380mmという一撃の火力と爆風による高威力な弾頭を撃ち出せるため、主として戦闘速度の遅い宇宙戦艦や人工衛星、陸上戦艦、トーチカをはじめとする建造物等の破壊に使用された。また、この口径は二重構造のインナーバレル径であり、純粋な内径は600mmであり、600mm弾頭の運用も考慮されていた。

 開発に当たっては長距離火力支援兵器を連邦軍に納品していた数社が協力、用途に合わせた多目的運用を可能とした無反動ミサイル弾頭発射式として開発を開始した。しかし、ミノフスキー粒子散布下では電磁波の探知及び照準の固定が難しく、結果追尾性能が発揮される場合はかなり少ない為、弾頭によっては赤外線シーカーも装備されたがミノフスキー粒子濃度によってはそれも機能せず、高価な弾等は次第に敬遠され、無反動ロケットとして開発、配備、運用された弾頭が大半であり、実質は前述の通り無反動ロケットである。

 比較的単純で簡略化の図られた構造を持っているが、長砲身と後部の質量弾の重量を中心付近のグリップで保持する構造だったため、重力下での運用やMSの機動運用時に砲身への歪み等の影響が出ないよう運用時の厳密なマニュアルが用意された上、FCS側から機体の運動制限がかけられる仕様となった。

 大口径ロケット弾であるため当然初速は速くなく、効果的に敵を捕捉、射撃し命中弾を得るには照準精度の問題よりも熟練や戦術的要素の方が遙かに大きく、適切な発射距離を保ち、小隊単位での高度な連携を取る事が命中率を大きく左右する事から、基本的には1つの部隊に1機が装備するのが原則だった。

 "ハイパーバズーカ"は連邦軍製MSの標準装備で380mmという大口径と、MSの実体弾兵器としては最高クラスを誇る。単純な仕組みのため故障は少なく修理も比較的簡単であり、稼働率も90%を越える信頼性の高さと、大口径弾の持つ強大なストッピングパワーは現地では絶賛されており、様々な局面で重宝された。威力も当時の"ビームライフル"に匹敵し、加害半径はそれを遥かに上回った。実弾兵器であるためジェネーター出力上ビーム兵器が使用できない、または連射が出来ない機体でも使用出来る点も大きかった。また当時の携行ビーム兵器は繊細でかつ高度なメンテナンス環境が必要であり、さらには消耗パーツの頻繁な交換、頻発するマシントラブルとさらにこの兵器への依存を高め、これらの問題がほぼ克服され、携行ビーム兵器の全盛の時代となってもぜんせんからの熱烈な要望により根強く使われ続けた。

 反面、1マガジンにつき5発しか撃てずマガジン自体は固定式のためリロードは母艦に戻らなければ不可能であり、大型でかつ大質量を持つ兵器のため取り回しが悪いというデメリットがある。そのデメリットを活かし敵機に対し投げつけるパイロットもいたが"ハイパーバズーカ"自体がそこそこ高価であるため推奨はされていない。更に戦闘中におけるデッドウェイトを嫌い投棄した際も可能な限り回収する事が義務付けられていた。また実体弾兵器なので、ビームと違い水中や空気中でも威力があまり減衰しないという利点があるが、ビームと比べ低速であり、無誘導なために命中精度も低いという欠点がある。

 RX計画の一環として開発が開始された本機はテストとして"ビームライフル"と同様の大型サイトスコープが装着されており、ややコストが上がったものの射撃命中率はやや安定した。しかし、量産化に従いその機能はオミットされ、コストダウンが図られている。

 砲弾は大気圏内用と無重力下の2種類が用意され、無重力下仕様には発射後に二次加速を行うブースト機能が持たされている。弾頭の種類は徹甲弾(AP)成形炸薬弾(HEAT)粘着榴弾(HERH)VT(近接信管)を装着した通常榴弾(MP)が用意され、各種砲弾をケース状の固体パッケージに包む事で砲弾直径に関係なく最大380mmまでの多様な砲弾を使用出来る。これは過去の資産を活かせる上、RX計画の一環として対MS戦闘用に必要な弾頭を模索していた当時の状況に最適であり、実際に運用されながら様々な弾頭が試作され戦線で活用された。

 初期型のモデルではマガジンを交換する事が出来なかったが、後に交換が可能となった改良型モデルであるN-STD-10型が開発され、"コンペイトウ"戦線から実戦に投入された。

 

 

YHI ERRL-TYPE.Doc-04/380mm "ロケットランチャー"

NFHI RPHB-type.Doc-04/380mm "ロケットランチャー"

口径:380mm

装弾数:7発+1発

 YHIが独自開発したMSサイズの担ぎ型携行式大型ロケット砲。基本的には1G環境下に特化した作りとなっており、ボックス方式の射撃センサーを標準装備した汎用性と信頼性の高い堅実な設計である。

 YHIが提唱するMS用可搬型兵器構想に基づき設計されており、背部コンテナユニットに分解し収納、MSの手により現地で組み立てる事も可能であった。またいち早くバナナ型マガジンによるカートリッジ給弾方式を採用、砲弾も成形炸薬弾頭(HEAT)粘着榴弾(HESH)通常榴弾(HE)が用意された。弾頭は"ハイパーバズーカ"のものと違い展開式安定翼を備えるなど、旧世紀の技術を参考にした設計が多かった。

 重力下での運用を前提に開発されているため、重量を減らし軽量化する事でフレーム、駆動系への負担を減らし、取り回しを考えられ砲身は短めの物となり、またマズルブレーキも大型化している。肩に当たる部分もスライドし、射撃時の安定性を高かめられるよう設計された。

 ノーフォーク産業によりライセンス生産されたため、型式番号が2つある。

 

 

YHI 6ML-79MM "ミサイルランチャー"

口径:使用弾頭により異なる

装弾数:使用弾頭により異なる

 YHIが独自開発したミサイルを格納したコンテナユニットを複数繋げ運用するマルチランチャーシステムである。核となるボックス方式のレーザー式センサー付きグリップユニットの周りに、ミサイルを格納したコンテナを取り付ける事で銃身をなす特殊な設計である。1つのコンテナの中には使用目的によって異なる弾頭を持つ2〜4発のミサイルを格納している。

 YHIが提唱するMS用可搬型兵器構想に基づき設計されており、背部コンテナユニットに分解し収納、MSの手により現地で組み立てる事も可能であった。しかし、"ミサイルランチャー"のみ互換性のあるパーツが少なく、整備性は高くはなかった。

 "ハイパーバズーカ"と同様のコンセプトで開発が進み、更に多目的弾を撃てるよう特化し、コンテナ式という独自の設計に加え発射機として全長を大幅に短縮する事に成功した。

 主に中距離における面制圧攻撃に利用され、短時間で多数のミサイル弾頭を連続して撃ち出す事が可能であり、またミサイルコンテナを素早く交換出来るため瞬発火力は他の追従を許さないレベルでかなり高かった。

 しかし使用用途のごく限られる特殊弾頭を含めあまりにも多種類の弾頭を用意したため使い分け管理し切れず、弾頭使用頻度により弾頭調達数含む補給も偏り、現場での評価はイマイチだった。また射撃と同時に質量が大きく減少するためバランスも悪く、ウェイトの偏り、減少から後半に行くに連れ命中率もどんどん下がって行くと言う欠点もあった。更には核となるグリップユニット及び専用コンテナの整備性や耐用命数、信頼性をはじめとし様々な問題を抱えており、"ミサイルランチャー"と銘打ってはいるがミノフスキー粒子散布下での誘導能力はミサイルと呼べる代物ではないレベルに低く、その命中率は限りなく無誘導に近いと散々な結果であった。ミノフスキー粒子散布下でも正常稼働するレーザー誘導でも、その際は弾頭そのものの速度が限りなく低下するため命中率は最悪であり、誤作動も多かった。その為面制圧兵器として一応の評価を得ていたものの、徐庶に戦線からその姿を消していった。

 その一部はミサイルコンテナその物を機体に直接搭載し、発射後必要に応じてパージ出来るよう改良する追加配布キットにより改良され、そのほぼ全てが使用されたという。

 

 

 

X.B.Sa-G-03 "ビームサーベル"

出力:0.38MW

 "陸戦型ガンダム"、"陸戦型GM"のふくらはぎ傍に内蔵されているボウワ社製の高エネルギー近接格闘兵装。

 収納時に本体からエネルギーを供給され、内部に充電されたエネルギーでエネルギーCAPに蓄積させたミノフスキー粒子を励起しビームを発生、対象を電気的、熱的に切断する。原理的にはミノフスキー物理学の応用であり、縮退しメガ粒子となったミノフスキー粒子のプラズマをIフィールドにより封入、一定の長さを持つ刀身として投影、形成する。刀身温度は軽く数千度に達し、厚さ3mのルナ・チタニウムインゴットを0.5秒足らずで溶断する凄まじい威力を持つ。

 問題としては使用エネルギーは"ビームライフル"と比べて少ないもののかなりの高出力である事、粒子収束フィルターの規定回数毎の交換を行わなければならない事。それに加え、銃と違い扱いには個人差が大きく出てしまう格闘兵装であるため、練達には個人差があり時間も必要であった。水中やビーム撹乱膜内では刀身の形成が難しく、威力も大幅に減衰する問題もあり、ジオンが殆ど運用していなかった点も含めてこの装備に疑問を抱える兵士も少なく無かったと言う。勿論、MSは本来水中戦を考えられていない為当たり前であるのだが、止む無く水中での格闘戦にも連れ込むケースは時折勃発したのもまた事実であった。

 因みにミノフスキー粒子収束率を決めるリミッターを意図的に解除する事で刃を拡散させる、刀身を太く、長くする、目くらまし程度の威力であるが"ビームガン"の様に使用する事も可能であった。連続稼働時間は短くなるも、威力を増減させる事が出来たため現場レベルでリミッターを解除する変則的な運用も試みられていた。

 中尉機の物はリミッター及びエミッターに変更が加えられ、出力が上がり、ビームによる刀身は長めの刀状になっており、中尉の体得している武術が上手く活かされるような形となっている。

 

 

THI BSJG01/CJ "ビームジャベリン"

出力:0.38MW

 "ビームサーベル"の機能の一つ。"ビームサーベル"に施された制限を解除、エミッターの変更によりロッドを展開、その先端に高圧縮したビームによる小型の刃を持つジャベリン型に変形する。

 "ビームサーベル"に比べ展開範囲が狭い為低燃費かつビーム圧縮率が高く貫通力及び破壊力があり、MSがエネルギー供給を行わくとも数分程度なら稼働する為、所謂『投槍』としても運用が可能であるのが特徴である。勿論手に持って格闘に用いる事も可能であるが、先端部分にしかビームがないためリーチこそあるものの取り回しに不便であり、威力を発揮するのも先端部分のみなのでクセがあり、使いこなすには慣れが必要なため、パイロットを選ぶ武器となった。運用こそされたが多くのパイロットがロッド部分で殴りつけてしまう問題が発生し、現場からの評価はいまいちだったする資料が多い。

 しかし白兵戦においてはリーチの長さはそのままアドバンテージになり得るため、上記の"ビームサーベル"のリミッター解除のように現場レベルで運用されており、中には相手の意表を突き、間合いを掴ませないため"ビームサーベル"形態と"ビームジャベリン"形態を戦闘中でありながら変則的に切り替えつつ戦う者もいた。

 中尉機の物にはロッド部分の表面には試験的に特殊なコーティングが施されており、ある程度ではあるが耐ビーム、耐熱性が持たされている。

 また、中尉の趣味から先端部分のビーム形状が十文字槍風になっている。薙刀風にしないのはビームであるため形状に限界が無く重量、重心の変化も無い事と、刺突時にその損傷部位を拡大させダメージを底上げするためである。

 "オリジナル"の装備であるため、"陸戦型ガンダム"が本来が装備するものより大型でありコネクターも違うが、そこは現地による簡易改造を行う事により装備可能となった。

 

 

XCH-M-78-00G "ガンダム・ハンマー"

 宇宙空間における対艦、対MS兵器として開発されたMSサイズのフレイル型中距離格闘兵装。

 兵器そのものの質量を利用し目標を運動エネルギーで破砕する質量兵器であり、宇宙空間における戦闘ではエネルギーの消耗が少ないわりに威力は大きく有効な兵器となると考えられ開発された。

 またミノフスキー・エフェクトのために有視界戦闘による白兵戦がメインとなる事を聞いた開発者が、試しに開発プランを出してみたら通ってしまったという経緯から、まるで中世の世に来てしまったような兵装を生み出す結果となった。開発期間をそれほど悠長に取れなかった"オリジナル"の武装は、ビーム兵器を完成させられなかった場合を考え、実に様々な物がプランニングされていたのである。

 地球連邦軍がMSにどのような兵装を持たせるか試行錯誤し混乱しながら迷走していた具合が良く伺えると言っても過言では無いだろう。

 単純な構造故威力そのものは高く、鎖で繋がった本体はかなりの質量を持ち、MSのパワーによって振り回されたそれがヒットした際の威力と衝撃は筆舌に尽くし難い物となる。しかし、格闘兵器としては驚異的なリーチを誇る反面、射撃武器としては致命的な射程距離の短さが目立ち、攻撃のための準備として本体を振り回し加速させる必要がある為攻撃までにラグがある事、敵MS到達までにもまた大きなラグがある事、また鎖を巻き取り回収し再攻撃するまでが長く、地上での運用はフレーム及び駆動系に多大な負担をかける事から使用される機会は多く無かった。配備も極少数に限られ、"オリジナル"や極東機械化方面軍などの機体が使用していた事が確認されているがそれだけである。

 戦争の混乱が生み出した本兵器は謎が多く、質量兵器は運動エネルギーが生み出すショックによる操縦者や電装系へのダメージが期待が出来る為、極一部の破壊で戦闘不能にし、鹵獲する為の兵器だったのではと語るMS学者もいるとかいないとか。真相は不明である。

 

 

 

 

M79 "ハンドグレネード" 投擲式手榴弾

 MS携行用の投擲式兵器。真ん中1つに上下2つ、3つの弾殻を組み合わせた円筒状で、セーフティはMS本体とのFCSにより解除される仕組みとなっている。

 投擲後に爆発して、爆風と熱、破片によって、広範囲にダメージを与える、発射機を排した低コストな人型兵器として柔軟な行動が取れる事を利用した兵器である。

 運用方法としては主に対戦車、対歩兵兵器であり、MSにはやや不得手である犠牲を省みない物量による小型兵器攻撃に対応し、コストを掛けず広範囲対地攻撃を行う為の兵装であり、全てのグレネードが規格を統一し運用方法も統合された上で装備されている。

 また対MS戦闘に際してでも十分な破壊力を発揮し、歩兵であった時と大体同じ運用が出来るためあらゆる戦場においてその姿は見受けられ、あらゆるパイロットに使用された。対MS、施設のために爆発の衝撃波により目標を撃砕する攻勢手榴弾も開発、配備され、工兵の爆薬としてや要塞内部への突入戦などにも積極的に利用された。

 スモーク、スタン、チャフ、ガス、"ファイア・ナッツ"と呼ばれたナパーム等適宜様々な効果を持つグレネードも開発されており、中には気化爆弾を内蔵したものもあったと言う。

 

 

 

"スローイングナイフ"対MS用投擲式装甲貫入榴弾

 中尉達のアイディアを取り入れ開発された、MSサイズの投げナイフ型手榴弾。

 MSは人間をそのまま同じサイズに拡大した以上のパワーを持つが、人間と同じかそれ以上の動きが出来るという事に目をつけ、人型兵器である事を最大限に活かそうとした結果生まれた兵器である。つまり、MSそのものを発射機とする事で、射程距離はともかく、ほぼ"ロケットランチャー"と同等の破壊効果ながら、ランチャーチューブと弾頭そのものに推進機構が必要ないためコストの削減を狙ったのと同時に、その大きさから行動の妨げになるランチャーチューブを持たずに済む、という利点がある。

 また、近距離での取り回しも良く、遅延信管を利用して格闘用ナイフとしても運用可能。安価で取り回しの良い使い捨て榴弾として、コンセプト的にはジオン軍の"シュツルム・ファウスト"に近いものがあるが、本兵装はそれより小型かつ装甲貫徹力という点では高威力である。

 投げナイフをMSサイズに拡大した"スローイングナイフ"には構造的余裕があり、内部にタンデム方式の成形炸薬を内蔵している。MSによって投じられた本体はその運動エネルギーで目標に対し深く貫入し、成形炸薬による内部爆破を行い目標を撃砕する。

 しかし欠点も多い。投げるという動作を行う分隙も大きく、上手く戦術に組み込むには慣れが必要である。またその設計上運用パターンをインストールしようと命中率も個人の技量が大きく関わる事となり、結果命中率はそう高くなく、目標に対し飛翔する速度も自己推進するロケットと比べても更に遅く、実態弾として最低クラスであり、確実に命中させる為には"シュツルム・ファウスト"以上に大胆な接近が必要であった。

 

 

 

 

 

YHI RGM-S-Sh-WF "マルチプルシールド"

RGM・S-ShWF/S-00109 "マルチプルシールド"

RGM・S-ShWF/S-00116・Ap-A "マルチプルシールド"

 重力下で運用する事を前提に開発されたYHIが設計開発を行った小型軽量多目的シールド。ルナ・チタニウム合金製でコクピットなどの機体主要部の防御を最優先とするため、後の主力機であるRGM-79が装備するFADEGEL RGM-M-Sh-003対MS戦用シールド(通称 菱形シールド)とは異なる形状を持つ。

 取り回しとフレーム、駆動系への負担軽減のため小型であり、市街地戦、基地内戦闘でも用いられる場合があった。

 また陸軍主導の開発であり、対MS戦闘時には防御のみならず、近接格闘戦闘においてアタッチメント部を瞬間的に突き出すように駆動させパイルバンカーの様な打突兵器として運用出来るよう設計されているのも特徴。

 このシールド先端のスパイクをスコップ替わりとして塹壕を掘る、地面に突き刺しシールド裏にへばりつく様にして装備された二脚を展開、防盾兼銃架として設置した上で空いた両腕で大口径の質量兵器を保持し射撃姿勢を安定させるといった使い方も出来た。シールドとしてはある程度の重量も必要である為遠近両用の多目的万能防御兵装として開発されたが、高価なルナ・チタニウムの採用と多くのモーターや電装系を含む稼働部を持つ複雑な機構が損耗率が高い消耗品である盾であるにも関わらず信じられない程の高コスト化に繋がってしまった。

 連邦軍製のMSにおける腕部オプションマウントラッチの規格策定以前にRGM-79[G] "陸戦型GM"用として開発されたため、A型以降のRGM-79が装備する際にはアタッチメントを噛ませる必要があったが、最前線のパイロットは小振りで取り回しの良好であるという理由から好んでこのシールドを用いたと言われる。

 その為戦闘中投棄されるケースも多く、損耗率が高く、鹵獲や技術解析の危険も生じ、また大量の供給が必要された為多数の社でライセンス生産された。また形状は同じであるが装甲材質を安価なものに置き換えたモデル、格闘武器としての機能をオミットしたモデル、二脚の機能をオミットしたモデル、またその両方の機能を丸ごとオミットし純粋な盾として設計された簡易モデルもすぐさま開発生産され、特に簡易モデルはオリジナルと比較しかなり軽量であり前線からの評価も高く、すぐ様大量生産され損耗率の高い前線に優先的に配備された。

 

 

 

耐弾用外套型追加式複合装甲ユニット "シェルキャック"

 "ブレイヴ・ストライクス"隊附属兵站ユニット第01整備中隊が、シノハラ中尉のアイディアをベースに総力を結集し試作した、追加式の特殊装甲ユニット群。通称の"シェルキャック"とは『"Shell"proof "C"omposite "A"rmor "C"ombatcloak system』の略で、命名は上等兵である。

 本来は装甲が欠損し内部フレームが露出してしまった箇所へ、応急的な処置として布を被せるだけの案ではあったが、機体バランサーの調整などの手間を考え、カウンターウェイトを装着するのであれば、その布そのものに重さと装甲としての機能をもたせてはどうか、という実験的側面から試作、実装され戦線に投入された。

 ベースとなった布は関節部への異物の混入を避けるための防塵布であり、装甲の内側にも緩衝材として貼られているものであるが、それにもちろん防弾・防刃性能は持たされておらず、重量も極力軽量化がなされ、機能としては機器の動作を妨げない事に主眼が置かれた性能であった。そこで、偽装網、超繊維布、チェーン、履帯、合成樹脂、赤外線遮断シート、ケブラー繊維、超アラミド繊維、カーボンファイバーなどをはじめとするあらゆるを素材を数重にも折り重ね、特殊な空間構造を持たせつつ編み込む事により、高い防刃・防弾性能のみならず、耐熱性や対衝撃性をも持たせる事に成功し、試験では1枚でも同箇所への13.1mm弾を3発までストップする事に成功している。更に布そのものが空間装甲(スペースドアーマー)の役割を果たし、耐HEAT弾性能をも持ち、一発のみではあるが"ザクマシンガン"から撃ち出される120mmHEAT弾をもストップする。

 更には、重量調節のための防弾プレートとしてチタンセラミック装甲が入れられており、通常弾に対してもある程度の防弾効果が期待出来る。

 これらの布地を肩部周りは3重、肘関節部周りまでは2重、機体の半面を覆う様に1枚が装備され、動きを阻害しない様工夫がなされている。

 さらには中尉の提案で、表面に試製ビームコーティングを特殊な迷彩柄で塗布され、低出力ビームまたはレーザーであれば数秒耐える事が出来る。迷彩は高度な演算の上施された特殊なデジタルパターンで、MSの機動運用時のある程度の質量を持ったマントの揺れを利用し、敵センサー・カメラを欺瞞し、錯視させる。これは、MSは戦闘になれば機動戦闘が主体となり、更に巨大な機体そのものを隠す遮蔽物自体が少ないため、この様な配色パターンとなった。しかし、通常の迷彩としても効果を十二分に発揮するため、特に距離感の掴みづらい宇宙空間における戦闘において活躍が期待されている。

 急造品としてはそこそこ高い性能を持つが、欠点としては複雑な工程を全て手作業で行う必要があり、そのため質に差が出る事や、使い捨てであるにも関わらず高価であり、またその性質上同箇所への集中的な攻撃にかなり弱い点が挙げられる。追加装甲としては軽量で動きを阻害しないが、その分性能自体は高くは無く、また装甲として使い熟すにもクセがあり、あくまで保険程度の働きしかないため、結局制式採用には至らなかった。

 

 

 

 

 

 

 




順次追加していきます。

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