機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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新編、中南米隠密作戦編始動!!

敵に知られず、中尉達は作戦目標を達成出来るか?




第三十七章 二律背反の二重螺旋

人類の歴史を創り、塗り替えてきた戦争。

 

素手が剣に、剣が弓に、弓が銃に。

 

馬が戦車に、戦車が戦艦に、戦艦が飛行機に。

 

形こそ変われどその本質は変わらない。

 

舞台が宇宙へ移り、宇宙戦艦がビームを叩きつけ合う時代でも、

 

その本質は変わらない。

 

決して、変わる事はない。

 

 

 

U.C. 0079 7.27

 

 

 

《では、健闘を……戦果を期待していますわ》

 

荷を降ろし、飛び立つ"ミデア"を見送る。

その姿が水平線の彼方へ消え去るのを敬礼しながら見届けた中尉が、改めて周りを見渡した。

 

現在中尉達"ブレイヴ・ストライクス"一行は、最新兵器MSを引っさげ"ウィンドワード"諸島の、旧セントビンセント・グレナディーン独立国にある"グレナディーン"諸島の一つの、とある島に降り立っていた。

 

辺りは南国独特の植物に囲まれており、むわっとする熱気の中、ぎゃあぎゃあと得体の知れない声が響くトンデモないところだった。

 

「……………」

 

密林だ。比較的マジな。なんかフツーにヘビさんもニョロニョロしている。マラリア対策とかから始めた方がいいかも知れない。

 

「うひゃー!暑いですね少尉!!でもワクワクする暑さです!!」

「……ふむ……このタイプの地盤なら……腐葉土は……歩行システムのモードは+7……?」

 

"ミデア"から飛び降りた伍長は楽しそうに走り回り、降りて早々軍曹は地盤のチェックを行っている。

 

「………あ~……インテリの俺がいる土地じゃねぇ……"ジャブロー"のオフィスが懐かしくなって来やがったぜ……」

「"ジャブロー"とはまた違うタイプの密林の様ですね……隊長!そろそろ…」

「あ、はい。よし、キャンプ設営開始!!」

「大将!!テストも兼ねてMSで手伝ってくれ!!重機の手が足りん!!」

 

おやっさんが指示を飛ばしつつ言う。土地は海沿いの崖の間だ。以前潰したジオン海軍基地の近くである。

 

「聞いたか!!伍長!!軍曹!!やるぞ!!」

「はーい!!」

「……了解…」

「……じゃあ俺はそこの木陰で……」

「ボウズ!!休んでる暇は無いぞ!!周辺データ入力を始めろ!!」

「蚊がやべぇっ!!」

「各部シーリング始めまーす!!」

「おやっさーん!!コイツ!!パワーアシスト機能付きの"強化外骨格"(Exo-Skeleton)使っていいすかー!?」

「全機の内1/3だけだぞ!!卵が掴める奴だけだ!!それにどんな不具合が出るかも分からん!!データ取り忘れるな!!」

「アイサー!!」

 

走り回る整備兵の間を縫って、"MSトレーラー"の元へ。

 

「? 中尉?早速動かすのですか?」

「そうだ!準備頼む!」

「了解です!!足元にお気を付けて。ややぬかるんでいるところもありそうです」

「ありがとう!!気をつけるよ!」

 

見上げるほどの大きさの"MSトレーラー"にへばりつき、トレーラーの上へ。"陸戦型ガンダム"の周りを回り、液漏れなどの異常が無いかを確かめ、コクピットハッチを開放、機体に滑り込む。

 

ハッチを閉じ、ヴェトロニクスを立ち上げると、エアコンが利き始める。それを肌で感じつつ、周囲の環境のデータに目を通す。

 

「……やはり熱気か。センサーのモードを……ダクト稼働率は……よし、まぁ大丈夫か?

伍長!軍曹!準備はいいか?」

《いつでもいけますよ!》

《……機体トラブルもない。大丈夫だ…》

「よし、整備班は機体から離れろ!起こしてくれ!」

《了解!!ジャッキ起動!起こします!》

 

"MSトレーラー"が2本の大型ジャッキにより持ち上がり、機体が垂直になる。機体を固定していたアームが解除され、バチン、とリグが音を立てて外れ、18mの巨人が歩き出す。

 

「軍曹は陣地形成を手伝ってやってくれ!」

《……了解…》

「伍長は俺と偽装網を張るぞ。足元に気をつけろ!」

「はい!!頑張りますよ!!」

 

足元を走り回る整備班達を踏まない様にし、感覚を確かめながらゆっくり歩く。伍長の"陸戦型GM"もそれに続く。

 

足元はしっかりとした岩盤の上に腐葉土が積もっており、大変滑りやすい。その上所々岩盤が無く湿地帯の様になっているところまである。歩行システムの頻繁なモード変更が必要そうだ。

 

「膝を立てます!離れて下さい!!」

 

警告を発し膝をつき、機体を安定させる。偽装網を張るのは人間の手に任せたいが、その位置が高いため、掌に整備員を載せる事にする。

 

「掌に載ってください。下手しない限り落ちませんから安心してくださいね?伍長はネットを!」

「お手柔らかに頼みますよー!」

《少尉ー!ネットってこれー?》

「伍長!!その隣のヤツだ!」

《え、えーっとぉ……》

「おやっさーん!!コイツが不調を訴えてまーす!!」

「寝かしておけ!!」

「なあ、上等兵、俺も……」

「嘘を言う暇があるのなら働いて下さい」

「手ェ足りねーぞ!!応援頼む!!」

「おーう!今行く!」

 

大騒ぎだが、着実に迅速に、簡易野戦施設が組み上がって行く。やはりMSは重機として、工兵としての活躍ぶりもかなりのものだった。

それに"ジャブロー"からの新物資、"強化外骨格"(パワードスーツ)も中々のものだった。これは簡易版のパワーローダーの様なもので、人の力をアシスト、増幅してくれる。バッテリー駆動で、一回の充電で、約8時間駆動する。バッテリーパックの交換で迅速なチャージも可能。かつてスペースコロニー建設の黎明期を支えた倍力宇宙服を地上用に再設計したものだった。

 

陣地設営は夜まで続き、その間中尉達は"アイリス"を伴いパトロールを行い、機体の調整も済ませていた。

 

そして、見つけていた。

中尉にとっては慣れ親しんだ、"ザクII"の足跡だった。

 

 

 

U.C. 0079 7.28

 

 

 

「敵の兵力は?」

 

次の日の早朝、パトロールからそのまま"イージス"で偵察へ向かった上等兵、そしてそれに便乗した軍曹を囲んで、"イージス"内で中尉、軍曹、伍長、おやっさんのいつもの4人に上等兵を加え作戦会議が行われていた。

少尉は昨日のMS稼働データを取るため"MSトレーラー"に居る。

まぁ、作戦に関しては素人だから問題はないだろう。

 

「はい。隊長。敵はここから約20km先の隊長達が以前破壊した海軍基地跡地を中心に展開しています。戦力は確認した分でMSが5機、"マゼラ・アタック"や"ヴィークル"が複数両ですね。詳細は不明ですが、そこそこの規模であると推測されます」

 

以前破壊したって……アレの残存戦力?にしちゃあ多すぎないか?

 

「……中尉、あの基地の周辺地域に、野戦基地が2つあった……以前はそこまで攻撃していない……」

「……えーっと、つまり……?」

「……周辺戦力を結集したのか?」

「その通りだと思われます。近くで輸送船も複数確認されていますし、そのような基地が多数あると判断して構わないでしょう」

「……つまり増援もあり得る、っつー事か……」

「あ、少尉、おやつは何ハイトまでですか?」

「んと、1ドル今何ハイト?」

「先言っとくがバナナはおやつに入らないっつー事で」

「結局どっちなのかなソレ?」

「作戦会議中です」

「……はぁ……」

 

以前潰した地下基地は使用していないが、上部の軍港、それに近くの野戦基地と提携し活動を行っているとの事だった。また、そのような小規模な基地は他の島にも多くあるだろうとの事だ。

 

「……出るとしたら、昨日みたいに偵察に出たところで基地を強襲、そのまま留まり、帰って来た偵察を叩く。と言うところか?」

「……ここは空けるのか……?」

「いや、それは心配しなくていいぞ?一応"リジーナ"もある。"パワードスーツ"も"マゼラ・アタック"程度なら倒せる武装を装備出来るぞ?」

「…そうですね、今、MSを2分する事にメリットはありません」

「……う~ん、おやっさん、今のここの戦力は?」

「MS3機に、"ナナヨン"1両、"ロクイチ"1両、それに"パワードスーツ"だ」

 

うーん……んっ!?

 

「……"ロクイチ"……?」

「えっ?聞いていませんよ?」

「"ロクイチ"あるの!?」

「あぁ、転がってたスクラップを四個イチしたんだ。まだ完璧とまでは言えんが、砲台替わりにはなるだろ」

「少尉ー!"ロクイチ"は戦力に入りますかー?」

「入ります。バナナより優秀です」

 

早く言ってよ。あるのと無いのでは全然違うんだから。

 

「よし、作戦は決まった。MS3機を軸に"イージス"。それで敵拠点を強襲する」

「奪取はしなくてよろしいのですか?」

「……この戦力では、ムリだな……」

「取り敢えずブッ飛ばせばいいんですか?」

「あぁ、殲滅(・・)だ。1人も逃さない」

 

その言葉に上等兵が息を呑んだ。ここに来て、ようやくその本当の意味を意識したようだった。

そうだろう。しかし、仕方が無いといったらそこまでだ。これは戦争で、ここは戦場。そして、上官の指示は絶対だ。敵を逃がすワケにはいかない。

多分、上等兵はこれが初陣だ。戦争をどういう物と捉えているかは知る術は無いが、意見を撤回する気はなかった。

 

「……ジャックから既に話は聞いている。この事も予期済みだ。中尉、野戦基地破壊用の特殊グレネードを用意してある。使ってくれ」

 

その言葉に声をあげたのは上等兵だった。

野戦基地破壊用……、まさか……。

 

「……まさか!隊長!私は反対です!!それは非人道的な大量破壊兵器(WMD)でしょう!!南極条約違反です!!」

「……いや、条約に明記されているNBC兵器ではない…」

「しかし!!」

「…なんですかそれ?私にはよく……」

「…軍曹、まさか…」

「……あぁ、気化爆弾だろう……」

「……ッ!!」

 

今度こそ上等兵は絶句し、あまり変化の見られない周りを驚いて見回している。変化が無いのは伍長もだ。伍長はこの爆弾の悲惨さを知っている。しかし、その上で反応しなかった。

 

周りの様子に絶望し、上等兵は肩を震わせながら俯いてしまった。その特徴的な、大きな目には大粒の涙が溜まっていた。

 

燃料気化爆弾(FAE)。内部に通常炸薬の代わりにFuel Air Explosive、つまり燃料空気爆薬が充填された特殊兵器だ。

正式名称は"サーモバリック爆弾"といい、最新式では燃料ではなくサーモバリック爆薬と呼ばれる専用炸薬を用いるようになってきているので、燃料気化爆弾という名称で呼ぶこと自体が不適切になってきているが、その分かり易さから宇宙世紀になっても燃料気化爆弾という名称が多くの場合使われる。

通常の固体爆薬の爆心地の圧力は1000気圧以上になるが、この燃料気化爆薬はその1/10以下の100気圧程度にしかならない。しかし、その代わり広範囲に渡り爆発効果と長時間の燃焼効果を及ぼせるのだ。

目標上空にて霧状に散布した酸化エチレンや酸化プロピレンなどの航空燃料の混合物を一次爆薬で加圧沸騰させることで瞬時に爆発させ、沸騰液体蒸気拡散爆発(Boiling Liquid Expanding Vapour Explosion)、通称BLEVEという現象を起こさせる事で燃料自身の急激な相変化を発生させ、2000m/sもの速度で燃料を拡散させる。

このため、数百kgの燃料であっても放出に要する時間は0.1秒に満たないと言われている。爆弾が時速数百kmで自由落下しながらでも瞬間的に広範囲に燃料を散布できるのはこのためである。

燃料の散布が完了し、特徴的なキノコ型の燃料蒸気雲が形成されると着火して自由空間蒸気雲爆発を起こし、爆弾としての破壊力を発揮する。

それにより発生した高熱、衝撃波、爆風、電磁波により地上付近のあらゆるものを吹き飛ばし焼き払う爆弾だ。ガソリン以上に気化しやすく、激しく燃焼する航空燃料が主成分の爆弾なのだ。その威力は想像を絶する。

そして、燃料気化爆弾の破壊力の秘訣は爆速でも猛度でも高熱でもなく、爆轟圧力の正圧保持時間の長さにある。つまり、TNTなどの通常固体爆薬だと一瞬でしかない爆風が「長い間」「連続して」「全方位から」襲ってくるところにあると言って良い。そのため燃料気化爆弾による傷は爆薬によるものとは異なった様相を見せる。これは、燃料気化爆弾が金属破片を撒き散らさないで爆風だけで被害を与えるためである。

それに加え、散布されるFAEは毒ガス程ではないにせよ人体に有害な気体であり、現場にいる人間をただの酸素不足でなく有毒ガスによる窒息、及び急性無気肺と一酸化炭素中毒と酸素分圧の低下による合併症による窒息死にいたらしめる事が出来る。

 

つまり、野戦基地を吹き飛ばしつつ、人員の大半をほぼ確実に殺傷できるのだ。

 

副次的な効果といえ、毒ガスに近い事をしでかすのだ。反対してもおかしくはない。

 

そう、決しておかしくはないのだ。

 

「隊長!!なんで!なんでこんな物を!!」

「………上等兵。ならば、これ以外の、有効な策がありますか?仲間に余計なリスクを背負わせず、敵全員を短時間で完全に無力化する策が………?それに、この兵力で敵の無力化した兵をどうするつもりです?」

「ッ!! それは、そうですが!!しかし!!」

「なら、俺はそうします。そうして、最善を尽くすだけです。後で、後悔ぐらい出来るように」

 

そう言って上等兵を真っ直ぐ見る。今の俺に、迷いはない。

 

俺は、この仲間が大切だ。軍曹が、伍長が、おやっさんが、少尉が、整備員達が、そして、上等兵が。

 

その仲間に害を与えるものは、全力を持って排除する。

自分の知人を生かすためなら、名も知らぬ者なら幾らでも殺してみせる。いくらでもその天秤を偏らせて見せる。

そして、それを起こすのは俺自信だ。他の誰でもない。

 

「……!! 軍曹!!」

「……中尉の、言った通りだ……俺は、中尉に従う……」

 

軍曹も、いつもと全く変わらなかった。その深い、落ち着いた目は一切の感情の揺れを感じられなかった。

上等兵はおやっさんを見るも、おやっさんも肩を竦めただけだった。

 

「伍長!!あなただって……っ!!」

「ううん。上等兵さん。私は使うよ」

「なんで!!なんでですか!!こんなもの!!こんなの……」

「…ううん。違うんだよ、上等兵さん……私は、上等兵さんみたいに、頭がよくないけど……」

 

伍長が上等兵の手を取り、握り締める。震えるその手を、優しく包み込む様に。

 

「私はね、みんなを守りたい。それが出来るなら、やりたい。そして、少尉と一緒に笑って、軍曹と一緒にコーヒーを飲みたい。上等兵さんともっともっとお話して、おやっさんとまたポーカーがしたい。その気持ちは、みんな一緒。きっと…いや、少尉はね……」

「なら!ならなんでですか!!」

 

肩を震わせながら顔をあげ、手を振り払い上等兵は中尉に掴みかかろうとする。それを避けようとしない中尉。その様子にさらに刺激され、上等兵は手を振り上げた。

 

「ッ!!」

「上等兵さん!!」

 

しかし、その手は中尉に当たる事は無かった。

 

その間に入ったのは軍曹だった。上等兵の手を掴み、押しとどめていた。

 

「…っ……放して、下さいっ…!!」

「……………」

 

軍曹は何も言わなかった。ただ、上等兵から目線を外さず、ずっと見据えて居た。

 

そのまま睨み合いが続くと思った時、糸が切れ、腰が砕けるように上等兵がへたり込んだ。

 

その震える肩に手を起き、軍曹が頭を撫でている。

 

「……ここは、軍曹に任せよう。解散」

「……あぁ……」

「……はい。……………上等兵さん……」

 

"イージス"から出て、すぐそばのベンチに3人で座る。視線の先では、少尉と整備班達が怒鳴りあいながら調整を進めていた。少尉が上等兵に恋心を抱いている事は知っている。しかし、その少尉を呼ぶ気にはならなかった。

 

「……少尉。私、間違ってたのかな……」

 

ポツリと口を開いたのは伍長だった。肩を中尉に預け、力無く寄りかかっていた。

伍長はいつも冷静で、表情をあまり出さないがとても優しい上等兵を実の姉の様に慕っていた。

その上等兵の取り乱し具合に、口には出さないが凄い不安を感じているんだろう。

 

「……答えは、無いさ。それが罷り通るのが戦争で、戦場なんだ。

………戦争にルールはあるが……俺は、それを破ってでも、この人達を守りたいんだ…」

 

……極度の自己中心主義で最悪な人間だ。それは自覚している。

だが、それがなんだ。

俺は、見知らぬ他人がどうなろうとどうでもいい。所詮は、他人だ。

戦争だの、命令だのは、言い訳にもならない。

ただただ、純粋な己の利益の為に!!

だから、それでも俺は銃を取る。

撃たれる覚悟は、出来ている。

だが、仲間は撃たせない。絶対に。

 

「……うん。それは、私も同じ。きっと、みんな、同じなのにね……」

「…………守りたい、か……」

「……おやっさんも大丈夫ですか?おやっさんの奥様方は……」

「……大丈夫さ。その意趣返しっつーワケでもない。

俺は、整備屋だ。お前達を無事返せるのなら、なんでもやる。それだけさ……」

「…………すみません……」

「いいさ……いざとなりゃ、整備屋としてのプライドを捨てる事も、また俺のプライドだ……」

 

おやっさんは立ち、"MSトレーラー"へ歩き出した。その背中は、いつもの大きな背中だった。

 

おやっさんは サイド1("ザーン")の7バンチコロニー、"ケルン"の出身だ。

 

その"ケルン"は大戦初期の"一週間戦争"でジオン軍のNBC攻撃に晒され、全滅している。

 

偶然月に居た娘を除き、家族は………。

 

おやっさん…………。

 

「作戦は、今日の夜に決行する」

 

隣で伍長が身じろぎし、顔を上げ中尉を見つめる。その後ろでは軍曹が"アイリス"から出てきていた。

 

「少尉。私は、いつでも少尉の味方ですよ……」

「………ありがとうな。伍長。いつもごめんな………」

「……それは、俺もだ。中尉……中尉が、望むのなら……」

「軍曹……すまない……」

 

安心したのか、また寄りかかった伍長が船を漕ぎ始める。肩にその重みを感じながら、中尉は軍曹へ向き直った。

隣に軍曹が座る。その目は、遠くを見ているようだった。

 

「……上等兵は?」

「……伍長と、同じだ……疲れて、寝てる……」

「……そう、か………ついてあげてくれ。俺は、伍長を見てるよ」

「……了解………」

 

言葉を交わしながら、2人ともどちらともなく空を見上げた。

 

雲ひとつ無い青空を見上げる2人に、湿り気を帯びた風が頬を撫でて行った。

 

 

 

『引き金くらい、己の意思で引け!!』

 

 

 

熱風吹き荒れる戦場へ………………………




はい、まさかの兵器が登場です。

実はガンダム作品では結構出て来ます。

中尉は軍人であり、その行動原理は単純明快です。

生きて、まだ見ぬ終戦を迎える。それだけです。

切羽詰まっているとはいえ、躊躇いなく無抵抗の背に弾丸を叩き込む男ですから。

いつか、主要メンバーの内面などについても書きたいものです。

出てきた強化骨格は義体やサイボーグ、宇宙の戦士のパワードスーツの様な物で無く、ちょっとしたフレームだけの物です。

伍長の言っている"ハイト"とはお金の単位で、サイド6を中心に流通している通貨です。

次回 第三十八章 地上の星

「何その地味に哲学的な問い……確かに……」

お楽しみに!!

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