機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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取り敢えず、中尉もMSを手に入れ、反撃が、始まるのか?

まぁ、どうぞお楽しみ下さい。


第三十三章 T・B・Sにようこそ!!

出会い。

 

それは、世界で最も尊いものであろう。

 

人間の生は出会いで始まり、そこへ収束する。

 

果てし無く続く出会いの連鎖は、偶然の産物その物だ。

 

運命、と言っても過言では無いだろう。

 

その儚い必然の上で、人は、また、何かと出会う。

 

 

 

U.C. 0079 7.14

 

 

 

「形式番号、RX-79[G]。"試作先行量産陸戦特化型ガンダム"。……あんたの機体だよ。中尉」

「………これが……俺の……」

 

"ガンダム"へ歩み寄り、その白く輝く装甲へ触れる。

 

「……やっとだ。やっとなのだよ。中尉……」

「……准将……まさか……?」

「……その、まさか、だ……おい、もういっちょ頼むぞ!」

「ほい来た!」

 

おやっさんが応え、一部のみを照らしていただけだったライトの全てが点灯する。

そして、"ガンダム"の隣にもう2機、違う機体がある事が判明する。

 

「!! 凄い、まだあるのか!!」

「わっ!!もう2機ありますよ!!……でも、結構違いますね……?」

「……シンプルに纏まっているな……量産型……?」

「そうだ。カムラ大尉、説明を……」

「あぁ……コイツは"GM"(ジム)。中尉の乗る"ガンダム"と1部パーツを共有した、簡易量産機だ」

「……ほうっ!聞いていた新型、出来てたのか!てっきり全部"ガンダム"かと…やるなアルフ!!」

「生産ラインの一部も共有しているのだ。こっちまで出来たから、中尉達を呼んだのだよ」

コイツ(GM)も、俺が設計した機体でな……形式番号RGM-79[G] "試作先行量産陸戦特化型GM"だ」

「……気に入ってもらえたかね?中尉」

「……い、一体、これはどう言う……」

 

中尉の問いを無視し、准将がニヤニヤした顔で続ける。

 

「…ところでな、中尉、これは、軍の上層部ですら極一部しか知らない、トップシークレット中のトップシークレットなのだよ……また、見てしまったなぁ……」

「……なぁっ!?…………はぁ……」

「おっ、来た来た、ジャックお得意のソレ!!それで何人の人を闇へ葬り去って来たか……」

 

薄々気付いていたが、やっぱりかよ!!

前々から思っていたが、手駒にする気マンマンか!

 

「………それで、どうしようと言うのですか?」

「おぅ、流石に2度目はあまり効かないか………中尉は、今、連邦の現状について、どう考えている……?」

「「…………」」

 

准将が中尉を真っ直ぐ見据え問う。周りは静まり返り、視線は中尉に集中していた。

 

「……時代は移り、戦場の主役はMSとなりました……」

「ん。それで?どうだというんだ?」

「"ルウム"で負け、地球侵攻を許し、連邦軍は窮地に立たされています。今、このようにMSを開発に成功しましたが……」

「……したが、何だね?」

「……実戦経験や戦術運用を初めとするノウハウやドクトリン、データは皆無に等しく、機体性能はどうであれ、ジオン軍に大きくリードされている状況にあります……」

「…………ふふ、ふははははははっ!!……やはり分かっているようだな中尉。コイツが気にかけるワケだ……」

「どうだジャック?これで分かったか?」

 

准将がおやっさんへと目をやる。おやっさんはしてやったり顏だ。

 

「………もう、何年の付き合いだ…?」

「…もう忘れちまったよ。あの(・・)ジャックがそんなお偉いさんになるたぁ、流石の俺でも予想出来なかったが……」

「……そういうお前に俺はやられっぱなしだったな……中尉!!」

「はっ!!」

「それに軍曹!伍長もだ!!」

「は、はい!!」

「……ハッ!」

 

准将の声に反応し、直立不動の体勢をとる。

 

「貴官らには、新しい役職を、極秘の任務を言い渡す!!一一三○(ヒトヒトサンマル)に、儂の部屋へ来るんだ!」

「「はっ!!」」

「……ハッ!」

「……では、また後でな……」

 

准将が去って行く。それを見送ったところで、カムラ大尉に声をかけられる。

 

「災難だったなぁ中尉。コーウェンに目ぇつけられるたぁ…」

「……いえ、薄々ですが、予測していました…」

「ふんっ………コイツは、俺が設計段階から深く関わって開発した傑作だ………だが、まだ足りない……」

「……実戦データ、ですか……」

「そうだ。だから中尉、コイツのデータだけは必ず持ち帰ってくれよ。期待してるぞ?」

 

ポンと肩を叩き大尉が出て行く。やはり、冷血な人という印象だ。

……でも、もしかしたら不器用なだけかも知れない。本当にデータだけなら、『死んでも』とか言うはずなのにな……。

 

「まっ、中尉は良くやったさ。ジャックとそこそこ渡り合ったんだ。自慢していい」

「え?あ、はい…………というかおやっさん!!今までどこに!!心配したんですよ!!」

「そうです!!黙ってどっか行っちゃって!!もぅっ!」

「言っただろ?あちこちだ。あちこち。……前々から聞いてた"V作戦"を"ジャブロー"で本格的に確認したからな……あちこち飛び回ってパイプ作りつつMSについて研究してたんだよ。あ"?文句あっか?」

「……やはり、か……」

「そ、そうだったんですか……具体的に何処へ?」

「お土産ありますか!?お留守番をした人にはお土産を請求できる権利が発生するんですよ!!」

「う~ん、北アメリカや、ヨーロッパ、アジア、ジャパン、月面都市……軍事施設、研究所に、民間企業もかなりな……」

「ええっ!?どうやって!?」

 

というか時間的な問題や、ジオン勢力下にも行ってるのはどういう事!?

 

「月も!?すごいすごい!!お土産に期待がかかりますね!!」

「強行軍で、無理やりな……コネもあるが……」

「……日本?………! ヤシマ重工(YHI)ですか!?または六菱?」

「……北アメリカは、オーガスタに、アナハイム、という所、か……」

「月!!いいですね!!また行ってみたいですねぇ……」

「そうだ。やはりジャパンは良かったぞ?あちこちで、中尉のデータを元に交渉したんだぞ?かなり捗ったぜ」

「は、ははは……」

 

あまりの凄さに乾いた笑いしか出ない。ホントにやべぇなこの人。

 

つーか、実家(ウチ)、大丈夫かな?頼んだよ兄さん……。

 

「まっ、中尉も教官とかやったんだろ?推薦つーかねじ込んだの俺なんだからな?」

「………アレは、そういう事か……」

「……お土産……おみやげは……?」

「……はぁ、伍長。後で"ガンクラブ"、最新刊貸してやるから…」

「えっ!!やった!!ありがとうございます!!今月号のIWI特集楽しみだったんですよ!!」

「んじゃ、そろそろ行くか。ジャック、待たせるとこえーぞ?」

 

おやっさんと話しながらエレカに向かい、乗り込む。

 

エレカで走りながら、ワクワクテカテカしている伍長が中尉も気になっている事をおやっさんに聞いた。

 

「おやっさんとコーウェン……えぇーっとさんはどういう関係なんです?私、気になります!!」

「准将な。それは俺も気になりますね。実際どうなんです?」

「ジャックか?……まぁ、言うなれば……腐れ縁だよ。ただ、俺が良い様に使ってたんだが……」

「……准将を、良い様に、か……」

「あ、お前らは真似するなよ?あいつ結構エゲツないぞ?」

「……それは、痛いほどに……」

「そうなの?私前会った時お菓子もらって『ふむ、伍長、秘書やらないか?』って聞かれたよ?書類キライです、って言ったらなら仕方ないなって言ってましたけど……」

「……お菓子って……」

「……はぁ…」

「…あんのエロジジイ……」

 

そんなこんなで建物へ着き、エレカを降り准将の部屋へ。

もはやおやっさんの顔パスは驚かなくなってきた自分が恐ろしい。実は俺偉いんじゃね?と誤解して調子に乗らんようにせんと。

 

「おぉーし、来たぜジャック!で、話は?」

「失礼します」

「ます」

「……失礼する…」

 

おやっさんが呼ばれもせず部屋に入り、どっかりとソファーへ腰掛けた。もちろん俺たちはそんな事せず横へ立っているが。

 

「よく来たな。では、中尉、軍曹、伍長。特命を言い渡す。こちらへ」

「「はっ!」」

「…ハッ!」

「……お前もなぁ、せめて立てよ。示しがつかんだろう…」

「たぁーっく、しっかたねぇなぁ……コレ貸し一つな?」

「むぐっ、当たり前の事を……」

「ん?なんだ?あー、何か、口滑りそうだなぁ……」

「…んんぐっ!?……いや……」

「「………………」」

「……おやっさんすごい……」

 

いや、伍長。准将の顔見てみ?感心するとこじゃねぇから。仲が良いのやら悪いのやら……。気の置けない関係?

 

「では、指令を言い渡す。これより4名は、中尉を小隊長とした地球連邦軍総司令部"ジャブロー"直属の極秘特務遊撃部隊及び実験部隊である、第2独立機械化混成部隊、通称、MS特殊部隊第二小隊として、MS運用を通しノウハウを収集すべく活動せよ!!」

「はっ!!」

「…ハッ!」

「あいよ。分かってたけど」

「……難しいので、何か名前つけていいですか?」

「んむ?別に構わんが……」

 

何言ってんの伍長!?別にまんまでいいじゃん!!

 

「…ん?第"二"なんでだ?ジャック?」

「………お前が…色々無茶な要求をしたからだ……!」

 

成る程、第一はまだ書類上しかないのね。それでその分の予算を回した、と……。

 

「あーっ、予算食い潰して回したか。相変わらず悪だなー」

「お、ま、え、の、せいだ!!」

「だってジャックがどうせ揉み消すだろ?ならギリまでガッツリとと思ってな……」

「…………………」

 

目の前で飛んでもない会話が繰り広げられているが……。ホントやベーな連邦軍。大丈夫かコレ?

 

「チーム名か……あっ!」

「先言っときますがサムライなんたらとかは辞めて下さいね!!」

「あっ!この!」

「えーっ!!」

「……そうだな、書類上はB隊(チーム・ブラボー)だ。Bからで頼む」

「……うーむ…」

「…うーん、B、Bかぁ…ブロロロローンとお送りします……」

 

それはイヤだぞ伍長。というかどーゆーセンスだソレ!?

 

「……そんな別にブラボーまんまで…」

「「ダメだ(です)!!」」

「どうせなら変えないか中尉。儂はそう悪くない意見だとおもうが?」

 

なんでや。つーか、みんなそんな悩まんでも。

 

「……………」

「"チーム・バリスタ"?」

「……なんか、パクりっぽくない?」

「…………む……」

「…おっ、そうだ。初のMS部隊に、この低年齢……"ブレイヴ・ストライクス"などはどうだ?」

 

ふむ。サムライなんたらよりは浮かないよな。うん。カッコイイし。

 

「ジャックにしてはなかなかだな。中尉は?」

「……別にいいと思いますが……」

「私もカッコいいので賛成です!!」

「……異論は無い…」

「……ふむ!なら、登録しておくぞ……」

 

ということで、第2独立機械化混成部隊、通称、MS特殊部隊第二小隊改めて"ブレイヴ・ストライクス"(仮)に。

 

「……では、部隊名も決まった事だ。補充要員を紹介する。入りたまえ」

 

名前が自分のが採用されたためかやや機嫌を取り戻した准将が呼ぶ。

入って来たのはそこそこ若い男女の2人組だった。

 

少なっ!!おい!!どーユー事!?

 

「右の女性が、君たちの戦闘をサポートする戦術オペレーターの……」

「上等兵です。以後、お見知り置きを」

 

上等兵さんが挨拶する。落ち着いた声だ。多分また歳上だ。

教官の時にチラリと見た、戦術オペレーター養成コースの首席さんだ。日系人だったから覚えていたのだ。

 

「……あと、オマケが……まぁ、どうでも……」

「ちょ」←オマケ

 

オマケが何か言っている。男にはあんまり興味無いのか准将。あったらあったでそら恐ろしいが。でも仕事は興味関係なくやって欲しいと思うのでした。

仕方ないのでフォローする。今後ともお世話になりそうだし。こっちは若そうだ。同い年くらいかな?

 

「あの、お名前は……?」

「あ、あぁ…技術少尉だ。よろしくな?隊長」

 

とオマケ改め少尉が挨拶する。

 

「はい。よろしく頼みます」

「よろしくねー?」

「……よろしく頼む…」

「ほう…」

「……資料、作戦指令書は追って渡す。では……」

 

えっ!!終わり!?補充パイロットは!?

 

「あの…」

「なんだね中尉?」

「パイロット、少なくないですか?」

「ん?それは、必要最低限しか補充出来ないのでな……コレでも何とかねじ込んだんだ…」

「え?」

 

思わず、マヌケた声が出た。

 

「……この部隊の存在は非公式部隊に近いのだ。機密性、隠密性が段違いでな?ヘタに大きな動きは出来んのだよ……その分、中尉達はMIA扱いのままだからな……」

 

とんでもなくキナ臭ぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!

 

「……極秘部隊なのだ……分かってくれるな……?しかし、最新兵器が乗り回せるんだ。アラン・シェパード並みに光栄な事だぞ?」

「………はい……」

 

……と言うしかねぇだろうが!!

分かりたくねぇ~。

 

「ん。では、下がりたまえ。話は以上だ」

「……失礼しました」

「ました」

「「失礼しました」」

「……失礼した…」

「また来るぜ?ジャック。今夜は一杯やるか?じゃな」

 

全員で挨拶し外へ出る。

 

………………不安だ………。

 

「では、改めてよろしくお願いします隊長。至らない所があれば、すぐ申し上げてください」

「はい。よろしくお願いします」

 

上等兵は背の真ん中位まで届くほどの長さの、綺麗で艶のある黒髪をサイドテールにしていた。小顔に紫がかった目で、肌も真っ白な美人さんだ。小柄な伍長と比べると、背もすらっと高い。なんか緊張するなぁ。

つーか少しくらい笑って欲しい。軍曹に続くクールなお人が……。無口じゃないのが救いだな。

 

「よろしくな!!隊長!!仲良くやろうぜ!!」

「あぁ、よろしく!」

 

少尉はややはねたショートカットの金髪だ。それに緑色の目がピッタリの、日本人の俺からしたら教科書に載っているようなステレオタイプの外人だ。オゥ、マイコーラ!!とか言ってみて欲しい。

こっちはとっつきやすくていいかもな。同い年くらいだし!!←コレ重要!!

 

「よろしくねー!!やったー!」

「……よろしく頼む…」

「よろしくお願いします」

「おう!!」

「あ、おやっさんって呼んでいいか?」

「おう!仲良くやろうやボウズ!」

 

みんなが挨拶をする。軍曹は相変わらず無表情だが、伍長は大はしゃぎだ。

 

「仲間が増えるよ!!やったね少尉!!」

 

おいやめろ。その言い回しはとにかくやめろ。

 

「ふふっ!とにかく!!」

 

ととっと伍長が前へ躍り出て、くるっとターンする。

 

「これで、中尉も、きっと大丈夫」

 

輝く様な笑顔をむけ、手を軽く広げながら言う。

 

T・B・S(チーム・ブレイヴ・ストライクス)へ、ようこそ!!」

 

 

『初撃は、勇気ある者にこそふさわしい』

 

 

反撃の鏑矢は、今放たれる………………………




チーム結成!!

新キャラも登場!!


ブレイヴ・ストライクスは、これを書く前に書こうとしたボツ案からの逆輸入です。

ボツ案とは、とある孤児を集めてね結成された外人部隊の学徒兵を主役に、Vガンダムバリにばんばか人が死ぬ設定で、名前ばかりは勇ましいも、その実態は使い捨て部隊、というものでした。
その戦場の低年齢化のマイナスイメージを払拭するためのプロパガンダ部隊の名前でした。蛮勇を勇気と言い換えた部隊です。

その名前はなかなか気に入っていたので。エンブレムも決まっていて、剣をあしらったものでした。攻撃あるのみ隊です。



次回 第三十四章 番外編② なぜなにガンダム

「なるほど、分からん」

お楽しみに!

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