機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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訓練編、まだ続きます。

正直書いててつまらないですね。必要というのは分かるんですが……。

どのような話題でも面白くかけるプロのみなさんが羨ましいです。


第三十章 中尉の訓練教官奮闘記③ 転機編

人間とは難儀な生き物だ。

 

常に、溢れんばかりの好奇心や向上心を抱え生きている。

 

それが人類の発達を促したのだろうが、

 

それは常に刺激を求めて生きていると同義だ。

 

退屈は人を殺す。

 

この言葉が、人の全てを表している。

 

 

 

U.C. 0079 7.3

 

 

 

「皆さん!!には今から殺し合いを………は冗談として!!

今日から、この"ザニー"を用いた本格的演習を始めていきます!!気を引き締めて行きましょう!!」

「うぉっしゃぁっ!!」

「やったぁ!!」

「やっとかぁ!!」

「よし!やってやるぜぇ!!」

「シュミレーターでもすっ転ぶお前にゃ無理だ、ははっ!」

「てめ!もう一度言ってみろ!」

 

うんうん、遂にここまで来たぞ。やってきた甲斐があったというものだよ。みんなテンションヤバイな。

もはや専用機と化した"ザクII"に乗り込みつつ中尉はふと考える。

やっぱ男はいつまでたっても男の子なんだなぁ……俺もその筆頭だが。

 

「よし、全員、"ザニー"の前に!101〜103号機、201〜203号機、007、008号機ありますから、自分の決められた機体のところへ行ってください!OSデータも持って下さいね!!」

「「サー!イエッサー!!」」

「………こんな時だけは調子いいなオイ」

 

全員を引き連れハンガーへ向かう。今までシュミレーションを続け、お互いの動きを見て、研究し続けてきた。その成果が、今日物になるのだ。

 

 

現在連邦軍にはMS部隊も運用経験も無いに等しい。

つまり、それは教科書が無い、という事だ。

 

MSは既存の兵器とは一線を課す、自由度の高い兵器だ。

 

つまり、自分の体の延長として、自分の動きが、反応が、癖などがダイレクトに反映される。

 

例えば中尉。中尉の乗ったMSのOSは武術の方が多く反映された特殊な動きをする。

しかし軍曹のは確実な射撃を行うような行動をする。

 

MSはこれらの動きを覚え、その指令をすればそのように動く事が出来る。

つまり、中尉のOSを素人無理やりにでも使えば、素人が武術の達人の動きをMSに乗る事で出来るようになるのだ。

 

しかし、上の例で挙げたこの二つは全く違う上、この動きをトレースしようが、それは所詮は自分の動きではないため、MSは最大限の能力を発揮しきれない。

 

また、そこでさらに問題が出る。この動きを素人がやると、自分の想像した動きと食い違い、MSの最大の特徴であり、特技である柔軟で自由な行動が出来ないのだ。

つまり、全員が全員同じ動きを練習出来ない、いや、してはいけないのだ。それをすると、他人の身体を動かす様な不自然な行動となってしまう。

 

さらに、同じ行動は読まれやすい。もし仮に全員がそのOSを使い出撃すると、敵に行動ルーチンを見破られたら一方的にヤられてしまうのだ。

 

そのため中尉はまずシュミレーターのみで、"自分の動き"作りを徹底させ、それを自分と機体に教え込ませる事から始めたのだ。

 

もちろん中尉などが行ってきた"基本"となる行動はある。しかし、それをそのまま使うのでなく、"自分に馴染むように変えて"から身につける事をさせたのだ。

 

そのため全員の行動は劇的とまではいかないものの、そこそこスムーズで無理のない動きとなってきていた。

 

 

「決めたローテどうりに乗り込んで、まずは足をロック、手だけをゆっくり動かして下さい!"ザニー"が動きだしたら離れてください!!搭乗者も感覚がシュミレーションとはまた違うはずです!!決して足を動かさないで!!」

《教官!それはなんでですかぁ!》

「転ばれたら厄介ですから!怪我しても困るし、"ザニー"も壊れるかもしれません!!」

《はーい。てか、教官、気になってたんですけどなんで敬語?》

「……………性分です」

 

中尉は年上は何が何であろうと敬う。そのように育ってきたのだ。なので一応敬語はほとんど崩していない。

その質問をしてきた"ザニー"202号機がやれやれと肩をすくめるジェスチャーをした。MSはこのような事も出来る。中尉の"ザクII"もある程度のハンドシグナルがインプットされているが………つーか、訓練生さんよ、そんな無駄な行動入れてる暇があるならもっとマシなもんいれろや。

 

《教官、教官の事は全員が分かっています。別に敬語でなくても……》

「……いまさら、『そのウンウンと口からクソを垂れる前には"サー"を付けろ!!分かったな!"サー"だ!!』みたいな口調にしろと言われても無理ですよ……」

《……そこまでは言っていませんが……》

《……どこのハートマン軍曹だよ……》

 

教官ならそれとも『ゲンジバンザイ!!』にするのか?などと他の訓練生達と軽口を叩き合うのを流し目に見つつ、目の前の"ザニー"を"ザクII"から監視する。ルール破ったらシェイクしてやろう。

MS、そうとう揺れるから、慣れるまでエチケット袋申請しとくか。まぁ別に歩いたら即死、なんて事は無いけどな。

 

中尉の目の前には、身体を殆ど動かさず、手だけやけにバタバタと振り回す"ザニー"が8機。凄いシュールだ。

 

「よし、コツが掴めてきたと思ったら、ロックを解除して、ゆっくり歩いてみて下さい!ゆっくりとですよ!!シュミレーターとはほぼ別物に近いんですから!!周りの人達はもっと離れてください!!」

《《了解!!》》

「「了解!!」」

 

今の"ザニー"は赤子同然だ。まだ数回しか動いていないか、全く動いてないのだ。オートの動作も無いに等しい。

 

その"ザニー"をあれ程動かしたあの3人はかなり凄いなぁ。

 

例えば中尉の"ザクII"はオートバランサーもかなり経験を積んでいるので、余程無理をしなければ転ばないし、仮に転ぼうが膝をついたり、腕を突っ張ったりをオートでやる。

 

俗にエースと呼ばれる人達はこのオートを嫌う者もいるが、それはまた別の話。

 

しかし"ザニー"はそれすら危うい。一応中尉のデータなどで補強していて、以前の開発黎明期の物よりはかなり動かしやすくなってはいるものの、それだけだ。

 

なのでいくらシュミレーターをやろうと実機の感触とは必ず食い違うので、まずは慣らしの慣らしからなのだ。

 

「よし、交代してください!データを忘れずに!!そのあとまたシュミレーターで今日の動きを反復してくださいね!!」

《え、もう終わりですか?》

「後ろも詰まってますし……」

《もっと乗っていたいです!!》

「痛いほど分かりますが我慢して下さい。シュミレーターもデータを反映してドンドン実機に近づきますし……」

 

"ザニー"が動きを止め、パイロットが降りて行く。それを確認しつつ、思う。

 

つまらん!!!暇だ!!!そして地味だ!!!

 

仕方ないとは分かりつつも、心の中ではため息をつく。そして、ジオンにこの速度で間に合うのか、対抗出来るのかと心配になる。

まぁ、"ザニー"はあんな背景(・・・・・)があるのに、よくここまで調達したなと思うものの、やはり絶対数が足りない。

 

「じゃあ、第二班も乗り込み始めて下さい!!足元に気をつけて!!」

《きょうかーん!!これ他の奴とかと違って昇降用ワイヤー無いんですけどー!!》

「……仕様です。オート機能の"コクピット乗り降り"を選択して降りて下さい……自信作ですから大丈夫です」

《こ、高所恐怖症なんです………》

「………………」

 

これだ。全く。パイロットも、機体(・・)も………。

 

つーかものっそいがんばってオート機能付けたのに!!ふざけんな!!

つーかフツーワイヤーの方が怖くねソレ!?

 

先は、長い………………。

 

………いや………………

 

長過ぎだろぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!

 

 

「少尉ー!お疲れさまー!!一緒に帰りましょー!!」

「あぁ、そうだな、ついでに食堂寄ってっか!」

「はい!!」

 

伍長を伴い食堂へ向かう。軍曹は戦車の方へ行っている。戦車兵達も優秀な軍曹を引っ張ろうと色々やってるらしい。モテるねぇ。

 

「少尉ー、もっと面白い事やりたいです!あれくらい私もふつーに出来ますよ!!」

「それは俺も軍曹もだよ。でも仕方が無いさ。またこっそり動かそう」

「そうですね!」

 

訓練生は殆ど何らかの役職と掛け持ちだ。それが無いまたは無いに等しい中尉達は空き時間に中尉の教官特権という名のワガママで実戦的な動きの練習をねじ込み既に始めている。中尉はそれに加え対G訓練をやっている。

あれ程飛行機乗ってたのに、乗らないとダメになるなぁとは中尉の弁である。

 

「お腹ペコペコです!!ここはご飯が美味しいのが嬉しいですよね!!」

「そうだなぁ。やっぱ、飯は大切だよなぁ」

 

食堂に入り食券販売機へ。"ジャブロー"は広いため、たくさんある食堂のほとんどにオリジナリティがあり、『"ジャブロー"食堂巡り』なんて本まで出ている。聞いたところとある少将の自費出版らしい。頼むから働いてくれ。

 

「うーん……少尉はどうします?」

「俺は日替わりランチAセットと、バニラアイスだな」

「じゃあ、私はカツカレーとプリンにします!」

「……前も食ってなかった?カツカレー」

「美味しかったので!!」

「さよか」

 

ふと見るとカウンターの方が騒がしい。何か揉めているようだ。

 

「どうしたんでしょうね?カレーに福神漬けが入って無かったりしたんですかね?」

「さぁ?よく騒ぎは起こるしな。つーか伍長、なんでそんな日本的なの?俺福神漬けっつーか漬物食えないのに」

 

そう、食堂は人が集まる上、食という生活の根幹が関わるところなのでよく喧嘩が起きる。しかし、よりによってカウンターで……。仕方ない。触らぬ神に祟りなし。待つか。

 

と思ったら伍長は果敢に突撃して行った。伍長、あんた今、最高に輝いてるぜ?俺はいかないけど。あ、他の所空いたからそこ行くか。

 

「だから!オレはこの限定セットを!!」

「売り切れですって!!邪魔になるので早く行ってください!!」

「何だと!!客に向かってなんて態度だ!!」

「おばちゃんカツカレーとプリンください」

「ふざけんな!なら金を返せよ!この!」

「だったら溜まったツケを少しは払ったらどうなの!そんな男だから振られるのさ!」

「おばちゃーんカツカレー」

「全くダメダメねぇ、ホントダメ。あなたはそこの水でも飲んでなさいな!」

「るせぇっ!クソ!!今それとこれは関係ねぇだろうが!!この!!」

「だから早く…」

「カレー、カツカレーまだぁー!」

「はいカツカレーそれ食ってとっとと寝な!!」

「え?」

「おいババアこっちが先だろうが!」

「何これ?それにプリンはおばちゃーん」

「あーもう!!」

「うるせーぞ小娘!さっきからカツカレーカツカレーと!!」

「おいしんだもんいいじゃんカツカレー!!」

「喧嘩なら他所でやりな!!」

 

さーて美味しそうだなー。天ぷらが南米で食えるっていいな。やっぱ現地の物食べるのもいいけど、やっぱ自分の地元の物が食えるというのはデカイよ、うん。

 

「いただきます」

 

味噌汁もいいなぁ。やっぱ日本食は落ち着くわ。

 

「……ただいま………」

「………どうしたんだソレ……?」

 

ヤケに落ち込んで帰って来たと思ったら伍長のカレーにカレーがかかっていなかった。それカレーじゃねぇじゃん。しかも上のはコロッケらしい。なんで?

カツカレーの要素、ゼロ。

しかしプリンはプリンだった。よかったね伍長。

 

「……うぅ……カツカレー……」

「ほら、このナスの天ぷらあげるから」

「……少尉のキライなヤツじゃないですか……貰いますけど……」

「ならいいじゃないか、ウィンウィンじゃん。別に食えるけど、仮に食べられるなら美味しく食べられた方がいいだろ?」

「少尉何があろうとご飯絶対残さないですからねぇ……」

「ここ、よろしいですか?」

「?」

「うん?はぁ……どうぞ」

 

そこへ黒髪の男がトレーを持ってやって来た。別に他の席空いてんのに……。

階級を見る限り少尉だ。なんだろ?

………また、年上かぁ……。いや、慣れなきゃいけないし、俺が若すぎるだけなんだが……。

 

「あっ、カレー!!いいなー!!いいなーカレーいいなー!!」

「……す、少し食べる、か?」

「やったー!ありがとうごさいます!!」

「………すみません…」

「い、いえ……」

 

引きつった顔をして伍長にルーをあげる少尉に頭を下げる。何やってんだよ伍長……。あれ程見ず知らずの人から食べ物もらっちゃいけないって教えたのに。

 

「すみません。お名前は……?」

「あっ、はい。申し遅れました。私はエイガーと言います。階級は少尉です」

「えっ!あのエイガー少尉ですか!!」

「!……始めまして、エイガー少尉。会えて嬉しいです」

 

こんなところで会えるなんて、何という僥倖!

取り敢えず握手しつつ自己紹介を済ませる。

でも、何の用だろ?

 

「え、知っているのですか?」

「有名ですよ!!」

「はい、俺たち共々、"キャリフォルニア・ベース"で共に戦った仲ですし……少尉はご存知ないと思いますが……」

「そうだったのですか……。よくぞご無事で…」

「エイガー少尉の考案した訓練受けてたんですよ私!!感激です!!」

「俺もそれに口添えはしたなぁ……懐かしい……」

「2人とも戦車兵だったのですか?」

「いや俺は攻撃機乗りです」

「!?」

「私は戦車兵でーす!!」

「……ところで、中尉。……何故敬語なのですか?」

「………性分です。気にしないで下さい」

 

そのまましばらく思い出話をする。本当に懐かしい。それに、あの激戦をやはり生き残っていたんだなと喜び合った。

このような話が出来る者は少ない。しかし、その話が出来る事はとても喜ばしい事だった。

 

「………ところで、本題はなんです?何かあったのですか?」

「……はい、今日はそのために……」

 

少尉は周囲を窺った後、声を潜めて喋り出した。なるほど……確かに、秘密の話なら、食堂は中々いい所だ。そのような話をしても疑われないし、騒がしいから聞かれづらいし。………聞かれるリスクはやや大きいが。でもここは端っこだ。そのリスクも小さい。

 

「……中尉に挨拶に。それに感謝をしようと……それと、ジョン・コーウェン准将からの事づけです……」

「? ……ジョン・コーウェン准将から……?」

「………………"V作戦"に、"RX計画"」

「…………!!」

 

今、何と……!

准将の持っていた、あの……!

 

「……"ガンキャノン"、ですか…?」

「……! はい!!それの調整に、中尉のデータはとても役にたったので……」

「……そう、ですか……それは良かった……」

「……でも、よく分かりましたね…"ガンキャノン"だと……」

「…少尉なら、と思いましたから……」

「………?………………???」

「あー、伍長?カレー食ってろカレー」

「はい!!」

 

話について行けずポカンとする伍長は無視し話を続ける。少尉ゴメンねご飯だけになるかも。

………ん?……調整……?

 

「……まさか!」

「………………はい!!そのまさかです!!RX-77 "ガンキャノン"、ロールアウトしました!!

 

 

……………我が軍初の、完全連邦製二足歩行MSです!!」

 

 

 

『俺を誰だと思っている?砲撃のスペシャリストだ』

 

 

 

 

連邦の歯車が、動き出す………………………




はい。書いててつまらない読んでてもつまらないだろう訓練編続きます。

エイガー少尉はマンガや小説どちらも上官にタメ口だったり丁寧語だったり安定しないので敬語になりました。

ガンキャノンの正確なロールアウト時期は分かりませんが、これぐらいだと思われますので。
因みにこのガンキャノンはRX-77-1 プロトタイプガンキャノンと呼ばれるものです。性能はセンサーとジェネレーターが少し弱い以外ほぼ変わりませんが、ビームライフルの安定射撃が出来ません。テスト終了後全機ノーマルなガンキャノンに改修されます。

もう少しこのクソつまらない奴続きます。ご了承下さい。

今回軍曹一回も喋ってねぇ(笑)。軍曹の霊圧が消えてる……。

次回 第三十一章 中尉の訓練教官奮闘記④ 事件編

「ッ!!」

お楽しみに!!

ご意見、ご感想お待ちしております。

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