機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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ちゅーいのきょーかんにっき、すたーと!

目指せ!センチメンタル小室マイケル坂本ダダ先生的ポジション!!

だけどシンセサイザーは勘弁な!!

あっなったに♪あっなったに♪センチメンタルッッッアウトローッッッブルースッッッ!!!



第二十八章 中尉の訓練教官奮闘記① 下見編

時代が変わるのは必然だ。

 

そして、それに伴い、世界が変化するのもまた然り。

 

非日常は日常へ、日常は非日常へ。

 

それが顕著に現れるのは、日進月歩の戦場。

 

それら全てを変えるのは人類だが、

 

それに適応し、また新しい時代を創るのも、

 

また、人類なのだ。

 

 

 

U.C. 0079 6.24

 

 

「……さて……」

「少尉ーっ!私にも見せて下さい!!」

「……MS、か……」

 

場所は中尉に充てがわれた部屋。そこへ伍長と、訓練が無かったため相談をしようと呼ばれた軍曹といういつもの3人が集まっていた。

 

中尉が准将からもらったブリーフケースを開ける。中は書類と思いきや、ブリーフケースそのものが携帯端末となっていた。

 

「……訓練は4日後から、シュミレーションに……おっ、実機訓練だって!!」

「……実機…?開発に、成功していたのか……!」

「少尉!見て見て!『訓練に際し、中尉では支障が出ると思われるため、訓練期間中は先任少佐に任命、少佐相等官としての地位を与える』だって!!」

「……年上とか、階級が上の人を指導しろと……厳しいなぁ…」

 

3人でワイワイやりながら確認して行く。伍長はもうワクワクが止まらないようだ。軍曹は何やら考え込んでいるが。

 

……ん?コレって……!

 

「軍曹!軍曹結構シュミレーションやってたよな!?」

「……あぁ、移動中にな……それが…?」

「コレ!!」

「何です?……おお〜!」

 

そこにはパイロット候補引き抜きについて書かれている。結構自由が利く様だ。

 

「軍曹、MSと"ロクイチ"、どっちがいい?」

「軍曹も乗ろうよ!!私よりシュミレーション結果良かったじゃん!!」

「…………」

 

軍曹は考え込んでいる。そのままおもむろに口を開いた。

 

「……実機訓練の、機体は……?」

「ん?どれどれ……」

 

端末を操作し、調べる。んーっと、………"ザニー"…?それに、"RTXー44"……?

 

なんだこりゃ?

 

「……カッコわる……いです、ね……」

「……いや、兵器はカッコじゃないが……」

「……前面投影面積が……」

 

そこには"不恰好なザクっぽいの"と"不恰好なヘンテコ突撃砲"みたいなものが表示されていた。

 

……ぇ……? ナニコレ?

 

「……………」

「……………」

「……………」

 

いきなり不安になって来た。コレ、"ザクII"とまともにヤりあえるのかよ?

 

「……しかし、"ロクイチ"の、パワー不足は……」

「……ど、どうする?」

「……カッコ悪い……」

「…………MS適性訓練、受けさせて欲しい……」

 

軍曹の決断はMSに下されたようだ。

 

「……俺は、中尉について行く。そのためには……MSが、絶対に必要。………それは、連邦も、だ……」

「……軍曹、分かった。"ロクイチ"訓練の方は?」

「……シュミレーション、訓練は組んである……掛け持つ……少しずつ、MSへ傾けて行くが……」

「……分かった。無理はするなよ」

 

軍曹と相談している間、伍長は勝手に端末をいじっていた。何かを見つけたらしく、声をあげる。

 

「……えっ?少尉だけズルい!!」

「何がだ?」

 

伍長の指差す部分を見る。成る程、こりゃいいわ……。

 

そこには『訓練教官は"ザクII"を使用する』と書いてあった。

 

 

 

「……よし、だいたい決まったし、少しシュミレーションでも弄るか!」

「さんせー!!早くやって、みんなを驚かしてやりましょー!」

「……時間は……あるな」

 

建物を出て3人でエレカに乗る。向かう場所は宇宙港エリア外縁部だ。ここは軍港エリアなので、少ししか離れていない。

 

数週間すごして気付いた。この"ジャブロー"はバカみたいに広い。聞いたところ、上層部ですらその全容を把握している者はいないだろうとの事だ。

あまりに広く複雑であるものの、主要施設はこのように全てハイウェイで繋がっているのが唯一の救いか。中には高速鉄道、果ては航空機を使用した方が早いところまであるが。

また、"道路のない、謎の施設"も多いそうだ。下手に近づくと消されるらしい。それらは秘密研究所だとか、生物兵器の人体実験をしているとか、いやいや一部の上層部しか使えないカジノだとか色々言われているが、真相は深い闇の底だ。

そんなロマン溢れる"ジャブロー"は、未だ未開発地域もあるらしい。軍事施設としてそれでいいのか。そこを攻められたらどうするんだ。

 

「……うぇぇ〜座学もあるのぉ〜?」

「そらなぁ……ゲッ、俺は座学自主学習じゃん!キツっ!!」

「えっ!いいなぁ!少尉だけズルいです!!」

「何がだ!!やる事いっぱいだぞ!!暇よりイイが…」

「……着くぞ…」

 

真新しい看板に、真新しい建物。その前にエレカを停め、まだ殆ど誰もいない建物へ入る。新築の匂いがするなぁ。他の教官や、講師と挨拶をしつつシュミレータールームへ。

 

「へぇ、戦術の講師、伍長と同い年で階級も一緒なんだな」

「負けられませんね!!」

「いや、もう負けてるだろ」

「……教わるベき点は、多い、な……」

「ここか…」

「わぁっ!!」

 

シュミレータールームは広く、その中にたくさんのカプセルが並んでいた。カプセルは足回りにアームとジャッキが付いており、その前にはタッチ式の端末が設置されている。

 

「……連動して、動くのか……」

「対G訓練機を改造したのか……結構いいな、コレ…」

「中も見てみましょうよ!どんな感じかなぁ…」

 

端末を弄り、ハッチを開放する。プシュッと圧搾空気が漏れる音と共に、コクピットがその中を晒す。

 

「……"ザクII"の物と似てるな……」

「…ペダルは二つなんだね。やった!」

「……ん」

 

軍曹だけが振り向いた。どうしたんだろう?気にせず伍長とコクピットを観察する。

正面、左右面に上面の計4枚のメインスクリーンに、左右計2本のT字型レバー。ボタンは表面に出ているが……。狙撃スコープもある。計基盤はだいぶ違うが、そこは仕方が無いだろう。だが、だいたい同じだった。

 

「……気に入って貰えたかな?」

 

声に振り向く。そこにはいつもの笑いを浮かべながら、ジョン・コーウェン准将が立っていた。軍曹は既に敬礼している。

 

「ウボァ!!これは准将!失礼しました!!」

「……あわわわっ!昨日のおじさん!!」

 

おいぃ!!何とんでもない事口走ってんだ!!死ぬ!死ぬる!!軽く死ねる!!!君のためなら死ねる!!

 

「……よい。それより……」

 

慌てて敬礼した2人を手で制し、准将が歩み寄る。

いいのね。心広いのな。

 

「どうかね?コレは?」

 

シュミレーターを指差しつつ聞く。逆の腕には白地に青枠と、真ん中に赤で大きく『-V-』と書かれたファイルが挟まれている。

 

「……"ザクII"に良く似ていますが、よりシンプルに再設計されているようですね。いいと思います」

「そうか、それは結構。……これは、鹵獲された"ザクII"の後期型コクピットを参考にしているのだそうだ」

「……私が乗っていた奴に近いのはそれで……そのファイルはなんですか?」

「これかね?見るかね?中尉」

「出来れば。コレ(シュミレーター)の取り扱い書ですか?」

「……そのような物だ」

「……?…!中尉!それは……!」

 

ファイルを受け取りパラパラと中身を………!

 

「……これっ!!」

 

慌てて表紙を……。…………………………………………………………………………死んだ。

 

そこには『最重要機密』を表すSを丸で囲うマークが。

 

「えっ?なになに?何が書いてあるの少尉?」

「見るな見るな!!」

 

伍長を手で制し、慌てて顔をあげ准将を見る。多分、今顔メッチャ引きつってるな。動きもぎこちないし。准将の顔は相変わらずだったが。

 

「……じゅ、准将……」

「"それ"は、最重要機密なんだが……見てしまったかね?」

 

見せたのアンタやろうがぁぁぁぁぁぁぁああ!!??!?

 

頭を抱える。ダメだこりゃ。グッバイ!マイライフ!!

 

「…………」

 

軍曹が取り上げ、何気無くファイルを見始める。もう止める気力もない。その行動に准将は驚かされているようだった。

 

「……意外だな。君は?」

「……戦車教導教官の、軍曹、です…」

 

ファイルを見ようとする伍長をシュミレーターに放り込みつつ軍曹が言う。そのあまりの堂々とした様子に少しずつ平静を取り戻す。

 

「! 君がかね!…話は聞いておるよ……会う手間が省けた。演習で新米をドライバーに1両で一個小隊を相手取り撃破したそうだな…」

「……は?」

「……偶然、です…」

 

ンな訳あるか!!思わず間抜けな声を出しちまったよ!

…………凄いのは知ってたつもりだったが……怖ぇよ。

 

「……これで、処罰は2人……どう、します…?」

「……うぅむ…」

「………って、軍曹!!なんて事を!!」

「……構わない…」

「か、構わないつったって……!」

「む!軍曹も見るなら……」

「お、オイ!!」

「………?………???……………で、でも!これで3人です!!」

 

シュミレーターから飛び出した伍長がファイルを見る。軍曹も諦めた様に渡していた。

いや、全然理解して無いだろ!!

 

その行動に呆気に取られていた准将が、そのまま噴き出す。

 

「はははははっ!対した人望だな中尉、一本取られたよ。……やはり、聞いた通りのようだ」

「……は、はぁ……」

「…………竹馬の友の頼みもある。それも見られてしまった。儂は君たちをとても気に入ったよ。………がんばってくれたまえ……あの計画を…………はっはっはっはっはっはっ!! またな!中尉、軍曹、伍長!!」

 

ボソボソなにやら呟き、最後に笑いながら行ってしまった准将をポカンとしながら敬礼で見送る。

 

「………な、なんだったんだ?」

「…………さぁ?私にはちょっと……」

「…………ふっ…」

「………って!!それより!!何て事を!!」

「……前にも言ったぞ……中尉は、1人じゃない……」

「そーですよ!!もっと頼って下さい!!」

「……バカやろうどもが………………ありがとうな……」

「……当然、だ……」

「はい!!あと!私は野郎じゃないですよ?」

「分かってるよ。言葉のあやだ………ふふ、ふふふふっ、あっはっはっはっはっは!!」

「あはははははっ!!」

「………ふふっ……」

 

肩を組み、3人で笑い合う。3人の笑いは、止むまでたっぷり3分はかかった。

 

「……さて、シュミレーター、やってみっか!!」

「はい!!少尉!負けませんよ!!」

 

先ずは慣れなきゃな。準備期間も少ない。教え子に負けたらただでさえ貫禄も何もないのに、バカにされる、つーか信頼もクソも無くなるな。

 

「……中尉、コレを……」

 

ん?軍曹が何やら差し出す。こ、コレは!!

 

コレで勝つる!!

 

「……俺のOSデータ!?」

「……伍長も……」

「わーい!ありがとう!!強くてニューゲーム!!」

「ど、どうしたんだコレ!?」

「……バックアップを多めに取って、おいた……功を、奏したようだ、な……」

「……でも、没収されたんじゃ……」

「……整備班長が……」

「おやっさんが!!」

 

ありがとう。おやっさん……いや、アンタ今何処にいんの!?予め渡しておいたのか?

 

「よし!!俺たちにはアドバンテージがある!!頑張るぞ!!」

「はい!!」

「まずは慣れよう!!別々の奴に入って、後で模擬戦な!!」

「オーキードーキー!!」

「……了解」

 

乗り込み、シュミレーターを起動する。そのままだいたいの操作を確認………やはりほぼ同じだ!!イケる!!

 

中尉の前のスクリーンが瞬く。中尉はもう、新しい操縦系統と一体化していた。

 

 

 

「………うぅ……グスッ……」

「……な、泣かなくていいだろ……まだ時間はいっぱいあるだろ?しかも伍長は伍長だけの操縦だから!!その操縦、イエスだよ!?」

「…………はぁ…」

「………2人が強過ぎるんですよぉ!!うぅ……」

 

模擬戦の結果は1人が相手に対し3戦ずつやり、中尉5勝1敗、軍曹4勝2敗、伍長0勝6敗だった。シュミレーターの点数もそのように並んだ。

 

「軍曹、ホントに戦車兵なのか?俺どうすんのコレ?」

「……偶然、だ…」

 

いや、明らかに拮抗してたよ!?点数も僅差だし!!

教官やれっかな俺!?もう軍曹教官でよくね!?

 

「……うぅ……ううぅぁ……うぇ〜ん…」

「いや伍長もよくやったって!イケるから!!」

「……先ずは、転ばないように、な……」

 

3人で騒ぎながら出て行く。その後ろで、コーウェン准将はその3人を懐かしむような、慈しむような目で眺めていた。

 

 

『技術、知恵は荷物にならない、人を救う絶対の力だ』

 

 

反抗は、地の底から………………




中尉には果たして教官が務まるのか!?

つーかうっかりちゃっかり機密見ちゃった中尉はどうなるのか!?

ここからは戦闘はほぼなくなります。まぁ、中尉の苦労に付き合ってやって下さい。

RTX-44とRTX-440陸戦強襲型ガンダンクを区別するため0外しました。

次回 第二十九章 中尉の訓練教官奮闘記② 邂逅編

「けっ、アホくさ…」

お楽しみに!!

ご意見、ご感想お待ちしております。

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