機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡 作:きゅっぱち
さぁ、少尉、活躍どころあるかな………?
ザクで溺れたらシャレにならんよね(笑)。
イメージはターゲットインサイトの海軍基地攻略に、ジオニックフロントのキャリフォルニアベース攻略戦。
BGMはガンダム戦記の「Battle on the Earth」でどうぞ!!
電撃的作戦、という言葉がある。
その名の如く、スピードに物を言わせる作戦だ。
敵の不意を突く、という点などでは有効であるが、
だいたいは
戦力差の言い訳だ。周到に組まれた作戦も、戦力差の前では霞む。
局地戦を制しても、大局を制するのは、やはり国力なのだ。
U.C. 0079 6.6
「中佐!!早期警戒中の
「…………来たか!!」
それは突然だった。さて、今日も釣りを、と話し合っていた時だった。
仮初めの、平和は終わりを告げた。
「………やはりここだったか………。提督!どこだ!」
「ここに!!チャンスですね……」
「そうだ……無駄にするわけにはいかない。しかし……」
先行し警戒を行っていた友軍偵察機が、ジオン軍に占領された海軍基地を捉えていた。それも、戦力は大部分が出ているようだ。
「……何か問題が……?」
「ああ……目標は、"ウィンドワード"諸島、旧セントビンセント・グレナディーン独立国、"グレナディーン"諸島の一つ、グレナダ島なのだが……」
「何です?」
どっちみち艦砲射撃で吹き飛ばせばいいだろ。MSが来る前に。
「……地下基地なのだ……」
「地下基地だぁ!?」
「はい。何も、"ジャブロー"ほどではありませんが……」
「……聞いた事が、ある。"ジャブロー"のテストヘッド……らしい……」
「へぇー。……えっ?でも吹き飛ばせばいいじゃないですか?」
「基地司令部、潜水艦ドッグも地下だそうだ。艦砲も届かない……」
「………よし、中佐のところへ行くぞ。全員で作戦を立てる!」
「はい!!」
「……了解…」
「はい!!………それ、わたし要ります?」
分かってるじゃないか伍長。
「……さて、ここが本拠地、というのは間違いは無い。………しかし、最も強固な海軍基地だ…」
「艦砲で破壊出来るのは、
「……奪還する戦力もない。なら、それだけで……」
「……駄目だ。敵主戦力は、潜水艦…………」
正直、無理ゲーだ。しかし、ヤらなければ"パナマ・ベース"に明日は無い。バロール3によると敵本隊は現在"ジャブロー"方面へ向かって行ったらしいが……。
「ん?」
「……提督、何か案が?」
まぁ………。一応、な。
「……元自軍基地何でしたよね…」
「そうだ」
「……基地見取り図、あります?」
《各員、準備はいいか?》
《こちら"ラッパーホルン"。準備よし》
《こちら"オンタリオ"、準備よし》
《こちら"アキズキ"。準備よし》
《こちら"ガスコーニュ"。右に同じ》
《"ガダルカナル"。準備よし》
《こちら"アカギ"。同じく》
《"リーヴェニ"。準備よし》
《"ヴァジュラ"。同じく》
「こちらアルファ1。いつでも行けます」
《……こちらブラボー1。準備よし》
《ブラボー2オーキードーキー!!》
《時計合わせ、5、4…》
準備完了だ。作戦が、始まる!
《…2、1、0!!作戦スタートです!!》
《……よし!!各艦!!うちーかたはじめー!!》
全艦の砲門が開き、怒涛の艦砲射撃を開始する。それはミサイルもだ。現在のミノフスキー粒子濃度は8%と低い。高くても大まかな座標には打ち込める。まだ、ミサイルは戦えるのだ。
「うわー!凄いですね少尉!!」
「そうだな。本当に」
艦内モニターを通し確認する。凄まじいの一言だ。大艦巨砲主義も、捨てたもんじゃない。ロマンだし。
現在少尉たちは"アンデス"の格納庫内にいる。少尉は"ザクII"に。軍曹、伍長は"ロクイチ"に。
《アルファ1、聞こえますか?》
「こちらアルファ1。問題ない。感度良好」
《了解。出撃は2分後となります。所定の位置へ》
「了解」
《ブラボー1、2も続いて下さい》
《……了解…》
《はーい!!》
深呼吸をする。さぁ、これからが本番だ。
"ザクII"を歩かせ、上陸用の"LCAC"に乗り込む。その後ろの別の"LCAC"には軍曹、伍長の"ロクイチ"が仲良く並んで載っている。
《……少尉。大丈夫だ。落ち着け。後ろは、任せろ》
《そーですよ少尉!!この私にどーんと任せちゃって下さい!!》
「あぁ!ありがとう!!」
緊張がややほどける。やっぱこの3人じゃなけりやな。
《……遅いですね。まだですか?少尉》
「まだだ。俺たちの活躍は、島がドンパチ賑やかになってからだ」
その時ビーっとアラームが鳴った。警告灯が回転し明滅し始め、ビープ音に負けない様なゴンゴンゴンというモーター駆動音と共にハッチが開き始めた。
…………時間か。
《アルファ1。30秒前です。前へ!!"ロクイチ"も続いて下さい!!
「了解!!」
《大将!!大将の"LCAC"は"ロクイチ"のを突貫で改造した特別製だ!!扱いには注意しろ!!》
「はい!!ありがとうございます!!」
少尉の"ザクII"は最低限の装備だけだ。それに、たんまりと爆薬を抱えている。
今のこちらに海軍基地を奪還する戦力はない。だから爆破してしまえ、というめちゃくちゃな作戦だ。おい、それでいいのか。
《時間です!!アルファ1!幸運を!!
「了解!!出るぞ!!」
上陸作戦の常套句とともに、少尉の"ザクII"を載せた"LCAC"が進水し、後ろには軍曹、伍長の"ロクイチ"が載ったのが続く。
その頭上では艦砲、ミサイルがまだ通り過ぎて行く。上陸まで、8分………。
「こちらアルファ1!目標に取り付いた!!これより作戦を開始する!!」
無事に接岸し、敵基地周辺に降り立った少尉が報告を行う。素早く周囲を索敵するも敵影は無し。殆どが艦隊に釣られている様だ。
《了解、健闘を祈る……任せたぞ!!》
「伍長はここで"タクシー"を頼む!!しっかり守ってくれよ!!」
《りょーかい!!まっかせて!!》
任したぞマジで。行きは良い良い、なんてシャレにならんぞ?
「軍曹は俺に続け!!遅れるな!!」
《……了解…》
軍曹の"ロクイチ"を伴い、少尉の"ザクII"が突入する。そこには、"ザクII"が軽く通れるような大空洞がその大きな口を開け待ち構えていた。
「…アルファ1、エンゲージ………3、2…」
グレネードを投げ込む。放り込まれたグレネードがバウンド、炸裂する。
「…1、0!!GOGOGO!!!」
少尉の"ザクII"が"ザクマシンガン"を撃ち放ちながら突撃する。右往左往する敵兵を蹴散らし、鹵獲された"ロクイチ"を蜂の巣にしながら突っ走る。
《……アルファ1、ここだ》
「了解、周囲の警戒を頼む!!」
"ザクII"を操作し、爆薬を設置する。
爆破というものは、ただ大量の爆薬を炸裂させればいい、という話ではない。決まった量を決まった場所に、決まった形に成型し、タイミングを調整して爆破しなければ最大の効果は発揮されない。非常にシビアであるが、逆にそれさえ満たせば、芸術のような理想の爆破を行う事が出来る。
「設置完了!!行くぞ!!」
残り3箇所!時は金なり!!急げ急げ!!
真っ暗闇をマップとナイトビジョンを通した視界のみを頼りに疾走する。敵戦力は不明。接敵もいつか分からない。視界も頼りなく、レーダーも効かない。胃が痛い。
ダガンダガンッ!!という"ロクイチ"の主砲発射音で現実に引き戻される。目の前で偽装砲台が火を吹き、爆散する。
「ッ! すまない軍曹!」
《……当然の事を、したまで…》
くそッ。集中しろ!!何をやっている!!
爆弾を設置、立ち上がる。後2箇所!!
曲がり角を曲がる。そこには"ザクII"がたっていた。
ん?鏡か………? んな訳ねぇ!!
向こうも思い出したように銃口をこちらへ向ける。それを見た時に少尉は既に回避行動へ移っていた。
少尉が爆破に使っている爆薬は高性能の
しかし、頭で理解しても身体は無理だ。爆薬を満載している恐怖から少尉は本能的に回避行動をとっていた。
火線が通り過ぎ、少尉の"ザクII"が回避、柱へ隠れる。
その間隙を縫い"ロクイチ"の主砲が火を吹く。予想外の攻撃に"ザクII"が怯み、態勢を崩した。全力で後退しつつ更に攻撃を加える"ロクイチ"。
「はぁッ!!」
その"ザクII"へ柱を回り込み横から少尉の"ザクII"が攻撃する。脇腹から胸へ突き刺さったバヨネットがコクピットを引き裂き、"ザクII"を沈黙させる。
その行動は、かの有名な"ジェット・ストリーム・アタック"の真似事のようだった。意図してした事では無かったが、その効果は十二分にあった。
全身の力が抜けた様に倒れ伏す"ザクII"から目を離し、少尉は息を整えようとするも、なかなか上手くいかない。
「…はぁ………はぁ……ッ」
ふ、ふざけんなマジで。心臓に悪いわ。俺はホラーが苦手なんだ。サイレントヒルを買ったはいいがオープニングで既に怖すぎてそのまま売ったんだぞ。
「軍曹!!無事か!!」
《……肯定。少尉は?》
「大丈夫だ。さぁ、最後の仕事と行こう」
爆薬を設置する。その隣にもう一個追加し、これで終わりだ。後は、撤退するのみ!!
「行くぞ!!ブラボー1!遅れるな!!」
"ザクII"を振り返らせ、全力疾走する。このあと包囲殲滅や、巻き添えあぼーんなどごめん被る。
地下道を疾走する。前で動くものに対しては全てに"ザクマシンガン"を走りながら叩き込んで行く。
"ロクイチ"を蹴飛ばし、"ヴィークル"を踏んづけ突撃する。
目の前に飛び出した"ザクII"には右肩のシールドを向けつつ撃ちながら突っ込み、体当たりする。
全身を撃たれ倒れ伏し弱々しく動く"ザクII"を無視し突っ走る。こちらも被弾したが気にしない。ダメージリポートは右腕オレンジ、右足イエロー、頭部ブルーだ。問題ない。
《……無茶を……》
「すまん!だがもうすぐだ!!」
地上へ飛び出す!!見えた!!
《少尉!!遅いです!心配したんですよ!!》
「すまん!留守番ご苦労!!撤退だ!!」
《りょーかい!軍曹もおつかれさまー!》
"LCAC"に飛び乗り、エンジンを始動させる。さぁて、三十六計逃げるに如ず!!逃げるんだよぉぉぉぉぉおお!!
「こちらアルファ1!作戦は成功!!"底は地獄へ"!繰り返す!!"底は地獄へ"!!」
「こちら"アンデス"。了解。お仕事ご苦労。撤退せよ」
「言われなくても!!」
"LCAC"が疾走る。これで作戦の大部分は終了だ。ホッと息をついたのも束の間、コクピットにアラートが鳴り響く。
「なんだ!!」
《……7時方向、4時方向よりホバークラフト多数!!》
「クッソ!!」
"脚"をヤられたらこちらは終わりだ。マズい!!
「ブラボー1、2!!オールウェポンフリー!!メクラ撃ちで構わん!!撃て撃てぇ!!近づけさせるな!!」
《《了解!!》》
"ロクイチ"が持てる力を持って全力射撃を始める。155mm、7.62mm、13.2mm、5.56mmが火を吹き弾幕を展開する。伍長に至っては何を血迷ったかスモークまで散布している。何やってんだ!!
「こちらアルファ1!!敵の追撃を受けている!至急航空支援を!!」
《こちら"アンデス"!了解!一番近い部隊を向かわせます!!それまで持ち堪えて!!合流は2分後!!》
少尉の"ザクII"も手持ちのザクマシンガン"、グレネードを撒き、対人攻撃用に追加した脚部胸部の13.2mmをばら撒く。超遅延信管に設定した"Sマイン"もだ。
「くそっ!あんなナリしてすばしっこい!!」
どんどん距離を詰められる。マズい!
その時飛来した機関砲がホバークラフトをバラバラに引き裂いた。
《待たせたな!!お待ちかねの航空支援だ!》
「遅いぞ!!この!!だが助かった!!」
飛来したのは"フラット・マウス"に、"TINコッド"だ。それらに追い回され、隊列を乱したホバークラフトが駆逐されて行く。
《やれやれ、遅刻した分働きますよっと!!》
《がんばってねー》
《……他人事の、様だな………》
あらかたホバークラフトが駆逐された後ろで、轟音と共に基地が大爆発を起こす。
《爆炎確認!"アンデス"より各員へ!!作戦は成功!!繰り返す!!作戦は成功!!各自撤退へ移れ!!》
各艦が回頭を始める。その中を航空機を伴い旗艦へ向かう。
《ひゃー!凄いですね!でも、思ったのと違います。汚い花火ですねぇ。もっとばぁーっと行くと思ったんですけど……》
「地下爆発だからなぁ。そら煙ばっかやろ」
《あっ、忘れてました》
《……何のために上陸したんだ……》
3人で笑いながら船員が甲板に出て大騒ぎする船の間を縫って行く。
「今夜はパーティだな」
《またお魚釣らなきゃいけませんね!今度こそツナを!!》
だから無理だって。
『"決断"とは、目的を見失わない決心の維持にほかならない』
"ジャブロー"は、まだ遠く…………………………
実は当初の予定にはありませんでした。
感想で書かれて始めておっ、と思って急遽書き下ろしました。
その分荒削りとなってしまい申し訳ありません。
それでも楽しんでいただけたら幸いです。
因みになぜ地下基地となったのかは、MSが活躍出来ないからです!!
もしこれが無かったら、
艦砲射撃→偵察機で偵察→設備潰れてるよワーイ→今夜はパーティ!!となってしまうので(笑)。
出てきたホバークラフトとはジオンホバー水雷艇のシーランスのことです。説明出来ませんでした。
"アンデス"は空母であり強襲揚陸艦ではないためどうやってLCACを下ろしたかは、一応サイドハッチからランチの様にクレーンで下ろした感じです。ロクイチようLCACはガンダムUCで出てきます。映像で出てくるかは忘れました(笑)。
2回ほどなんかのミスで半分消えてしまい書き直すハメに………。
次回 第二十四章 北大西洋波高し
「急げ!早くしろ!!敵はすぐそこだ!!」
お楽しみに!!