機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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カリブ海、大西洋横断編、スタート!!

しかし日常パート。

アニメ、映画でも戦闘シーンが好きなんで、ほぼ全部戦闘シーンでいいよ!!とかトランスフォーマーとか見て言ってたんですけど、こりゃ辛いわ。書く方は。

戦闘シーン、疲れるんすよね。その点ロサンゼルス決戦はすごいよな、最後まで戦闘シーンたっぷりだもん。


第二十二章 海の果てまで連れてって

抜錨、という言葉がある。

 

大いなる海原への、第一歩。そこから航海が始まるのである。

 

平時は静かな海も、凶暴な一面を隠し持っている。

 

船乗りはいつの時代も命懸けなのだ。

 

その命を握れるのはただ自分だけ。

 

船乗りは、一度出港したからには、その責任は自分で負うものなのだから。

 

 

 

U.C. 0079 6.2

 

 

 

「出港だ!!錨をあげろー!!」

「全艦、微速前進、よーそろー」

 

ゴゴンッ。という音が足元から響き、錨が引き揚げられる。

攻撃でボロボロになった港から、続々と船が海へと向かっていく。

それを見送る兵士達を、少尉は"ヒマラヤ"級航空母艦"アンデス"の艦橋から見下ろしていた。眼前で、ゆっくり地面が後ろへ下がって行き、見えなくなる。

 

「改めて、"アンデス"へようこそ。少尉」

「こちらこそ。提督」

「この場合、船は私が指揮を取るが、この旅団でのトップは便宜上少尉となっている。提督は貴方だ。私は中佐でいい」

「……はい。分かりました。よろしくお願いします。中佐」

「こちらこそだ。航海は10日を予定している。現在敵影は確認できず。敵戦力も不明でな。多少の遅れは出るだろう。しかし、安心してくれ。諸君らは必ず、この私が"ジャブロー"まで送り届ける」

「はい。航海の、無事を祈って」

「うむ」

「では、失礼します」

 

"アンデス"艦橋を出て、格納庫へ向かう。そこには、おやっさんと軍曹、伍長が待っているはずだ。

 

"ヒマラヤ"級航空母艦は、既に旧式艦であるが、旗艦能力を持ち、さらに全艦が大西洋上だったためコロニー落としの被害を免れた事に加え、高性能な対潜攻撃機ドン・エスカルゴを始めとする様々な艦載機が運用できる航空母艦だ。

空母でありながら艦橋前に600mm連装主砲が装備されており、強力な打撃力を持つ戦艦の様な艦だ。

この他、艦首には4連装大型対艦ミサイルランチャーと3連装短魚雷発射管が2基、艦橋後部には195mm単装速射砲が装備されており、両舷には単装対空砲が8基装備されており、単艦での戦闘能力も高い。

 

"モンブラン"級は最近"ベルファスト"で新造されたばかりの新鋭艦だ。大規模なVLS、Vertical Launching System(バーティカル ランチング システム)、つまり垂直発射ミサイルサイロと大型対艦ランチャーシステムによるミサイル攻撃を主眼に置かれた、巡洋艦でありながら攻撃力はそのまま、駆逐艦並の高速化、スケールダウンに成功した傑作艦である。

 

"アルバータ"級ミサイル巡洋艦は、マルチロールな攻撃能力に重きを置いた旧式のミサイル艦である。近々"モンブラン"級に更新される予定であったが、この度の作戦に参加する事になった。完全なミサイル艦となった"モンブラン"級とは違い、195mm連装砲やCIWS(シーウス)、 つまり"Close in Weapon System"(近接防御用機関砲)、対潜水艦用の多段散布式機雷"ヘッジホッグ"、自走機雷ADSLMM(アドスリム)、対潜水艦ミサイル"マグロック"、ADCAP魚雷、トマホーク巡航ミサイル、ハープーン・ミサイルなど、様々な装備が施されている。これらは他の艦にも装備してあったりするが。

 

"キーロフ"級護衛駆逐艦は旧米軍の"アーレイバーク"級ミサイル駆逐艦を参考に建造された高性能駆逐艦である。今や艦の基本装備となったイージスシステムの使用を前提に造られたイージス艦であるが、ミノフスキー粒子の影響を一番受けた船であるため、最も戦力にならない事が既に予想されている悲劇の艦である。これらの艦のデータリンクは手動となった。

 

「……戦えるのか……?」

 

そう、カタログスペック上では最強の艦隊であるが、ただそれだけだ。全艦衛星通信やデータリンク、ミサイル攻撃による集団運用を前提に設計されているため、ミノフスキー粒子による影響を考慮していない設計でありまた対MS戦も考慮されていない。

 

"ジュノー"級通常動力攻撃型潜水艦も退役真近の旧式潜水艦である。次期主力となる新型であったⅧ型潜水艦(U型潜水艦)"ロックウッド"級潜水艦(M型潜水艦)は"キャリフォルニア・ベース"陥落と共にその殆どが失われていた。

 

この旧式艦の集まりが、今の最大の戦力だ。"無敵艦隊"(アルマダ)には程遠いが、仕方が無い。それにしても地球連邦海軍艦ほぼ全種類が殆ど集まってんな。何これ?艦これ?俺もし本当に提督なら今すぐ鎮守府へ帰りてぇよ。

 

「………不安だな。しかし、出来ることは無い。中佐に任せよう…」

 

"ヒマラヤ"級飛行甲板下の格納庫へ到着する。ちょうどエレベーターが起動し、"ディッシュ"連邦軍早期電子哨戒機と、"フラット・マウス"強行偵察機が飛行甲板へ上がっていくところだった。ジオン軍海軍戦力の主体は連邦軍から拿捕した潜水艦であるため、このような対策が取られていた。

 

格納庫には他にも"フライ・アロー"制空戦闘機、"TINコッド"高々度邀撃機、"セイバーフィッシュ"大気圏内外両用迎撃戦闘機、"トリアーエズ"空間戦闘機、それに大型対潜攻撃機"ドン・エスカルゴ"など新旧様々な航空機が並んでいる。

 

艦載機以外も積んでいるのは、"ジャブロー"に届ける為だ。現在制海権の大部分はジオンにある為、下手に輸送船などを出せないのだ。

 

追い込まれている。かなり。ここは地球だぞ……。それに、地球連邦軍総司令部近海なのに……。

 

その艦載機の林を抜け、バラバラの破片が転がっているエリアへ。そこでは整備兵が走り回り、部品を解析している。その隣には小破し、修理中の"ザクII"もあった。

おやっさんに声をかける。おやっさんはちょうど"ビヤ樽"のジャバラの様な腕をいじっていた。

 

「おやっさん、解析の方は?」

「おう、大将か。あんまりだ。コクピットはぐしゃぐしゃ、中もミンチな上、バラバラと来たもんだ……」

「すみません。こっちも必死でしたから……」

「いや、大将を責めてないさ。逆に褒めたいくらいだ。よくやった。新型のメガ粒子砲持ちを倒したんだからな」

「運が良かっただけです。それで、何が分かりました?」

「……こいつ、"ゴッグ"は水陸両用MS、メガ粒子砲砲台としても中途半端な機体だが、水中機動運用、戦闘力は高そうだな。……こいつは水中であるなら魚雷をも避けるだろうな……」

 

ならこいつは今の我々の大きな脅威となるだろう。人が乗り込み、近接格闘をしかける巨大な魚雷………。

 

「……それはヤバいですね。ん?"ゴッグ"?」

「こいつの名前さ。装甲にご丁寧に形式番号"MSM-03"とまで書いてあったよ」

「……はぁ、"ゴッグ"ですか……」

 

話ながら散らばる残骸を見る。成る程、"ムラマサ"が折れるワケだ。MSのものとは思えない、"ザクII"を遙かに上回る重装甲で分厚い装甲だ。

次、海上でどう倒す?近づけないだろう。近づきたくもない。海に落ちたらアウトだ。しかし、こいつには"ザクマシンガン"も効かない……。

 

「そういや大将、軍曹が探してたぞ?」

「? 分かりました。ありがとうございます。後、時間の許す限り、"ザクII"の炸裂系手榴弾に、"ザクバズーカ"の弾薬を作ってくれませんか?」

「そりゃどうして?」

「……最悪、"ザクII"を甲板上で砲台にしようかと……」

「……分かった。各種、考えておく…だが……」

「?」

「……"ザクII"もそろそろパーツが足りなくなって来てんだ……少尉はよくスラスターを吹かすだろ?足回りは特に相当ガタ来てんぞ?全体的な稼働率も70%前後だ……そこを、よく加味しろよ?」

「……そう、ですか……それでは。よろしく頼みます」

「おう!」

 

おやっさんと別れ、格納庫内を歩く。

"ジャブロー"までは、持ってくれるか……?

 

「……"マングース"(アイツ)、ねぇな……」

 

かつての愛機に思いを馳せる。最強の攻撃機。

空を飛ばなくなって久しい。

 

「………空が飛びたい、か……」

 

いつから、俺はこうなった?

 

 

 

U.C. 0079 6.5

 

 

 

「……………きたっ!!」

「凄いです少尉!……ってわわわ!!こっちもだぁ!!」

「……落ち着け。落ち着いて、竿を立てろ……」

「フィィィッッシュ!!イィィヤッホォォォーーー!!」

 

潮の香りが鼻をくすぐり、潮風が心地よい。周りにはウミネコが飛び回り、みゃあみゃあと不思議な声で呼んでいるようだった。

 

「ふっ!むっ!…………ふん!!」

 

キラキラと太陽の光を乱反射させ、七色に輝く銀色の腹を見せ、釣られた魚が宙を舞う。うんうん。大量だ。残念だったな、海の底では弔い祭りだ。

 

「あわっ!あわわわ!!強いです!!ちょっ、うわ!!」

「! オイオイ!!」

 

竿に引かれ海へおこっちかける伍長を掴む。結構慌てたため舐めていた飴を噛んでしまった。くそっ。

でも流石に落ちたらマズい。甲板から海面までちょっとした高層ビル程の高さがある上、その高さになれば水の表面張力はコンクリート並みの硬さになる。またスクリューにでも巻き込まれたらミンチよりも酷くなる。

それに軍艦というものはその見た目や大きさに似合わずかなりの速度で航行している。

特に空母は艦載機をより確実に燃費良く飛ばす目的から向かい風を発生させるため、最大速度はなんと35ノット、時速に直すと約65km/h近い数値を叩き出しているのだ。

全長200m以上という巨大建造物がそれ程の速度で進んでいるのだ。近くに寄ったら波でとんでもない事になる。

小船でもそうなのだ。人間など言うまでもない。

急にも止まらない。止まるにも何ノットといる。それに、対潜警戒をしている今陣形を崩す訳にもいかない。1人落ちても、見捨てるしかないのだ。

 

「た、助かりましたぁ〜」

「……ったく……」

「……伍長、竿を変えるべきだな……」

 

敵影もなく、嵐もなく。いたって平穏な海で3人並んで釣りをしていた。平和っていいねまったく。

その平和を取り戻し、維持するためにはまた、俺たちが戦わなけりゃな。

 

昨日、今までから考えると珍しくやる事が無く、手持ち無沙汰であまりにも暇だったので釣りでもしようと軍曹に提案しようとしたら軍曹から提案された。お互いの趣味が合うとは珍しく、嬉しい事だった。

 

「あっ!!釣れました!!釣れましたよ少尉!!やったぁ!!」

「お、やるな」

「ご褒美は?」

「キャンディドロップだ。食うかい?」

「むー、チョコレートがいいです!甘い夢が見られそうですし!!」

 

軍艦は空母などを含め大型船といえどかなりの速度だ。普通は出来ない。しかし、今は索敵しつつ、ゆっくり進んでいるためこんな事ができたのだ。

釣りは元々そこそこやってたので、軍曹と勝負でもしようと思ったがいきなり当たりを引いていたのでやめた。俺が軍曹に勝てる事は一つもなさそうだった。

のんびり飴をなめなめ本を読みながら釣っていたら、船酔いから復活した伍長もそこに加わり、今に至っている。

 

「……今夜も、魚料理だな……」

「大量ですね!!ふふっ。船の晩御飯は美味しいので楽しみです!!つまみ食いしたいです!」

「……"銀蠅"はやめとけ……」

 

3人とも書類仕事なども無く、かと言って手伝える事も無く、食料調達係へと変貌していた。

 

しばらく当たりも無く、のんびり釣り糸を垂れる。

 

「はーっ!!水平線が綺麗デスね!!テートク!!」

「それなんかのモノマネか?……まぁ、そうだな」

「いいこと!暁の水平せ……」

「分かったから!!もういいよ!!」

「あ、あの島!なんでしょう!?」

「……あれは、怪物の島(イスラ・デル・モンストルオ)……"バジリスコ"が、居る島なのだと……」

「へぇ、怪物達のいる処、か……」

「そうなんですか!!行って見たいですねぇ。いつか……さっきの海上プラント跡地も……きっと、何かドラマがあったんでしょうね……」

 

何やってんだよ。かまってちゃんか。

なら付き合うからさ…。

 

「……でもやっぱり…かからないと暇なんですよ…」

「それがまたいいんだろ?な?軍曹?」

「……あぁ。人、それぞれだが……」

「………はぁ〜。それにしても、地球って、本当に丸いんですねぇ……」

「スペースノイドが何言ってんだが……」

「宇宙からと地球からでは全然違うものですよ?ね?軍曹?」

「……いや、宇宙からは……見たことは無いな……」

「そうなの!えっ?少尉は?」

「あるぞ。ガキの頃に一回ほど。綺麗だった」

 

伍長の相手をして無駄話をする。明日も暇なら、兵器好きから船を探検してたらしいから、後で一緒に回って解説を加えてやりゃいいかな……。釣りもいいとおもうんだがなぁ……。そーいや歯医者とか色々あるのにビビってたな伍長。まぁ、知ったらビビるよね。

 

「……そういや、おやっさんは?」

「? いいえ?知りませんけど?軍曹は?」

「……"ロクイチ"、"ザクII"、"マゼラ"のシーリング中だ……」

「あぁ、そういや……」

「? 何でですか?」

「……少尉の、提案だ……」

 

そう。海風で錆びちゃ困るからね。

 

「………ふーん。おやっさんも大変ですねぇ…」

「そうだな。そのためにも、いっぱい釣って、ご馳走しよう」

「あっ、少尉、私オサシミ食べたいです!!大好きなんです!!日本の料理なんでしょ?つくってください!!」

「……サシミ……か……」

 

あ、刺身に抵抗無い人なのね。なら、腕によりをかけてご馳走しなきゃな……。

 

「あぁ。何が好きなんだ?」

「ん〜、えーっと……あ、思い出しました!!ツナです!!アカミです!!」

 

 

 

 

 

そ れ は MU☆RI。

 

 

イクラを釣る並に。

 

 

 

『何おう!!海はみんなの故郷なんだぞ!!』

 

 

ただ、海は静かに広がるのみ…………………

 




ちょくちょく挟まれる意味無しシーンでした。

日常パートは小ネタ挟めるのがいいね。つまらんかも知れないけど、自己満足でも小ネタは何か嬉しい。

あ、これ、赤道祭とかするべき?

実は戦闘シーンとかのシリアスな時でもその空気をぶっ壊すギャグが好きなタイプの人間です。本当はそれくらいはっちゃけたい。もっとバカを入れるべきだった。キャラミスったな。

船のスペックは設定に無い物は全て想像です。なのでほぼ想像に……しっかりしてくれや………。
そこ!主砲口径バロスとか言うな!!本当はもっと小さくしようと思ったんだけど、宇宙世紀だいたいこんなもんなのよ!!弾丸共通の方が良さげだし。
まぁ宇宙世紀のビックリ技術で航行速度は上がっているかもしれません。でもあんま速い船は怖いわ。

もしかしたらこのままジャブロー行っちゃうかも。ごめんね司令さん……とかいいながら。


次回 第二十三章 海軍基地攻略

「はい!!………それ、私要ります?」

お楽しみに!!

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