機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡   作:きゅっぱち

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ついに中南米編大詰めです。

最近何故か妙にあったかいんでいいですね。ウィンタースポーツは好きですけれど寒いのは嫌いです。

読み返して見たら前書き後書きがアホみたいに長い長い。何書いてんのかまったく。

このままジャブローへひとっ飛び、なのかどうなのか?

どうぞお楽しみ下さい。


第二十章 パナマの海

古来より、大規模運送の主体は船であった。

 

そして、その船での運送を支えたのは、二本の運河だった。

 

スエズとパナマ、この海と海を繋ぐ大規模運河だ。

 

特にパナマは、海面差もあり世紀の大工事となった。

 

その古くからの交通の要衝で、少尉は何を見るか。

 

 

 

U.C. 0079 6.1

 

 

 

その輝きは、絶対に忘れる事は出来ないだろう。まさに、希望の輝きだった。眼下には、明るい陽に照らされ、輝きを放つ大規模運河と軍事施設が見下ろせた。

 

「キターーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「やったね!!少尉!!見えたよ!!」

「……長かった。本当に……」

「やったな大将!!信じてたぜ!このこの!」

「うおお!パナマだ!ついにだ!!」

「この長い旅ともお別れだ!!」

 

喜び、叫び、抱きついてきた伍長をおんぶしつつ周りをみる。おやっさん、整備兵も大喜びだ。軍曹も薄く笑っている。よほど嬉しいらしい。

 

それもそうだ。"キャリフォルニア・ベース"脱出から約3ヶ月弱、ここまで来れば海路を用い最終目的地、地球連邦軍総司令部"ジャブロー"まですぐだ。喜ばないはずがない。

 

「よし、皆、よくここまでやって来てくれた」

 

全員が静まり返る。皆の目がこちらへ向く。

 

「犠牲は少なくは無かった。しかし、こうして我ら、"サムライ旅団"はこの地、"パナマ・ベース"へ到達出来た。ここまで来れたのは、私の力でも、手柄でも決して無い。諸君らの奮闘があったからだ。

 

改めて、礼を言わせて貰いたい。

 

ありがとう」

 

敬礼をする。全員が敬礼で返す。きらめく太陽をも、祝福してくれているようだった。

 

 

 

「これはこれは。どうもいらっしゃいました。どうぞ、おくつろぎ下さい」

「失礼します」

 

ここ、"パナマ・ベース"の基地司令である中佐と会う。恰幅のよいおじさんだ。

 

「……船を貸して欲しい、ですか……」

「はい。無理な願い出というのは重々承知の上です。しかし、我々は"ジャブロー"へ向かわねばならないのです」

「……ふむ……」

「………なら、こういうのはどうだ?」

 

隣にいたおやっさんが立ち上がり、中佐に何か耳打ちをする。言葉を聞くにつれ中佐の顔が大きく歪んだのちみるみる青く、今度は赤くなり、沈黙する。

 

「……」

「……………」

「………………………」

「……………………………………」

「………分かりました。旗艦として"ヒマラヤ"級航空母艦"アンデス"。"モンブラン"級ミサイル巡洋艦"ラッパーホルン"。"アルバータ"級ミサイル巡洋艦"オンタリオ"、"アキズキ"。"キーロフ"級護衛駆逐艦"ガスコーニュ"、"ガダルカナル"、"アカギ"。それに"ジュノー"級通常動力攻撃型潜水艦"リーヴェニ"、"ヴァジュラ"を貴官らに貸そう。それが我らに出来る最大の協力だ」

「あ、ありがとうございます……」

 

な、何を言ったんだおやっさん……ほほ空母打撃群じゃねーか。凄まじい戦力だよ。国一つ潰せるよ。

 

「………話は以上か……?」

 

苦虫を噛み潰したような顔で見ないでくれ。ごめんなさい。本当に。

 

「………はい。ありがとうございました」

「………出港は……」

「明日には頼むぜ?」

「」

「」

「また来るぜ」

「」

「………………」

「……失礼しました……」

 

と、とんでもない条件を押し付けた………ごめんなさい。ごめんなさい。許してー!!

 

2人で並んで廊下を歩く。少尉は申し訳なさでガクガクブルブルだ。おやっさんはアレでも文句があるのかブツブツ言っている。そんな奇特な2人を生暖かい目で見送る基地勤務員達。

 

「…けっ!しけてんな、旧型艦ばっかに、補給艦もつけないなんてよ……」

「よ、欲張りすぎですよ!!十分過ぎますって!名目上はジャブローでの改修なんですから!!」

「でもなぁ……うん、も少しぶんどっか…」

「もうやめたげてよぅ!!」

「……分かった、分かったからその目をヤメろ!」

「すみません……」

「少尉ー!お話はどうでしたー?」

「……………順調だ。明日には"ジャブロー"へ向かえる。今日はここで解散だ」

「じゃ、少尉!お買い物しましょうお買い物!!」

 

そうだな………今日一日はみんなに遊んで欲しい。今までの苦労を労う意味でも、休息は必要だ。

 

「総員へ告ぐ、今日が最後の休暇となる。総員、各々の判断で動いてよし。ただし、交代制で、明日のこともある。ヒトハチマルマルまでには集まる事。異論は?

無いな。よし、解散(ブレイク)!」

 

整備兵達がてんでばらばらの方向へ散って行く。それを見届けつつ軍曹へ話しかける。

 

「軍曹もどうだ?」

「……俺は…………"ロクイチ"にいる……」

「……楽しまなくていいのか?ラストチャンスだぞ?」

「……あぁ……そんな気分なんだ…」

「……分かったよ。ゆっくり休んでくれ」

「……少尉も。良い休暇を…」

 

軍曹と別れ、伍長に着替えるように言って別れる。溜まってた給料、たまには使わなきゃな。"日本製品"(ポセイドン)があればいいんだがなぁ……。

 

「少尉ー!お待たせしました!」

「いや、今来たところだ。じゃあ、行こうか」

「はい!」

 

伍長はいつぞやのワンピースだ。聞いたところ、唯一持って来れた一番のお気に入りだとの事。良かったね持って来れて。俺なんか何もないよ?この服軍曹とおやっさんから貸してもらったもんだし。

 

「ふふっ。楽しみです。2人きりでお買い物〜」

「まぁ、いいかもな」

「デートみたいですね!!」

「それはこんど軍曹と2人きりで出かけた時に言ってやれ」

「……む〜、違いますよ……」

 

何がだよ。その背に回したショットガンと、腰につけたデザートイーグルに言いてぇよ。気に入っているのはいいけど、気に入ったものふたつ組み合わせてとんでもないことなってっぞ?

 

「少尉は浮いた話、聞きませんよね?興味ないんですか?」

 

街を歩きながら聞いてくる。そんな事よりその銃に興味があるわ。前ショットガンは使いこなす様になったけどデザートイーグル撃てなかったじゃん。3クリップ撃って命中弾がカス当たり2発だったのに何故持ってきた?

 

「人並みにはあるが、俺みたいな変人誰も相手にしないだろ。その点伍長はいいじゃないか。可愛いし、軍曹居るし」

「えへへ〜。いや、軍曹は違いますよ!それに、少尉も人気ですよ?知らないんですか?」

「そこまで自分の評価なんて興味ないしな。知らんし。でも伍長達は"夫婦"って呼ばれてんのに?」

 

ウィンドウショッピングしつつ言う。あっ、スーパー行きたい。お菓子とカロリーメイトが欲しい。それが無いと死ぬ。あぁ、日本のグミ、飴、キャラメルが食いたい。特に飴。パインアメ食べたい。ストックが尽きそうなんだよ。

 

「……それは……言われてますけど、違うんですよ!」

「……ふうん……ま、いいんじゃない?俺にはどのみち縁の無い話だし……」

 

スーパー・ナイスグロズリーへ伍長と入る。最近勢いを伸ばしているスーパーであるが、品揃えはあんまりな事で有名である。

飴は無かったが、カロリーメイトは見つけた。フルーツとチョコレートを買い溜めする。箱で。簡単な諸手続きを済ませ基地へ送ってもらう。エムアイ輸送会社はやはり便利だ。

 

「……そんなに食べるんですか?」

「これからの補給の機会を考えての事だよ。俺の用は済んだ。伍長はどうしたい?」

「うーん?特には……」

 

無いのかよ。何で誘ったんだよ。

 

「服とか化粧品とかはいいのか?」

「あんまり……あ、銃が見たいです!」

 

それでいいのか17歳女子。俺は不安だぞ?

 

 

「?」

「どうした?」

 

一応引っ張ってきた服屋で伍長が顔を上げる。不思議そうな顔だ。

 

「なんか、不思議な感じがします」

「……不思議?」

「…なんか、こう……説明出来ませんけど……?」

「んんん?」

「……基地に、戻りたい?ような……?気が……?」

 

なんだそりゃ?

 

「別にいいが……服とか、いいのか?」

「私はこれがありますし、身体は一つですからあんまり……少尉は?」

「同じだ。なら、戻るか…」

 

プラモデルもいいのなかったし。カロリーメイト買えたし。

 

「はい!あっ、手繋ぎましょ手!」

「いいけど?じゃ、行くか……」

 

基地に向かいながら考えてみる。恋人ねぇ………。そもそも軍属だから機会も少ないし、設けようとも思ってなかったな。そのうち自然に結婚してるもんかと……。まぁ、今は戦時中。尚更どうでもいいな。

 

基地で別れる。伍長には2人で選んだ軍曹へのお土産コーヒー豆を持してある。これでまた旨いやつが飲めそうだ。

 

「おやっさんは?」

「居ませんよ。街にお酒買いに行きました。何か用ですか?」

「いや、確認しただけだ。それとお前は行かなくていいのか?」

「もう行ってきました。それより"ザクII"(こいつ)といたいですし…」

「今からシュミレーター起動したいんだけど、いいか?」

「もちろんです。データ取りは任してください!」

「ありがとう」

 

整備兵と話し"ザクII"に乗り込む。おやっさんの下にいるにしては真面目な整備兵で、よく"ザクII"について相談する奴だ。本人は本人でいつも"ザクII"に張り付いている。メカオタクらしい。話が合うっていいよね。

 

シートに座り、ヴェトロニクスを立ち上げる。もう手慣れたものだ。

 

 

その時だった。

 

ドガン!!という爆発音がし、慌てて整備兵に呼びかける。

 

「今のは!?」

「わ、分かりません!ですけど、軍港エリアの方です!」

 

軍港?何が………。

 

また爆発だ。大きい。ただの事故じゃない。

 

「よく分からんが、"ザクII"(コイツ)を出す!離れろ!!」

「りょ、了解!!」

 

"ザクII"を立ち上がらせ、軍港方面にモノアイを向けズームする。爆発が立て続けに起こり、遅れてアラートがなり始める。

 

《敵襲!!》

 

敵!?海からか!?敵戦力が分からん。取り敢えず近くの"ザクマシンガン"バヨネット装着型に予備マガジン、"ヒートホーク"、"ムラマサ"を取る。格闘兵装二つって何!?

 

"ムラマサ"は前製作された刀型高周波振動剣の事だ。命名おやっさん。前モーションマネージャー取ったばっかだったからか。まぁ、使えるだろう。潜水艦はこうも接近は出来ない。多分"ザクII"を"LCAC"(エル・キャック)とかに載せて来たに違いない。"LCAC"とはエア・クッション型揚陸艇の事で、上陸するためのホバークラフトのようなものだ。"ザクII"の水中機動力の低さは身に沁みて分かっている。

 

発砲音。"ロクイチ"の155mmのものだ。もしかして軍曹か?

 

「軍曹!聞こえるか!?」

《……こちらブラボー1、伍長と乗っている……》

 

やっぱりか、前もあったな。"嫌な予感"か………。

 

「敵は!?"ザクII"か!?」

《……違…ザザ…新が…………ザザザザー》

 

ミノフスキー粒子濃度が上がった。もう通信は不可能だ。レーザー通信をしようにも場所が分からん。クソっ!

 

「軍港へ……急げ、急いでくれ……」

 

どのみち"ザクII"相手に"ロクイチ"では危険だ。基地守備隊も動いているとはいえ油断は全く出来ない。

 

「! 何だアイツは!?"ザクII"じゃない!?」

 

目にしたものは"茶色いビヤ樽"に手足をつけたような奴だった。"ビヤ樽"がこちらに気づき振り向く。

やけにトロくさい。なんだコイツ?

敵は今振り向いた"ビヤ樽"に、青く、形の違う"ザク"が2機の合計3機だ。速攻で片付ける!

 

「まずはそこのデブからだ!!」

 

"ザクマシンガン"をフルオート射撃。動きの遅い"ビヤ樽"には避けられないだろう!

 

「な!?」

 

"ビヤ樽"は"ザクマシンガン"を受けつつもそのままこちらへ振り向いた。ややぎこちないが、殆ど効いていない!?

 

ビーッ!!コクピット内に警戒のアラームが鳴り響く。

 

"ビヤ樽"が、光った気がした。

 

直感に身を任せ、思わず回避行動をとる。その瞬間に、元居た場所へ黄色やオレンジがかった激しく明滅する光の束が通り過ぎた。

 

「め、メガ粒子砲だと!?バカな!?」

 

MSサイズでメガ粒子砲を積むだと!?そんな事……。

 

しかし現に"ザクII"のセンサーはそれをメガ粒子砲だと判断していた。それにやや巻き込まれた右腕のダメージリポートは、メガ粒子砲によるダメージとなっている。

しかし……

 

「出力が低い、のか……」

 

確かに命中した。しかし、右肩のシールドと"ザクマシンガン"の銃口(マズル)をやや溶かしたのみの被害で済んでいた。"ザクマシンガン"はともかく、シールドは貫通すらしていない。着弾も散らばる様にだ。つまり戦艦などのものとは違い、低出力かつ収束率もそう高くはなく、発射速度や、ビームそのものの速度もそこそこの様だ。それでも十分脅威ではあるが……。

 

また再チャージも遅いようだ。そいつは今近くの"ロクイチ"を撃たず、砲撃を手で庇っている。それでも155mmですら歯が立たないようだった。

 

「……ヤらなければ……勝機は、十分にある!!」

 

 

 

『戦場は進化の場だ。戦場は常に流動し、あらゆるものを巻き込んで行く』

 

 

まるで、それは門番のように立ち塞がっていた………………




"ビヤ樽"ことゴッグの登場です!

やっとガンダムらしく、ザク以外のMSが出てきました!
こっそり水中用ザク出て来てますけど。

ゴッグの詳しい登場時期は不明かつ、ドムのパーツを一部使っているなんて設定もありますが、漫画、ガンダムレガシーのポートモレスビー奪還作戦において五月末と書いてあったので登場です!!

初の純水陸両用MSで、水中用ザクがあまりにもアレなのであらゆる欠陥を持ったまま見切り発車的に生産が強行されたともあります。俺は好きなんですけど。

さて、少尉は重MSで有名なツィマッド社のこいつ相手にどう戦うのかお楽しみに。

この作品では、ビームは光速ではありません。粒子加速具合にもよる上、発射前に加速、収束中の粒子の漏れ出した光がマズルから見える設定です。そのまだダメージの無い、発射直前の光と、振り向きロックオンされ攻撃されると身構えた結果ギリ避けたと解釈して欲しい……です。そうでないと ざんねん、わたしのぼうけんは ここでおわってしまった!!に………。

船については、ソロモン級以外は設定にある船です。名前はオリジナルとなってしまいました。殆ど沈んでしまっている上使われない為名前も少ないからです。そこが残念かつまた残念なネーミングセンスです。なんやソロモンて。名前募集したいくらいです。てゆーかまだマシなの思いついたら変わってると思います。

次回 第二十一章 パナマ・ベース防衛戦

「……なんて奴だ!!」

お楽しみに!!

追記 なんと、新しいカッコイイ名前を頂きました!!
勉強不足で被ってましたイオージマ。お恥ずかしい限りです。
そして!
ソロモン(笑)級改めキーロフ級に!!ありがとうジーラインさん!!感謝感激感動の嵐です!!

ポセイドンはわかる人には分かる?と思います。因みに大日本技研はガンダムワールドにはないと思います。そもそも本来は大日本技研を指す言葉ですし…ただ使いたかっただけだす。すみません。

感想、評価お待ちしております。出来れば感想を。素人なのでどこがダメかを書いて欲しいです。

ではでは。

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