機動戦士ガンダム U.C. HARD GRAPH 名も無き新米士官の軌跡 作:きゅっぱち
なので書いている土地の特色などのソースはほとんどがインターネットなどです。
間違っていたらすみません。
移動速度がアホみたいに早いのは、そこらへんもあります。
爆撃機、という飛行機がある。
大型で鈍重であるが、その有り余るペイロードを活かし爆撃を行う事に特化した飛行機である。
地球連邦軍にも、"デプ・ロッグ"重爆撃機というものがある。
全幅31.5mという超大型だ。
だが、"ヤツ"は違った。
それは、空を飛ぶ空母だった。
U.C. 0079 5.25
風が心地よい。青い空が目に染みる。今日も晴天、気温がヤバい。順調だ。いたって順調だ。
現在我々は"パナマ・ベース"を目指し中南米を南進中だ。
ゲリラの集落を潰してからは、戦闘など一度もない。とっくにジオンの勢力圏内を抜け出し、中南米の航空優勢権はこちらにある。戦闘が起こる方が異常なのだ。
「あ、少尉。ここにいらしたんですか。どうしたんです?」
「……いや、ただ、少し風に当たりたいと思ってな…」
コンボイ上部ハッチからひょっこり顔を出したのは伍長だった。ゲリラに捕虜にされた後、やや精神にダメージを負ったが、最近はうなされる事も無く順調に回復へ向かっている。いい傾向だった。
「危ないですよ?!落っこちたらどうするんですか!このトラックはかなりの速度で走ってるんですよ!?」
「いつもの事だしなぁ…」
「それでも危ないです!!」
「…伍長も前ここで騒いでたじゃん…」
「…あ、あれは……」
「…あれは?」
「……わ、若気の至りです!!」
「………」
意味が分からん。そして俺にどうして欲しいんだ?認めたくないものだな。若さゆえの過ちというものを……。
「……さよか」
「うう、なんかもやもやします」
「だったら、そこから飛び降りればスッキリするんじゃないか?」
飛ぶように過ぎて行く景色を指さす。いやー、いい眺めだわ。なんかカラフルな鳥飛んでるし。食えるかな?アレ?
「はい!分かりま……せんよ!!死んじゃいますよ!」
「大丈夫だろ、木綿の様に丈夫な伍長なら行けるさ。前も"ザクII"にぶん投げられたけど平気だったじゃん?」
「行けませんよ!あの時も全然平気じゃなかったじゃないですか!?後何ですかその秀吉みたいな評価!?」
何で分かんだよ。
ま、いつも通りの伍長に戻ってよかっt………?
今、何か光ったか?
「……少尉?」
「ちょっと待て。おやっさん、聞こえます?」
《どした?伍長が落ちたか?》
「いえ、それよりもレーダーに異常はありませんか?」
《……ややノイズが出始めてる。どうしてだ?》
「……いま5時方向、上方50°、何かが光りました。……ジオンの航空機かもしれません」
《……続けろ》
「ミノフスキー濃度が高まっているのは、核融合炉を積んでいる証です。それに、この距離から捕捉出来ました。………かなり大型の可能性があります」
《……どうする?》
「……確認出来るまで、ジャングルに隠れましょう。コンボイを停止させ、エンジンカットを」
《了解した》
通信を切る。微かに音まで聞こえ始めている。コンボイはスピードを緩め、ジャングルの下へ。エンジンがぶるりと震え、完全にストップする。
「………少尉……」
「……なんだ伍長?」
「……2人きりなのにお電話ですか?」
「…無線だけどな。必要があったからな。どうしてだ?」
「……もういいです」
プイとそっぽを向く伍長。これ何とかならんかね、ホントに。優先順位を考えてくれ。つーか何がもういいんだよ?
「……少尉……」
「軍曹か、どうした?」
「……整備班長から、聞いた……これ、双眼鏡…」
「ありがとう。伍長、おやっさんを呼んできてくれ。全員で何か確認したい………」
「……はーい…」
「……頼んだ……」
「俺からも。頼んだぞ?」
「! はい!行ってきます!」
扱いやす!流石軍曹。扱い方が分かってる。
ドタバタと降りて走って行く伍長を尻目に、双眼鏡を覗く。だんだんシルエットがしっかりしてきた。ありゃ連邦の飛行機じゃない。それに………デカい!!
「……軍曹、ありゃなんだ?爆撃機にしちゃデカすぎないか?」
「……分からない。だが……何故、飛べている……?」
「おやっさん呼んできたよ!!」
「どれ、その飛行機ってヤツを………なんだ、ありゃ?」
「私にも見せて下さい!」
「ほい」
「どれどれ……わぁ!大っきくてカッコいいですね!」
「……そうか?」
「……ミノフスキー粒子濃度上昇中。ヤツからだな」
「……ジオンマーク、視認。………敵の、超弩級爆撃機……?」
"紫の爆撃機"は、かなりの高度を悠々と飛んで行く。しかし、こちらへ近づくにつれ少しづつ高度を落としてきているようだ。
「「……………」」
デカい。デカすぎる。"紫の爆撃機"は、全幅50mはありそうだった。胴体は大きく膨らみ、飛べる事がおかしい設計だ。やはり、ジオン製のようだ。
空が陰り、影ができる。巨体が太陽を遮り、地上にその大きな影を落とす。それを、少尉はただ無言のまま見送るしかなかった。
「「……………」」
計16発のエンジンの噴射炎を煌めかせ、"紫の爆撃機"が飛んで行く。その姿は、今だに劣勢に置かれ、ズタズタになっている連邦軍をあざ笑っているかのようだった。
U.C. 0079 5.28
「こちらアルファ1。
《……了解。
コクピットのモニターには対空に調整された合成開口レーダーが"ギガント"の機影を捉え、その画像が表示された。
合成開口レーダーとはレーダー波の反射波から物体の形状をコンピューターのデータ処理により画像として再現するものである。そのため解像度には限界があり、かつレーダー波を使用する為ミノフスキー粒子の影響を大きく受けてしまうが、"ギガント"の独特な形状は間違えようが無かった。
"ザクII"のコクピットで深呼吸する。現在、少尉の乗る"ザクII"は片膝を着き、トラック群から約3km地点で待機している。武装は、MMP-78"ザクマシンガン"ロングバレル改造型、"ザクバズーカ"、"シュツルムファウスト"、"フットミサイル"という重装備だ。正直全然動けない。
モノアイが動き、目標、"ギガント"を捉える。
この数日の確認により、ジオン軍の超弩級爆撃機、通称"ギガント"は北米から南米"ジャブロー"方面へ向かって飛ぶという事が分かっている。"ジャブロー"を爆撃しているようだ。
地球連邦軍本部が叩かれているのだ。看過するワケにはいかない。そして、急遽、"ザクII"による"ギガント"撃墜作戦が練られ、実行に移されたのだ。
「こちらアルファ1、エンゲージ。"ギガント"視認、数は3。これより、"ザクバズーカ"による狙撃を行う」
少尉は"ザクII"を操縦、膝立ちのまま上空へ向け"ザクバズーカ"を向ける。"ザクマシンガン"では距離が遠い上、敵の装甲は未知数だ。弾数が残り心許ないが、"ザクバズーカ"を使う事になった。
「…………」
精密射撃用ヘッドスコープを引き出し、上空の"ギガント"に狙いをつける。目標をロックオン、それをFCSが調整、照準がグリーンからレッドへ変わる。
ピピッという軽いビープ音と共に、視界の端に
「……
操縦桿のセーフティを解除、トリガーを引く。大きな衝撃と共にロケット弾が発射され、目標に向かって飛ぶ。
轟音。
土手っ腹に280mmの弾頭を喰らった"ギガント"がよろめき、そのまま火に包まれて行く。高度が目に見えて落ちて行き、その大きな翼が折れ、爆散する。
「っしっ!!」
1隻撃墜。もう1隻へ、と思った瞬間、信じられない事がおきた。
「……せ、戦闘機だと?!」
何と"ギガント"の翼から、次々と戦闘機が射出されて行く。その数およそ16。おいおい、冗談だろ?飛んでること自体が冗談みてーな上に、空中空母だぁ!?なんつーもんを作りやがったんだ!?
つーか翼の中が格納庫って………カリーニン7かよテスト飛行中に墜落でもすりゃ良かったんや。
それらが射点を割り出し、少尉の"ザクII"へ殺到する。かなりのスピードだ。
「くっ!こいつを喰らえ!!」
"フットミサイル"を近接信管でセット、斉射する。膝をスイッチ、もう一度斉射。戦闘機は散開しそれを避けようとするも、4機の戦闘機が火に包まれ、きりもみしながら落ちて行く。
"フットミサイル"をパージ、"ザクバズーカ"を置き、"ザクマシンガン"を構え、フルオート射撃。1機を捉えるも、それだけだ。
「! クソ!あんな形してる癖にヤるな!」
攻撃を掻い潜った戦闘機が、接近し機銃を掃射する。ジャングルに身を隠し回避し、反撃しつつ舌を巻く。なんだぁりゃ?なんかアヒルのオマルみてーな形しやがって。
しかし"ザクII"はそいつの速度をマッハ4以上と捉えていた。ジオン脅威のメカニズムだ。
「! クッソ!!上を取られては……」
ミサイルが飛来し、それをステップで避ける。既にミノフスキー粒子濃度は戦闘濃度だ。もはやミサイルはロケット弾と変わらない。
"ザクマシンガン"の弾倉を交換、
「
散弾が入った弾頭が発射され、ある程度飛んだ後空中で小型爆弾が散らばり一つ一つが小爆発を起こす。それに戦闘機が次々と巻き込まれ、はたき落とされて行く。
マガジンを交換、再び射撃。戦闘機を落とす。
《少尉!敵が逃げるよ!!》
伍長の通信で"ギガント"を見る。"ギガント"は上空で大きく旋回し、元来た方へ戻りつつあった。1隻は既に180°回頭し、戦域を離脱しつつある。それに戦闘機がついて行く。
「……後ろのヤツを狙う!」
《しかし、バズーカを取りに行く暇は……》
「こいつがある!」
腕を腰の後ろに回し、"シュツルムファウスト"を取り出す。
両手で、"シュツルムファウスト"を構え、回頭した"ギガント"の正面へ立つ。
《大将!そいつの射程は長くは無いぞ!!》
そう、"シュツルムファウスト"は"ザクバズーカ"より口径が大きく、小型であり取り回しが良く、その単純な構造上コストも安い使い捨てロケットランチャーなのだが、その分命中率、射程距離では劣る。"ザクバズーカ"のようには行かないだろう。しかし、これ以外に"ギガント"に有効打を与えられそうな武器は無い。
「……なら、こうだ!!」
フットペダルを踏み込み、スラスターをフルスロットルで吹かす。急激な加速によりGがかかり、視野が暗くなり狭くなる。G-LOCによるブラックアウトだ。同時に込み上げる強烈な吐き気を堪えつつメインスクリーンを睨みつける。
少尉の"ザクII"が持ち上がり、空中へその身を躍らせる。脚を振り姿勢制御を行い、"シュツルムファウスト"を腰だめで構える。
スラスタージャンプで近づくと同時に、機体その物を加速させロケットの1段目として用いる事で射程、威力を底上げする。それは上手くいったようだ。
「ジ・エンドだ!!」
放たれた"シュツルムファウスト"は"ギガント"正面に位置するブリッジに突き刺さり大爆発を起こす。ランチャーチューブを投げ捨て、綺麗なアーチのような放物線を描いた少尉の"ザクII"が自由落下に移り、着地のためスラスターを吹かし減速、危なげなく着地する。
その上を火を吹く"ギガント"が通り過ぎ、少尉の"ザクII"の背後で空中分解、爆散する。飛び散った破片が装甲を叩く乾いた音がコンバット・ハイになっていた少尉を落ち着かせる。
それを見届け、少尉は通信を開く。激しい戦闘機動により身体にかかった負荷は大きく、既にクタクタだった。
「こちらアルファ1、目標を2隻撃墜。1隻は逃がした。回収頼む」
《こちらベース。了解した。その場で待機されたし。
良くやったな大将、シップキラーだ》
「………もう、ヤりたくはありませんね……」
相手が戦闘機じゃなくてMSだったら、ヤられてたな。
つくづく、幸運だな。
モノアイがコンボイを捉え、メインスクリーンにピックアップする。手を振る伍長、整備兵達が見える。
「……また、今日も生き残れたな……」
パナマは、直ぐそこだ………。
『簡単だ。目標を照準に入れトリガーを引く。それだけだ』
上がる煙が、天へ登って行く…………………
少尉、戦果がヤバい。
それにしてもガウとかロマンだよな。空中空母だわ。マクロスだわ。いや、アームドか?まぁどーでもいい。
弩級は船の大きさを表す単位?ですが、ガウにも適応させていただいてます。
機体そのものを加速させ、ロケットの一段目にする、というアイディアは、メタルギアソリッド3というゲームにでてくる核搭載戦車、シャゴホットのアイディアを参考にさせてもらいました。
でも、ガウって、コアブースターインターセプトタイプにガトリングで落とされてたよね。
ザクマシンガンで良かったんじゃ…………?
散弾は遠吠えは落日に染まった、で信管距離?まで設定していました。ミノフスキー粒子下ではVT信管?とかいう近接信管すら使えない様です。でもユニコーンでは作動してました。ソンネンは真下の敵を撃つためいちいち設定したのかもしれません。信管には安全距離がありますし……そこらへんは分かりません。すみません。
次回 第二十章 パナマの海
「なんか、不思議な感じがします」
お楽しみに!!