第28話
風音「ふぅ、バイトも楽じゃないね…」
ことり「でも風音ちゃん初日なのにすっごく出来てるよ」
風音「接客じゃなくて厨房だからだよ、ここに書いてるレシピ通りに作るだけだしね」
ことり「ことりはお菓子作りなら得意なんだけどな~」
オープンキャンパスが無事に終わり、廃校の先延ばしも発表されてから数日後
とある理由でことりんのバイト先にお世話になることになったのだ
遡ること2日前、急に理事長に呼び出された風音は放課後に理事長室を訪れた
風音「失礼しまーす」
理事長「急に呼び出してごめんなさいね」
風音「いや、それはいいんですけど…どうしたんですか?」
理事長「今回のお願いは完全に私用だから断ってくれていいのだけどね」
風音「はい」
理事長「ことりの様子を探ってくれないかしら」
風音「はいっ!?」
理事長「あの子ね、私には隠してるみたいなのだけどメイド喫茶でバイトを始めたらしいのよ」
風音「ふむふむ、それで?」
理事長「変な場所じゃないか潜入して探ってくれないかしら」
風音「ことりんのことだから変な店ではないだろうけど…」
理事長「それはわかってるけど不安なの!引き受けてくれないかしら」
風音「わかりました、でもあんまり期待はしないでくださいよ…」
理事長「ありがとう、助かったわ」
風音「じゃあ風音は生徒会の仕事もあるんで失礼しますね」
理事長「ええ、本当にありがとね」
風音「ふぅ…」
結局次の日に生徒会の仕事を数日分終わらせて、この店の面接を受けたのだ
すると即採用で次の日からシフトインとなった
ことり「まさか風音ちゃんがくるとは思ってなかったよ」
風音「ちょっとね、いま欲しいものがあってそれを買うためにバイトをね」
嘘はついてない、欲しいものがあって、それが少し高いのも事実だ
ことり「店長には男の子だって言ってるの?」
風音「言ってるよ、流石に雇い主だからね」
店長には面接のときに、自分が男であること、決して男とばれちゃいけないこと
あとあまり人前に出たくないので厨房オンリーであることは話している
ことり「メイドじゃなくて執事さんなのにね~」
風音「普通はそのはずなんだけどね、そろそろことりんは休憩の時間だよ」
ことり「あっ、うん!休憩の時間はちょっと用事があって少し出てくるね」
風音「わかった、なるべく早く戻ってきてね」
ことり「うん!」
ことりんが休憩に入ると大学生のバイトさん、風音、店長の3人になった
なんだか色々あったらしく人手不足らしい、風音が翌日からシフトに入ったのもそれが原因だ
店長「夏本さん、調子はどうだい?」
風音「順調ですよ、これなら厨房も一人でなんとかなりそうです」
店長「それはありがたい、本当に人手不足だからね、出来れば夏本さんにもホールにホールもやって貰いたいんだけど」
風音「それはなしですよ店長」
ここの店長はかなり若い人で多分20代前半ぐらいなんじゃないかって思ってる
たまに店長目当てで女性客が来るくらいには整った顔立ちだ
風音「なんで人手不足に?前まではことりんもそんなにシフトに入ってなかった気もするんですけど」
店長「いやー、人手不足前は南さんにはスクールアイドル優先でやって貰ってたんだけど、南さん居ない時に来たお客さんがミナリンスキーちゃんは?ミナリンスキーは?って聞いてくる人が何人も居たんだよ、それを毎日言われ続けて流石に堪えたみたいで皆やめちゃったんだよ」
風音「ミナリンスキー恐るべし…」
店長「でも南さんは稼ぎ頭だしなるべくしたいようにさせたいんだけど…」
風音「人手が居ないとそれすら叶いませんね」
店長「誰か働いてくれる子のあてってある?」
風音「風音は友達少ないですから…」
店長「うん、ごめん」
風音「ほらほら、女性のお客さんきましたよ、対応してください」
店長「おっと、じゃあ厨房は任せたよ」
風音「ラジャー」
店長は背が高いな…
あれ本当に風音と同じ男性か?いや、風音の160より小さな人だって居るはずだ
だから安心して店長に怨念を送っておこう
風音「そろそろ、お客さんが少なくなる時間かな?」
店長「そだねー、じゃあミヤケさんはあがっていいよー」
ミヤケ「お疲れ様でーす」
風音「はい、お疲れ様です」
ミヤケさんとは大学生のバイトさんのことだ
でもまだことりん帰ってきてないよ?
風音「じゃあ店長はホールお願いしますね!」
店長「了解!って誰が楽しくて野郎が接客するメイド喫茶にお客さんが来るんだよ!」
風音「風音も野郎です!」
店長「そう言わずにさ、南さんが帰ってくるまでの間でいいから」
こいつ…図ったな…
風音「くっそ!給料上げて貰うからな!」
店長「がんばれ~」
嫌々ながらお客さんを出迎えるべく入り口へと移動した
入り口の近くまで行くと階段を上る音が聞こえてきた
風音「さっそく来たか…」
こうなったら全力の接客で答えてやる!
風音「いらっしゃいませ、ご主人様!」
穂乃果「やっほー…」
まさかの知り合いなんて聞いてない…