春休みが終わり文月学園は、今日から新学期を迎える。文月学園の生徒たちはそれぞれ不安と期待が入り混じった表情で、学園の校舎に向かっていく。入り口では教師が生徒の一人一人に封筒を手渡している。
封筒を受け取ると自信満々に封を開けるもの、なかなかあけることができないもの、急に祈りだすものまでいる。この封筒の中身は、振り分け試験の結果、どのクラスに所属するかが、書かれているからだ。雄たけびをあげながら、自分の教室に向かう者もいれば、肩を落とし静かに行く者もおり、かなり対照的な光景である。
校舎のチャイムが鳴り始めた頃、吉井明久は通学路を全速力で駆けていた。
明久「不味い!!チャイムが聞こえた。急がないと!!。」
明久は校門を抜け、校舎の入り口に着いた。そこでドスのきいた声に呼び止められた。
???「吉井、遅刻だ。」
明久「あ、鉄じ・・・西む・・・鉄人先生。おはようございます。」
明久は軽く頭を下げて挨拶をした。
鉄人「吉井、お前はHRを保健室で過ごしたいのか?」
明久「ははは、嫌だな~西村先生、そんなジョーク「では歯を喰いし」申し訳ありませんっ!!」
鉄人が攻撃の構えを取り始めたので、すぐさま自分の非を認め鉄人に謝罪する。うん、やっぱり日本語って難しいや。
鉄人「まぁいい、頭をあげて早くこれを受け取れ。」
そう言って鉄人は僕に封筒を手渡す。中を開ければ案の定Fクラスと書かれた紙が入っていた。
試験を受けなかったので分かっていたが、こんな呪いの文字見たいな書き方をしなくてもいいんじゃないだろうか。
明久「(ここでいろいろ考えても仕方がないし早く教室に行こう。)」
封筒をしまい校舎の中に入ろうとすると鉄人が声をかけてきた。
鉄人「吉井。振り分け試験の件については聞いている。結果的にFクラスになってしまったが、お前のしたことは間違ってないし、誇っていいことだ。残念ながら振り分け試験を特別にもう一度させてやることはできないがな。」
明久「(あれ?もしかして褒めてくれてるのかなぁ?)」
そんなことを考えながら立ち止まる。
鉄人「なにを立ち止まっている、急いで教室に行け。」
そう言われて僕は自分の教室に向かうため校舎の中に入った。
階段を上がり、教室のあろ3階の廊下に辿り着くと僕は唖然としてまたもや立ち止まってしまう。
明久「凄い!!なんなのこの教室。ものすごく大きい!!」
目の前の教室は通常の5倍はくだらないであろう大きさだった。
明久「たぶんこれがAクラスだよね。少し気になるし覗いてみよう。」
大きめの窓があったので覗いてみると、教壇の上に眼鏡をかけた知的な女性が立っていた。
明久「(あの人は確か学年主任の高橋先生だ。)」
高橋先生「まずは設備の確認をします。ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシート、その他の設備に不備のある方はいますか?」
普通の高等学校ではありえない設備の確認である。
明久「ここまで凄いとさすがAクラスとしか言いようがないよね・・・」
高橋先生「教科書や参考書、冷蔵庫の中身もすべて学園側から支給されるので、他にも何か要望があれば遠慮せず申し出てください。」
明久「驚いたな~。こんな待遇が待っているからみんな頑張って勉強できるのか・・・」
高橋先生「では次にクラス代表を紹介します。霧島翔子さんは前へ。」
翔子「・・・はい。」
そういって答えたのは黒髪で整った顔立ちをした綺麗な女の子だった。
翔子「・・・霧島翔子です。よろしくお願いします。」
そう言って霧島さんは自己紹介を終えた。
高橋先生「では次は窓側の生徒から・・・・・・」
霧島さんが席に戻るのを見届けると、僕はFクラスへ向かうため、歩き出した。
しばらく歩き、僕は『二年F組』と書かれたプレートの前で、立ち尽くしていた。見た目はどう見ても廃墟にしか見えない凄惨な教室に呆然とする。しかし、いつまでも立ち止まっているわけにもいかないので、Fクラスの扉を開けた。
明久「すみません。ちょっと遅れちゃいました♪。」
???「早く座れ、うじ虫野郎!」
扉を開けた途端に掛けられた言葉は突然失礼な罵倒だった。声のした方に目を向けると、僕の悪友である坂本雄二が教壇に立ちながら僕を見ていた。
明久「・・・雄二、何やってるの?」
いきなりの罵倒に対する怒りも忘れ、雄二に尋ねる。
雄二「先生が遅れているみたいでな、代わりに教壇に上がってみた。」
明久「なんで雄二が代わりに上がるの?」
当然の疑問を口にする。すると雄二はニヤリと口の端を釣り上げ言った。
雄二「俺がFクラスの代表だからな。つまり、お前を含めこのクラス全員が俺の兵隊というわけだな。」
そう言って雄二はふんぞり返りながらFクラスの生徒を見下ろしていた。
雄二「とりあえず席に着いたどうだ。特に決まってないと思うぞ。」
明久「席といっても卓袱台と座布団しかないよね・・・。さすがはFクラスだね。Aクラスとは、天と地以上の差を感じるよ。これが格差社会ってやつだね。」
あまりにも粗末な設備に僕のテンションは最悪だ。さっきAクラスを見てしまったことも原因だろう。そしてそこに雄二が追い打ちをかけてくる。
雄二「意外だな明久。お前が格差社会なんて難しいことを知っている(笑)とはな、意外だった。」
明久「キサマッ!!喧嘩を売ってるんだな!!そうなんだな。良いだろうかってやる、表に「すみませんが席についてもらえますか?HRを始めますので。」」
後ろから担任の先生らしき声が聞こえたので、雄二との決着は次の機会にし、僕と雄二は適当な席に座った。
福原先生「えー、おはようございます。2-F組担任の福原慎です。よろしくお願いします。」
「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出てください。」
Fモブ「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってません!!」
福原先生「我慢してください」
Fモブ「せんせー、俺の卓袱台、足が折れて「我慢してください」できるか――――――!!」
福原先生「冗談です。木工用ボンドが支給されてるので、各自で修繕してください。」
Fモブ「せんせー、窓が割れていて風がさむいです。」
福原先生「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請をしておきます。ですが皆さん。必要なものがあれば極力自分たちで調達するようにしてください。」
ここまでくると僕も現実逃避したくなってくる。
福原先生「では、廊下側の人から自己紹介をお願いします。」
先生の指示で、順番に自己紹介が行われる。
土屋「・・・土屋康太」
一言、それだけで自己紹介を終えたのは1年のころからの友人、土屋ことムッツリーニだった。
秀吉「ムッツリーニは相変わらずじゃの。」
ふと隣から秀吉の声が聞こえたので振り向いた。
明久「おはよう秀吉。」
秀吉「おはようなのじゃ明久。今は自己紹介中ゆえ話は後にせぬか?」
明久「そうだね。ゴメン。」
残念だけど秀吉の言うとおり僕は話を切り上げた。
島田「島田美波です。ドイツからの帰国子女なので日本語の読み書きは苦手です。趣味は吉井明久を殴ることです☆」
僕に手を振りながら自己紹介をしたのは、去年からのクラスメートの島田さんだ。僕を殴ることが趣味とは・・・彼女はもう僕の天敵だ!!
少し冷や汗をかき、僕の番が来た。
吉井「吉井明久です気軽に『ダーリン』と呼んでください♪」
「「「「「「「「「「ダァァーーリーーン!!!」」」」」」」」」」
吉井「すみません。今のは無しでお願いします。」
場を和ませようとしたけど逆に吐き気が止まらなくなってしまった。Fクラス恐るべし。
しかしそれも次の瞬間吹き飛ぶ。
秀吉「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。」
あぁ、なぜだろう。秀吉を見るだけで癒される。この男だけのムサイ教室にたった一人の女子だからだろうか?
吉井「(あっ、違うか。たしか秀吉のお姉さんもFクラスのはずだから女子は木下姉妹の2人だった。)」
島田「(なぜかしら。急に吉井を殴りたくなったわ)」
島田さんから殺気を感じるが気にしないでおこう。それが一番良いはずだ。タブン・・・
吉井「(でもおかしいなぁ。お姉さんが見当たらないや。もしかして、また体調不良で休んでるのかな。後で秀吉に聞いてみよう。)」
その時、教室の扉が開き誰かが入ってきた。
吉井「(もしかして木下さんかな?)」
そう思い視線を向ける。
???「あの、遅れてすいま、せん・・・」
福原先生「ちょうど良かったです。今自紹介をしているところなので姫路さんもお願いします。」
姫路「は、はい。あの、姫路瑞希といいます。よろしくお願いします。」
姫路さんが自己紹介を終えると男子生徒の一人が手を挙げた。
Fモブ「姫路さん。質問いいですか?」
姫路「あ、は、はい。なんですか?」
Fモブ「なんでここにいるんですか?」
たしかにそれはここにいる人たち全員の疑問である。しかしもう少しソフトな言い方もあるだろうに・・・やはりここはFクラスであった。
姫路「その・・・振り分け試験の最中、高熱をだしてしまいまして・・・・」
試験中の途中退席は0点となるので、その言葉を聞き、クラスのみんなは納得したかにみえたが
Fモブ「そういえば俺も熱の問題が出たせいでFクラスに。」
Fモブ「ああ、化学だろ?あれは難しかったな。」
Fモブ「俺は弟が事故にあったと聞いて、実力が出せなくて」
Fモブ「黙れ一人っ子」
Fモブ「前の晩彼女が寝かせてくれなくて」
Fモブ「今年一番の大ウソありがとう」
バカばかりだった・・。これは姫路さんを少しでも元気づけるためのジョークであると信じたい。
姫路「え、えーと。一年間よろしくお願いします。」
自己紹介を終え、姫路さんは僕と雄二の間の席に着いた。やはり緊張していたのか、安堵の息を吐いて卓袱台に突っ伏した。
雄二「姫路」
雄二は唐突に姫路さんに話しかけた。
姫路「は、はい。何ですか?えーっと・・・」
雄二「坂本だ。坂本雄二。よろしく頼む。」
姫路「あっ姫路です。よろしくお願いします。」
雄二「姫路、体調の方はまだ悪いのか?」
明久「それは僕も気になる。姫路さん体調はどう?」
姫路「よ、吉井君!?」
姫路さんは僕の顔を見て急に驚く。こんなリアクションされると何気にショックだなぁ。
雄二「すまんな。明久がブサイクで驚いただろう。」
雄二はとことん僕とやりあいたいらしい。
姫路「そ、そんな。目もぱっちりしてるし、顔のラインも細くて綺麗だし、全然ブサイクじゃないですよ!むしろその・・・」
雄二「そう言われるとそうかもしれんな。俺の知人にも明久に興味を持っているやつがいた気がする。」
明久「雄二!!!それはホント!!!誰な「そ、それって誰ですか!?」」
姫路さんが僕の声を遮って雄二に詰め寄る。
明久「(やっぱり女の子ってこういった恋バナとかすきなのかな?)」
雄二「確か久保利光だったかな」
雄二の口から発せられたのはどう考えても男の名前であった。
明久「・・・・・・・・ぐす」
雄二「泣くな明久。安心しろ、半分冗談だ。」
もう半分とは何なのか気になるが、きかない方がいいきがしてきたのでやめておく。
雄二「話を戻すが体調は大丈夫なのか姫路?」
姫路「あ、はい。もうすっかり平気です。」
福原先生「はいはい、皆さん私語はやめて静かにしてください。」
福原先生は、教卓を叩いて警告してきた。すると「バキィッ」と音がしたと思ったら教卓がバラバラに崩れ落ちてしまった。
福原先生「え~・・・・替えを用意してきます。少し待っていてください。」
先生は教室から出ていった。
先生がいなくなったので僕は秀吉にお姉さんのことを聞くことにした。
明久「ねぇ秀吉ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
秀吉「うむ?何じゃ聞きたいこととは・・・もしかして姉上のことかの?」
明久「うん、そうだよ。教室を見渡しても見当たらないし・・・!!もしかしてまだ具合が悪いの?」
僕なりに木下さんがいない理由を考えていると、悪い予感がして思わず聞いてしまう。
秀吉「体調の方はもう大丈夫じゃ、今日いないのは別に理由があってのう。」
明久「別の理由?聞いてもいいかな?」
どうやら体調の方はいいらしい。でも別の理由とは何だろう?あらためて秀吉に聞いてみる。
秀吉「理由はいたって簡単での。明久、お主じゃよ。」
明久「僕が原因!!どうして?」
どうして僕なんだ?木下さんとはあれから会ってもいないはずだけど・・・
秀吉「この前の件で姉上は、身内であるわしや母上だけでなく、関係無いお主にまで迷惑をかけてしまったであろう。その結果お主もFクラスじゃ。そのことに関して姉上もかなり悩んでおってのう。お主にどう詫びたらいいかわからんそうじゃ。それゆえ顔を会わせづらいようじゃ。まさかわしも学校を休むくらい思い悩むとは思わなんだがな。」
明久「まさかそこまで悩んでたなんて、僕は別に気にしてないんだけど・・・」
秀吉「わしも姉上にはそのように説明したのじゃがな・・・なにぶん根本的な部分で姉上はまじめで頑固で意地張りでのう。なんとか明日には登校させるゆえ、心配は無用じゃ。」
明久「(つまり木下さんは、自分のせいで僕がFクラス入りしてしまったと自分を責めているのか)」
木下さんに図らずも迷惑をかけているなんて僕は考えもしてなかった。そんな彼女のために自分には何ができるのだろうか。ふと姫路さんが目に入った。姫路さんも木下さんと同じで体調不良の結果Fクラス行きとなってしまった。本来なら2人ともAクラスに行くだけの力を持っていたのに・・・
僕は普段使わない頭を精一杯働かせ考える。
明久「(木下さんの罪悪感を解決し、なおかつこの状況を解決できる方法・・・・・!!)」
問題が一気に解決できる案を僕は見つけた、思いついたら行動あるのみ。
明久「秀吉、雄二と話したいことがあるんだけど一緒にきてもらってもいい?秀吉のお姉さんにも関係のあることだから。」
まず僕は秀吉に同行を求めた。秀吉は了承してくれたので、雄二のところまでいき、話しかける。
明久「雄二。ちょっといい?」
雄二「ん?何だ明久、秀吉もか?」
明久「ここじゃ話にくいから、廊下でいいかな?」
雄二「別に構わんが。」
そう言って立ち上がった雄二と秀吉と一緒に廊下にでた。
雄二「それで、何なんだ話とは?」
明久「試召戦争を起したいんだ。できればAクラスに。」
僕は簡潔に自分の考えを伝える。
雄二「ほぅ、まさかお前の方から試召戦争をやろうなんて言い出すとはな。なにか理由でもあるのか?」
明久「実は秀吉のお姉さんに関係することなんだ。秀吉、雄二に振り分け試験の時とお姉さんの事情を話してももらっていいかな?」
秀吉「姉上の件か?わかったのじゃ。」
秀吉は事の経緯を雄二に説明する。
雄二「なるほど。姫路だけでなく木下優子までも体調不良でFクラスというわけか。」
明久「そうなんだ。それに木下さんは、僕を巻き込んでしまったことを気にしてるみたいで・・・試召戦争で勝利して設備が良くなれば、木下さんの僕に対する罪悪感を少しは減らせるんじゃないかと思ったんだ。」
秀吉「・・・明久お主は。」
明久「それに木下さんも姫路さんも本来はAクラスに行けたはずなのに、こんな廃墟みたいな教室で1年を過ごすなんて気の毒だよ。あの2人はもっと良い設備のある教室で過ごさせてあげたい。だから協力してほしい!!」
雄二「いいだろう。俺も初めからAクラス相手に試召戦争するつもりだったしな。」
意外だな、雄二はあまり教室の設備には関心の無い奴だと思ってたのに。秀吉も同じこと思っていたようで雄二に尋ねていた。
秀吉「以外じゃな。お主も設備に不満があるのか?」
雄二「別におれは設備に興味なんかないさ。ただ世の中学力がすべてじゃないことを証明してみたくてな。」
明久・秀吉「????」
雄二「姫路に加え木下優子もいるならAクラスを倒す策も――――――おっと、先生が戻ってきたようだ。教室に戻るぞ。」
雄二は先に教室に戻って行った。
秀吉「明久、わしらも戻るとしよう。」
僕は秀吉にうなずいて一緒に教室に戻った。
福原先生「では、気を取り直して自己紹介の続きから始めてください。」
須川「えー、須川亮です。趣味は―――」
しばらくして雄二以外の自己紹介が終わった。
福原先生「えー、あと木下優子さんもFクラスです。本日は体調不良で休みだそうです。では、最後にクラス代表の坂本君、自己紹介をお願いします。」
雄二「了解」
そう言って雄二は教壇に上がり、自信に満ちた顔で僕たちをみる。
雄二「Fクラス代表、坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、すきなように読んでくれ。」
一通り自己紹介を終え、雄二は一息ついた後、また話し出す。
雄二「さて、皆に一つ聞きたい。卓袱台に腐った畳。隙間風だらけの窓。汚い埃。恐らくみんなの知りうる限りここは最低の教室だろう。────それに比べて、Aクラスは、冷暖房完備の座席はリクライニングシート、その他豪華設備もろもろ・・・・お前たち、不満はないか?。」
『『『大ありじゃぁっ!!』』』
まさにFクラス男子たちの魂の叫びである。
雄二「よし、ならクラス代表として提案する。俺達Fクラスは、Aクラスに試召戦争を仕掛けようと思う。」
Fモブ「何言ってんだ、勝てるわけないだろ。」
「これ以上設備が落ちたらどうするんだ」
「姫路さんと木下姉妹がいればいい」
Fクラスの反応はかなり否定的だった。雄二はどうやって彼らを説得するのだろうか。
雄二「安心しろ、勝てる根拠はこのクラスにはある。それを今から説明する。」
雄二は得意の不敵な笑みを浮かべる。
雄二「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い。」
姫路「は、はわっ」
土屋「・・・・・!!(ブンブン)」
姫路さんはスカートの裾を抑えて急いで遠ざかり、康太と呼ばれた生徒は必死に顔と手を左右に振り、否定する。往生際の悪いことに、顔についた畳の後を隠しながら歩きだした。
雄二「土屋康太。こいつがあの有名な
Fモブ「ムッツリーニだって!!」
「やつがそうなのか?」
「だが見ろ!頬にある畳の跡を未だに隠そうとしているぞ。」
「なるほど、確かにムッツリーニの名に恥じないスケベぶりだ」
土屋「…………(ぶんぶん」
それでもなお否定するが、畳の跡を手で押さえている姿がとてつもなく哀れであった。
雄二「さらに姫路と今日はいないが木下優子もいる。この2人については言わずともわかるだろう?」
Fモブ「そうだ!!俺たちには姫路さんと木下さんがついている!!」
「あの2人ならAクラスとも戦える!!」
「彼女たちさえいれば何もいらないな。」
雄二「俺も全力を尽くす。」
Fモブ「たしか坂本って、小学生の頃は神童と呼ばれていたらしいぞ。」
「振り分け試験では手を抜いていたのか」
「これってすごい面子じゃないのか?なんか行けそうな気がする。」
教室内は先ほどとは打って変わり、みんなの士気は最高潮に達していた。そして雄二は、ついに号令をかける。
雄二「では、全員筆をとれ!!まずは手始めにDクラスを落とす!!」
Fモブ達「「「「「おおーーーーっ!!」」」」」
クラス内はもの凄い熱気に包まれ、皆の目は燃えているようにみえた。
雄二「よし!明久、Dクラスへの宣戦布告の使者をお前に任せる。この大役はお前にしかできないだろう。」
普通の人が聞けばとても信頼に満ちた言葉だっただろう・・・しかし、雄二が僕に任せたのは『宣戦布告の使者』ではない。『宣戦布告の死者』である。
明久「嫌だよ!!下位勢力の宣戦布告の使者は、酷い目に遭うって聞いてるよ!!」
雄二「明久、そんな噂なんて信じてるのか?そんなの上位クラスが、試召戦争を仕掛けられにくくするために流したデマに決まってるだろう。大丈夫、やつらが危害を加えることはない。騙されたと思って行って来い。」
雄二は力強く断言する。そこには一切の欺瞞も感じさせなかった。
明久「わかった、雄二を信じるよ。使者は僕に任せて、じゃぁ行ってくるね。」
雄二「ああ、頼んだぞ。」
クラスメイト達の歓声と拍手を受け、僕はDクラスへと向かった。
新年明けましておめでとうございます。今回はかなり長くなったので、何か表現のミスや、誤字、脱字やご意見、ご指摘があればよろしくお願いします。