魔法の世界のアリス   作:マジッQ

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今回は短いです。
内容はタイトル通り。
いくつかの事柄については、次話以降で補足するかもしれない。
最終チェックは眠気MAX時にやっているので、おかしいところがある可能性も否めない

ー修正ー
修正しました。
前回のは正直やりすぎた感があった……ハイテンションで執筆するのは危険だね。
大まかな内容は変わってないですけど、消した文もあります。
特にチートなりえる本ですね。出したはいいけど、以前のバジリスクペット化計画のように色々とカオスになる可能性があったのでボッシュート。



ORDER OF THE PHOENIX
母より


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はぁ~い! 親愛なるアリスちゃんへ!

ママが愛を込めて作ったお手紙を読んでくれてありがとう!

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ゴン!

固い物に何かをぶつけたような音が鈍痛と共に身体を駆け巡った。

―――単に、体が脱力して頭をテーブルに叩きつけただけなのだが。

 

念のため、私の読み間違いではないか手に持つ手紙の書き出しを読む。当然ながら、一字一句たりとも変わってはいない。

現実とは非情だ。

 

夏休みに入った翌日、私はヴワルではなく自宅の方にいる。ヴォルデモートから聞いたお母さんの正体。それを確かめるために戻ってきた。

ホグワーツに行くまでずっと暮らしてきた家だけれど、魔法に関係するものなんて見たことはなかった。でも、内容が内容だ。もしかしたら、魔法に関わることで初めて見つけることができる何かがあるかもしれない。そう思って家の中を隈なく調べていた私は、予想外にもあっさりとそれ(・・)を見つけてしまった。お母さんとお父さんの寝室にある机の上。今まで何もなかったはずのそこには一通の手紙が置かれていた。

手紙を手に取り確かめると、そこには昔に見慣れた筆跡で文字が書かれていた。

 

―――アリスちゃんまで届いて、ママの愛!

 

……嫌な予感しかしない。

 

 

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あぁ、これを書いている今から想像できるわ。手紙を読んでいるアリスちゃんが笑顔いっぱいで喜んでくれているのが、予知のように思い浮かべられる!

 

アリスちゃんは今何歳なのかな? 学校は楽しい(学生じゃなかったらゴメンね)? お友達は百人ぐらい出来たかしら? ご飯はちゃんと食べてる? おやつもちゃんと食べてる? 糖分はしっかり補給しなきゃだめよ? お仕事は何をしているのかな(大人じゃなかったらゴメンね)? あと―――

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どうしよう。手に持つ手紙を跡形も残さずに燃やしたい衝動に駆られる。というよりお母さん、常日頃のテンションを手紙にまで持ってこなくてもいいのでは? いや、多分これは素でやっているんだろうから言っても無駄か。

 

何枚かある手紙のうち、三枚―――A3用紙で裏表に五十行ずつ―――がお母さんのハイテンションな内容で埋められている。よくもまぁ、手書きでここまでの文量を書いたものだ。そう思ったときに絶妙なタイミングで「ママの愛に不可能はないんだよ」という一文が目に映った。次の瞬間に右腕が引っ張られる感覚がしたのでそちらを見ると、上海と蓬莱が全身を使って私の右腕へとしがみついていた。上海と蓬莱の突然の行動に不思議に思いつつも右腕の先へと視線をずらす。

 

―――手にマッチ箱が握られていた。

 

「―――上海、蓬莱。大丈夫よ……えぇ、大丈夫」

 

そう言いながら上海と蓬莱を腕から離すが、二人は不安そうな顔で私を見ている。

どうやら、無意識のうちに近くにあったマッチ箱を手に取ってしまったようだ。二人が止めてくれなければ、この手紙は今頃炭と化しているに違いない。

 

気合を入れて、再び手紙を読んでいく。冷静に、冷静にクールに挑め、私。

心構えも新たに手紙を読むが、遊びは終わったのかテンションが落ちたのか、次からは普通の文章に戻っていた。

 

~~~~~~~~~~~

とまぁ、最低限のアリスちゃんラブリーコールを終えたところで本題ね。

 

この手紙を読んでいるっていうことは、私は死んでいて、そしてアリスちゃんは魔女になっているということね。

どうしてアリスちゃんが魔女になったのか分かるかというと、この手紙には魔法を掛けてあるから。アリスちゃんが杖を持っていることで認識することができるような魔法ね。付け加えるなら、私―――ベルンカステルについて強く知りたいと思うことも重要。

 

ここまで話せば分かると思うけど、私も魔女なの。正確には魔女だった、ね。私は魔女を廃業しちゃったし。

 

それで、アリスちゃんが魔女になったことについては、正直に言うと嬉しくなかったかな。勿論嬉しいという気持ちはあるよ。廃業したとはいえ私も魔女だったからね。本当の意味で私の血を引き継いでくれたということだから。

でも魔法に関わっていたからこそ、アリスちゃんには魔法には関わらないで普通に人生を歩んで欲しかったかなって思う。

 

魔法はね、深く関われば関わるほどに深い闇が見えてくるもの。勿論、闇だけじゃなくて明るく陽気な魔法もあるわ。絵本にあるようなメルヘンチックな魔法とかね。でも、そういった魔法も深く追求していけば大なり小なり闇の一面が見えてくるの。

 

例えるなら地と空かしら。地面に奥深く空いた穴の底は光が届かないくらい暗いでしょ―――それが魔法の闇。そして空は太陽の光によって明るく綺麗なもの―――これが魔法の光。でも、明るく綺麗な空も夜が訪れれば闇に染まってしまう。明るい空を昇り続けても、果ては宇宙の闇。夜空に輝く星のように全てが闇という訳ではないけど、それも全体の一部に過ぎない。

何かが少しでもずれただけで、光はあっという間に闇に染まってしまう。そして闇は、容赦なく人を侵してしまう。昨日まで誰かを傷つけることが嫌いだった人が、明日には殺人者になっているかもしれない。そういった、人を容易く闇に堕としてしまう力を持つのが魔法。

 

書き続けるとキリがないけど、つまり魔法というものはとても危険だということ。そんな世界にアリスちゃんを関わらせたくはなかった、というのが正直な気持ち。それに、アリスちゃんが引いている魔女の血は魔法界においては良い意味でも悪い意味でも有名だから。

最初は、私が魔法を使ってアリスちゃんを魔法に関わらせないようにしようかと考えたの。でも、アリスちゃんの人生はアリスちゃんのもの。私の一方的な気持ちだけで決め付けたくはなかった。

だから、二つの選択肢を作ったの。

 

アリスちゃんは、間違いなく十一歳の誕生日に魔法へと関わることになる。魔法界では十一歳で魔法学校に通うのが慣例だからね。強い魔力を持っているアリスちゃんには入学のお知らせがやってくるはず。そこが最初の選択肢。魔法へと関わるならアリスちゃんの望むままに、関わらないなら家に残した魔法がアリスちゃんにあらゆる魔法の手が及ばぬように守ってくれる。

二つ目の選択肢はこの手紙。この手紙を読んでいる時点で、アリスちゃんがどこまで魔法について学んでいるかは分からないけれど、手紙を読んで魔法と関わり合いになりたくないと思ったなら、この手紙をすぐに破いて。そうすれば手紙に仕掛けた魔法が貴女を魔法から遠ざけて守ってくれるわ。

 

―――アリスちゃん、貴女はどっちを選ぶ?

 

~~~~~~~~~~~

 

そこで、手紙は一体途切れている。手紙はまだ何枚があるけれど捲りはしない。お母さんの言葉通りなら、ここが私の人生における分岐点になるだろうからだ。

お母さんの言葉は疑わない。幼い頃の記憶だけれど、言葉にしても文にしても、お母さんが真剣に話しているときに嘘を言ったことはなかった。だから、ここに書かれていることは全部本当のことだろう。

 

魔法から遠ざけ守る魔法というのがどういうものか想像つかないが、ここで手紙を破れば魔法のしがらみから開放される。これから魔法界で起こるだろう、ダンブルドアとヴォルデモートを頂点とした戦争すら遠い御伽噺のような事になるのだろう。確かに今の私の立場からしたら、それはとても魅力ある未来だ。

 

―――でも。

魔法に一切関わらないということは、親しくなった人とも別れることとなる。なにより、ドールズとの関わりすらも失ってしまうかもしれない。

それは耐えられない。ドールズは私の魂の一部から生まれた存在。個性的な成長をしているが私自身でもあり、私の子供でもある。ドールズは私の家族だ。魔法に関わらないということは、自身を否定し、子供を、家族を捨てることになる。とてもではないが、そんなことは認められない。

それに、今この場で魔法から遠ざかれば、私は魔法から逃げたということにもなるだろう。関心のないことで逃げるのは気にしない。けど、自身にとって大切なことから逃げるのは嫌だ。

加えていうならば、一度魔法というものを知ってしまった以上は、自身が満足するところまで知り尽くしたいという気持ちもある。

 

だから私は―――手紙を捲る。

 

~~~~~~~~~~~

そっかぁ。

魔法からは離れたくないかぁ。

 

うん。アリスちゃんなら、きっとそう言うだろうと思ってた。アリスちゃんのことなら世界中の誰よりも分かってるからね。負けず嫌いで、意地っ張りで、可愛いものが好きで、興味をもったものはとことん追求して、責任感が強くて、一度決めたことは決して諦めない。そんなアリスちゃんを、ママは誇りに思うよ。

 

そうなると、アリスちゃんには色々と教えておくことがあるわね。

とりあえず、アリスちゃんも気になっているだろうベルンカステルについて教えるね。家名はベルンカステル。今まで教えたことがなかったママの家名。ベルンカステル家自体は千年も前に滅んでいるの。その生き残りがママで、アリスちゃんは末裔。

千年前に滅んだ家の生き残りであるママがどうして今の時代に生きているかなんだけど、話としては単純で、魔法で不老不死になっただけの話。

一つ忠告だけど、不老不死って夢のような魔法に見えるけど現実には面白くも何ともないから、余程の目的がない限りは目指すのは止めなさい。不老ならまだしも、不死なんてなるものじゃないわ。もし、いつの日か不死を目指す者と出会ったら警戒しなさい。かつての私もそうだったけど、その者は間違いなく人として大切なものが破綻しているわ。

 

……

…………

 

~~~~~~~~~~~

 

そこから手紙は、ベルンカステル家や初代ベルンカステル当主について、魔法や知識、一族の土地についてなどが書かれていた。魔法や知識と言っても、こういう魔法があったというだけで使い方が書かれている訳でもないし、一族の土地も千年前のものだから原形を保っているかどうかも怪しいという前提の話だった。魔法について詳細を書いていないのは、私自身の力で自分だけの魔法を身につけてほしいかららしい。一応、魔法についてはヒントというかアドバイス的なことは書いてあるが、正直これだけで解明していくのは無理だろう。

 

お母さんとお父さんの馴れ初めから始まる話には色々と疲れたが、手紙の最後に書かれていたことには驚いた。

お母さんには昔、まだ魔女だった頃に一人だけ弟子がいたらしい。その弟子も不老の魔法によって永い時を生きている魔女で、もし魔法について本格的に学びたいのならその弟子を頼るといいと書いてあった。お母さんの名前を出せば、最低でも話を聞いてはもらえるはずだということだが、こちらが名乗らずとも弟子の方が気づけば、話を聞いてくれるかもしれないと書いてある。肝心の弟子の居場所だが、いなくなってなければ夜の闇横丁のどこかに隠れ住んでいるようだ。名前は明かせないが、紫が特徴の十代半ばの魔女らしい。

 

―――これは……まぁ、間違いなく、パチュリーのことではないだろうか。

 

夜の闇横丁に住む紫が特徴で凄腕の不老の魔女。そんな特徴的過ぎる魔女は一人しか知らないし、似た存在がそうそういてたまるかという話だ。

パチュリーがお母さんの弟子だということには驚きだが、パチュリーが私とお母さんの関係を知っていて何も言わなかったのかということも気になる。確かに、パチュリーの性格からして簡単に事実を明かすとは到底思えないが、最後に別れた時くらいには教えてくれてもよかったのではないだろうか。

今もどこかで旅しているだろうパチュリーに内心で文句を言いつつ、手紙を折り畳んで部屋を出て行った。

 

 

家の中を片付けて荷物を手に持ち、暖炉の前へと立つ。一度振り返りを家を見渡してから、子袋の中からフルーパウダーを掴み出す。

多分、これからはこの家に戻ってくることは殆どないだろう。普段の生活基盤をヴワルに置いていて、“忠誠の術”で守られているヴワルから離れるメリットはない。この家自体にも“忠誠の術”が掛けられているが、元々不在時におけるセキュリティ目的で掛けてもらったものだし、これからのことを考えれば思い出の詰まった家を危険なことに巻き込みたくはない。

 

「ダイアゴン横丁!」

 

フルーパウダーによる緑の炎に包まれて、家を眺めながらダイアゴン横丁へと飛んでいった。

 

 




正しいか分からない次回タイトル
【不死鳥の騎士団】

◆本文修正に伴い修正つか削除

【アリスちゃんまで届いて、ママの愛!】
月まで届け、ヤゴコロの匙

【不老不死】
不老不死といえば、あれですよね

【”奇跡の魔法”】
スイーツじゃないからな

【永遠の命】
さり気無く闇の帝王をディスってる。
一粒で二度美味しいとはこのこと。

【忠誠の術】
セ○ムも真っ青なセキュリティ性

【パチュリー】
前回投稿時に書き忘れた
次話で載せようと思ったが、今回修正したので加えた。
……度々あった疑問一つ解決?

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