神武、頑張ります!~ちょっと歴史が違う世界の艦これの艦娘になりました~   作:雪たまご

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遺言?

 水結・・・発泡酒。

 

@@@@@@

 

「水結とかジュースですわぁ…」

 

「その割には酔っているな、神武。」

 

「ながもんうるさーい。そんなんだから小学校で『あ、ながもんだ!!』って言いながら防犯ブザーを鳴らす訓練が行われるんだよ…。」

 

「ごふっ!?」

 

 

 ここは居酒屋『鳳翔』。軽空母鳳翔が女将をつとめる居酒屋だ。今日は戦艦娘達の貸し切りで宴会が行われている。

 

「ここ?ここがいいんですか?」

 

「あ、や、だめ、そこは…!!榛名やめて…!!」

 

「ねぇねぇ、今どんな気持ち?どんな気持ち?世界のビッグ7が老朽艦に弄られてどんな気持ち?教えて下さいよねぇ。」

 

「らめぇ!!爆発しちゃうぅぅぅううう!!」

 

 

 皆アルコール耐性があるわけではなく、上戸もいれば下戸もいる。

 

「ひえー、大丈夫デースかー?」

 

「駄目です、お姉様…。吐きそう…。」

 

 

「だからいつも言っているだろう、はしゃぎすぎるなと。」

 

「日向、それ柱…。」

 

 

 

「あらあら山城♪何しているの?」

 

「お姉様…。ああ不幸だわ…。」

 

 

 

 

「つまりおっさんはおっさんなのであって、つまりおっさんなんだよ。」

 

「いや、すまんが何言っているかわからないのだが。」

 

「まったく…これだからながもんは。だから『退魔艦ナガト』なんてゲームを作られるんだよ。」

 

「かはっ!?神武、何故それを知っている!?」

 

「おっさんがやってた。」

 

「小沢ぁぁぁぁあああ!!」

 

 

@@@@@@

 

 退魔艦ナガト…エロゲー。長門そっくりの女性がモンスターにニャンニャンされるゲーム。シリーズには姫戦艦ビスマルクというものがある。

 

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 大体一時間後。

 

「・・・うわぁ。」

 

 所要で遅れてきた崇神が見たものは、まさに惨状。大の字で寝ている榛名に、気分悪そうな比叡の背中をさする金剛。どんよりオーラを放っている、山城、陸奥。ずっとニコニコしながら飲み続ける扶桑。柱に話しかける日向。幸せそうに寝ている神武。そして・・・

 

「この面子で酒はもう飲みたくないな…。」

 

「まったくね…。」

 

 どこか遠い目をしながら酒を飲み続ける長門と伊勢だった。

 

 

######

 

 翔鶴…大日本帝国海軍の航空母艦。開戦後に造られたため、条約に縛られることなく造られ、当時帝国海軍最強の空母だった。一航戦、二航戦と比べれば確かに乗組員の腕はあまりよくないが、それでも皆ゼロファイターとして活躍した。艦内の治安は良く、搭乗していた者は「一つの家族のようだった」と述べている。第二次大戦中には大きな活躍は挙げなかったものの、朝鮮戦争、日韓戦争、第三次世界大戦では同海軍の戦艦神武と共に輝かしい戦功を挙げている。

 

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 19??年横須賀

 

「神武ーいるかー?」

 

『提督?』

 

「おお、翔鶴か。神武を知らんか?」

 

『神武なら寝ていますよ?』

 

 この場合の寝ているとは点検中という意味である。精神体である彼女達には睡眠は必要はない。しかし機関部の点検等の際には意図的に眠ることがある。身体をまさぐられるような変な気分になるらしい。

 

「そうか…おはぎを持ってきたんだがな…。翔鶴、食べるか?」

 

『いいんですか?』

 

「ああ。今日はあまり長居できないからな。」

 

『やった♪神武が絶賛する提督のおはぎ、一度食べてみたかったんです。』

 

 おはぎの気が翔鶴の口に吸い込まれていく。一つ分が吸い込まれ終わったと同時に、翔鶴が固まった。

 

『な、何なんですかこれは!?神武はいつもこんなものを!?な、なんて贅沢な…』

 

「そこまで言うほどではないよ。」

 

 少し照れている小沢。しかし、すぐに真面目な顔になる。

 

「翔鶴、君に頼みたいことがある。」

 

『何ですか?提督。』

 

「・・・私ももう永くない。年だ。」

 

『はい。』

 

 翔鶴も神妙に頷く。小沢の歳は普通なら引退している。現に小沢より歳上は既に海軍にはおらず、歳下も引退を始めている。

 

「神武は私にどこか依存しているところがある。翔鶴もそれはわかるだろう?」

 

『ええ。』

 

 翔鶴は思い出す。大戦の後から神武は変わった。親しい者にしかわからないがどこかよそよそしいのだ。感情も薄れているように見える。今までと同じような反応をしているものの、心のそこからというよりはそう演じている、という感じだ。しかし、小沢と話しているときだけは今までと同じ・・・どころか、よりべたべた甘えている。

「私がいなくなった後、どうなるか…それが気がかりでな。崇神にも言っているのだが、翔鶴。どうか神武のことを頼む。お前は私と崇神以外で心を許している数少ない存在だ。」

 

『提督…?』

 

「ごほっごほっ…!!くれぐれも神武のことを頼む!!」

 

『提督!!』

 

@@@@@@

 

「結局、約束は果たせなかったわね…。」

 

「どうしたの?翔鶴姉。」

 

「何でもないわ、瑞鶴。」

 

 今度こそ、もう一度約束を果たさないと…。

 

 

 

 

 

 

「まずはお淑やかにさせてみようかしら。」

 

「いきなり押し掛けてきて何するのさ!?」


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